ポイズンドーター・ホーリーマザー の商品レビュー
6つの短編からなる本作。 どの作品も自分に「刺さる要素」があり 読み進める度、ハッとさせられます。 本作は、 「女性Aから女性Bに向けて。」 「女性Bについて周囲の人間から見ると。」 という視点の内容が多く、一見すると 「女性向けなのかな?」と思いますが ご安心ください。男性...
6つの短編からなる本作。 どの作品も自分に「刺さる要素」があり 読み進める度、ハッとさせられます。 本作は、 「女性Aから女性Bに向けて。」 「女性Bについて周囲の人間から見ると。」 という視点の内容が多く、一見すると 「女性向けなのかな?」と思いますが ご安心ください。男性でもバッチリ刺さります。 男女ともに、どの短編も他人事ではなく 自分事として心にぶっ刺さることでしょう。 ぼく個人としては、特に3作目の「罪深き女」 最後の2つ「ポイズンドーター/ホーリーマザー」 がダントツで心が痛くなるくらい刺さりました。 3作目の「罪深き女」では、誰かの過剰なやさしさは、受け手によっては猛毒にも大きな傷にもなりえてしまうことを。 5、6作目の「ポイズンドーター/ホーリーマザー」 では、一限的な視点で物事を判断しきってしまうことの愚かさを知ることができました。 すこし前、知人とのLINEのやり取りのなかで 「良かれと思ってしてることが 相手にとっては違うこともあるけどねぇ」 「やってやってる感も違うけどね」 というやり取りがあって 「あー、自分ってこれやりがちだよな……」と 反省というか、改めて自分を振り返る きっかけになることがありました。 本作の「罪深き女」で、ある登場人物の女性は 【やさしさと気遣いの深い女性】として 描かれていますが、そのやさしさの対象となった 男性目線ではその女性は【気色の悪い女】 として描かれており、一方の視点だけでは 読み取れない事実や、受け手と送り手の 不一致性をことごとく突きつけられます。 まさにぼくの事例だな、と。過剰な優しさは あいてをイライラさせたり、逆に気を 使わせることもあるんですよね。 「ポイズンドーター/ホーリーマザー」は、いわゆる毒親とその娘のお話なんですが、実は周囲の人間から見るとその母親は毒親ではなく聖母であり、毒なのはむしろ娘の方なのでは……というお話。表題の通りですね。 1つの視点に頼ると見えてこないものがあることを痛感させられましたし、これは父親がいなくて、父親になることを恐れ続けている自分自身にも当てはことだなと。 受けていない愛。その愛を知らない自分は愛を子に与えられないのではないか。自分が良い父親になれるか自信が無い。だから父親になりたくない。父親になりたくないのは親父のせい。ぼくは被害者だ。 かつては真剣にそう思っていた時期がありましたし、もしかすると今でもその気持ち0かと言われればそうじゃないかもしれません。 だけど大人になっていくなかで、そもそも産んでもらえたこと自体、愛を貰えてるし、覚えてないだけで父親には色んなところに連れて行ってもらっていろんな経験をさせてもらっていることも聞くことができ、自分の視点や感情ひとつで、すべてひとくくりに判断してはいけないなと感じました。 学生時代の自分は毒親父と思っていても、記憶のない頃の幼いぼくは良い父親と思っていたかもしれない。自分だけでも多角的な見方はできます。過去の自分、今の自分だけでも、偏った考えからすこしは離れられる。これは大事な気づきだなと。 ちょっとこの話は、本作の毒親話からは離れるかもしれませんが、ぼく自身が本作を読んで、この感想を持った。これはこれでいいのです。読み取り方、感じ方、派生の仕方は人それぞれ、ですよね。 本を読むって、こんな感じで最近あった個人的なトピックと重なることもあってとても勉強になるけど、より心の擦り傷に塩を塗ることにもなるので、これまた毒にも薬にもなるよな〜( ̄▽ ̄;)とあらためて考えさせられました。 でもまあ、人生のあらゆる経験は「苦い毒」というものはあっても「身にならない」なんてことはなくて、なにごともこの先に繋がる!!ということだけは29年という短い人生でありながらも確信していることでもあります。 酸いも甘いもしっかり自分事として受け止める人生をこれからも積み上げていきたいなと、そして、アップデートし続ける自分でありたいなと、そう思えた1冊でした。 とてつもなく重い本だけど、ここ数年でも読んでよかったと心から思える本でしたよ!オススメです!
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母娘についてそれぞれの視点から物事が書かれていて、 こんなにすれ違ってしまうものかと心が苦しくなった。 「毒親」ってどこからどこまでなんだろう。私も母親になったら分かるのかな
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どのお話も感情の描写がとてもリアルで人間関係、とくに親子の難しさを痛感しました。 「優しい人」が1番好きでした。最後の文章がかなり刺さりました。
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読了。 ポイズンドーター・ホーリーマザー / 湊かなえ 湊かなえさんと『毒親』というテーマの親和性の高さ。短編集とは思えないくらい読み応えがあり、娘としての自分、母としての自分を省みながら一気に読んだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
やっぱり最後のポイズンドーター・ホーリーマザーの話が印象に残る。 私はまだ子供を産んでないから弓香も、弓香で辛かっただろうなって思う。「母の愛」っていう、大義名分で娘の彼氏を別れさせていいわけがないし、勝手に机を漁って「いやらしい」と言っていいわけじゃないし「教師になれ」って従わせていいわけないと思う。自分の娘だからって、全部制御していいロボットじゃないし、別々の人間だし。人権がある。感情もある。 十分毒親だと思う。 たしかに、テレビ番組の毒親の話で自分の母親の話をして言い訳がないとも思うけど、それでしか自分の気持ちを言う勇気がなかったんだなと思った。 これはもう母親の方のプライドがエベレスト級で、どうにも解決しようないから娘が死ぬか母親が死ぬかしないと決着?がつかないものだったと思う。
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湊かなえらしいグロ描写にはじめ面食らったが、3ヶ月に1度ほど、この短編集が読みたくてたまらなくなる日が来る。 表題作に関しては、毒親派になってしまう。こりゃ紛争が無くならないわけだ。
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当事者だからわかること、当事者だからこそ見えていないことがあるのだなあと思った。また、子供側が嫌だと捉えていることは、親や周りから見たら毒ではなくただの教育で、実は普通のことだったりするのかな。子供と親とでは目線も違うから、ラインを引くのが難しいな。私はまだ親元で生活してるし、親...
