人類と気候の10万年史 の商品レビュー
地球の地軸が傾いていること、太陽の周りを楕円で回っていること、それは過去も未来も変わらないと思っていたら、違うらしい。 地軸の傾きは、倒れかけのコマのように動いている(歳差運動)。そして公転軌道も楕円だったり、まん丸に近づいたりと変化する(離心率)と。 そういう変化によって、地球...
地球の地軸が傾いていること、太陽の周りを楕円で回っていること、それは過去も未来も変わらないと思っていたら、違うらしい。 地軸の傾きは、倒れかけのコマのように動いている(歳差運動)。そして公転軌道も楕円だったり、まん丸に近づいたりと変化する(離心率)と。 そういう変化によって、地球の気候は大きく変動する。 その気候の変化を調べる方法が、年輪だったり、年縞(1年に1枚形成される薄い地層)だったり。 で、福井県の「水月湖」という湖の底には「奇跡の年縞堆積物」が沈んでいる。著者はその堆積物を調べながら過去の気候を分析していく。そんな本だった。 年縞の1枚1枚の層から、炭素量を見たり、花粉を解析したりして、過去の植物を推測→気候を推測できるらしい。気が遠くなるような作業だけど、ちょっと面白そうと思ったり。 以下メモ ・水月湖は、1年に7ミリ年縞が堆積する。 なぜ、埋まらないのか?→湖自体が、堆積する速度よりもわずかに早く沈降している。 ・湖の底には酸素がないので、生物がいない。だから湖底の土がかき回されることなく堆積していく ・現在の安定の時代がいつまで続くのか、次の相転移がいつ起こるのかは、本質的に予測不可能である可能性が高い。だが、地球と太陽の位置関係が、力学の法則に従って変化を続ける限り、今と同じ状態が永遠に続くことはあり得ない。私たちはいつか、今と似ていない時代を生きなくてはならなくなる。ならば、過去に実際に存在していた今と似ていない時代に、人々がどのように暮らしていたかを考えることには意味がある。 ・なぜ、狩猟採取生活から農耕を始めたのか。気候が安定して、安定して作物がとれるようになったから。 むしろ、気候が不安定な時期は、農耕するより、狩猟採取生活の方が、一定の食料を得ることができる。
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花粉の化石から年代測定ができるという話が、とても印象に残りました。 この時期は花粉症の人にとってはつらい存在ですが、そんな身近でどこにでもあるものを研究に活用する発想は本当にすごいと思います。
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さすがのブルーバックス。分かりやすく読みやすかった。 湖底に溜まった堆積物から何万年もの歳月を遡って調べることができる「奇跡の湖」水月湖の話を中心に、地球の気候は今までどのように変化してきたのか、今がどのような状況なのかを知ることができる。 今が異例の長さの安定した温暖期であり、...
さすがのブルーバックス。分かりやすく読みやすかった。 湖底に溜まった堆積物から何万年もの歳月を遡って調べることができる「奇跡の湖」水月湖の話を中心に、地球の気候は今までどのように変化してきたのか、今がどのような状況なのかを知ることができる。 今が異例の長さの安定した温暖期であり、人類が排出した温室効果ガスにより間氷期を先延ばししているかもしれない、というのはとても興味深い。 もしかしたらトランプもこの仮説を元にしているのだろうか。
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今年は年末年始「旅」無しなので、大晦日までレビュー続けます。 今年9月29日、福井県若狭湾水月湖岸にある年縞博物館にて購入した。縄文博物館の隣にあったので入ったのだけど、入場者が日本人よりも外国人の方が多い博物館は、ここが最初で最後である。それが、そのまま現代日本における「年縞...
