人間に向いてない の商品レビュー
すごい本を読んでしまった。 晴子の一人息子 優一は、高校で躓き不登校になり 二十二になる今まで引きこもりの生活をしている。 ある日、昼食の呼びかけに応じない息子に異変を感じ、息子の部屋を開けると─視線の先にいたのは 変わり果てた姿の優一だった。 『異形性変異症候群』別名ミュー...
すごい本を読んでしまった。 晴子の一人息子 優一は、高校で躓き不登校になり 二十二になる今まで引きこもりの生活をしている。 ある日、昼食の呼びかけに応じない息子に異変を感じ、息子の部屋を開けると─視線の先にいたのは 変わり果てた姿の優一だった。 『異形性変異症候群』別名ミュータント・シンドローム。 人間がある日突然に異形の姿へと変貌してしまう恐ろしい病だ。患者は特定の年代に集中していて、若者の中でも専ら引きこもりやニートと呼ばれている層に多かった。 頭部には触覚が生え、頭部の側面には複眼がある。蟻のように頑強な顎、頭部から下は芋虫のようだ。百足のように無数に備わった脚。よく見ると脚は人間の指で 第2関節までしかない。優一は美晴を見上げながらしゃりしゃりと顎を動かしている。 親はどんな子供にも無償の愛を注げるのか。 異形の子を持った親は悩む。 なぜ?どうしてうちの子が? わたしの育て方はどこから間違っていたのか? 子供が虫とも動物とも植物ともいえない奇形な姿となるなんて非現実的なんだけど、この親たちの悩みは、わたしたち子育て中の親(経験した親)なら誰でも考えることではないかなぁと思った。 過保護すぎた?厳しすぎた?うちの子は「普通の子」と同じように出来ないの?「ちゃんとした大人」になれるの? 「普通」って「ちゃんとした」ってなんなんだ。 子育てに正解なんてないだろう。 なんて、子育てに一段落した今なら思えるけどね。 自分の子供が異形となった親たちが、外に相談出来ずにいるのは 子供の見た目がグロテスクなだけではないと思う。世間が『異形性変異症候群』=『社会不適合』という認識を持っているから。 子供が産まれた時から、母親は(父親もかな?)、「親としての資質」を見られているんじゃないかって不安があると思う。子供が何かした時に「どんな育て方しているの?」って言われないように。 子供の為にと思ってする行動や かける言葉は 本当に子供の為なのか、親のエゴや見栄じゃないか。 この本を読んでいる最中 ずっとずっと考えさせられた。 最後に異形となった子供たちの悲痛な叫びが 描かれているページを読んでいると 胸が締め付けられた。それこそ親のエゴに苦しめられていたり。子供たちの言っていること全てを肯定できるわけではない。繊細すぎて コミュニティをとるのな苦手で社会の中で生きるには息苦しかったのかなとも思う。親の心子知らずとか言うけど、私だって子供の頃があったはずで、親から言われて傷ついた言葉だってあったのに、どうして親になったら それを忘れちゃうんだろう。 『異形性変異症候群』と診断された時点で、「人間として」死亡の診断が下される。この世にはいないもの。人間の姿をしていない 自分の子供のようなもの。 子供たちはなぜ『異形』となってしまったのか。 悩みながら 親たちはどんな選択をするのか。 美晴と優一は─。 はぁ、子育てって難しい。 「必要な手助けだけして、ときには見守るだけのほうがいい」。美晴が母親からかけられた言葉。 その「見守る」が結構難しいんだよなぁ。 そしてこの本を通して思ったこと 「会話」って大事!! とはいえ、私の子どもたちは 本当に私が産んだ子どもなのか?と疑うほどいい子だ! 親バカ万歳( ᐛv)
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「異形成変異症候群」…ある日突然人間でなく異形の姿へと変貌してしまう病、原因や治療法の解明はいない…。十代から二十代の引きこもりである若者に発症することが多いことから、美晴も警戒していたがついにわが子、優一が発症し「虫」のような異形に変わり果ててしまう…。それでも受け入れようとす...
