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オブリヴィオン の商品レビュー

3.8

63件のお客様レビュー

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2017/12/31
  • ネタバレ

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2017本の雑誌ベスト10堂々の第1位、そして同社杉江さんのブログ「炎の営業日誌」で「2017年はこの本を読むためにあった年」とまで言わしめた力作。いやー、実際凄かった。読み出したら止まらず読書で久々の徹夜、読み終わるまで本から手が離せないなんてこと、随分久しぶりに味わった。 「遠田ブルーズ」の集大成。「雪の鉄樹」や「アンチェルの蝶」にも流れていた魂の叫びがさらに高らかにうたわれている。その叫びが響いて心がビンビン揺さぶられる。 小説や映画や音楽を評する際に、よく「涙なくして語れない」と言う言葉が使われるが、ブルーズに心が揺さぶられたら、かえって涙は流れない、冷たい乾いた風に心を冷燻させる感じとでもいうのか。やるせなさで出るため息すら、いつもより冷たい吐息のような…。 俺は「どん底からの再生」というテーマの物語が大好きだと良く書くんだけど、遠田作品は「どん底からの再生途中で挫折」してしまったところからのスタートなんだよなぁ。それって底をさらに掘り下げたところにあるもので、底なら足もつくんだが、足すらつかない場所。キックスタートはできず、ゆっくり沈んでいくか、もがきもがきで力尽きるまで現状維持するのが精一杯の状況。 それでも、どうにかなんとか生きていく。ラストシーンで少しだけ足がかり手がかりが見える。そういう物語が人生アマアマな俺に勇気を与えてくれる。 年の瀬押し迫った中で、今年ベスト1候補の小説を読めたことに感謝!

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2017/12/30
  • ネタバレ

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傷つけまいと黙っていたことが、かえって相手を傷つけ過失とはいえ殺人者にしてしまった。しかしすべての元凶は森二の父だ! 重苦しいストーリーだけど、ラストに救いがあった。 「オブリヴィオン」=忘却、恩赦

Posted byブクログ

2018/03/10
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妻・唯の死の真相、娘・冬香の本当の父親は誰かという2点を中心に話が進んでいく。読み応えはあるものの、主人公・森二の超能力設定だったり、後半ポッと出てきた博打客の白狐が冬香の父親だったというのはちょっとゲンナリした。

Posted byブクログ

2017/12/24

誰一人として幸せになれない、なんともやるせない物語だ。 ハードボイルド、バイオレンス、ノワール、どんな分類になるのか、かなり骨太な小説。 そしてこの書き手が女性であることに驚く。 名前で判断するだけだがたぶん女性であると思う。 まるで境遇の違う男女が出会い、幸せを求めて結婚する...

誰一人として幸せになれない、なんともやるせない物語だ。 ハードボイルド、バイオレンス、ノワール、どんな分類になるのか、かなり骨太な小説。 そしてこの書き手が女性であることに驚く。 名前で判断するだけだがたぶん女性であると思う。 まるで境遇の違う男女が出会い、幸せを求めて結婚する、それまでの二人の道のりや、二人を取り巻く環境、茨の生い茂る苦難の道だ。 やくざのじわじわ迫る恐ろしさ、偏執的な男の気味悪さ、奇跡を起こすための拷問のような描写、 これ本当に女性が書いてるんやな、読みながら何度も確認してしまった。 終盤、すべて事実が明らかになっても、明らかになったというだけで、ただ切ないだけの読後である。

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2017/12/21
  • ネタバレ

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男達の贖罪の物語。 それぞれの負い目が絡まり合い取り返しのつかない不幸からどうにか立ち直ろうともがく。 唯の森二を救った優しさが、巡り巡って森二を絶望へと突き落とす非常にやるせない物語だった。

Posted byブクログ

2017/12/21

話題になってる作家さんなので、初めて読んでみた。ヤクザとか賭け事だとか嫌いだけど、なぜ奧さんを殺したのか知りたくて最後まで読んだ。共感はしないけど、子供の頃家庭内不和や貧乏の話は辛い。子供は選べないから。だけど、大人になったら自分で努力次第で運命も変わると信じたい。

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2020/06/20

「雪の鉄樹」で圧倒的に打ちのめされて以来クセになった遠田作品の5作目。 つらい生い立ち、誤解や行き違いから生じた胸が詰まるほどに哀しい事件、抜け出そうとどんなにあがいても抜け出せない過去の呪縛。愛する人をその手に掛けた男は、忘却という名の赦しを得られるのか。バンドネオンが奏でる哀...

