図書室 の商品レビュー
岸さんの本を読むといつも何かを思い出す。 遊びに行くのは好きだけど住みたいとは思えなかった大阪。 途中まで読んで積読にしてて内容うろ覚えだったので最初から読み直しました。
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1人暮らしの50歳の女性が小学校の頃通った公民館の図書室のことを追憶する物語。 小学生の頃、秘密基地を作って遊んだことを思い出した。 印象に残った文章 ⒈ 私たちはもう10歳かそこらで、男というものに絶望していたような気がする。 ⒉ 図書室に行くと、彼はいつものようにベンチの上に...
1人暮らしの50歳の女性が小学校の頃通った公民館の図書室のことを追憶する物語。 小学生の頃、秘密基地を作って遊んだことを思い出した。 印象に残った文章 ⒈ 私たちはもう10歳かそこらで、男というものに絶望していたような気がする。 ⒉ 図書室に行くと、彼はいつものようにベンチの上に本を積み上げて、本のなかに頭から潜水するみたいにして読みふけっていた。 ⒊ 人類が滅亡したあとの世界を考えるということは、テレビ映画の話題から始まって、なんとなく私たちの「テーマ」みたいになっていた この本には、自伝エッセイ「給水塔」も収録されている。 私も学生時代を大阪で過ごしたので、地名など懐かしく読んだ。 私的には、「給水塔」のほうが面白かった。 「給水塔」の印象に残った文章 ⒈ 言わないと誰も助けてくれないし、言えば言ったでなんとかなるのが大阪 ⒉ 誰でもない、何も持ってない、何もできない、ただ時間だけがある感覚 ⒊ 偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る
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大阪に短い間ですが住んでいたので、なんとなく懐かしく、でも新しく感じました。 ひとりで生きるということは、ものすごく寂しい訳じゃない。空気感がすごくわかる。言葉にしにくい感覚が描かれている気がします。
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世界の終わりを過ごす少女と少年を描いた表題作「図書室」。「給水塔」は著者の大阪を語るエッセイ。両方ともねこねこしていて、すごく好き。
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中編1編、エッセー1編 小説の方は公民館の図書室で出会った男の子との思い出を中心に、エッセーは本人の自伝的なあれこれだが、どちらも主人公は大阪、淀川、千里山、など登場する土地の纏う雰囲気、人情で、文章から大阪への「愛」が伝わってくる。本当に懐かしい。
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読み始めてから、何度も表紙を見返してしまった。 この作者は本当に男性なのか?!・・・と(失礼m(__)m) それほど、子どもの頃に確かに感じていた孤独や希望やさみしさが主人公の少女を介して 私の中に溢れて止まらなくなってしまったのだ。 小説の中にも出てくるけれど、 その年ごろの...
読み始めてから、何度も表紙を見返してしまった。 この作者は本当に男性なのか?!・・・と(失礼m(__)m) それほど、子どもの頃に確かに感じていた孤独や希望やさみしさが主人公の少女を介して 私の中に溢れて止まらなくなってしまったのだ。 小説の中にも出てくるけれど、 その年ごろの男の子は『アホウ』だからそんな気持ちは理解できないだろうと思っていたのに。 物語の世界に心地よく浸っていたら、 後半は著者のエッセイになっていてちょっとびっくり。 でも、この物語の生まれた背景や物語の舞台である大阪について深く理解できると思えばまたエッセイも興味深く 読むことができました。
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オーラルヒストリーの聞き取り調査等の方法論を得意とする社会学者であり、かつジャズベースのアマチュアミュージシャンであり、そして作家。3つの顔を持つ著者による表題作の中編小説と、自伝的エッセイをまとめた一冊。 岸政彦の小説やエッセイに流れる視点は常に一貫している。それは徹底的に我...
オーラルヒストリーの聞き取り調査等の方法論を得意とする社会学者であり、かつジャズベースのアマチュアミュージシャンであり、そして作家。3つの顔を持つ著者による表題作の中編小説と、自伝的エッセイをまとめた一冊。 岸政彦の小説やエッセイに流れる視点は常に一貫している。それは徹底的に我々の日常の意識を再現するという視点である。決してカッコつけたり、合理的に見せようという努力は意識的に排除される。我々は自身の姿を誰かに見せる際に、どうあがいても自身の姿をよく見せたいという欲望から離れられない。その一方で、自身の内面では非合理なものも含めて、生々しい思考が繰り広げられる。 著者の作品の登場人物は誰一人、変にカッコつけたり合理的に行動するわけではない。なぜそういう行動を取るのかよくわからないが、取ってしまう。そうした人間の限定合理性も含めて、人間の営為というものが美しいのだということを教えてくれる。それが著者の一連の作品の魅力である。
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大阪淀川を背景に、主人公の根底にある大きな寂寞を、静かに洗い出したような社会描写、心理描写はなんとも胸を強く掴まれる。
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小説もさることながら、高台の新興(だった)住宅地で育った者として、エッセイ「給水塔」がたまらない気持ちになった。 “ふだんどれだけ荒んだ、腐った、暗い穴の底のようなところで暮らしていても、偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る。私はそれが誰にでもあると...
小説もさることながら、高台の新興(だった)住宅地で育った者として、エッセイ「給水塔」がたまらない気持ちになった。 “ふだんどれだけ荒んだ、腐った、暗い穴の底のようなところで暮らしていても、偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る。私はそれが誰にでもあると信じている。” 淀川の小屋や万博公園、吹田の30分にあたる景色がわたしにもいくつか思い浮かぶ。あの静かで穏やかな、何も言わないひらけた視界こそが、自分へのまぎれもない肯定だったのだなと思う。
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大阪弁の小説が苦手だった。ワタシは生まれが東京なのでたぶん自分ではそこまで考えてなかったけれど基本的に思考は標準語で巡らせていて、今はもう大阪に住んでいる方が長いので違和感は感じなくなったけど、それでも苦手だった。小説を書くようになって、そうしたら会話はやっぱり大阪弁なのが普通で...
大阪弁の小説が苦手だった。ワタシは生まれが東京なのでたぶん自分ではそこまで考えてなかったけれど基本的に思考は標準語で巡らせていて、今はもう大阪に住んでいる方が長いので違和感は感じなくなったけど、それでも苦手だった。小説を書くようになって、そうしたら会話はやっぱり大阪弁なのが普通で、ワタシって関西人やねんなーとわかった気がしてた。この『図書室』も『給水塔』もワタシの知っている場所のことが書いてある。東京はほとんど分からなくなって知っているのは数ヶ所。それに比べてここに書かれている大阪は梅田、中津、天王寺、心斎橋、長堀橋、福島、天満、吹田市、千里ニュータウン、千里山、関大前、豊津等々、知ってる場所ばっかりだ。場所は知っている、でもたくさんの人が生活していて、美穂だってきっとどこかのURの、団地に住んでいるって息をしているみたいに信じられた。記憶のなかの出来事と、毎日過ぎていく時間にちょっとだけノスタルジアを感じた。ワタシも美穂のように生きていけたらいいな。
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