今年は年末年始「旅」無しなので、大晦日までレビュー続けます。 今年9月29日、福井県若狭湾水月湖岸にある年縞博物館にて購入した。縄文博物館の隣にあったので入ったのだけど、入場者が日本人よりも外国人の方が多い博物館は、ここが最初で最後である。それが、そのまま現代日本における「年縞」の位置付けを表していると思う。世界的に有名だけど、日本人には浸透していないのである。広辞苑にこの言葉が載ったのは2018年版からだという。本書は2017年刊行ではあるが、博物館の開館は2018年である。 私はこの新書に博物館解説図録的な役割を期待した。博物館には7万年の「年縞」が展示されているけれども、そのひとつ一つを詳しく解説してくれているのでは? 違っていた。どちらかといえば、年縞博物館序説とでも言うべき本だった。 年縞は、年輪のような湖の泥を保存することで、一年毎の正確な環境データを記録した年表を作ることができる。奇跡の水月湖の発見から、如何に年縞を取り出したのか、何がわかるのかを「科学的に」説明したのが本書である。 地質時代に「何が」起きたかだけではなく、それが「いつ」だったのかを世界最高の精度で知ることができる。タイミングが正確に分かるということは、変化のスピードや伝播の経路が正確に分かるということでもある。スピードと経路が分かれば、気候変動のメカニズムにまで切り込んで考察することができる。メカニズムが分かれば、より正確な将来予測にもつながっていく。水月湖研究の裾野は広い。(9p) 水月湖年縞が世界標準に認定されたのは2012年であり、未だこれからなのだろう。ということは、あの博物館で、直近の二万年の新石器から縄文、弥生、中世、現代の日本の姿を解説していた展示内容は、それこそ新書にもなっていない「最新研究」だったのだ。もう少し詳しくメモしておくべきだった。 ただ、現代の研究で分かったことも多い。 氷期が終わったのは、今から11500年前である。その前は不安定で寒い時代がずっと続いていたが、比較的安定で暖かい時代に移ったという。その変化は、実は徐々にではなく、おそらくある1年で突然変化したらしい(長くても3年程度)。 この激烈な変化は、地球の物理法則で起きるので二酸化炭素放出による温暖化とは関係ない。むしろ、現在いつ暖かい時代から寒冷化に舵を切ってもおかしくはないのに、異常なくらい温暖な時代が続いているらしい。次の寒冷化の時は一挙にやってくるのか?書いてなかった。 なんか、いろんな可能性が書かれていてわからなくなる。 一つ興味深いのは、寒冷化が終わる前から、人類は農耕技術は持っていたらしい。しかし、ほとんどの地域では採用しなかった。それは、寒いからだけではなく、天候がかなり上下する時代だったからだ。世界の年縞のお陰で、天候の不順年は正確にわかるようになった。一年の不作ならば対処できても、数年続く不作は、マヤ文明さえ滅ぼしたのである。東北で、縄文時代が続いたのは、東北の天候が不順で狩猟採取の方が生き延びる可能性が高かったからかもしれない。 吉備の弥生時代にかつて例のない大首長が登場したのも、水を制したからだと聞いたことがある。しかしそれは制御できる天候だったからでもあるのかもしれない。これらの相関関係は、これからも探求したい。年縞等のおかげで、この10年で大きく学問が進んでいるのは確かそうだ。
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気候論争をする前に読むべき入門書。ファクトの大切さがよく分かる 恒常性バイアスが人類の繁栄を支えたがゲームチェンジは起こり得る 学び9 実用性8 視点の新しさ8 読みやすさ6 再読7 合計38/50
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福井県の水月湖行ってみたいと思った。年縞を明らかにするための苦労が伝わってきた。これからの気候変動を予測することの困難さがよくわかった。
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10万年スケールでの気候変動について、そして筆者が長年携わってきた水月湖の年縞堆積物の研究成果について、それぞれバランスよく語られており、変動を繰り返してきた地球の気候だけでなく、基礎研究の地道さや効用の大きさを学ぶことができた。 以下印象に残ったこと。 ・公転軌道の10万年...
