氷獄 の商品レビュー
書名は『氷獄』と書いて「ひょうごく」と読む。4篇の小説が収まっている一冊で、各篇を愉しく読み進め、素早く読了に至った。 所謂「桜宮サーガ」の一部を為す各篇が収められている。本書の各篇には、発表されて来た様々な作品の後日談、前日譚というような感じの内容が含まれていると思う。最近、作...
書名は『氷獄』と書いて「ひょうごく」と読む。4篇の小説が収まっている一冊で、各篇を愉しく読み進め、素早く読了に至った。 所謂「桜宮サーガ」の一部を為す各篇が収められている。本書の各篇には、発表されて来た様々な作品の後日談、前日譚というような感じの内容が含まれていると思う。最近、作者による「桜宮サーガ」が気に入って、色々な作品を読んでいるので、様々な作品の後日談、前日譚というようなことは判った。が、そうした各作品を然程知らないにしても、作中世界での過去や未来が作中で示唆されているというようなことで、抵抗無く入って行けるように思う。 「桜宮サーガ」各作品の後日談、前日譚というような感じの内容が含まれているからなのかもしれないが、各篇が始まる辺りに、さり気なく「XXXX年頃の出来事」と判るようになってもいた。また作品によっては、或る時点で来し方を振り返る内容であって、作中の節に出来事の時期が明示されているというのも在った。 『双生』という篇には、様々な作品に登場している桜宮家の双子の姉妹と、東城大学病院の田口医師が登場する。東海地方の架空の街である桜宮市で、桜宮家は少し知られている歴史の在る民間病院を経営している。双子の娘達は大学医学部を卒業して医師になった。母校の大学病院での研修を経て地元に戻り、東城大学病院で研修を行うことになった。神経内科に配置されたが、そこで外来を担当する臨床医と言えば田口医師なので、田口医師は姉妹の指導者ということになった。この双子と田口医師の様子が描かれる。 『星宿』は、小児病棟に在る子ども達のためにクリスマス会を催すことになった際の顛末を通じ、手術を受けることに逡巡している少年を励まして行くというような内容である。『ナイチンゲールの沈黙』や『ジェネラル・ルージュの凱旋』の後日談のような内容が含まれていると思った。 『黎明』は少し独立性が高いかもしれない。「桜宮サーガ」各作品は2000年代の出来事が多いが、その少し後の2010年代に東城大学病院で新たな病院棟が完成し、それ以前の病院棟にホスピスが設けられるという状況で物語が進む。そのホスピスの担当として田口医師が登場する。“恢復”が望み難い、末期癌等の患者が滞在するという場所の様子が描かれ、「“終末医療”?」や「生き続けようとすること?」という問題提起が為されているように思った。 本書の表題にもなっている『氷獄』は、他の各篇の倍やそれ以上も在りそうな中篇であり、なかなかに読み応えが在った。2019年4月の或る日、10年余りも活動を続けている弁護士の日高正義が来し方を振り返っているという内容だ。 日高正義は大学卒業後に10年程の会社勤務を経て、制度の改革後に法科大学院を経て弁護士となった。曲折を経て老弁護士が1人で活動している弁護士事務所に身を寄せて弁護士活動に入ることとなった。最初の主要な仕事として、或る被疑者の国選弁護人を引き受けようとする一件が在った。その一件というのが「バチスタ事件」として知られる事件の被疑者の国選弁護人であった。 東城大学病院での心臓手術の際、手術室での仕事に携わった医師の1人が細工をして患者を「殺す」ということをしてしまっていたという事件だった。逮捕後に色々と在って、事件から2年程を経た時点で未だ起訴されていない。国選弁護人の選任に関して、過去に3人の弁護士が接見して弁護を引き受けようとしたが、何れも断られていた。そこに日高正義が登場し、この被疑者の国選弁護人を引き受けることとなったのだった。 そういうことで、本作は『チームバチスタの栄光』の後日談である。加えて『極北クレイマー』に在った、出産時の産婦と胎児が死亡した件で医師が逮捕されてしまった一件の後日談も加わる。「桜宮サーガ」各作品の様々な人物達も登場する中、日高正義が奮戦する物語は興味深い。 この『氷獄』については、何か“科学”や“司法”というような大きな歯車の様なモノが好いバランスで噛み合い、より公正で、より多くの人達が幸福になれそうな社会が指向されるべきで、主人公の日高正義がそういう辺りに“正義”を見出そうとしているというような感じになっていると思った。 紐解き始めると、本当に頁を繰る手が停め難くなった。短い3篇は、各々をあっという間に読了した。『氷獄』は余韻が深かった。なかなかに御薦め出来る一冊だ。
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バチスタシリーズ 短編集 桜宮すみれ、小百合先生+田口先生の若かりし頃の話 南十字星を見たいという少年の願いを叶える話 ホスピスの話 バチスタ事件の被疑者 氷室氏と、駆け出し弁護士の話 +極北の三枝先生の事件の判決まで どれも不思議に読後感が良いのよね… 猫...
