氷獄 の商品レビュー
第一作(チームバチスタの栄光)の舞台だった東城大学医学部付属病院に繋がる4つの短編を纏めてある、バチスタシリーズ最新作。 ☆双生 桜宮病院から双子の姉妹が田口医師の元に半年研修に来ている。訳ありで田口医師が押し付けられ面倒を見ることになった。 夫婦の患者が来る、田口は相変わらずじ...
第一作(チームバチスタの栄光)の舞台だった東城大学医学部付属病院に繋がる4つの短編を纏めてある、バチスタシリーズ最新作。 ☆双生 桜宮病院から双子の姉妹が田口医師の元に半年研修に来ている。訳ありで田口医師が押し付けられ面倒を見ることになった。 夫婦の患者が来る、田口は相変わらずじっくり時間をかけて話を聞く。短気な妹はしびれを切らしているが姉は静かな口調で妹をなだめている。しかし妹の口調は容赦ないが目は確かで、付き添いの夫の行動に不審を抱く。彼女は間もなく訪れるだろう老老介護の生活を危ぶんで、田口の頭越しに妻は認知症の初期、夫はパーキンソン病と診断する。そして斬新な治療法を提案するが。 「バチスタシリーズ」で展開する悲劇「桜宮サーガ」の姉妹がまだ駆け出しの医師だったころの話。 ☆星宿 オレンジ病棟(小児病棟)の少年は星座マニアだった。転移の少ない脳腫瘍で初期の今、手術で摘出すれば完治する見込みがある。だがどうしても手術は嫌だと言い続け、周りを困惑させていた。看護師の如月翔子がクリスマスツリーの飾りに少年が南十字星を見たいと書いてあるのを見つける。手助けの何でも屋の城崎に、万能の白鳥は高額の電気代をたかられることになるが。 常に特権のシェスタでうつらうつらの猫田師長は昔ブラジルに応援に行っていた時餞別に(遺品になったが)先輩の老医師から投影機をもらって隠していた。おあつらえ向きに病棟の屋根がドーム型。そしてクリスマスの夜、南十字星がたくさんの星座と共に天井をゆっくり回転した。星座の蘊蓄も作者の筆の遊びのようで暖かくじんと来る。箸休めではなくて筆やすめの一篇? ☆黎明 新病院が出来て旧病院がホスピス棟になった。経験の深い黒沼師長をヘッドハンティングして病棟を任せ、田口がまたもや責任者に推挙(おしつけ)された。 一年後多かった患者はほとんどが居なくなり、黒沼と親しい元内科医の山岡一人になっていた。田口はそこに末期がん患者を送り込んだ。だが黒沼師長はホスピスは治らない患者に入院治療はしない、静かに死を待てというばかり。若月は水と粉薬を届け始める。 ひとり残った入院患者と看護師長、終末医療を巡るそれぞれの思いをどう受け止めるか。 ☆氷獄 これが本題。 二年前の東城大病院の「バチスタ事件」で患者が亡くなった。犯人の麻酔医氷室は、東京拘置所に留置されていた。 日高正義は十年務めた会社を解雇された。日高は子供の頃からついてない、父親の仕事がなくなりその上保証人になって多額の借金を背負って死んだ。相続拒否で難は逃れたが無職では生きていけない。十年働いた貯蓄を切り崩しつつの職探しもうまくいかない。幸い国立法科卒で一念発起、司法試験に合格はしたが、「正義」の内部告発が仇になってどこの事務所も雇ってくれない。名前が恨めしいが、と、そこで引退前の老弁護士にあう。後を継ぐことになった初仕事が、氷室の国選弁護人である。 「冤罪被害者を救う会」の会長夫人の後押しもある「私、へそ曲りだけじゃなくて、おせっかいなの」 しかし氷室は何も語らず「生き延びたいとは思わない」と弁護も拒否。 