リーチ先生 の商品レビュー
リーチ先生と先生に集う若者たち。最初はそのわりかし単純な構成にワクワク感じられずに時代ものの純粋に見える雰囲気をゆっくり楽しんでいた。だから読むのにものすごく時間がかかった。 だけどふと、人と話した資本主義の話から、日本に憧れを抱く西洋人と西洋の美に執着する日本人の芸術議論が、資...
リーチ先生と先生に集う若者たち。最初はそのわりかし単純な構成にワクワク感じられずに時代ものの純粋に見える雰囲気をゆっくり楽しんでいた。だから読むのにものすごく時間がかかった。 だけどふと、人と話した資本主義の話から、日本に憧れを抱く西洋人と西洋の美に執着する日本人の芸術議論が、資本主義に向かって突き進んできた日本の姿に重なって、結局は無いものねだりやんなとリンクした瞬間、あ、おもしろい、と思った。 リーチ先生は実存する人で、高市も亀ちゃんもフィクション、というのは驚いた。原田マハの生み出すための下準備、研究力に感服。
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※このレビューにはネタバレを含みます
そういえば、セント・アイブスに“リーチ窯”が開かれて、今年2020年で丁度100年に当たる。 記念の年にこの作品に出会えて幸いだった。 1954年、大分県の小鹿田(おんた)焼の里を、バーナード・リーチが訪問する。 高名な芸術家の滞在に、村を挙げての大歓迎。 父の遺言で小鹿田の窯元に弟子入りしていた、沖高市(おき こういち)は、リーチのお世話係に任命される。 そこで彼は、流れの陶工だと思っていた父・沖亀之介(おき かめのすけ)が昔、リーチに師事していたことを知る。 時代は、リーチが高村光太郎の紹介で来日し、高村光雲を訪ねる場面、1909年に遡る。 ここからは、『東京編 リーチと白樺派の芸術家たち』と言おうか。 柳宗悦(やなぎ むねよし)、志賀直哉、武者小路実篤らという、後に大家となる芸術家たちとの出会い。 若き日の彼らが芸術への熱意で繋がり合い、おおいに青春を謳歌している様子が眩しい。 リーチは、そこで陶芸に出会う。 1920年、日本で我がものとした陶芸のノウハウをイギリスに持ち帰り、根付かせるという夢のためにリーチは帰国する。 日本からも後に人間国宝となる濱田庄司などが同行した、 『イギリス編 リーチ窯の誕生』という感じ? この、リーチの来日からイギリスでの窯の完成まで、助手としてリーチに師事し、家族のように寄り添いながらその仕事を見つめ、ともに歩んだのが、高市の父・沖亀之介だった。 この作品は、亀之介を通して、リーチの、物を作る人の大きな手、優しく見つめてくる鳶色の瞳、繰り返し語りかける「ものづくり」への情熱を感じられるようになっている。 「リーチ先生」というタイトルは、亀之介の敬愛の気持ち。 リーチとその周辺を描く物語であるが、評伝を読むだけでは得られない、“感動”というものを味わえるのは、この沖亀之介の存在のおかげなのだ。 読み進むにつれて必ず陶芸をやりたくなってくるであろう読者が、弟子としてリーチ先生とともに歩み、導かれる、そうやって入り込むことのできる入れ物が亀之介なのだと思う。 大成して世に名を残せる人は少ない。 しかし、誰しも毎日何かを作り出している。 それは誰かのためになっている。 そして何かを創ろうとしている。 好きなことがある、やりたいことがある…まだできていないけれど。 そんな人たちもみんな「名もなき花」なのだ。 その象徴が沖亀之介だろう。 シンシアの存在も良かった。 名前が月を現しているのも意味があるのだろう。
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とても面白かったのだけど、すこし不完全燃焼気味。 「リーチ先生」というタイトルと中身を照らし合わせても、バーナードリーチについてのことが書きたいのか、リーチ先生と呼ぶ亀ちゃんのことが書きたいのか、がハッキリしないと感じた。 お話の中身は、亀ちゃん目線でのリーチ先生と言うよりも、...
とても面白かったのだけど、すこし不完全燃焼気味。 「リーチ先生」というタイトルと中身を照らし合わせても、バーナードリーチについてのことが書きたいのか、リーチ先生と呼ぶ亀ちゃんのことが書きたいのか、がハッキリしないと感じた。 お話の中身は、亀ちゃん目線でのリーチ先生と言うよりも、亀ちゃんのリーチ先生に対する「思い」が中心ではある。 …とすると、やはり最後がすっ飛ばされている感が否めず、モヤモヤしてしまう。 どうせなら、リーチ先生と別れた後の亀ちゃんの心の中のリーチ先生までを含めて書いてもらえたら、もっと感動的なストーリーになったのではないかと思うし、何よりも私自身が「リーチ先生と別れた後の亀ちゃんになにがあったのか」を早く知りたくて最後まで読んできたのに!とガッカリしたからだ。 そこだけが残念だった。
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もちろん、嫌いではないんだけど、敢えて苦言を呈する立場から。まずその厚さ(ボリューム感)でちょっと萎える。このシーンは必要?とか、この心情描写は言語化するべき?とか、長くなった原因として気になった部分がちらほら。あと気になったのは、登場人物全てが良い人で、基本的に互助関係のみで成...
