営繕かるかや怪異譚 の商品レビュー
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とあるお城がある街の旧市街。障りが起こる家がある。 それを解決するのは「営繕屋」と名乗る若者だが、依頼人からの視点で話が進む。 周りの人たちからの会話でその存在が浮かび上がる。 話によっては主人公が営繕屋と会話を交わしてもいない。 それが怪異を合わさって不思議な存在感を醸し出している。 今後営繕屋自身の視点になったり、彼を掘り下げたエピソードが出てくるのかもしれない。 またこの城下町という舞台がまた良い。 狭い路地に古い家というのは閉塞感もあり、視界の隅に暗がりがあるような雰囲気が漂う。 「営繕」とは建物の建築や修繕のことを言うらしい。 なので障りがないように元に戻したり改装などで「営繕」する。 怪異現象の根本的な解決はしない。 でも目に見えないだけで不思議なものはすぐ側にいるのだろう。 そう思うとこういった解決法はありなのかもしれない。 しかし一番背筋が寒くなったのは「雨の鈴」。 この家の問題としては災厄を回避できて良かったのかもしれないが、狭い城下町ならすぐに壁に突き当たり、新たに正面から迎える羽目になる家が出てくるだろう。 思わず自宅の玄関の位置を確認してしまった。 フィクションのはずなのにもしかしたら…と思ってしまう、このザワザワとした読後感を味わえるからクセになるのだ。
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Tぬのオススメ本。ちょっと怖いです~、と薦められたので、恐る恐る読み始めた。 確かに私が怖がるタイプのお話だけど、とんでもないことが起きる前に営繕やさんがなんとかしてくれるので、さほどではない感じ。 とはいえ、こんな深夜に最後の話を読み終えると、暗闇が怖くなりそう。 一晩明けて振り返ると、いじめられてた老人や、放置された子供など、古い家とは対照的に昨今の問題が取り上げられていて読みごたえもあったと思う。 ただ、直線にしか進めない喪服の女と解決策にはちょっと笑ってしまったかな。
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城下町の旧市街古家に住む女性に起こる不思議6編。奥庭、屋根裏、石畳の袋路地、井戸、ガレージそれぞれの怪しいものファンタジー。いることが前提として営繕してゆく主人公。苦手な分野で避けてましたが後味も悪くなく読みやすかったです。来月には待望の十二国記も
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長い間積ん読状態でしたが、ようやく本日読了しました。 正直なところかなり怖くて、短編が六つあるんですけどその一つ目でめちゃくちゃ足踏み状態で、なかなか読み進められませんでした。あと2ページくらい読んだら尾端さん出てきてくれたのに(笑)。 ひとつひとつのお話が理由のある怖さで、その怖さも想像することでより怖くなっていくタイプの怖さです。文字を読むことが好きな人間にとってはそこが楽しくもあり、より恐ろしくもあるわけですが。 書評を宮部みゆきさんが書かれています。その中の一文に、ああ、そうだ。と思いました。 『彼は怪異を排除しない。そもそも、怪異を必ず排除しなければならないものだと考えてはいない』 怖い怖いと思いながらも、お話のひとつひとつが優しく感じたのはこういうことだったんだ、と思いました。 なので、六つ目のお話で泣くことになるんですが。 さすがは小野不由美さん。淡々とした語り口でそれぞれのお話を案内して下さる手腕は安定していて、安心してこの世界に入っていけます。 一冊じゃ物足りないなあ~と思っていたら、二冊目が出てたんですね!それも今年の7月に!わーい! 早速明日にでも探しに行ってみようと思います。
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除霊だとか大きなことはせずに建物のちょっと修繕するだけで心霊現象を鎮めてしまう営繕かるかやの尾端さん。 どんな霊や現象が起こるのかのワクワクよりも、 どんな風に修繕してしまうのかの方が気になってしまった。
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「残穢」より少し軽めの怪異集。場所や家にある障りを、営繕屋の尾端さんが、抑えたり払うのではなく、お互いにうまく関わらずにスルーできるようにしてくれるという…尾端さん、素敵です。 小野さんのホラーは、これ以上読んだら絶対怖いって分かってて止められずに読んじゃうところが、すごいです...
「残穢」より少し軽めの怪異集。場所や家にある障りを、営繕屋の尾端さんが、抑えたり払うのではなく、お互いにうまく関わらずにスルーできるようにしてくれるという…尾端さん、素敵です。 小野さんのホラーは、これ以上読んだら絶対怖いって分かってて止められずに読んじゃうところが、すごいですよね。
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怖い。家の話だからこそ、不安が膨らむ。 でも、どの話も怪異を受け流す?解決に導かれるところまで描かれてるので、後味が悪くない。 読んでて怖いけど、安心感と救いがあって。夏の暑い電車の中で心地よい涼しさを感じられました。
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◆大工が直して鎮める怪異譚◆ 六つの怪異を描いた連作短編集。ものすごく怖いわけではないけれど、ひたひたと、しっとりと静かに怖い。 それぞれの家にまつわる怪異を、「営繕」という手法でおさめていく。祓ったり退治したりするのではなく、古い家についた疵を、窓を開けたり、塀を作ったり、ガレ...
◆大工が直して鎮める怪異譚◆ 六つの怪異を描いた連作短編集。ものすごく怖いわけではないけれど、ひたひたと、しっとりと静かに怖い。 それぞれの家にまつわる怪異を、「営繕」という手法でおさめていく。祓ったり退治したりするのではなく、古い家についた疵を、窓を開けたり、塀を作ったり、ガレージを改修したりして、障りがないように直す。怪異と折り合いをつけて、そこでの生活を続けていけるように。
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古くからある家、路地などに現れる何かを、消せずとも、かわせるようにする、営繕屋の仕事。 小野不由美さんは、土地、というより人の作った家や空間に、なんとも言えない不穏さを感じる質なのか、同じテーマの作品が多いように思う。特定の誰かへの恨みとか憎しみではなく、日常になんなく溶け込んで...
古くからある家、路地などに現れる何かを、消せずとも、かわせるようにする、営繕屋の仕事。 小野不由美さんは、土地、というより人の作った家や空間に、なんとも言えない不穏さを感じる質なのか、同じテーマの作品が多いように思う。特定の誰かへの恨みとか憎しみではなく、日常になんなく溶け込んでしまうようで、誰もが遭遇しうるのではないかという感じを抱く分、不気味さが増し、読んでいてゾクゾクする。本当に、そうやって共存している人たちもいるのかもしれないし、気づかないだけで、自分もそうなのかもしれない。
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めちゃくちゃ良かった!怪異は人だけじゃないけど、過去とつながること。小野不由美先生は人と土地を生きている風に書く。こういうのが好きだ。 特に好きだったのは「雨の鈴」「潮満ちの井戸」でも全部好きです。
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