「雪の鉄樹」で圧倒的に打ちのめされて以来クセになった遠田作品の5作目。 つらい生い立ち、誤解や行き違いから生じた胸が詰まるほどに哀しい事件、抜け出そうとどんなにあがいても抜け出せない過去の呪縛。愛する人をその手に掛けた男は、忘却という名の赦しを得られるのか。バンドネオンが奏でる哀愁漂う曲「オブリヴィオン(=忘却、赦し)」。これぞ遠田作品の醍醐味。 前半部分で提示された謎が、後半で一気に、畳みかけるように明らかになっていく。だけど、5作目ともなると慣れてきたのか、前作までの苦しいほどの切なさや哀しみは感じられない。 設定があまりにも小説的で、リアリティが感じられないからか上っ面を撫でているような感じでさらっと読める。遠田さんにはもっと人間の本質をえぐる、やるせなく、読むのさえ辛いほどの作品を書いて欲しい。

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2020/03/17

○波乱しかないが誠実であろうとするカタギの闘い 吉川森二は、妻を殺した罪で服役し刑期を終え仮釈放された。そこに待っていたのは、因縁の兄・光一と、世話になっていた義兄・圭介の姿だった。 ・・・とこの2行だけを読んでいても波乱の過去であり、波乱の展開が起こるに違いないと感じるだろう...

○波乱しかないが誠実であろうとするカタギの闘い 吉川森二は、妻を殺した罪で服役し刑期を終え仮釈放された。そこに待っていたのは、因縁の兄・光一と、世話になっていた義兄・圭介の姿だった。 ・・・とこの2行だけを読んでいても波乱の過去であり、波乱の展開が起こるに違いないと感じるだろう。 森二はあるきっかけで妻の唯を過失致死させてしまう。その様子は娘の冬香も見ており、圭介はさんざん今まで世話をしてきたのに信じられないと言わんばかりだ。光一も森二とコンタクトを取ろうとする。それは、昔ギャンブルに手を染めていたころに発揮していた「奇跡」を発揮してほしかったからだ。手下の加藤と持田も何かにつけて森二にからもうとする。 いったいなぜ、唯は死ななければなかったのか。森二はじめ登場人物たちが苦悩しながらこの問題に立ち向かう。 波乱だ。森二は妻を殺してしまうし、娘はそれを見てしまう。 読んでるこっちも衝撃だ・・・ 森二を取り巻く登場人物たちは、みな家族構成が普通の人とは少し違う。 と言っても今では当たり前なのかもしれない。しかし、お互いに依存したり結びつきが他の家族と比べれば強いことには変わりはない。 その中で育まれた、「相手を守るための嘘」は、こんなにも当事者たちの耳に入った瞬間に深い闇を落とすことになったのだとは、読んでいても暗くなったくらいだから、本人たちも驚いただろうな。 謎解き・ミステリーと言った部類ではないながらも、こんなにも人間ドラマに集中させておきながら最後にどかん、と明かしてくる。 明け透けに、しかし追求できないそんな暗さを登場人物が出しながら、相手は返せない。しかしそこには自分たちが想像しているよりも深く辛い真相があるのだ、と後になってからわかる。この本に読まれるのをぜひ楽しみにしてほしい。

Posted byブクログ

2017/10/30

内容(「BOOK」データベースより) 森二が刑務所を出た日、塀の外で二人の「兄」が待っていた―。自らの犯した深い罪ゆえに、自分を責め、他者を拒み、頑なに孤独でいようとする森二。うらぶれたアパートの隣室には、バンドネオンの息苦しく哀しげな旋律を奏でる美少女・沙羅がすんでいた。森二...

内容(「BOOK」データベースより) 森二が刑務所を出た日、塀の外で二人の「兄」が待っていた―。自らの犯した深い罪ゆえに、自分を責め、他者を拒み、頑なに孤独でいようとする森二。うらぶれたアパートの隣室には、バンドネオンの息苦しく哀しげな旋律を奏でる美少女・沙羅がすんでいた。森二の部屋を突然訪れた『娘』冬香の言葉が突き刺さる―。森二の「奇跡」と「罪」が事件を、憎しみを、欲望を呼び寄せ、人々と森二を結び、縛りつける。更に暴走する憎悪と欲望が、冬香と沙羅を巻き込む!森二は苦しみを越えて「奇跡」を起こせるのか!?

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2017/10/29

悲惨な幼少期、幸せを手に入れた後に犯した悲しい罪。 男はどこまでも赦されず生きて行くしかないのか。 進むにつれ明かされる真実、人物たちの悲しい業。 人はたった一つの希望さえあればいつでもやり直せる。 同じ色でもこんなに見違えて見える。 希望と再生の物語。

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