夏物語 の商品レビュー
重いテーマを軽快に仕上げた長編、終盤までテンポよく読めたが上っ面を撫でただけの軽薄さに最後は苦痛すら感じる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
子供ってなんだろう。 自分の味方?自分の分身? そうじゃない。自分の遺伝子を持っているけれど、それは別の個体。でも会えるかどうかそれは、自分で自分の行動で決められる。 何も考えなしに会える人。そうでなく考えに考えて会える人。いろいろいる。 考えて、会いたくて、それでも事務的にじゃなくて遺伝子を残す上で理想的な残し方ができた人なんだと思う。夏子は。子供の半分の遺伝子は同意の上で納得した人のものだから。例え一人で育てるにしても。 自分を肯定してくれた人の遺伝子を半分持つから。
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女性にとって自分が産んだ子供の半分は間違いなく自分のものだが、男性にとっては子供が本当に自分の子かどうかはわからない。 突き詰めると女性にとって子供の父親は代わりの利く存在であり、男性にとっては子供が代わりの利く存在ということだろうか。 実感のないものに意味を持たせようとして、...
女性にとって自分が産んだ子供の半分は間違いなく自分のものだが、男性にとっては子供が本当に自分の子かどうかはわからない。 突き詰めると女性にとって子供の父親は代わりの利く存在であり、男性にとっては子供が代わりの利く存在ということだろうか。 実感のないものに意味を持たせようとして、男性は観念的なものにすがろうとするが、女性には目の前の現実にこそ意味があるのだろう。 前半、緑子のノートに綴られる初潮前の子供としての葛藤や不安と、巻子の身体についての様々なエピソードは「卵」という象徴で溶け合い、ひとつになる。 後半、夏子の彷徨は子供を持つという一見ありふれた(そして男性にとってはどこまでいっても他人事の)テーマから、絆とは、命とは、存在とは何かを普遍的な問いとして語りかけてくる。 紺野りえが語る、前時代的な家族生活の中で、個としての自分を見失ってしまったかのような母親に向けた失望。 遊佐リカが語る、女性として命を育てることの幸福、使命感、そして存在意義を失くした男性からの独立。 遊佐リカに対して仙川涼子が語る「つまらないこと」と「本質的なこと」(夏子の前担当の口癖も「本物」だった)。 そして、善百合子が語る命そのものへの悲哀。 男性が書くと(そもそも書けないと思うが)抽象的で重くなりそうなテーマが、(おそらく意図的な)ひらがなの多用、大阪弁、風景や容貌の繊細な描写、可能な限りの言葉を用いた感情の表現によって、やわらかく、哀しく、暖かく伝わってくる。 登場する子供がすべて「女の子」なのは何かのメッセージだろうか。確かに「男の子」になった途端、神秘性がなくなり喧しい「ガキ」をイメージしてしまうが。 表紙の絵は少女だというが、いろいろなものに見える。不思議だ。 遊佐リカの「男であるだけでゲタをはかせてもらっているくせに偉そうな男が嫌い」は耳が痛かったが、「『僕は女性の権利に理解がある』と口だけでポーズをつける男がもっと嫌い」には笑った。 フェミに同調するリベラルサヨク男の下卑た下心など見透かされているのだ。 男と女は別の生き物なのだ。敵対する必要もないが、理解できる(と思っている)領域などごくわずかしかない。
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2022年1月27日読了。東京で暮らす売れない小説家・夏子が回想する母と姉・巻子と過ごした日々と、彼女が抱える「子ども」への思いと様々な生活の悩み。ずっと積ん読になっていた本を読み終わった、登場人物の置かれた状況の重さ・真摯な悩みの深さに圧倒され読み終わるのに体力が必要だったが、...
2022年1月27日読了。東京で暮らす売れない小説家・夏子が回想する母と姉・巻子と過ごした日々と、彼女が抱える「子ども」への思いと様々な生活の悩み。ずっと積ん読になっていた本を読み終わった、登場人物の置かれた状況の重さ・真摯な悩みの深さに圧倒され読み終わるのに体力が必要だったが、文章自体は端正で読みやすく、なかなかに心に引っかかる小説だった。幼少の夏子ら家族が抱えていた苦しみは、お金がもっとあればなんとかなったのにな…と思わんでもなかったが、その後の彼女と周囲の人々の悩み・絶望はそら金があっても解決しない・むしろ金も時間もないほうが考えなくてすむ苦しみなのかもしれないな…とも思った。自分の抱える苦しみは他人には結局他人の物語の文脈でしか理解されない・自分と同じように問題を感じてもらうことはできないのだが、それでも、他者とのコミュニケーションや生まれてくる赤子との関わりには『賭け』にすぎないとしても、そこには希望がある、ということなのかな。一生懸命生きるしかないわな。
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小説というよりは、精子提供についての問題提起本。 姉妹揃ってあまりに奇抜な発想で女性の体について抱え込んでいて、まったく感情移入できなかった。 子供がほしいと思ったら、普通は「相手を見つけなきゃ!」とか、日本なら「結婚しなきゃ!」とかが2016年頃はスタンダードな女性の発想だと思...