もちろん、嫌いではないんだけど、敢えて苦言を呈する立場から。まずその厚さ(ボリューム感)でちょっと萎える。このシーンは必要?とか、この心情描写は言語化するべき?とか、長くなった原因として気になった部分がちらほら。あと気になったのは、登場人物全てが良い人で、基本的に互助関係のみで成り立っている人間関係も、ちょっといかがなものか、と。せめて1人か2人、クセのある人が出てきた方が、物語がもっと締まる気がする。作者に関して前から感じていることだけど、実在人物が軸となる伝記的小説の場合に、敬意が勝ってしまうのか、上記の傾向が強くなる気がする。という訳で、個人的に原田マハ作品は、完全オリジナルないし、ちょっとした味付け程度に史実が使われている物語の方が、断然好き。
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この作品を読むまでパーナード・リーチのことは 全然知りませんでした。 架空の人物だと思い読み進めていったら、 高村幸太郎、武者小路実篤、志賀直哉など日本を誇る 名だたる文豪たちもが続々と登場していくので、 リーチ先に憧れていた亀之介のことも 実存した人だと思って読んでいた程でした...
この作品を読むまでパーナード・リーチのことは 全然知りませんでした。 架空の人物だと思い読み進めていったら、 高村幸太郎、武者小路実篤、志賀直哉など日本を誇る 名だたる文豪たちもが続々と登場していくので、 リーチ先に憧れていた亀之介のことも 実存した人だと思って読んでいた程でした。 亀之介のモデルに近い人物はいたようですが、 あくまでもフィクションということみたいです。 空想の人物と現存していた人物がこれ程違和感無く、 描かれていたということは取材力もさながらど思いますが、 小説ならではのスケール感の大きさがあるからだと思いました。 日本の陶芸に関しても殆ど知識が無く、 それと同時に日本の文学にも並行して物語が進んでいくので、 新たな発見と芸術に対しての熱意や育みがつぶさに 見られたのでとても勉強になり興味深かったです。 今のように外国人が頻繁に往来している時代ではなく、 むしろ外国人が名も知れない遠い田舎に訪れることが 珍しい時代にリーチ先生のような日本の事を少しでも 知ろうと思い、地元の人達と仲良く交合いながら 日本の事を知っていき、陶芸の道も究めていくなんて 当時の事を考えるととても苦労したのかと思われます。 けれどそこに偶然遭った亀之介と出会ったことで、 リーチ先生も刺激をされ、亀之介も芸術や陶芸とは程遠い 存在だったものが二人で互いに支え合ってここまで来たのは 本当に並々ならぬ努力の賜物かと思いました。 リーチ先生の芸術に対する考え方、 日本と西洋に対する物も考え方、味方などが偏ることなく 純粋で温かく携わっているところが好感出来ました。 そのせいか普通この類の作品になると貧乏話や苦労話などと ダークな部分が目立つかと思いますが、 勿論沢山の苦労話が登場しますが紆余曲折が激しくはなかったので、 淡々と物語が進んでいったのかと思いました。 リーチ先生が日本人のおおらかさ、 日本の芸術が有する調和のすばらしさを 尊重しながら、また母国に渡っても活躍されたこと。 そして亀之介がいつも師と仰いでいたリーチ先生の素晴らしい所を いつまも吸収として支えていたことは長所だとも思いましたが、 読み進めていくうちに、本当に彼は新の芸術家になりたいのだろうか? という思いを時々させられました。 亀之介自身もリーチ先生への想いと自分の夢との狭間で 悩んでいたこともありましたが、他の芸術家の人達と比べると 少し違っていたのでこれが少し本来の芸術家になる道の 遅れになってしまったのもしれないと思ってしまいました。 けれど亀之介がイギリスで経験したこと、 日本各地でも経験したことが、 息子の高市にまた繋がれて、リーチ先生とも長年の夢が叶って これで本当に心の底から良かったのだと思えました。 リーチ先生や亀之介が目指した陶芸の良さや 温かさがこの作品を通して伝わり、 とても心温まり優しい気持ちになれました。 これをきっかけ陶芸に興味が沸いたので、 何かの折に陶芸に触れてみたいと思いました。
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私みたいな不審人物にかかれば、通勤電車で面白そうな本を読んでいる人がアンテナで分かったりする。 私に特別なセンサーが仕込んであるわけではなく、読んでいるその人が本の中に入り込んでいるその夢中っぷりが素敵だからなのだから、その本の表紙ががっつりこちらに向いていればどうしても気になっ...
