夏物語 の商品レビュー
作家を目指す主人公夏子と、そのまわりの人たちが、織りなす物語。 精子提供をモチーフとしている。 ちょっと時間がなくて、飛ばし読みだったが、 読み応えはありました。
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この世界には様々な生き物がいて、その子孫を生み出していく営みも多様だ。多産多死で産んだら産んだでほったらかしもあれば、産んだばかりの子供に親である自分を食べさせる生物だっている。 その世界にあって、進んだ現代医療における人間が最後に至る過程では、終末医療で延命なのか緩和ケアなの...
この世界には様々な生き物がいて、その子孫を生み出していく営みも多様だ。多産多死で産んだら産んだでほったらかしもあれば、産んだばかりの子供に親である自分を食べさせる生物だっている。 その世界にあって、進んだ現代医療における人間が最後に至る過程では、終末医療で延命なのか緩和ケアなのか、はたまた尊厳死はどうなのか…等のような、様々な選択肢が提示される。 一方で生まれる側はどうなのか。はたして望まれていたのかそうでないのか。そんな世界に誕生させられたのは親のエゴなのか。 主人公が迷い、悩み、痛みの末に「会いたい」その子と巡り合うことができたのはやっぱり尊いことだと思うのです。
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生きるということを考えることになる。 女性にとっての出産、人として生を受けること。 生を肯定出来るか、出来ないか。
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人工受精をめぐる物語。人工受精といってもAIH(Artificial Insemination of Husband)とかAID(A I by Donor)とか、色々なやり方がある事を読後に再認識した。以前、「医学部の学生が提供している」てな報道を見た覚えもあるけど、このAIDで...
人工受精をめぐる物語。人工受精といってもAIH(Artificial Insemination of Husband)とかAID(A I by Donor)とか、色々なやり方がある事を読後に再認識した。以前、「医学部の学生が提供している」てな報道を見た覚えもあるけど、このAIDで生まれる人もかなりいて、その人が父親に血の繋がりが無い事をある程度大人になってから知った時の自我崩壊というか喪失感というか、酷く辛い思いをするであろう事は想像に難くない。産むのは親のエゴ、というAIDの子である善百合子の言葉は、人工受精という技術をもった人間にのみ当てはまる、本能に従った性欲から生じる性交の結果の受精による出産しかない人間以外の生きものには当てはまらない、なんて事などなど、色々考えさせられました。
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賛否分かれそうな本だなと思う。 望んで子供を産んだ人、望まずに産んだ人、授からなかった人、そもそも産みたくない人、そして男。 圧倒的に女性の話だから男性はどう思うのかな。子供を作ることにここまで無力感を感じるとは。 女が女の意思だけで子供を持つことについてすごく深く考えさせられ...
賛否分かれそうな本だなと思う。 望んで子供を産んだ人、望まずに産んだ人、授からなかった人、そもそも産みたくない人、そして男。 圧倒的に女性の話だから男性はどう思うのかな。子供を作ることにここまで無力感を感じるとは。 女が女の意思だけで子供を持つことについてすごく深く考えさせられる。全部が同感ではないけど。 ただネイティブ大阪人だから関西弁のニュアンスが自然再生されるのは得だな。関西人じゃない人、外国の人はどう読むのかな?
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このタイトルには二つの意味がある。 まず、主人公が夏子。夏子の物語。 そして場面に出てくるほとんどの季節が夏ということ。 女について、命について、子供を誕生させるということについて 人によって様々に違う価値観に触れながら、38歳の夏子が決めた、行動した、たくさんのことを綴った夏...
このタイトルには二つの意味がある。 まず、主人公が夏子。夏子の物語。 そして場面に出てくるほとんどの季節が夏ということ。 女について、命について、子供を誕生させるということについて 人によって様々に違う価値観に触れながら、38歳の夏子が決めた、行動した、たくさんのことを綴った夏物語。 長さは全く気にならない。 冒頭の「貧乏について」のヒリヒリとする描写から最後のページまで、読む手が緩むことを全く感じず。 二部構成のうち一部は『乳と卵』に夏子自身のことを肉付けただけの構成だったけど、それでも『乳と卵』の凄さを再認識した。 私は今まで誰か特定の好きな作家さんっていなかった。みんな好きですって思ってた。 でも読み終わった後、私は誰よりも川上未映子さんの文章が好き、そうハッキリ感じた。 ……………………………………………………… 作家の夏子は男性との性交渉ができない。 それでも自分の子供に会いたい、そんな気持ちを抑えられずにいた。 彼女の周りの、様々に生きてきた女たち。 その人生に触れるたび、たくさん思う。 女性蔑視の苦しみ、貧困、子を持つために払った犠牲、それでもかけがえのない子どもという存在。 その一つ一つが心に迫る。 女にとって命を産むというのは、それ自体が人生の価値観をまるっと写したような問題で、到底正しい、間違っていると判断するようなものではない。 それは隣の人と合わせようとするものではない。 『私たちは言葉は通じても、話が通じない世界に生きている』とはまさにこのことだと思った。 