ストーカーとの七〇〇日戦争 の商品レビュー

内澤旬子(著者)

2019/12/12

作家が実体験を綴っているだけに、聞き語りのルポとはまた違った生々しさ、怖さがある。作者自身、作中でも数回触れているように、面白いと感じてもらいたいという面があったり、文章が丹精過ぎて、逆に怖さが伝わりにくかったりする面はあると思うけど、それにしても、主旨は思う存分に伝わってくる内容。法整備の不十分さ、病としてとらえた場合の、ストーカーに対する治療の余地が非常に限定されたものであること、などなど、当事者でなくても知っておくべきで、社会として取り組んでいくべきと思われる問題も数多い。それにしても、これで終戦という訳にもいかなそうだけど、そのあたりは大丈夫なんでしょうか。

2019/11/30

ストーカー被害に遭った女性の実体験談

被害者ばかりが損をする現行法制度
加害者を刑務所に入れただけでは、被害者に対する恨み辛みが増すだけ。ストーカーは精神疾患の一種であり、いわゆる依存症。刑務所に入れるだけではなく、治療が必要。

箇条書きで現行法制度の課題を挙げられても素人には実情を理解できない。本書はそこが良く理解出来る。

2019/11/14

女性である著者のストーカー被害体験記です。
恋愛って冷静じゃいられないのが普通だと思います。振った・振られたで相手に執着してしまうのもよくある話なんじゃないかな。でも、やっぱり度を越してストーカーになってしまうと、もうホラーでしかないと感じました。
加害者が生きているうちは、いつ、また攻撃（？）を始めるかもしれない。ずーっと１３日の金曜日が続く感じがします。
被害者である著者は、そんなもんじゃない怖さというか恐怖を毎日感じながら、それでも次なる被害者を出さないようにと（もちろん生業としてという理由もあるでしょうが）本を出す行動力には感服します。

2019/11/11

怖すぎて一気読み。警察も裁判所も弁護士もそれなりに真摯だが、結局は被害者が不利益を背負う。懲罰ではなく治療を課す難しさ。対応機関の未整備。日本の後進性。ホラーだこれ…

2019/11/10

ストーカーに治療が必要、という考え方は、言われてみれば当たり前のことなのだが、今までそういう視点を持てていなかったので参考になった。
他人事ではない、と思う。

2019/10/22

ネットで知り合った男に別れを切り出したら次々に異常な行動をされる。身の危険を感じた著者は警察に相談するが、そこで明かされたのは相手の男の不気味な正体だった……。その後、逮捕→示談→嫌がらせ→再逮捕→実刑判決と続く。著者の視点からしか書かれていないなどという的外れな批判はできない。恐怖の体験を赤裸々に綴った貴重なルポなのだ。ストーカーが治療可能な病気だとは知らなかったが、こうしたことは誰にでも起こりうる。被害者にも加害者にもならないよう気を付けたいと思う。

2019/10/21

元彼からのストーカー行為で理不尽に日常を奪われ、恐怖に怯える様子が生々しすぎる。警察・司法・医療機関と相談していく中で、ストーカー行為は病であり、単に罰を与えるのではなく、加害者の治療が被害者を守るという現実が明らかになるのが衝撃的だった。

2019/10/17

下世話で読みやすいがとても社会的意義のある本
依存があるなら治療が必要との観点は興味深い
これからの矯正がどう変わって行くのか
訴訟リスクを負っても出版した著者や出版社すごい

2019/10/12

　すごかった。
　著者がストーカーに遭い、この本を記すまでに一段落ついたところまでのノンフィクションなのだが、怖い。夏向けどころではなく怖い。
　身を守るためには、ストーカーを治療して己への執着を失ってもらうのが一番安全……というのが本当にすごい。ストーカーへの同情でもなんでもなく、被害者は平穏に生きたいだけなのだ。

2019/10/04

小豆島にヤギと暮らす筆者の体験談。地縁が無い田舎で一人暮らしをしていた彼女が元恋人による執拗なストーカー行為に対峙した記録。

動物の屠殺のルポの時にも感じたが、彼女は色々な物事を中立的に理解し、文章にする能力が優れている。今回の話は、彼女自身のおかれた状況を相手の元恋人が特定されないように配慮しながら記述。

単なる裁判記録だけでなく、ストーカー被害をめぐる法制度・裁判制度の問題点をあぶり出し、また犯罪被害者に対する救済が制度化されていないことについても紙面をとっている。

ストーカー行為を病気としてとらえて、加害者が「治療」をうけて、自身の内なるストーキング願望を沈静化しないことには、ストーカー被害者の生活の安寧化がもたらされることはない、ということを主張している。

冗長な部分はあるけれど、示唆に富む良い本。