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慈雨 の商品レビュー

3.7

323件のお客様レビュー

  1. 5つ

    62

  2. 4つ

    121

  3. 3つ

    112

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2019/06/07

警察ものと言っても、「捜査をして、犯人を捕まえる」だけではなく、人生を描いた、ずっしりと重みのある一作だった。 群馬県警を定年退職したばかりの元刑事が、妻と念願の四国八十八か所の遍路をしながら過去と向き合っていく姿が、現在進行形の幼女暴行殺人事件と絡めながら描かれる。 お遍路で偶...

警察ものと言っても、「捜査をして、犯人を捕まえる」だけではなく、人生を描いた、ずっしりと重みのある一作だった。 群馬県警を定年退職したばかりの元刑事が、妻と念願の四国八十八か所の遍路をしながら過去と向き合っていく姿が、現在進行形の幼女暴行殺人事件と絡めながら描かれる。 お遍路で偶々出会っただけの人達も含め、多くの登場人物たちの人生が、とにかくやりきれない。真面目に一生懸命に生きているだけなのに、苦難ばかりの人生を歩んできた人達。幼くして大変な恐怖の末に人生を奪われてしまった女の子たち、その遺族。そして、正義・倫理観と生活・家族の間で悩み苦しむ警察官たち。 「泣ける」という感想を書かれている方が多いようだが、私は全く泣けなかった。ただ、心にずしんと錘のように何かが残った。

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2019/06/07

柚月裕子の小説を初めて読みました。 定年退職した刑事が関わった16年前の少女誘拐強姦殺人事件の犯人冤罪疑惑に苦しみながら、四国お遍路の旅中に起こった極似の少女誘拐強姦殺人事件。引退した身でありながら元部下の刑事に電話で自分の推理を教授して犯人逮捕に協力するのだが、それは同時に16...

柚月裕子の小説を初めて読みました。 定年退職した刑事が関わった16年前の少女誘拐強姦殺人事件の犯人冤罪疑惑に苦しみながら、四国お遍路の旅中に起こった極似の少女誘拐強姦殺人事件。引退した身でありながら元部下の刑事に電話で自分の推理を教授して犯人逮捕に協力するのだが、それは同時に16年前の事件が冤罪であることを教唆することにもなる可能性があった。 主人公の定年退職した刑事神場智則60歳とお遍路に同行している妻香代子58歳の夫婦の絆に感動し、神場の指示を受ける元部下の刑事緒方圭祐32歳の捜査能力と正義感に感服する。 緒方は神場夫婦の娘の恋人でもあるため、神場の関わった事件が冤罪であることの可能性に苦渋しながらも腹をくくる。緒方の上司の県警の捜査1課長の鷲尾訓58歳は神場の2歳年下ではあるが神場の現役所轄時代の上司でもあり16年前の事件に神場と同じく冤罪疑惑に苦しんでいた。神場の推理に鷲尾も同調し、緒方に独自の捜査を命じる。3人が各々の責任と信念に基づき行動し、捜査陣を犯人逮捕に導く。 緊迫した捜査状況、進行状況に緊張し興奮している自分がいる。そして幼少時代の苦難を乗り越えて警察官になった神場の生い立ち、夫婦で地方の駐在勤務から所轄、県警と2人3脚で克服してきた夫婦の歴史、一人娘幸知の秘密、数々の物語が加わり感動の結末を迎える…。 柚月裕子の他の小説も読んで見たくなった。柚月裕子の小説、好きになりそうです。

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2019/06/04

読み終わってもすっきり爽快、と言う感じにはならない作品。人を殺すという事を誰がどう裁くのか、どう許すのかという事をぼんやり考えさせられました。 主人公は非常に正義感が強くて、こういうお巡りさんが居たらなぁという人物。でもあまり家庭的ではないのでよく奥さんがあれだけ慕ってるなぁと...

読み終わってもすっきり爽快、と言う感じにはならない作品。人を殺すという事を誰がどう裁くのか、どう許すのかという事をぼんやり考えさせられました。 主人公は非常に正義感が強くて、こういうお巡りさんが居たらなぁという人物。でもあまり家庭的ではないのでよく奥さんがあれだけ慕ってるなぁというのはちょっと謎。夫婦は難しい。 とは言え彼が全財産を被害者に渡して償うのはなんか違う気がする。個人の罪じゃないし、これは組織の罪だよねぇ?彼が情報を隠蔽したわけでも無いしなぁ~ というわけで、ん?と思う所はありましたが続きが気になってドーッと読み終えてしまいました。

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2019/06/02

珍しく母に進められて。罪に目をそらさず真実を求めた刑事たちの後悔と葛藤。事件の終幕には、それでもどこか清々しさはあったのではないだろうか。終わった後にジーンと余韻が残る。また事件だけでなく、お遍路さんの物語もサイドストーリーとして楽しめた。

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2019/06/01

警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真...