「世間はあなたのことなど忘れている、思い出すのは判決が出た時です。今、もうあなたは死んでいるのです。国選弁護人に任じてくれたら私は後の話はその時にします。」 そして氷室はしばらくしてそれを承認した。 ぼくに話を聞きたいというのは生きたいということか。 「手記を発表しましょう。」 「自分の言葉を社会に発信したいなんて思ったことはありません」「ここは氷の牢獄です。何をしても凍えるだけなんですよ」 だが「冤罪被害者を救う会」で扱ったP氏の犯人確定の元になった薬物を分析した結果P氏の無罪が確定した。氷室の提案だったが、これで氷室はわずかに外の世界に目を向け始めた。 日高正義も名に恥じない働きをする。田口も白鳥も、藤原看護師まで顔をそろえている。世の闇を嘆きながらそれぞれのうっ憤を晴らしつつ。日高正義は正義の名前に向かって斜に構えつつ、真実を探ろうとする。 「日高正義さん、か。日、高くして正義の輩だなんて鬱陶しそうなひとだねえ」白鳥 「いえ、よく名前負けだといわれていまして」 「名前負けなんて当たり前でしょ。こんな名前に負けないヤツなんて傲慢なクズしかいないよ。でもその年まで生き存えているんだから、名前負けしてるワケないでしょ」 ものすごくカチンとくるものいいだが、 「弁護士は、被疑者に寄り添う正義だと思います」 最後の犯人の手記は罪の立場も重さも現実とは逆かもしれないが、弁護士の正義という言葉が残った。 あの極北に出張までさせる作者で、重い現実が裏にあるとはいえ軽い読み物で、顔ぶれも懐かしくてもう一度積みなおしてみた。
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実はチーム・バチスタシリーズは読んでないんだけど。ちょっと前に、同じ桜宮が舞台の「アクアマリンの神殿」を読んだから、田口先生とか看護師の翔子さんとかが出てきて嬉しかった。あとはニノが演じたブラックペアンはドラマで見た。 医療と法律は切っても切れない関係。海堂さんらしく、医療を守...
実はチーム・バチスタシリーズは読んでないんだけど。ちょっと前に、同じ桜宮が舞台の「アクアマリンの神殿」を読んだから、田口先生とか看護師の翔子さんとかが出てきて嬉しかった。あとはニノが演じたブラックペアンはドラマで見た。 医療と法律は切っても切れない関係。海堂さんらしく、医療を守ろうとする発言が多かった。登場人物たちの発言としてではあったけど、検察への体制批判が結構あったなーという感じ。 やっぱ最初からシリーズ読むべきかな。ドラマでも良さそう。
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海堂さんめちゃくちゃ久しぶりに読んだ。バチスタシリーズということで久しぶりに読んだけど、田口先生と白鳥以外マジで登場人物も出来事も覚えていない。『カレイドスコープの箱庭』を約10年前(そのほかの作品はもっともっと前)に読んでいるようなのでそうだよね……という。
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書名は『氷獄』と書いて「ひょうごく」と読む。4篇の小説が収まっている一冊で、各篇を愉しく読み進め、素早く読了に至った。 所謂「桜宮サーガ」の一部を為す各篇が収められている。本書の各篇には、発表されて来た様々な作品の後日談、前日譚というような感じの内容が含まれていると思う。最近、作...
