図書室 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
読んでいて、ファンシーショップに行きたくなった。 本好きボーイが太陽爆発を語り死の予感をさせてくるのもなんだか覚えある。 スーパーマリオより先に 謎ルールの遊びで「イッキニキ」という命があって負けるたびに死んでた。 子どもなのに日々死にまみれていた。 命の復活も簡単だった。 大阪の土地て、どんないい加減なところも受け入れる器がある。 えらいとかえらくないとかでなく、みな横並びで、高級とかでなく、安いほうがありがたられる世界。 あの頃の自分を懐かしく思い出すと共に、 ハラワタのような苦みのある読後感。 でもなんだか、読み返したくなる。 岸政彦は優しい。
Posted by
母子家庭で母はいつもカレーやおでんを作り置きしてくれて、それを食べていた小学生の頃の記憶。 家に出入りしていたたくさんの猫たちと一緒に寝ていたこと。 仕事で疲れている母を気遣って行き始めた図書館で出会った男の子。 男の子とたくさんの空想の世界の話をして、真剣に世界が滅亡したと...
母子家庭で母はいつもカレーやおでんを作り置きしてくれて、それを食べていた小学生の頃の記憶。 家に出入りしていたたくさんの猫たちと一緒に寝ていたこと。 仕事で疲れている母を気遣って行き始めた図書館で出会った男の子。 男の子とたくさんの空想の世界の話をして、真剣に世界が滅亡したときのことを考えて話し合っていたこと。 大晦日に男の子と缶詰を買い込んで、河川敷の小屋で過ごした記憶。 大人になって、一緒に過ごした人たちとも別れ、一人暮らしで猫を飼いたいという気持ち。 思い出が、その人を生かしているんだなあ。 大好きだった母、大好きだった猫たち、男の子。 最後、小屋の中にいるところを図書館でいつも寝ているおじいちゃんたちに発見されるのほっこり。優しい話。 給水塔はエッセイかな? 著者が大阪で過ごした日々のこと。 大阪という町。ドカタの仕事をしていたころ。 おはぎときなこの猫たち。空き巣のこと。 猫の名前可愛いな。
Posted by
「給水塔」がとても良かった。世間にはいろいろな人がいる。しかし、表現は辛口だけど、大阪や、そこに住んでいる人間を肯定的に捉えているように思う。よしもとばななさんのエッセイの人間讃歌を辛口にしたような感じ。 「大学の四年間はいろいろなことをした。膨大な量の音楽を聴き、本を読み、酒...
「給水塔」がとても良かった。世間にはいろいろな人がいる。しかし、表現は辛口だけど、大阪や、そこに住んでいる人間を肯定的に捉えているように思う。よしもとばななさんのエッセイの人間讃歌を辛口にしたような感じ。 「大学の四年間はいろいろなことをした。膨大な量の音楽を聴き、本を読み、酒を飲み、ゲロを吐き、たくさんの女の子と付き合い、いろんなバカなことをしたが、その四年間のなかでもっとも良い思い出、美しい記憶になっているのは、わずか三十分の散歩である。」
Posted by
図書の後半のくだりは、涙が目に溜まりながら読み終えました。 この方の会話の間?コミュニケーションの空気感?がすごく伝わってきていて。どの作品も関西出身の自分には合っているのか、毎回、入り込んでしまいます。
Posted by
岸政彦先生の小説をまた読んだ。岸先生、生活史を研究しているだけあって綴られる話もただひたすらにそこに生きる人たちが日々の生活を営んでいて、そのなかで出会う人や些細な出来事を書いてくれている そういう話を読んでいると特に何のおもしろみもないような自分の1日や1週間、一ヶ月がこの本に...
岸政彦先生の小説をまた読んだ。岸先生、生活史を研究しているだけあって綴られる話もただひたすらにそこに生きる人たちが日々の生活を営んでいて、そのなかで出会う人や些細な出来事を書いてくれている そういう話を読んでいると特に何のおもしろみもないような自分の1日や1週間、一ヶ月がこの本に綴られている内容のように苛烈ではなないけれどおもしろいことなのかもしれないと思わせてくれる 自分がただ営む生活も小説のように大切に読まれるような、そういうものだと想ってもいいのだ。なんとか生きている自分のことをもえらいよ、よくやってるよと言いたくなってくるのだ また「給水塔」という書下ろしエッセイも入っているのだけど、書いたタイミングのためにすでに亡くなった岸先生の愛猫のことが書いてあり、先に「にがにが日記」にてその愛猫への愛情を知っていたからこそ余計に胸にきた…
Posted by
岸政彦の文章には、いつも不思議な魅力を感じる。そこには、何か結論めいたものや、明日から役に立つ学びといったものがある訳ではない。もとい、ないと断言するのは語弊があるし、実際に学びもあるのだが、決してそれは合目的的なものなどではなく、そこに何かがただ〈ある〉という、普段は意識するこ...