警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。 近年話題になったノンフィクションに重なるのは、おそらく意図的なのだろう。しみじみしながら読了、

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2019/05/27

退職した刑事とその妻による四国八十八ケ所巡り、即ち、お遍路さんの進行に連れて、その直前に発生した事件の捜査が進む。その事件は彼が関わった過去の事件の冤罪の疑いを呼び起す。これ以上はネタバレとなるので省くが、登場人物の心理描写が的確で、捜査進展のまだるっこさを補うに十分だ。お遍路さ...

退職した刑事とその妻による四国八十八ケ所巡り、即ち、お遍路さんの進行に連れて、その直前に発生した事件の捜査が進む。その事件は彼が関わった過去の事件の冤罪の疑いを呼び起す。これ以上はネタバレとなるので省くが、登場人物の心理描写が的確で、捜査進展のまだるっこさを補うに十分だ。お遍路さん経験者には途中描写により懐旧の念を呼び起こされるかも知れない。

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2019/05/24

10連休中札幌どこも品切れだった柚月裕子さん「慈雨」紀伊国屋書店で購入したのにその後放置なんとか読了。1990年栃木県警DNA鑑定で再審無実になった足利事件がモチーフ。退職刑事夫婦がお遍路に、地元群馬では16年前と似た幼女殺人事件が発生し同一犯か?一気に読めました。

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2019/05/18

この方の描かれる男たちが好きだ。なんせカッコいい! 仕事は非常に有能な反面、根っこの考え方が全く合理的でなく。 ともすると自らの拘りや美学によって生き方に不自由さを余儀なくされてしまう。 しかも自身はその不自由さを自覚しながらも更にそれを良しとする『潔さ』を持っている。 俗な言...

この方の描かれる男たちが好きだ。なんせカッコいい! 仕事は非常に有能な反面、根っこの考え方が全く合理的でなく。 ともすると自らの拘りや美学によって生き方に不自由さを余儀なくされてしまう。 しかも自身はその不自由さを自覚しながらも更にそれを良しとする『潔さ』を持っている。 俗な言い方だけど『昭和』なのだ! ただ、好々爺も結構だが、昨今かくしゃくとした大人など久しくお目にかかっていない。 カッコいい大人達は何処へ行った? 見本となる者がいなければ、後進達は何処へ向かえばいい? 新たな元号を迎えたこの折、よわいを重ねた方々にこそ読んで欲しい、読むべき本だと思った。 あなたのことですよ。

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2019/05/10

警察官を定年退職し妻とお遍路に出た神場。お遍路する理由とこれまでの警察官人生を振り返り、過去の事件とつながる事件が。警察小説でありながらひとりの生き方、後悔、取り返しのつかないものについて救いはあるのかという問いがある。お遍路の道を歩き、体は前へ前へと進むけれど心は過去へと戻る。...

警察官を定年退職し妻とお遍路に出た神場。お遍路する理由とこれまでの警察官人生を振り返り、過去の事件とつながる事件が。警察小説でありながらひとりの生き方、後悔、取り返しのつかないものについて救いはあるのかという問いがある。お遍路の道を歩き、体は前へ前へと進むけれど心は過去へと戻る。現在の事件に協力しつつ、どうしても消せない過去のこと、家族や同僚への想い。道筋が見えない捜査と全てを失っても解決したいという決意に揺さぶられる。終盤の展開からラストまでは神場や刑事たちと同様に興奮する。柚月さんをもっと読みたくなった。

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2019/05/03

「平成最後の」って皆うるさいねんと思いつつも念入りに選んで1冊読んだ後は、「令和最初の」ってまた皆うるさいねんと思いながら店頭でこれを手に取る。 実際に昭和と平成の世を騒がせた事件の話がちらりと出てきたり、DNA鑑定の不確かさを問うたり、『殺人犯はそこにいる』と併せて読みたい。...

「平成最後の」って皆うるさいねんと思いつつも念入りに選んで1冊読んだ後は、「令和最初の」ってまた皆うるさいねんと思いながら店頭でこれを手に取る。 実際に昭和と平成の世を騒がせた事件の話がちらりと出てきたり、DNA鑑定の不確かさを問うたり、『殺人犯はそこにいる』と併せて読みたい。 『孤狼の血』の男臭さに心が躍った者としては、妻や娘の描き方があまりに女性そのもので少々退屈にすら感じてしまいましたが、犯人が明らかになる終盤100頁は白熱。「清濁併せ呑む覚悟で刑事を続ける」という言葉に目が潤む。諦めなければ報われる。

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