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人類と気候の10万年史 の商品レビュー

4.4

65件のお客様レビュー

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2017/03/15

日本の世界標準、水月湖!人間が氷期の到来を遅らせている?氷期の特徴は気候が不安定なこと。今の温暖で安定した気候はいずれ終わるらしい。

Posted byブクログ

2017/03/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 過去の気候史を紐解くためにどんな調査が行われているのか、などこの分野の最新情報満載。一級の科学ドキュメント。  避けて通れない、気候変動と地球温暖化の関係。これについては、気温のカーブは8000年前からあるべき変動よりも上方に変化している、これは人類が農耕を始めた時期と一致する、よって人為的な温暖化はそこから始まったと解すべき、という驚くべき説が紹介されます。  過去10万年におきた気候変動をつぶさに検証すると、数年で気温が数度変化したイベントが何度かあったことがわかる。2100年には〇度気温が上がる、という地球温暖化のペースをはるかに上回るペース。人類はその変動に耐えてきた、と。  今の地球はこの10万年では珍しく温暖で安定した気候にある。それがゆえに農耕が定着し、人口を増やすことができた。基本的にはこの10万年の地球は今よりもっと寒く、変動の幅が大きい。その気候を相手に農耕にトライするよりは得られる食物は少なくなるが狩猟中心に暮らし、「その範囲で生きていく」というのが賢い選択となる。  気候変動で面白いのは太陽との距離と地軸のブレ。地球の公転軌道は真円に近くなったり少し楕円に伸びたりを10万年周期で繰り返す。楕円になったときに夏と冬の日射量に差が出ることで寒冷化する。現在は温暖な時期に入っている。この公転軌道の変化に加え、歳差運動により2万3千年周期で地軸がぶれることで地球の気候変動はかなり説明できる。面白いのは、地球の気候が10万年、あるいは23000年かけてゆるやかに変わるのではなく急激な寒冷化温暖化を繰り返す中で全体として寒くなったり(氷河期)暖かくなったり(間氷期)すること。  湖や内海に静かに沈殿した堆積物を分析することでこれらの気候変動がわかる。実は条件を満たす場所はほとんどない。何万年というスパンでみると干上がるものもあればさらに沈降してサンプルが取れない深さになるものもある。洪水が多い場所だとその堆積物で底がかき回される。また酸素が少ない環境も大事で酸素が豊富だとそこに生物が住み着き巣をつくり堆積物をかき回してしまう。実は日本にある水月湖は過去15万年分の堆積物がたまっている湖で世界最良のサンプルが取れる。サンプルを取ったあと、各国の研究所が分担して縞模様の解読を行い、「マップ」ができた。これをもとに過去の気候変動を探っていくのである。  同じような良質のサンプルがとれる場所が中南米にあり、詳細に分析したところ、マヤ文明が何年に滅びたか特定できた、という。  ではこれらを踏まえ、これから予想される気候は?というと、「わからない」。先に書いた、大まかなトレンドはわかるかどうして短期間に激しい変動がおきるのかはわからない。したがってこのあとの予想もできない、と。

Posted byブクログ

2017/04/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

こんなにも気候は変わるのか、こうやって調べていくのかと色々知ることができる内容だった。 読みやすく、難しい専門用語も少ないため、分かりやすい内容だった。

Posted byブクログ

2017/03/02

前著「時を刻む湖」(岩波科学ライブラリー)と同じかそれ以上にワクワクドキドキしながら読み進めました。なぜ水月湖にきれいな年縞が見つかるのか、その理由を他人に話せるぐらい理解できた。水月湖には直接川から水が流れ込まない。湖底は塩分濃度が高いため、水の対流が起きにくく、湖底には酸素が...

前著「時を刻む湖」(岩波科学ライブラリー)と同じかそれ以上にワクワクドキドキしながら読み進めました。なぜ水月湖にきれいな年縞が見つかるのか、その理由を他人に話せるぐらい理解できた。水月湖には直接川から水が流れ込まない。湖底は塩分濃度が高いため、水の対流が起きにくく、湖底には酸素が行き渡らない。そのため、生物が存在できない。その結果、湖底をかき乱されることが無くなった。さらに、近くに活断層があり、ここ数万年は沈降が続いているため、湖底が浅くなることもない。といった奇跡的に好条件がそろったために日本の福井県に、世界的に認められる年縞がつくられた。さらに今回は金子邦彦先生からインスピレーションを得て考えたというカオスのモデルもおもしろい。そして、最終章。11600年前まで続く氷期では気候変動が激しかった。現在まで続く間氷期は気候が穏やかである。気候が激しく変動する場合、農耕をしたとしても安定して食糧を得ることができない。したがって、農耕が可能だったとしても、狩猟・採集の方がより食糧を得るのに適していたと考えられる。決して1万年前に人類の知恵が向上し、農耕を始めたというわけではなさそうなのだ。なんともおもしろい議論だ。今後さらに何が分かってくるのか、ワクワクする。

Posted byブクログ

2017/02/14

内容紹介 人類は、たいへんな時代を生きてきた! 驚きの地球気候史 福井県にある風光明媚な三方五湖のひとつ、水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その水月湖の年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥...

内容紹介 人類は、たいへんな時代を生きてきた! 驚きの地球気候史 福井県にある風光明媚な三方五湖のひとつ、水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その水月湖の年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。 人類は誕生してから20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の精密な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめなおします。 ○氷期と間氷期が繰り返す中、人類誕生以来、その歴史の大半は氷期だった。 ○現代の温暖化予想は100年で最大5℃の上昇だが、今から1万1600年前、わずか数年で7℃にも及ぶ温暖化が起きていた。 ○東京がモスクワになるような、今より10℃も気温が低下した寒冷化の時代が繰り返し訪れていた。 ○温暖化と寒冷化のあいだで、海面水位は100メートル以上も変動した。 ○縄文人はなぜ豊かな暮らしを営めたのか。 ○平均気温が毎年激しく変わるほどの異常気象が何百年も続く時代があった。 ○農耕が1万年前に始まった本当の理由。 「年縞」とは? 年縞とは、堆積物が地層のように積み重なり縞模様を成しているもので、樹木の年輪に相当します。2012年、福井県にある風光明媚は三方五湖のひとつ「水月湖」の年縞が、世界の年代測定の基準=「標準時計」になりました。世界中の研究が、その年代特定で福井県水月湖の「年縞」を参照するようになったのです。この快挙を実現したプロジェクトを率いたのが著者です。 「プロローグ」より 水月湖では、地質時代に「何が」起きたかだけではなく、それが「いつ」だったのかを世界最高の精度で知ることができる。タイミングが正確に分かるということは、変化のスピードや伝播の経路が正確に分かるということでもある。(中略)水月湖の年縞堆積物から気候変動を読み解くプロジェクトはまだ進行中であり、今も続々と新しい知見が得られつつある。本書ではそれらの新しい発見のうち、とくに私たち自身の未来と関連の深いものについて、なるべく分かりやすく紹介してみようと思う。 著者について 中川 毅 1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1998年、エクス・マルセイユ第三大学(フランス)博士課程修了。Docteur en Sciences(理学博士)。国際日本文化研究センター助手、ニューカッスル大学(英国)教授などを経て、現在は立命館大学古気候学研究センター長。専攻は古気候学、地質年代学。趣味はオリジナル実験機器の発明。主に年縞堆積物の花粉分析を通して、過去の気候変動の「タイミング」と「スピード」を解明することをめざしている。

Posted byブクログ