岸政彦の文章には、いつも不思議な魅力を感じる。そこには、何か結論めいたものや、明日から役に立つ学びといったものがある訳ではない。もとい、ないと断言するのは語弊があるし、実際に学びもあるのだが、決してそれは合目的的なものなどではなく、そこに何かがただ〈ある〉という、普段は意識することのない存在そのものに気づかせてくれる。 収録されている中編の『図書室』は、大阪で暮らす一人の中年女性が、小学生の頃をふと思い出す話。生活のなかには、辛いことや幸せな瞬間も沢山あるし、大部分は何でもない日常に過ぎない。そんな何気ない一瞬一瞬と邂逅が、市井の人々の暮らしの中に、それぞれ違った形状で織りなされていく──。それが人生というものなのだろう。慌しく日々を過ごしていると、そんな当たり前のことをつい忘れてしまいがちだが、読み終わって本を閉じると再び、若干のノスタルジックな成分とともに、何でもない日常の大切さがじんわり滲み出てくるようだ。 併録されている『給水塔』は、人に人生があるように、街にも人生があるということを感じさせてくれる素敵な自伝的エッセイだった。様々な偶然が積み重なって、たまたま住み着いた街。そこに〈ある〉、人々の暮らし。お気に入りの場所。たまたま行った場所。思い出。記憶。月日を経て、変化していく街並み──。たとえ、むかし住んでいた街に、いまは新しいマンションや家々が立ち並んで周りの様子が一変していたとしても、その場所に私たちの暮らしがあったことは確かだし、その場所はまた別の人々の暮らしとともに、新たな当たり前の風景として「街の人生」も織りなされていくのだろう。
Posted by
岸政彦「図書室」https://www.shinchosha.co.jp/book/350722/ 岸政彦の著作を泣かずに読めたことがない 内容がとくに抒情的なわけでも感傷的なわけでもないし文章が詩的なわけでもないのに、読むといつも胸が詰まって涙が出る どちらかというとたと...
岸政彦「図書室」https://www.shinchosha.co.jp/book/350722/ 岸政彦の著作を泣かずに読めたことがない 内容がとくに抒情的なわけでも感傷的なわけでもないし文章が詩的なわけでもないのに、読むといつも胸が詰まって涙が出る どちらかというとたとえばこの表紙の写真そのものみたいな内容なんだけど 社会学者 岸政彦はわたしのアイドル、一生すきです
Posted by
誰にでもありそうな思い出の断片を淡々と綴ったストーリーが、どうしてこんなに惹きつけられるのだろうか。 この人の作品を読むとつくづく思う。
Posted by
二つの作品が収録されてます。大きな事件が起きるというより、訥々と、何があったか、どんな場所で、どんな人がいたかとかが語られていきます。力みのない書き振りのためか、水が流れるとか風が吹くみたいな自然な、独特の落ちつく感じがありました。 日々の生活の中での、何気ない、でも大事な思い...
二つの作品が収録されてます。大きな事件が起きるというより、訥々と、何があったか、どんな場所で、どんな人がいたかとかが語られていきます。力みのない書き振りのためか、水が流れるとか風が吹くみたいな自然な、独特の落ちつく感じがありました。 日々の生活の中での、何気ない、でも大事な思い出とかワンシーン、ってあるよなあと思いました。
Posted by
中編が2つ.表題作は二人の男女の小学生が公民館の図書室で出会い、本からの知識に沿った人類滅亡への対応行動を淡々と描いている.大晦日に食料として缶詰を買い込んで河川敷の小屋で夜を過ごすものの発見され連れ戻される.小屋での話に図書室を作ることが出てくるが、意図のつかめないままだった....
中編が2つ.表題作は二人の男女の小学生が公民館の図書室で出会い、本からの知識に沿った人類滅亡への対応行動を淡々と描いている.大晦日に食料として缶詰を買い込んで河川敷の小屋で夜を過ごすものの発見され連れ戻される.小屋での話に図書室を作ることが出てくるが、意図のつかめないままだった.「給水塔」は大阪に惚れた男の話で著者の回想みたいな感じだ.ウッドベースが出てきて驚いた.私も持っているからだ.バブル時代の浮かれた話やバイトで飯場にいたことや子猫の話などエピソードが次々に現れて楽しめた.昔ピカピカだった町が寂れてしまう現実を的確に描写している点が良かった.
Posted by