10万年スケールでの気候変動について、そして筆者が長年携わってきた水月湖の年縞堆積物の研究成果について、それぞれバランスよく語られており、変動を繰り返してきた地球の気候だけでなく、基礎研究の地道さや効用の大きさを学ぶことができた。 以下印象に残ったこと。 ・公転軌道の10万年サイクルと地球気温(ミランコヴィッチ理論) 地球の公転軌道は、楕円と真円を往復するように繰り返しており、楕円から次の楕円になるまでの期間が10万年である。この10万年サイクルで、地球の氷期、間氷期も入れ替わっている。つまり、公転軌道が地球の気温に影響を与えているのだ。楕円軌道では地球がより太陽に近づくため、エネルギーを多く受けとり温暖な気候に、真円に近い時は相対的に地球が受け取るエネルギー量が少ないため、氷期となりやすい。現在は真円に近いものの例外的に温暖な気候を保っている。 ・地軸の歳差運動。2.3万年のサイクル。 地軸は止まりかけのコマのように、傾きを保ちつつゆっくりと回転している。この歳差運動は、公転軌道の10万年サイクルのように、2.3万年という高い周波数で地球の気候変動に影響を及ぼしている。 具体的には、主に季節ごとの気温変動に影響を与えている。公転軌道が楕円であるときを考える。(地球は太陽を楕円の焦点の一つとする楕円軌道をとる。)地軸が太陽側に倒れるとき、すなわち北半球における夏のとき、地球が太陽側の焦点周りを回っていれば地球と太陽の距離が近くなり、熱い夏となる。太陽側でない焦点近くを回っているときは地球と太陽の距離は遠くなり冷夏となる。同様の理屈で、寒い冬、暖冬が起こる。 冬は夏の残存熱量により一定の気温が保たれるので、地球の年平均気温は、夏にどれだけ気温が上昇するかの影響が大きい。すなわち、熱い夏になりやすい太陽近くで北半球の夏を迎えるときに年平均気温が上がりやすい。(ほんとに?これだと南半球は冷夏になっちゃう気がする。。。) ・気温変動のポジティブフィードバックとネガティブフィードバック。 気温が上昇すると、植生が発達し光合成が盛んになる、結果大気中の二酸化炭素濃度が下がり、気温を下げる方向に作用する。つまり、どこかで気温上昇に対してネガティブフィードバックがかかる。 気温が減少すると、気温を上げる方向に働く要因がなく??、凍結が進むと、太陽から受け取る熱を蓄えることができず?、気温を保てなくなる。よって更に温度が下降していくポジティブフィードバックがかかる。 ・水月湖の年縞堆積物の功績。 福井県にある水月湖は、湖面と湖底での水の入れ替わりが起こらない、湖底を掘り起こすような生物が生息していない、土砂が直接流れ込まない、など奇跡的な条件が重なって、砂が毎年少しずつ堆積することで形成される、一年ごとの縞模様が特徴である年縞堆積物を形成している。これは世界的にも貴重な湖である。 7万年分もの連続した年縞を取得したことで、その範囲であれば、一年単位で堆積したものの年代が特定できる。どの年代どういう砂が堆積したかによって、その当時を気候を読み解くことに繋がるのだが、中でも炭素14年代測定法の精度向上に大きく寄与した。この年代測定法とは、生物や植物が死滅した年代を特定する方法で、放射性崩壊して窒素14に変化する炭素14が、どれだけ体内に残っているかで死後何千年、何万年が経過したのかを特定する手法である。体内の炭素14の初期濃度は大気中と同じと考えることができるのだが、この大気中の炭素14濃度は年代ごとにバラつきがあるという問題点があった。その問題点を解決したのが水月湖の年縞堆積物であり、年縞中に堆積していた植物の葉から炭素14の崩壊量を測定し、年縞によりその植物が死滅した正確な年代を把握することで、各年代の大気中の炭素14濃度を特定することに成功した。これは、炭素14測定法の換算表(イントカル)に採用された。 ・なぜ人類は氷期に農耕を行わなかったのか?
