陰謀の日本中世史 の商品レビュー
陰謀はある。 でもあれもこれも陰謀ではない。 という前提を持っているにも関わらず、特に日本の歴史上の陰謀論は楽しい。 幕末や本能寺、関ヶ原など、陰謀の存在を唱える人の分だけ、いろいろな説がある。 その中で、本書は「そこに陰謀はない。それよりも事実の方が面白い」と説く。 保元の乱...
陰謀はある。 でもあれもこれも陰謀ではない。 という前提を持っているにも関わらず、特に日本の歴史上の陰謀論は楽しい。 幕末や本能寺、関ヶ原など、陰謀の存在を唱える人の分だけ、いろいろな説がある。 その中で、本書は「そこに陰謀はない。それよりも事実の方が面白い」と説く。 保元の乱以降の有名なトピックを順に解き明かしつつ、本来であれば歴史学者が俎上にも上げない、世にあふれるいわゆる陰謀論を論破。 併せて陰謀論の法則として、 「特定の人物・団体があらかじめ仕組んだ筋書き通りに歴史が進行したと考える」(=因果関係の単純、明快すぎる説明) 「結果から逆算して原因を引き出す」 「論理の飛躍」(存在の立証できない裏を読んで想定で進める) 「検証責任を批判者側に求める」(悪魔の証明) といった項目を上げ警鐘を鳴らすと共に、学会の無関心が陰謀論を助長させると締める。 情報がどんどん入ってくる現代だからこそ、安易なもの受け入れず、あくまでそう言っている人もいるくらいの距離感を保ちつつそれらを楽しむくらいで良いんだろう。
Posted by
タイトルはおどろおどろしいが、要は日本中世史に蔓延るトンデモ話を1つ1つ丁寧に斬っていこうと言う本である。どこかで聞いたことのある話から存在すら知らなかったもの、果ては部分的に信じていたものまでその内容は多岐にわたる。 大事なことは歴史であろうと情報のアップデートは必要ということ...
タイトルはおどろおどろしいが、要は日本中世史に蔓延るトンデモ話を1つ1つ丁寧に斬っていこうと言う本である。どこかで聞いたことのある話から存在すら知らなかったもの、果ては部分的に信じていたものまでその内容は多岐にわたる。 大事なことは歴史であろうと情報のアップデートは必要ということ。たとえば頼朝義経初期から不仲説や日野富子悪女説などは30年前に歴史を齧って以降そのままという人は割と信じている可能性が高い。全てのアップデートについて把握することは不可能であるしまたその必要もないのだが、自分の頭の中に刷り込まれた歴史観が絶対ではないということを前提に情報を仕入れた方が良いのだろう。 またトンデモ論に関してある程度存在を把握しておくとともにその特徴を掴んでおくことも肝要だ。「因果関係が単純明快」「完全な反証が作りにくい」物に関してはすぐに飛び付かず、一旦話半分に聞いておいた方が良いだろう。
Posted by
先に著者の『応仁の乱』や、この本でも取り上げられている亀田俊和『観応の擾乱』を読んでいたが、そこで解説されていた関係者·関係勢力の動向、物事の推移の複雑さは、歴史の面白さをとても実感できるものだった。 刻々と変わる利害関係、それぞれが状況把握できていない混乱、各々のもつ野望や利益...
