陰謀の日本中世史 の商品レビュー
呉座勇一氏の本は初めて読んだ。日本史の中での様々な陰謀説を信頼のおける史料と背景を考えて正しいかを論証する本。最初に出てくる保元の乱、平治の乱などは難解だが後半に出てくる本能寺の変にまつわる陰謀論などは気楽に読めた。本能寺の変に陰謀論を唱えるのは素人が多いと書かれていたが、背景や...
呉座勇一氏の本は初めて読んだ。日本史の中での様々な陰謀説を信頼のおける史料と背景を考えて正しいかを論証する本。最初に出てくる保元の乱、平治の乱などは難解だが後半に出てくる本能寺の変にまつわる陰謀論などは気楽に読めた。本能寺の変に陰謀論を唱えるのは素人が多いと書かれていたが、背景や人間関係が比較的わかりやすいからだと思われる。南北朝とか応仁の乱とかは人物が入り乱れていてわかりにくいもんね。今まで読んだ歴史本の中にも陰謀論が結構混じっていたのかもしれないと思った。ネット上にフェイクニュースがあふれているのと同じように日本史の世界にも様々な珍説・奇説を述べる人がたくさんいるがそれらの論者は先行研究を全部無視し、自説だけを語りまくる特徴を持つ。日本史関係の本を読むときにも世間一般にある程度認められ、かつ在野でなくアカデミックな世界に身を置いた研究者であるかどうかよく調べてから選択した方が良いかもしれないと思った。詳細→ https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou34401.html
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歴史上の陰謀論がなぜ学会で論じられないのかといったそもそも論を皮切りに、陰謀論の様々な特徴を発見していき本丸の本能寺の変の陰謀論へと突き進んでいく 陰謀論の特徴についてはこのネット全盛期における陰謀論の氾濫に対する一種の防衛策になり得ると感じた
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日本史の中世時代といえば戦国時代の信長や秀吉などにスポットが当たりがちでその他はよく知らず、それ故にあまり興味も持てない私でしたが、一昨年の大河ドラマの“鎌倉殿や個人的な調べ物から「観応の擾乱」などに行き当たり、この時代の目まぐるしい展開に底知れぬ物を感じたのでした。 ですから、...
日本史の中世時代といえば戦国時代の信長や秀吉などにスポットが当たりがちでその他はよく知らず、それ故にあまり興味も持てない私でしたが、一昨年の大河ドラマの“鎌倉殿や個人的な調べ物から「観応の擾乱」などに行き当たり、この時代の目まぐるしい展開に底知れぬ物を感じたのでした。 ですから、王族に貴族と武士が入り乱れ覇者を争う時代の流れにおいて、「応仁の乱」を上梓した作者には陰謀というテーマは、無視できないテーマだったようです。 作者が言うように事件の裏に陰謀論が必ずと言っていいほど渦巻いています。(最近では大谷くんの元通訳の銀行詐欺問題でも!) かの有名な本能寺の変などでも陰謀論があり、それらに飛びつく輩も多いという状況の中、歴史学者はまともに取り上げず検証も当然なし。それ故にトンデモ説が大手を振ってまかり通っている現状に“釘を差したい”という歴史学者としての作者の矜持が見受けられます。 歴史小説や以前の歴史書から悪いイメージのある足利尊氏や日野富子などは歴史資料を読み解くと実際はどんな人物だったのか。様々な争乱はどんな背景、経緯があったのか、作者の丁寧な検証から答えが導かれます。 「結果から逆行して原因を引き出す」 「最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考えるのは陰謀論の特徴」… 各章で有名な陰謀場面を挙げ、太字で強調し陰謀論のテクニックを明かしていきます。 これを読むと、確かに私たちにはわかり易く面白い陰謀論を鵜呑みにしてしまう前に、待てよ!と胸に手を当てる賢さが求められます。
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保元平治の乱、源平合戦、鎌倉幕府の権力闘争、足利尊氏の幕府設立、応仁の乱、本能寺の変、関ヶ原合戦の7つについて、最新の歴史研究をもとに俗説を打破する一冊。 必ずしも陰謀論の法則性が導けているとは言えないが、安易にわかりやすい結論に飛びつくのを戒める意味はあるだろう。
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全ての歴史愛好家にお薦めしたい一冊。 タイトルからすると一見、日本中世が陰謀に満ち、それを紹介する一冊のように思えるが、逆に、著者は、日本中世史における数々の陰謀・トンデモ説を、歴史学の手法に則って分析し、痛快に切り捨てていく。 中世史だけでなく、検証もされない陰謀論が氾濫する現...
全ての歴史愛好家にお薦めしたい一冊。 タイトルからすると一見、日本中世が陰謀に満ち、それを紹介する一冊のように思えるが、逆に、著者は、日本中世史における数々の陰謀・トンデモ説を、歴史学の手法に則って分析し、痛快に切り捨てていく。 中世史だけでなく、検証もされない陰謀論が氾濫する現代に警鐘をならす一冊。 終章「陰謀論はなぜ人気があるのか?」では、「田母神論文」「藤原正彦」「渡辺昇一」も俎上にあがる。
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中性から江戸前まで、様々な論を紹介しつ歴史を概観してくれます。 初学者にとっても、大きなトピックに触れつつも 様々な考え(陰謀論もあるのだろうけど)に触れることができるし、 いわゆるスタンダードや通説というものも知ることが出来て、一挙両得の本でした。
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保元の乱から関ヶ原までの日本史における陰謀とされる事件についての様々な説を取り上げ自論を展開している。 かつて史実として学んだことが、今では偽説となっていたり、過去の史料の読み解き方で変わってくることがよくわかった。史料は書いた本人の目線で書かれているため、真実を語っているとは...