「異形成変異症候群」…ある日突然人間でなく異形の姿へと変貌してしまう病、原因や治療法の解明はいない…。十代から二十代の引きこもりである若者に発症することが多いことから、美晴も警戒していたがついにわが子、優一が発症し「虫」のような異形に変わり果ててしまう…。それでも受け入れようとする美晴と、受け入れられない父勲夫…、家族の在り方について読者に問いかけてくるようなストーリー。 人間が変わり果てた姿、虫や魚植物や犬のように異形するって…考えただけで恐ろしいです…。実際にはありえないことだけれど、でも家族って??親は子供のためを思ってあれこれ行動するけれど、子供にとってそれは本当にいいことなのか?押し付けになっていないか?それで子供が苦しんでいたとしたら…??あれこれ思いを巡らせることになりました。エンディングもまた意表をつくものでしたが、非日常でありながら親子の愛を沢山感じることができる作品だと感じました。
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生きづらさをわかりやすく表し、目を背けられないようにするこんなにも残酷な方法があるのかと驚いた。しかし、直視することを強いられたことで登場人物たちはそれぞれが良くも悪くも変化を迫られていく。読了後、生きづらいこの社会に改めて絶望すると共に、生きづらさをこのような方法で取り上げてく...
生きづらさをわかりやすく表し、目を背けられないようにするこんなにも残酷な方法があるのかと驚いた。しかし、直視することを強いられたことで登場人物たちはそれぞれが良くも悪くも変化を迫られていく。読了後、生きづらいこの社会に改めて絶望すると共に、生きづらさをこのような方法で取り上げてくれる作家がいることになんだか安心感を覚えた。
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メフィスト賞受賞作品 タイトルと表紙からイメージしていたホラー作品とは異なり 現代の親子関係に焦点を当てた感動作品でした。 ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」 発症するのは十代から二十代の若者、引き籠り、ニートなどの社会的に弱い立...
メフィスト賞受賞作品 タイトルと表紙からイメージしていたホラー作品とは異なり 現代の親子関係に焦点を当てた感動作品でした。 ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」 発症するのは十代から二十代の若者、引き籠り、ニートなどの社会的に弱い立場の人達です。 主人公、美晴の一人息子である22歳の優一がこの病気を発症し、虫となってしまう事から物語は展開して行きます。 フィクション中のフィクションでありながら、この親子の顛末が気になり一気読みでした。 親子と言えども、互いの心の奥までは解りえない。 完璧な母もいなければ、当然完璧な子供もいません。 「虫」になってしまった事で初めて解り合えた互いの想いに感動すら覚えてしまいます。 因果応報を感じるラストも非常に小気味良く、満足出来る作品です。
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ニートや引きこもりなどに限って罹るという「異形性変異症候群」。ある日突然、人がとても醜い姿に変わり果ててしまう奇病が各地で報告されていた。自分の息子・優一もいつかそうなってしまうのではないかと心配していた美晴だったが、その心配は現実となり、大きく分ければ蜘蛛のような、しかし生理...
ニートや引きこもりなどに限って罹るという「異形性変異症候群」。ある日突然、人がとても醜い姿に変わり果ててしまう奇病が各地で報告されていた。自分の息子・優一もいつかそうなってしまうのではないかと心配していた美晴だったが、その心配は現実となり、大きく分ければ蜘蛛のような、しかし生理的嫌悪が先立つ、醜い姿へと変貌してしまった。現時点でこれを治す方法も無く、法律上も死亡したとみなせるため、多くの当事者たちは人知れず始末されるか、どこかに捨てられる。優一の父であり美晴の夫である勲夫もまた、不気味な生き物と化した息子をもうそれとは思っていない態度をみせる。 自分の腹を痛めて産んだ子供が、急におぞましい姿に変わってしまったら。夫のように簡単に切り捨てることはやはりできないのではないだろうか。美晴のように、自分と同じ経験をした人と話したい、どうしたらいいのか相談したいというのは至極真っ当であると思うが、そこにつけこんでくるような、怪しげな団体があるであろうことも容易に想像がつく。ラストは希望の見える終わり方で良かった。
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「異形性変異症候群」…人間を異形の姿へと変貌させる病。 異形の姿になった子供を愛せるのか?すごい設定。中型犬並の大きさの虫かあ…。 最後、異形になった旦那を義母にも見せてもらいたいものです。散々優一を化け物扱いしてたけどどうするんでしょう?