先に著者の『応仁の乱』や、この本でも取り上げられている亀田俊和『観応の擾乱』を読んでいたが、そこで解説されていた関係者·関係勢力の動向、物事の推移の複雑さは、歴史の面白さをとても実感できるものだった。 刻々と変わる利害関係、それぞれが状況把握できていない混乱、各々のもつ野望や利益追求や妥協や諦め、超個人的な要素の「本人のやる気」、状況をムダに引っ掻き回す人物、誰にも予測できない突発的事態…。 これらが教科書なら数行で終わってしまう歴史用語のなかで蠢いているのは、わかりにくさも含めて「歴史って一筋縄ではいかないな!面白ろ!」と思ったものだった。 そこを歩いた後、本書でも紹介されている陰謀論はどうか? 何もかもお見通しで百戦錬磨の戦国武将を手玉にとる狸爺、己の利益だけでまわりを巻き込んだ大戦乱を起こした悪女、日本を支配してやろうと闇で蠢く宣教師たち。 ……実に、つまらない。 やる気スイッチが微妙に入らない尊氏、良いところで物事をまとまらなくさせる桃井、あっちこっち振り回され歩く義視、みんなが自分の都合やベストな選択をやってるうちに纏らずグダグダになっていく応仁の乱、 といった複雑さを丁寧に追っていく時に見えた深みや面白さが、 単純明快でわかりやすく、「歴史の真実!」という蠱惑的なワードをまとった陰謀論になった途端に味気なくなってしまう。 おかしいな、マスコミや動画サイトでは面白いといわれるネタのハズなのに…? 逆にその反論は物事や人物がぐっと複雑になって、本人たちが移り変わる状況や思わぬ出来事のなかでジリジリと手を打ったり打たれたりどうにもならなかったりというモノになる。 あ、面白いぞ。 先に『応仁の乱』『観応の擾乱』そのほかを読んでおいたのが、逆に本書でも取り上げられた陰謀論の特徴を実感できる結果になった。 本書でもそれら物事を単純明快にする陰謀論について史料や当時の状況をもとに反論している。 何事もお見通しといわれる狸爺は実際には、刻々と変わる状況に応じて対応しなければならない。 彼らはゲーム全体を見渡せる万能なプレイヤーではなく、そのなかの駒のひとつだったということを忘れてはいけない。 終章の陰謀論の特色と引っかかる要因とあわせて、物事はやはり関わる人間や組織が多いほど複雑で、単純な黒幕にはなれない、ということもまたしかり。 あと、研究者サイドは慎重な研究が必要だが、歴史素人からしても、物事をかなり簡略化して単純にする陰謀論的見方は果たして歴史の面白さなんだろうか?と思った。
Posted by
呉座勇一氏の本は初めて読んだ。日本史の中での様々な陰謀説を信頼のおける史料と背景を考えて正しいかを論証する本。最初に出てくる保元の乱、平治の乱などは難解だが後半に出てくる本能寺の変にまつわる陰謀論などは気楽に読めた。本能寺の変に陰謀論を唱えるのは素人が多いと書かれていたが、背景や...
呉座勇一氏の本は初めて読んだ。日本史の中での様々な陰謀説を信頼のおける史料と背景を考えて正しいかを論証する本。最初に出てくる保元の乱、平治の乱などは難解だが後半に出てくる本能寺の変にまつわる陰謀論などは気楽に読めた。本能寺の変に陰謀論を唱えるのは素人が多いと書かれていたが、背景や人間関係が比較的わかりやすいからだと思われる。南北朝とか応仁の乱とかは人物が入り乱れていてわかりにくいもんね。今まで読んだ歴史本の中にも陰謀論が結構混じっていたのかもしれないと思った。ネット上にフェイクニュースがあふれているのと同じように日本史の世界にも様々な珍説・奇説を述べる人がたくさんいるがそれらの論者は先行研究を全部無視し、自説だけを語りまくる特徴を持つ。日本史関係の本を読むときにも世間一般にある程度認められ、かつ在野でなくアカデミックな世界に身を置いた研究者であるかどうかよく調べてから選択した方が良いかもしれないと思った。詳細→ https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou34401.html
Posted by
歴史上の陰謀論がなぜ学会で論じられないのかといったそもそも論を皮切りに、陰謀論の様々な特徴を発見していき本丸の本能寺の変の陰謀論へと突き進んでいく 陰謀論の特徴についてはこのネット全盛期における陰謀論の氾濫に対する一種の防衛策になり得ると感じた
Posted by
日本史の中世時代といえば戦国時代の信長や秀吉などにスポットが当たりがちでその他はよく知らず、それ故にあまり興味も持てない私でしたが、一昨年の大河ドラマの“鎌倉殿や個人的な調べ物から「観応の擾乱」などに行き当たり、この時代の目まぐるしい展開に底知れぬ物を感じたのでした。 ですから、...