書名は『氷獄』と書いて「ひょうごく」と読む。4篇の小説が収まっている一冊で、各篇を愉しく読み進め、素早く読了に至った。 所謂「桜宮サーガ」の一部を為す各篇が収められている。本書の各篇には、発表されて来た様々な作品の後日談、前日譚というような感じの内容が含まれていると思う。最近、作者による「桜宮サーガ」が気に入って、色々な作品を読んでいるので、様々な作品の後日談、前日譚というようなことは判った。が、そうした各作品を然程知らないにしても、作中世界での過去や未来が作中で示唆されているというようなことで、抵抗無く入って行けるように思う。 「桜宮サーガ」各作品の後日談、前日譚というような感じの内容が含まれているからなのかもしれないが、各篇が始まる辺りに、さり気なく「XXXX年頃の出来事」と判るようになってもいた。また作品によっては、或る時点で来し方を振り返る内容であって、作中の節に出来事の時期が明示されているというのも在った。 『双生』という篇には、様々な作品に登場している桜宮家の双子の姉妹と、東城大学病院の田口医師が登場する。東海地方の架空の街である桜宮市で、桜宮家は少し知られている歴史の在る民間病院を経営している。双子の娘達は大学医学部を卒業して医師になった。母校の大学病院での研修を経て地元に戻り、東城大学病院で研修を行うことになった。神経内科に配置されたが、そこで外来を担当する臨床医と言えば田口医師なので、田口医師は姉妹の指導者ということになった。この双子と田口医師の様子が描かれる。 『星宿』は、小児病棟に在る子ども達のためにクリスマス会を催すことになった際の顛末を通じ、手術を受けることに逡巡している少年を励まして行くというような内容である。『ナイチンゲールの沈黙』や『ジェネラル・ルージュの凱旋』の後日談のような内容が含まれていると思った。 『黎明』は少し独立性が高いかもしれない。「桜宮サーガ」各作品は2000年代の出来事が多いが、その少し後の2010年代に東城大学病院で新たな病院棟が完成し、それ以前の病院棟にホスピスが設けられるという状況で物語が進む。そのホスピスの担当として田口医師が登場する。“恢復”が望み難い、末期癌等の患者が滞在するという場所の様子が描かれ、「“終末医療”?」や「生き続けようとすること?」という問題提起が為されているように思った。 本書の表題にもなっている『氷獄』は、他の各篇の倍やそれ以上も在りそうな中篇であり、なかなかに読み応えが在った。2019年4月の或る日、10年余りも活動を続けている弁護士の日高正義が来し方を振り返っているという内容だ。 日高正義は大学卒業後に10年程の会社勤務を経て、制度の改革後に法科大学院を経て弁護士となった。曲折を経て老弁護士が1人で活動している弁護士事務所に身を寄せて弁護士活動に入ることとなった。最初の主要な仕事として、或る被疑者の国選弁護人を引き受けようとする一件が在った。その一件というのが「バチスタ事件」として知られる事件の被疑者の国選弁護人であった。 東城大学病院での心臓手術の際、手術室での仕事に携わった医師の1人が細工をして患者を「殺す」ということをしてしまっていたという事件だった。逮捕後に色々と在って、事件から2年程を経た時点で未だ起訴されていない。国選弁護人の選任に関して、過去に3人の弁護士が接見して弁護を引き受けようとしたが、何れも断られていた。そこに日高正義が登場し、この被疑者の国選弁護人を引き受けることとなったのだった。 そういうことで、本作は『チームバチスタの栄光』の後日談である。加えて『極北クレイマー』に在った、出産時の産婦と胎児が死亡した件で医師が逮捕されてしまった一件の後日談も加わる。「桜宮サーガ」各作品の様々な人物達も登場する中、日高正義が奮戦する物語は興味深い。 この『氷獄』については、何か“科学”や“司法”というような大きな歯車の様なモノが好いバランスで噛み合い、より公正で、より多くの人達が幸福になれそうな社会が指向されるべきで、主人公の日高正義がそういう辺りに“正義”を見出そうとしているというような感じになっていると思った。 紐解き始めると、本当に頁を繰る手が停め難くなった。短い3篇は、各々をあっという間に読了した。『氷獄』は余韻が深かった。なかなかに御薦め出来る一冊だ。
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バチスタシリーズ 短編集 桜宮すみれ、小百合先生+田口先生の若かりし頃の話 南十字星を見たいという少年の願いを叶える話 ホスピスの話 バチスタ事件の被疑者 氷室氏と、駆け出し弁護士の話 +極北の三枝先生の事件の判決まで どれも不思議に読後感が良いのよね… 猫...