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福井県・水月湖の湖底には約7万年分の「年縞」と呼ばれる地層が静かに刻まれている。一本一本の縞模様は過去の気候変動を克明に記録する「地球の年輪」だ。 この年縞を読み解くことで人類がどのように寒冷化や温暖化に適応し生き延びてきたかが見えてくる。食料の確保に苦しんだ時代もあれば気候...
福井県・水月湖の湖底には約7万年分の「年縞」と呼ばれる地層が静かに刻まれている。一本一本の縞模様は過去の気候変動を克明に記録する「地球の年輪」だ。 この年縞を読み解くことで人類がどのように寒冷化や温暖化に適応し生き延びてきたかが見えてくる。食料の確保に苦しんだ時代もあれば気候の安定によって文明が栄えた時期もあった。 今の気候変動は過去の激変とは異なる。人類自身がその要因となっているのだ。化石燃料の使用や森林破壊が未曾有の温暖化を引き起こしている。 年縞の知見を活かし気候変動にどう適応するかを考えることが現代の私たちに求められている。
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気候変動問題は昨今注目を集めているが、古代の気候変動を知るとそのスケールの違いに驚かされる。現代は氷河期の間にある温暖で安定した間氷期に当たり、非常に落ち着いている。気候は線形に変化するものではなく、不安定な変化が内在するシステムである。また、地球の公転自転運動の影響を受けて変化...
気候変動問題は昨今注目を集めているが、古代の気候変動を知るとそのスケールの違いに驚かされる。現代は氷河期の間にある温暖で安定した間氷期に当たり、非常に落ち着いている。気候は線形に変化するものではなく、不安定な変化が内在するシステムである。また、地球の公転自転運動の影響を受けて変化するダイナミックなシステムである。 筆者の専門は花粉の古代の地質に含まれる花粉をもとに過去の気候を分析することが専門らしい。福井県にある水月湖の年縞特定のエピソードも非常に興味深かった。
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気候変動を語る際に我々の暗黙の前提として、これまでの有史以来気候が安定していたというバイアスがある。つまりこれから起こり得る気温上昇はイレギュラーな事態であり、人類の歴史上未曾有の危機が訪れるといった気候危機論が言われるのは、標準となる安定的な気候があってこそである。 しかし本...
気候変動を語る際に我々の暗黙の前提として、これまでの有史以来気候が安定していたというバイアスがある。つまりこれから起こり得る気温上昇はイレギュラーな事態であり、人類の歴史上未曾有の危機が訪れるといった気候危機論が言われるのは、標準となる安定的な気候があってこそである。 しかし本来は、地球の気候は安定していない。とくに10万年というスケールで捉えると、実はたった数年で7℃も気温が上昇した時もあれば、今よりも10℃以上低い時代もあり、海面は±100mも上下していた。そんな過去の気候の積み重ねを調査する年縞と呼ばれる地質調査上の標準が、実は日本国内にある。 福井県三方五湖の一つ水月湖には、湖底に45m・実に7万年分もの年縞が堆積しており、その堆積物を調べることで気温や降水量、植生といった様々な情報を得られる。そこからはダイナミックに気候を変動させ、それに合わせて大幅に生物相を変化させてきた歴史が垣間見える。恐竜のいた温暖な時代も、日本が大陸と地続きになっていた寒冷期も、年縞によって特定できるのだ。 そして現在は、温暖期が終わり氷期に向かっていると考えられるが、8000年前の農耕が始まった頃から寒冷化の傾向はストップしている。つまり、人類活動の影響が産業革命以前より始まっていることが指摘されている。まだまだブラックボックスが多く気候変動の行方も分からない点は多々ある。それでもその基準となる年縞が日本国内にあるという事実は、日本人にとって責任感を思い起こさせるには十分であろう。
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