日本史の中世時代といえば戦国時代の信長や秀吉などにスポットが当たりがちでその他はよく知らず、それ故にあまり興味も持てない私でしたが、一昨年の大河ドラマの“鎌倉殿や個人的な調べ物から「観応の擾乱」などに行き当たり、この時代の目まぐるしい展開に底知れぬ物を感じたのでした。 ですから、王族に貴族と武士が入り乱れ覇者を争う時代の流れにおいて、「応仁の乱」を上梓した作者には陰謀というテーマは、無視できないテーマだったようです。 作者が言うように事件の裏に陰謀論が必ずと言っていいほど渦巻いています。(最近では大谷くんの元通訳の銀行詐欺問題でも!) かの有名な本能寺の変などでも陰謀論があり、それらに飛びつく輩も多いという状況の中、歴史学者はまともに取り上げず検証も当然なし。それ故にトンデモ説が大手を振ってまかり通っている現状に“釘を差したい”という歴史学者としての作者の矜持が見受けられます。 歴史小説や以前の歴史書から悪いイメージのある足利尊氏や日野富子などは歴史資料を読み解くと実際はどんな人物だったのか。様々な争乱はどんな背景、経緯があったのか、作者の丁寧な検証から答えが導かれます。 「結果から逆行して原因を引き出す」 「最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考えるのは陰謀論の特徴」… 各章で有名な陰謀場面を挙げ、太字で強調し陰謀論のテクニックを明かしていきます。 これを読むと、確かに私たちにはわかり易く面白い陰謀論を鵜呑みにしてしまう前に、待てよ!と胸に手を当てる賢さが求められます。
Posted by
保元平治の乱、源平合戦、鎌倉幕府の権力闘争、足利尊氏の幕府設立、応仁の乱、本能寺の変、関ヶ原合戦の7つについて、最新の歴史研究をもとに俗説を打破する一冊。 必ずしも陰謀論の法則性が導けているとは言えないが、安易にわかりやすい結論に飛びつくのを戒める意味はあるだろう。
Posted by
全ての歴史愛好家にお薦めしたい一冊。 タイトルからすると一見、日本中世が陰謀に満ち、それを紹介する一冊のように思えるが、逆に、著者は、日本中世史における数々の陰謀・トンデモ説を、歴史学の手法に則って分析し、痛快に切り捨てていく。 中世史だけでなく、検証もされない陰謀論が氾濫する現...
全ての歴史愛好家にお薦めしたい一冊。 タイトルからすると一見、日本中世が陰謀に満ち、それを紹介する一冊のように思えるが、逆に、著者は、日本中世史における数々の陰謀・トンデモ説を、歴史学の手法に則って分析し、痛快に切り捨てていく。 中世史だけでなく、検証もされない陰謀論が氾濫する現代に警鐘をならす一冊。 終章「陰謀論はなぜ人気があるのか?」では、「田母神論文」「藤原正彦」「渡辺昇一」も俎上にあがる。
Posted by
中性から江戸前まで、様々な論を紹介しつ歴史を概観してくれます。 初学者にとっても、大きなトピックに触れつつも 様々な考え(陰謀論もあるのだろうけど)に触れることができるし、 いわゆるスタンダードや通説というものも知ることが出来て、一挙両得の本でした。
Posted by
保元の乱から関ヶ原までの日本史における陰謀とされる事件についての様々な説を取り上げ自論を展開している。 かつて史実として学んだことが、今では偽説となっていたり、過去の史料の読み解き方で変わってくることがよくわかった。史料は書いた本人の目線で書かれているため、真実を語っているとは...
保元の乱から関ヶ原までの日本史における陰謀とされる事件についての様々な説を取り上げ自論を展開している。 かつて史実として学んだことが、今では偽説となっていたり、過去の史料の読み解き方で変わってくることがよくわかった。史料は書いた本人の目線で書かれているため、真実を語っているとは限らない。何を証拠として採用するかの難しさも感じた。 陰謀説の傾向として、 「事件によって最大の利益を得た者が真犯人である」(結果から逆行して原因を引き出す) 「加害側と被害者側との立場が実際には逆」だったりするという。 確かに、結果を既に知ってい後世の人間から見ると利益を得た者が全てを見通して行動していたかのように思ってしまう傾向にあり、たまたま偶然、当人にいい方に転んだ出来事も、きっと仕組まれていたに違いないと考えがちである。 歴史に詳しい者でなくても、その出来事についての通説を述べてから諸説を説明しているので、話の展開は分かるが、人間関係を思い返しながら読むので時間がかかった。 諸説を紹介し、その証拠とされる資料の信憑性や、陰謀説を唱える者の論理の飛躍を丁寧に突いており、歴史に詳しい人にとっては、痛快に感じるのではないかと感じた。
Posted by