当事者だからわかること、当事者だからこそ見えていないことがあるのだなあと思った。また、子供側が嫌だと捉えていることは、親や周りから見たら毒ではなくただの教育で、実は普通のことだったりするのかな。子供と親とでは目線も違うから、ラインを引くのが難しいな。私はまだ親元で生活してるし、親とはずっと切っても切り離せない親子の関係であることを再認識した気分。そして、嫌な気持ち〜と思いながら読み進めてしまうのが湊作品。
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4.6 短編集。どの話もとても面白かった。一気読み。登場する全部の母親が嫌い。心底嫌い。そしえ表題作の「ポイズンドーター・ホーリーマザー」の二篇に対してとても悶々としてしまい、グレーな気持ちになったので星は5には届かなかった。最後の最後、嫌な気持ちレベルMAX。考えさせられるのは...
4.6 短編集。どの話もとても面白かった。一気読み。登場する全部の母親が嫌い。心底嫌い。そしえ表題作の「ポイズンドーター・ホーリーマザー」の二篇に対してとても悶々としてしまい、グレーな気持ちになったので星は5には届かなかった。最後の最後、嫌な気持ちレベルMAX。考えさせられるのはいいけどホーリーマザーが個人的に史上最強後味が悪い。イヤミスの中で本気で嫌な気持ちになったのは初めての経験だったかもしれない。 「マイディアレスト」 主人公に心底同情したし猫に救いを求める気持ちわかる。考察読んで仰天。そういうことだったのか…。角材で妹を蚤取りしたってことか。でも、ちょっと救われた気持ちがしてしまうのはなぜだろう。 「マイベストフレンド」 ちょっとしたどんでんがありつつ中々にいい話。 「罪深き女」 正幸くん視点を知るとおもしろっ! 「優しい人」 自分の子どもには、「自分にも周りにも優しくね」そう伝えたいと思った。周りに優しくと過剰に言う母親は娘には全く優しくなかった。自分の気持ちを無視して周りに優しくと教えることはとても深い存在否定だと思う。罪なことだと思う。 「ポイズンドーター」「ホーリーマザー」 自立してから自分の親のことを「毒親」と思うなら誰がどう言おうと毒親なのだと思う。母親から嫌なことを言われても、最低だなと思っても、母親のことが好きならそう呼ぼうと思わないはずだから。世で語られる毒親の特徴に自分の母親が当てはまると、うちも毒親だったのかな…という気持ちにはなる。でもその負の感情より、好きとか感謝してるとかそういう感情の方が大きければ「毒親」認定はしないのではないか。 娘が性格の悪い人だったとしても、「毒娘」と判断するかどうかは母親。周りが言うことじゃない。だからホーリーマザーの章はとても嫌な気持ちになった。「毒親」と言われた母親視点の話ならこうは思わなかったかもしれない。でもいかに母親の外面がよいか、謙虚な人か、娘のために頑張ってた人か第三者が言っても関係ないのではないかと思う。母と娘という関係はその二人の間にあるものだから。 弓香からしたら、母親から言われた言葉やされた行動、受けた束縛によって「毒親」と感じたのならそれが全て。愛情や感謝よりもその恨みの方が大きかったから「毒親」認定したのだと感じた。それは母親目線でも同じで、母親が「毒娘」認定したのであれば毒娘なのだと思う。 すごく色々考えた話だった。今の私は完全に娘視点。娘から母親に対する鬱陶しい気持ちというか重いという気持ちはとても理解できるものだった。
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親子の関係って難しい。 子どもを思っての親の言動も、受け取る側の子どもが‘毒親’としてしまえばそこに含まれる愛情は1ミリも伝わらないんだなと。
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2025.1.12 読了 湊かなえさんの作品は映像化されたものを拝見したことがあって怖いというか嫌な気持ちになるイメージが強くてずっと避けてきていました。 今回はたまたまYouTubeでオススメされているのを見て短編集だしと思いきって手に取ったのですが、嫌な気持ちというよりも自...
2025.1.12 読了 湊かなえさんの作品は映像化されたものを拝見したことがあって怖いというか嫌な気持ちになるイメージが強くてずっと避けてきていました。 今回はたまたまYouTubeでオススメされているのを見て短編集だしと思いきって手に取ったのですが、嫌な気持ちというよりも自分のズルさや後ろ暗いところを抉られつつでもみんなそうやって生きてるんだよと慰められてるようでもありました。 立場が違えば受け止め方も違うし正しさなんてホント一人ひとり微妙に違うのかもしれない。 感想としては「うわ~やられた~!湊かなえ作品ってこんなに面白いのか」が一番にくるかも。 ただあんまり弱ってる時には読めないかもですけど。
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