バチスタシリーズ 短編集 桜宮すみれ、小百合先生+田口先生の若かりし頃の話 南十字星を見たいという少年の願いを叶える話 ホスピスの話 バチスタ事件の被疑者 氷室氏と、駆け出し弁護士の話 +極北の三枝先生の事件の判決まで どれも不思議に読後感が良いのよね… 猫ちゃんや、翔子ちゃん、彦根市先生、白鳥さんに、 田口先生まで勢ぞろいで。 翻弄される新人正義弁護士から見た、東城大の面々や 白鳥さんが新鮮ww バチスタファンなら必須の一冊
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チーム・バチスタシリーズ。「正義」という名の弁護士が、「チーム・バチスタの栄光」の犯人の国選弁護人を引き受け、その他の医療裁判にも関連付けて取り組んでいくストーリー。 「正義は大きく使おうとすればするほど、か弱き 人々を傷つける」「正しいものばかり集めたら、世界は息苦しくなり、潰...
チーム・バチスタシリーズ。「正義」という名の弁護士が、「チーム・バチスタの栄光」の犯人の国選弁護人を引き受け、その他の医療裁判にも関連付けて取り組んでいくストーリー。 「正義は大きく使おうとすればするほど、か弱き 人々を傷つける」「正しいものばかり集めたら、世界は息苦しくなり、潰れちゃう」。確かに「正しい」は「優しくない」こともある。「正義感が強い」ことも、100%の褒め言葉ではない気もする。単純なルールで世界は縛れないんだなと改めて思うけれど、モヤモヤする部分も残る。
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すみれ先生のまっすぐな考え方が素敵だと思ったし、それをこれからも生かしていけるようにという田口先生のアドバイスも素敵だと思った 氷室の感情はあまり見えなかった
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久しぶりに海道作品に触れた 森鴎外、渡辺淳一、北杜夫等 医師が小説を書き世に作品として出版されたのはかなりの数だ 海道尊という作家もその一人 今回の作品は医療業界のみならず司法にも手を広げ、作者の知識と調査力に感銘した 行政への批判も巧みに盛り込み、作者の手法には驚かれた
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「バチスタスキャンダル」の被疑者である氷室。黙秘を続け、弁護を拒む彼に真意とは。氷室の真意を解き明かしながら、検察のやり口にメスを入れようとしたのかな。 Aiにしても、検察にしても、エンタメのオブラートに包みながら、問題提起をしていいくスタイルは、今後も継続されていくのでしょう。...
「バチスタスキャンダル」の被疑者である氷室。黙秘を続け、弁護を拒む彼に真意とは。氷室の真意を解き明かしながら、検察のやり口にメスを入れようとしたのかな。 Aiにしても、検察にしても、エンタメのオブラートに包みながら、問題提起をしていいくスタイルは、今後も継続されていくのでしょう。 氷室の行く末はどうなるのか?あの形での脱獄となると、おそらく行方不明者としてカウントされているのでは?闇に潜むか、違う人間として仮面をかぶって生活してゆくのか。いつどこで、桜宮サーガに関わって来るのか。 時系列が追いきれていないので、前後関係がこんがらがっていて大変。それぞれが独立した面白さになっているのだけど、やはりサーガである以上、物語の始まりから、順々と追っていきたい。なかなか大変。 自作の年表でも作ってみるか。
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桜宮サーガ最新刊になるのかな 4編の中短編集 表題作『氷獄』は桜宮サーガの一貫したテーマでもある司法と医療の線引について考えさせられる作品 それにしても本編の他にもいたるところに未回収の伏線が散りばめられててすべてがスッキリするにはあと何作必要なんだ!という感じです まだまだ続い...
桜宮サーガ最新刊になるのかな 4編の中短編集 表題作『氷獄』は桜宮サーガの一貫したテーマでもある司法と医療の線引について考えさせられる作品 それにしても本編の他にもいたるところに未回収の伏線が散りばめられててすべてがスッキリするにはあと何作必要なんだ!という感じです まだまだ続いてほしいな〜
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懐かしい人達がたくさん出てきて、色々なシリーズ読んだ時を思い出し一気に読了 最後の作品は、バチスタ事件のその後を追う弁護士の活躍が描かれていた 最後のシーンは!!その後どうなったのって気になりました
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バチスタシリーズのキャラクターたちに久しぶりに会えてうれしかったです。でも読んでいくうちに以前の話も忘れていたり、産婦人科医院の話はそもそも読んでなかったり。また第1作から読もうかと思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
桜宮病院シリーズを読んでいないのに、表紙に一目惚れして借りてしまった。 4話目は、引っかかるところもあるが(シリーズを読んでいれば分かった?)、終盤でひっくり返された感じ。
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