保元の乱から関ヶ原までの日本史における陰謀とされる事件についての様々な説を取り上げ自論を展開している。 かつて史実として学んだことが、今では偽説となっていたり、過去の史料の読み解き方で変わってくることがよくわかった。史料は書いた本人の目線で書かれているため、真実を語っているとは限らない。何を証拠として採用するかの難しさも感じた。 陰謀説の傾向として、 「事件によって最大の利益を得た者が真犯人である」(結果から逆行して原因を引き出す) 「加害側と被害者側との立場が実際には逆」だったりするという。 確かに、結果を既に知ってい後世の人間から見ると利益を得た者が全てを見通して行動していたかのように思ってしまう傾向にあり、たまたま偶然、当人にいい方に転んだ出来事も、きっと仕組まれていたに違いないと考えがちである。 歴史に詳しい者でなくても、その出来事についての通説を述べてから諸説を説明しているので、話の展開は分かるが、人間関係を思い返しながら読むので時間がかかった。 諸説を紹介し、その証拠とされる資料の信憑性や、陰謀説を唱える者の論理の飛躍を丁寧に突いており、歴史に詳しい人にとっては、痛快に感じるのではないかと感じた。
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安元三年(一一七七年)に鹿ケ谷の陰謀が起きた。後白河法皇を中心とする反平氏勢力が結束した謀議とされるが、平清盛が後白河院の近臣勢力を潰すための冤罪事件との見方がある。 「平氏一門に批判的な西光・成親を延暦寺問題で別件逮捕しておいて、陰謀の罪を着せ、死刑に処すことこそが清盛の狙い...
安元三年(一一七七年)に鹿ケ谷の陰謀が起きた。後白河法皇を中心とする反平氏勢力が結束した謀議とされるが、平清盛が後白河院の近臣勢力を潰すための冤罪事件との見方がある。 「平氏一門に批判的な西光・成親を延暦寺問題で別件逮捕しておいて、陰謀の罪を着せ、死刑に処すことこそが清盛の狙いだったのではないだろうか」(呉座勇一『陰謀の日本中世史』角川新書、2018年58頁) 「当初、西光は明雲を後白河に讒言したという理由で逮捕され、その後の拷問の中で「入道相国を危ぶむべき」計画を白状したという。別件逮捕でとりあえず身柄を拘束し、取り調べの過程で「謀議」の件が出てきたのだから、自白の内容自体が清盛によってでっちあげられた可能性がある」(中丸満『源平興亡三百年』ソフトバンク新書、2011年、140頁)。 鹿ケ谷の陰謀では藤原成親(ふじわらのなりちか)が逮捕され、備前国に流罪になる。配流先では食事を与えられず、殺害された。「死人に口なし」とばかりに病死として処理された。 成親は鳥羽院第一の寵臣の藤原家成の息子で、鳥羽院と後白河院の近臣になった。成親は久安二年(一一四六年)に讃岐守になる。家成と成親は親子で讃岐守になった。 成親は後白河院の近臣として活躍したため、崇徳院の怨霊の祟りと噂された。鹿ケ谷の陰謀が清盛によるでっち上げの冤罪ならば成親は冤罪で殺されたことになる。後白河院側には思いもよらぬ理不尽な話になり、当時の感覚では怨霊の祟りと考えたくなるだろう。 鹿ケ谷の陰謀は平家に対する反感を持っている人々が存在するという事実を公然に明らかにしたという効果が生じた。平家は逆に追い込まれていった。
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源平の時代や、鎌倉・室町時代は個人的には馴染みがなくてついていけなかった。 本能寺の変の各種陰謀論や、秀吉亡き後の徳川家康や西方の動向に関しては面白かった。 明智光秀の話に必ず出てくる、家康饗応時の失態で信長が激怒した話や、光秀が母親を人質に差し出して結局はりつけにされてしまっ...
源平の時代や、鎌倉・室町時代は個人的には馴染みがなくてついていけなかった。 本能寺の変の各種陰謀論や、秀吉亡き後の徳川家康や西方の動向に関しては面白かった。 明智光秀の話に必ず出てくる、家康饗応時の失態で信長が激怒した話や、光秀が母親を人質に差し出して結局はりつけにされてしまった話は、江戸時代の創作だそうだ。それに基づく本能寺の変の怨恨説を否定している。 関ヶ原関連で必ず出てくる小山評定で、福島正則が東軍への参戦を表明し、秀吉恩顧の武将がそれに倣った、というのも創作としている。家康が西方の蜂起をさそうために会津征伐を行おうとした、というのも否定している。 トンデモ陰謀論がはびこっているので、歴史研究者として警鐘を鳴らした、ということのようです。
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視点を変えれば事件の裏が見えるのかもしれません。 本能寺の変や坂本龍馬暗殺についてはもっと色々知りたいです。
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