そうして夏子は家族として繋がりのない男性から精子だけを提供してもらい妊娠する、というAIDについて考えるようになる。 そんな中でAIDによって生まれ、壮絶な生い立ちを持つ善百合子と出会う。 彼女は『生まれたことを後悔しながら生きる10人に1人の子ども』だった。 自分の意思と関係なくこの世に誕生させられ、死ぬまで苦痛を味わい続ける人生だ。 親のエゴで子どもを産まないで 痛みも苦しみもない安らかな世界 そこで眠っている子を起こさないで 死ぬほど辛い思いをするのは その子であってあなたではないのだから この世に生きるという事は 幸せなことより辛いことの方が多いのだから そのメッセージが夏子を、読者をグサリと刺す。 ……………………………………………………… もうこれは。ぐうの音も出ない。 その通り。彼女の言っていることは正しい。 そして私たちは知っている。 『10人の子ども』の例えは決して単なる例え話ではなく、現実にかなり近い話だということを。 病気、障がい、虐待、事故、いじめ。 下手したら10分の1よりもっと高い確率で 自分にはどうしようもない理由で 死ぬより辛い人生を生きなければいけない子どもは確実に存在する。 「でもでも、、私たちの子どもはそんな辛いことにはならないはず」 そんな楽観的な、浅はかな、甘い考えの親たちから強制的にこの世に産み落とされる子ども。 だからこそ親は、その子が真っ当に生きていけるだけの土台を作っていく責任がある。 そのための犠牲は払わなくてはいけないし、軽いものであるわけがない。 しかし全ての親が戸惑うのは その犠牲が思ったより重く、金銭的・体力的・精神的にもキツいということ。 子がいない世界から、その部分を予測するのは全く不可能だということ。 非力な命を前にして初めて 自分なら大丈夫だ、きちんとやれると思っていた目論見が外れまくっているということ。 じゃあ子どもを作らなきゃいいじゃん、となるけども この存在がいなければ私はどうなっていただろうと この気持ちを知らない人生は、どうなったんだろうと思うのも事実。 私の甘いエゴで、このシンドイ事の多い世の中で、死にたいと思うほどの辛い体験をさせてしまうであろう、私の子ども せめて一緒に住む数年間は、震えるほどの喜びや、忘れたくない思い出の瞬間を共有したい。 大人になり親の手を離れる前に、自分ならできるという自信や、身を守る術を身につけてもらいたい。 そのためには何でもやる。 それが親のエゴの代償であり、子が親を育てるという言葉の意味だと思った。 そして10人に1人の子どもの存在を忘れない。自分の子どもと真剣に生きていきたい。 それが馬鹿で身勝手な、未熟な親にできるちっぽけなことかなぁと思った…
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・テーマ/世界観 ★★★★★ ・背景描写 ★★★★ ・キャラクター ★★★★ ・インパクト ★★★★ ・オリジナリティ ★★★★★ ・テンポ/構成 ★★★★ ・文章/語彙 ★★★★ ・芸術性 ★★★★ ・感動/共感 ★★★★ ・余韻 ★★★...
・テーマ/世界観 ★★★★★ ・背景描写 ★★★★ ・キャラクター ★★★★ ・インパクト ★★★★ ・オリジナリティ ★★★★★ ・テンポ/構成 ★★★★ ・文章/語彙 ★★★★ ・芸術性 ★★★★ ・感動/共感 ★★★★ ・余韻 ★★★★
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
駆け出しの小説家である主人公を中心とした、性別やいのち、生きることをテーマに描いた作品(のように自分には感じた)。 1部の途中ぐらいまでは、余り面白い感じは無かったけど途中からグイグイ引き込まれて2部以降はイッキ読みしてしまった。 ユーモアを交えた軽快なやり取りがあるので、会話の軽快さはあるものの、一貫して精子提供や人工受精による妊娠・出産など重いテーマであるので、元気な時に読んだ方が良いかもしれない。 今まで考えてもみなかったけど、肉体的に男性である。というのはどういうことか明白だけども、精神的に男性である。とはどういうことか。答えの出せない自分がいた。 この世に生を受けることは喜びなのか、 それとも苦しみなのか。 答えを求めてもがく主人公が出した結論に涙が出た。 鷺沢萌「愛してる」やリチャードバック「イリュージョン」など、20年以上経っても心に残っている本というものに稀に出会う事があるけど、この本も帯に書いてある通り、自分の心の奥深くにいつまでも息づいてく作品になりそうだ。そんな予感がした。
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文章のテンポが良く的確な言葉を紡ぐ人だとわかっていたけど、その人の作品の中でも傑作と言われるこの作品、流石にすごかった。途中詰めたり疑問を並べるところがとても好き、考え方というかその感じ、感想がうまく言えないもどかしさ。すごいと言ってしまう。圧倒的に上手いというのか、わたしは好き...
文章のテンポが良く的確な言葉を紡ぐ人だとわかっていたけど、その人の作品の中でも傑作と言われるこの作品、流石にすごかった。途中詰めたり疑問を並べるところがとても好き、考え方というかその感じ、感想がうまく言えないもどかしさ。すごいと言ってしまう。圧倒的に上手いというのか、わたしは好きなのだと思う。あまりに言葉がするりと入ってくるものだから内容も相まって柔らかに締め付けられる苦しさは合って一気には読めなかったけれど読んで良かった。
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面白かった。ただ、一部と、二部以降で温度差があり過ぎて、切り離した方が良かったのでは。 むしろ、乳と卵とはまた違う作品でも良かったかもしれない。
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