小説というよりは、精子提供についての問題提起本。 姉妹揃ってあまりに奇抜な発想で女性の体について抱え込んでいて、まったく感情移入できなかった。 子供がほしいと思ったら、普通は「相手を見つけなきゃ!」とか、日本なら「結婚しなきゃ!」とかが2016年頃はスタンダードな女性の発想だと思う。精子バンク!!と躍起になる前に、愛とかセックスと向き合う必要があったのでは。 進みも悪いし不要な記述、ときおり妄想や空想が入り交じって読みにくいし気持ち悪い男出てくるし無駄に長いし(第一部いらんかったんちゃうの。第二部だけ読めばよかった)なぜこの本の評価が高いのか分からなかった、、 印象に残った台詞: 「私の母親って『まんこつき労働力』だったんだよ」「すごいワードきたね」わたしは言った。 自分の声がかすかに震えているのがわかった。 「忘れるよりも、間違うことを選ぼうと思います」
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この作品は特に女性が読むといいかもしれない。 子どもを産みたい出会いたいという女性の葛藤が描かれている。ある登場人物によってこの作品が深く追求されたと思う。 私は読み終わって本当に子どもをこの世に産んでいいのだろうか、と考えさせられた。反出生主義の人たちの気持ちはよくわかる。だっ...
この作品は特に女性が読むといいかもしれない。 子どもを産みたい出会いたいという女性の葛藤が描かれている。ある登場人物によってこの作品が深く追求されたと思う。 私は読み終わって本当に子どもをこの世に産んでいいのだろうか、と考えさせられた。反出生主義の人たちの気持ちはよくわかる。だって私も精神障害者で世知辛い気持ちをしているし、じゃあもしも子どもが精神病になったらと、遺伝性のあるものだからこそ子どもを産むのは身勝手で自己中心的なのかもしれない。 登場人物の言葉にはリアリティがあり、痛いし、共感する。 これは次世代に読み継がれる物語だと思った。
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川上未映子さんはなかなか一般ウケしないのではないかと思っていたが これは共感できる人多いのではないか。 読みながら思ったことは、さまざまで、 男性である私にはなかなか理解が難しいのではないか、と思い いや、今どき、そんな気持ちが既に時代錯誤なのでは?と思い 主人公以外の登場人物は...
川上未映子さんはなかなか一般ウケしないのではないかと思っていたが これは共感できる人多いのではないか。 読みながら思ったことは、さまざまで、 男性である私にはなかなか理解が難しいのではないか、と思い いや、今どき、そんな気持ちが既に時代錯誤なのでは?と思い 主人公以外の登場人物はよく喋り、主人公はほとんど喋らない みんな言っていることは極端で、極端の中で、静かに自分の方向を見つけていく主人公 なんてことを思った。 答えなんて無いな。 関西人やのにオチ無いな。
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「夏物語」、読了。予備知識なしで読み始めたら 特に後半、自分が話してるような話題が自分の地元で繰り広げられれてて 妙に重なりまくりクラクラした。もはや恐怖。本当に教育の一環として高校生に読んでほしい。国語の課題図書。保健体育の教科書よかよっぽどリアルな事実が載ってる。
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乳と卵からのその後の物語。最近よく耳にする親ガチャと繋がる。子を産むということについて、何が正しくて何が正しくないのか。様々な意見が登場するが、読んでいて私自身の気持ちも大きく揺れる。
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結果をいえば夏子は希望のとおり自分の子どもに逢うことができてセックスせずに妊娠することができて、しかもその精子は何処の馬の骨とも知らんやつじゃなく逢沢さんという愛情の対象によって得たというなんか何もかも都合いいなって感じなんだけど、この結末を都合のいいものだとなんでわたしは感じるのだろう。 前半は夏子の姉・巻子の豊胸手術にともなう巻子緑子の母子関係の破綻と修復の話で、後半は夏子のAIDにまつわる話。未映子さんの性の話は乳と卵読んでちょっと女くさくてか苦手だなと思っていて前半のはおんなじ理由でちょっと苦手だったけど(生卵のとこなんか嫌だった)後半は人間みんなに関係ある話だと感じたし周りが魅力的でよかった。紺野さんのすずらんの鋏のところ泣いた。善さんの「わたしは生まれてきたことをよかったと思ったらもう一日も生きていられない」みたいなとこも泣いたし逢沢さんの「僕の子どもを産んでくれませんか」も泣いた。「僕の子ども産んで」なんてキモキモな台詞で泣くの、後にも先にもこれだけかもしれない。 仙川さんは、わたし夏子のこと恋愛で好きだったんじゃないかなと思うんだけどどうなんだろう。
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