バチスタシリーズ 短編集 桜宮すみれ、小百合先生+田口先生の若かりし頃の話 南十字星を見たいという少年の願いを叶える話 ホスピスの話 バチスタ事件の被疑者 氷室氏と、駆け出し弁護士の話 +極北の三枝先生の事件の判決まで どれも不思議に読後感が良いのよね… 猫ちゃんや、翔子ちゃん、彦根市先生、白鳥さんに、 田口先生まで勢ぞろいで。 翻弄される新人正義弁護士から見た、東城大の面々や 白鳥さんが新鮮ww バチスタファンなら必須の一冊
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チーム・バチスタシリーズ。「正義」という名の弁護士が、「チーム・バチスタの栄光」の犯人の国選弁護人を引き受け、その他の医療裁判にも関連付けて取り組んでいくストーリー。 「正義は大きく使おうとすればするほど、か弱き 人々を傷つける」「正しいものばかり集めたら、世界は息苦しくなり、潰...
チーム・バチスタシリーズ。「正義」という名の弁護士が、「チーム・バチスタの栄光」の犯人の国選弁護人を引き受け、その他の医療裁判にも関連付けて取り組んでいくストーリー。 「正義は大きく使おうとすればするほど、か弱き 人々を傷つける」「正しいものばかり集めたら、世界は息苦しくなり、潰れちゃう」。確かに「正しい」は「優しくない」こともある。「正義感が強い」ことも、100%の褒め言葉ではない気もする。単純なルールで世界は縛れないんだなと改めて思うけれど、モヤモヤする部分も残る。
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チームバチスタはかなり前に読んだのであまり覚えていない。チームバチスタの登場人物がちょいちょい現れる。 中途半端な作品でした。 4つの短編からなっていますが、[双生]はえっこれで終わりという感じ。[星宿]はありえない感じ。病院に隠れたプラネタリュームがあるって…[そう明]は師...
チームバチスタはかなり前に読んだのであまり覚えていない。チームバチスタの登場人物がちょいちょい現れる。 中途半端な作品でした。 4つの短編からなっていますが、[双生]はえっこれで終わりという感じ。[星宿]はありえない感じ。病院に隠れたプラネタリュームがあるって…[そう明]は師長の暴言が腹立たしい。[氷獄]はほとんど読み飛ばし。
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すみれ先生のまっすぐな考え方が素敵だと思ったし、それをこれからも生かしていけるようにという田口先生のアドバイスも素敵だと思った 氷室の感情はあまり見えなかった
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久しぶりに海道作品に触れた 森鴎外、渡辺淳一、北杜夫等 医師が小説を書き世に作品として出版されたのはかなりの数だ 海道尊という作家もその一人 今回の作品は医療業界のみならず司法にも手を広げ、作者の知識と調査力に感銘した 行政への批判も巧みに盛り込み、作者の手法には驚かれた
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「バチスタスキャンダル」の被疑者である氷室。黙秘を続け、弁護を拒む彼に真意とは。氷室の真意を解き明かしながら、検察のやり口にメスを入れようとしたのかな。 Aiにしても、検察にしても、エンタメのオブラートに包みながら、問題提起をしていいくスタイルは、今後も継続されていくのでしょう。...
「バチスタスキャンダル」の被疑者である氷室。黙秘を続け、弁護を拒む彼に真意とは。氷室の真意を解き明かしながら、検察のやり口にメスを入れようとしたのかな。 Aiにしても、検察にしても、エンタメのオブラートに包みながら、問題提起をしていいくスタイルは、今後も継続されていくのでしょう。 氷室の行く末はどうなるのか?あの形での脱獄となると、おそらく行方不明者としてカウントされているのでは?闇に潜むか、違う人間として仮面をかぶって生活してゆくのか。いつどこで、桜宮サーガに関わって来るのか。 時系列が追いきれていないので、前後関係がこんがらがっていて大変。それぞれが独立した面白さになっているのだけど、やはりサーガである以上、物語の始まりから、順々と追っていきたい。なかなか大変。 自作の年表でも作ってみるか。
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