私みたいな不審人物にかかれば、通勤電車で面白そうな本を読んでいる人がアンテナで分かったりする。 私に特別なセンサーが仕込んであるわけではなく、読んでいるその人が本の中に入り込んでいるその夢中っぷりが素敵だからなのだから、その本の表紙ががっつりこちらに向いていればどうしても気になってしまうというもの…… パンケーキの人気店に一人で待ってる間に、私も夢中で読んでしまった。表紙をがっつり出しながら。 しかも、ずっと性に合うと思っていた原田マハさんの本だ。極めつきに大好きな読書会の主催者さんが原田さんのカフーと待ちながらを教えてくれたのもダメ押しになった。 そっちも絶対読むけど、まずはこちらから。 柳宗悦らが中心となって展開した民藝運動の中で陶芸の果たす役割は大きい。彼らに日本の陶芸の用と美に目を開かせ、運動を通して各地に脈々と受け継がれてきた無名の美を再発見させた立役者のひとりがイギリスからやってきたバーナードリーチだ。 彼と日本で出会い、美術史も変えてしまう化学反応をおこしたのは、教科書で名前を聞いたことがある当時の芸術の綺羅星だけではない。名もなき芸術家が自分だけの道、芸術を求める道に綾なしている。 かれらの芸術に対する情熱と、そんな人と人が響きあって物語が進んでいく。その音はとてもピュアでまっすぐで優しくて、たぶんこれが原田さんの描く世界なのだ。 後世にどんな名を残すかではなく、今を迷いながら暮らしていく人間同士として描いている。 うまくいかないことばかりの世界でも、名もなき花として終わることになっても、たしかに咲いていたことを覚えていてくれる友がいること、その花が次の花へと続いていくのだという祈りにも似た確信が込められているように、本に出てくるだれもが自分の道をなせると信じたくなる。 優しく爽やかな本。
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尊敬できる人のそばで、自分を磨いていくという青春小説の匂いがして、その点では朝井まかてさんの先生のお庭番と似たものを感じました。もちろん、まるで別の小説ですが。 白樺派など、同時代の芸術家・文化人・小説家さんたちが出てきて、そのかかわりや時代の雰囲気を味わいました。 太古から...
尊敬できる人のそばで、自分を磨いていくという青春小説の匂いがして、その点では朝井まかてさんの先生のお庭番と似たものを感じました。もちろん、まるで別の小説ですが。 白樺派など、同時代の芸術家・文化人・小説家さんたちが出てきて、そのかかわりや時代の雰囲気を味わいました。 太古から、人間は、それ自体が何かの役に立つというわけでなくても、焼き物に縄目の模様を付けたりしてたのですよね。ひと時、暮らしの中の美に思いをはせました。
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バーナード・リーチという実在の人物と創作の登場人物たちをこんなにもリアリティをもって描けるのはほんとうにすごい。 いつのまにか亀ちゃんの立場になってリーチ先生や柳さんのあたたかさに触れていた。 みんな、ただただ美しいものが好きで、ものをつくることが好きで。互いの、その純真さを信じ...
バーナード・リーチという実在の人物と創作の登場人物たちをこんなにもリアリティをもって描けるのはほんとうにすごい。 いつのまにか亀ちゃんの立場になってリーチ先生や柳さんのあたたかさに触れていた。 みんな、ただただ美しいものが好きで、ものをつくることが好きで。互いの、その純真さを信じているからこそ、通じあっているからこその信頼と尊敬がある。 楽園のカンバスや暗幕のゲルニカも大好きだが、あれらの鋭く切れのあるどこか冷徹な文章とはちがい、あたたかい気持ちで読める一冊でした。
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陶芸の知識がなくても芸術に没頭し 色々な苦労を重ねてるカメちゃん! リーチ先生との出会い!別れ! 素敵でした。映像化してほしい。
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原田マハ 「 リーチ先生 」 陶芸家バーナードリーチと弟子(亀乃介)の芸術活動を綴った小説 著者は 芸術と生活(社会)の接点を探すのがうまい。日常使いの雑器の芸術性を取り上げ、無名の陶工を主人公にして、芸術家としての個性より 窯や土との関係性(自然と人間の共生)から 芸術を...
原田マハ 「 リーチ先生 」 陶芸家バーナードリーチと弟子(亀乃介)の芸術活動を綴った小説 著者は 芸術と生活(社会)の接点を探すのがうまい。日常使いの雑器の芸術性を取り上げ、無名の陶工を主人公にして、芸術家としての個性より 窯や土との関係性(自然と人間の共生)から 芸術を伝えようとした? 亀乃介の生き方は 雑器の素朴さ、謙虚さとリンクしており、リーチや柳宗悦 より「名もなき花」 亀乃介の方が 輝いている。亀乃介は 「リーチ 日本絵日記」に出ていた 森亀之助がモデル? であれば フィクションでも会えて嬉しい。 濱田庄司 も魅力的。濱田庄司の作品や 大分県日田の おんた焼 (小鹿田焼)を見てみたい。 「新しい何かを創り出そうと思ったら、誰かがやってきたことを全部 越える気持ちが必要」
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