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
怖くておもしろかったです。 引きこもりやニートの若者が異形の生物に変化するという奇病が流行する世界。引きこもりの息子・優一がついに変化してしまった。しかも醜い虫に!社会的には死亡したことになり、父親は捨ててしまえという。母親の美晴はとてもそんなことはできず、家族の会に参加したりしながら、息子を受け入れていく。父親と母親の子供への対応の差がリアル。また、異形となった我が子を殺してしまう親がでることに頷いてしまう自分が怖かったです。 美晴は、自分の態度が息子を追い詰めていたのではと気づき、ありのままを受け入れる覚悟をする。ハッピーエンドで良かったんだけど、引きこもりの子供をもつ親には、やっぱり親の関わり方なんですよ、と責められてる気がして辛いかな、と思って★4つ。
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すごい…‼︎最近読んだ作品の中ではかなり上位に入るほど面白かったです。好き嫌いは分かれそうですが、、、(^^;; 読んでいて思ったのは、単純に「気持ち悪い…」ってこと。それは勿論、異形に対する感想でもあるし、登場する人々の生々しさに対する感想でもあります。窮地に立たされたときこそ...
すごい…‼︎最近読んだ作品の中ではかなり上位に入るほど面白かったです。好き嫌いは分かれそうですが、、、(^^;; 読んでいて思ったのは、単純に「気持ち悪い…」ってこと。それは勿論、異形に対する感想でもあるし、登場する人々の生々しさに対する感想でもあります。窮地に立たされたときこそ、人間の本質ってわかりますよね。怖いな〜
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突如として若年層ばかりが罹る病「異形性変異症候群」に自分の息子が罹ってしまった。 もはや人としての形は、成さないのである。 なんとも言えない不気味な虫になってしまった。 これに罹ってしまうと余命宣告のない致死の病と同等であると見なされ、死亡したこととなる。 死亡届を提出する義...
突如として若年層ばかりが罹る病「異形性変異症候群」に自分の息子が罹ってしまった。 もはや人としての形は、成さないのである。 なんとも言えない不気味な虫になってしまった。 これに罹ってしまうと余命宣告のない致死の病と同等であると見なされ、死亡したこととなる。 死亡届を提出する義務を課される。 夫は、山へでも捨ててくる勢いだが、どうしてもできないのはやはり我が子なのだろうか。 こうなった原因は、自分の育て方が間違っていたのだろうか…。 欲は言わない、ただ普通の子どもであって欲しかったと…。 だが、それは自分のエゴであり、押し付けであり、こうすべきだと話しを聞こうともせずに押しつけていただけではなかったかと…。 姿を変えてしまって喋ることもできないのに、いやそれだからこそ気づかせてくれた。 家族とは、親子とはどういう関係であるのが理想なのかを。 以下、一部を抜粋 〈子どもであった時分は親に対して思うところがあったはずなのに、親の立場へ変わった途端それがわからなくなる。 完全に視点が変わってしまっているくせ、子どもの気持ちが分かっていると思いこむ。 螺旋状の負の連鎖が続いていく。 それはどこかで断ち切らなければいけない。 己の過ちに気づけたなら、少なくともそこで足を止めることができたなら、違う結果を実現できるはすだ。〉 上記の〈〉の部分が心に残った。 親になってから思うこと。 自分も子どもだったのにそれを忘れたかのように子どもの気持ちも考えずに行動してたのではないか? 今更だが、悔いることばかりである。 そして、今もなお、教えられることが多くある。
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怖いもの見たさで読み始めたら、 結構グロい描写もあり、 同居人から「なんか険しい顔してるけど大丈夫?」 と言われながら読んだ一冊。 でも、家族の在り方がテーマで、 いろいろな人の葛藤が知れて、面白かった。 でも、子どもを産み落としたとして、 なにかあったときにそれを背負う怖さ...
怖いもの見たさで読み始めたら、 結構グロい描写もあり、 同居人から「なんか険しい顔してるけど大丈夫?」 と言われながら読んだ一冊。 でも、家族の在り方がテーマで、 いろいろな人の葛藤が知れて、面白かった。 でも、子どもを産み落としたとして、 なにかあったときにそれを背負う怖さ、を感じて、 まだ知る由もない自分の未来に重ねてみると。 改めてゾッとした。
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