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静かな雨 の商品レビュー

3.6

131件のお客様レビュー

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2024/11/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

パチンコ店の前でたい焼きを売る女性・こよみさんと、僕のお話。 僕は、足に先天性の麻痺を持っていて、松葉杖を使って歩いている。 こよみさんは、ある時、交通事故で、短期記憶を失う、外因性精神障害を持つこととなった。 昔のことは少し覚えていたり、さっと記憶がよみがえったりしたり。 認知症みたい? 今ならなくても、年をとれば多くの人がなる記憶障害。誰もが例外ではない。 どのような人生が充実した人生か、という問いに対して、 思い出作りこそ、というお話がありますが、 人生の終盤で、自分のこれまでを振り返って、よかったなーって思いだせることがあるか、 っていうことだと思うけれども、 思い出す能力がなくなっている場合も普通にあるってことだとすると、 誰にとっても身近な問いになるような気がしました。 死に際に思い返すときのために今を生きているわけではないけれど、 私から記憶がなくなった時、何が残るんだろう。 無意識化にも残る、思い出以上に何か深く響くもの、があるのかな。 「毎日の生活の中での思いで人はできてるんじゃないかと思う」 日々意識を向けている、思いを向けているもの、こと、人。 科学的にも、意識や記憶って何なのか、まだよく分かっていない、という話もありますが、 私たちはその認知症的な、記憶障害的な状態を毎晩夢としても体験しているかもしれないなーと思ったり。 強く印象に残っているもの、思い詰めているもの、思い続けているものの断片が、 混ざり合って出てきたりする。 「あたしのいる世界は、あたしが実際に体験したこと、自分で見たり聞いたり触ったりしたこと、考えたり感じたりしたこと、そこに少しばかりの想像力が加わったものでしかないんだから」 「だけど、新しいものやめずらしいものにたくさん会うことだけが世界を広げるわけじゃない。ひとつのことにどれだけ深くかかわれるかがその人の世界の深さにつながるんだとあたしは思う」 ひとつのことに深くかかわっているかという問い。 私にはギクッとする問い。目をそらしたい問い。 全然。私は自分をかたちづくれるぐらい、何かに深くかかわってきていない。 好奇心に任せて、新しいことに触れることは結構してきたかもしれないけれど、 キャリアもだし、それだけではなく。 人間に対しても。 子育てってすごいなー共急に思った。 目の前の命に深くかかわらざるを得ない。 それは本当に人生に深みを与えるにちがいない。 記憶を失ってからも、 こよみさんに残っていたもの。 たい焼き。僕。 思いを向け合ったもの、それは、どんどん広がりを見せていく。 たい焼きはどんどんおいしくなり、 僕との関係も深く、広くなっていった。 自分の思いをどれだけ外部と混ぜ合うか、 そうやって、自分を広く深くして、大きくできるのかもしれないなーと思ったりしました。

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2024/09/07

柔らかな文章と優しい言葉の数々。 ユキとこよみさんの少しだけ重なり合う世界が愛おしい。そんな作品でした。文字も大きくて読みやすかったです。こよみさんのたいやきは、食べたくなりますね!

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2024/08/24

出会った頃よりも、事故の後の方が より親しくなった 想いが日々の人間を作ってるっていうところも良かった。 重苦しくなく、丁寧な文章が読みやすくて こよみさんと行助が日々を紡いでく 想いが心地よかった

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2024/07/20

宮下奈都さんの小説。エッセイは散々読んだのに、小説は初めて。静かな、素敵なお話でした。こよみさんのたい焼き、食べてみたいなあ。

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2024/07/17

こよみさんの焼くたい焼き、想像するだけで美味しそうだ。 賑わっている中でも、お互いに惹かれあって、事故で記憶をなくしてもその日の記憶がある限り、自然にそばで寄り添っている2人の空気感がいいなと思った。

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2024/01/15

いろんな描かれていない物足りない部分がいい余音なのだけど、映画で描かれているのか見たいような、見たくないような

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2024/01/14

パチンコ屋の駐車場で鯛焼きの店を やっている子と足の悪い男性の交流 何気ない華やかなこともない生活 事故にあい高次脳機能障害になった彼女 一緒に暮らし始めて 昨日の記憶が無い彼女と  でも 何かを大切に生きる日々の暮らし 人にとって何が大切か考えさせてくれる

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2023/05/03

前情報なしで読んだらだいすきなたい焼きの話でした。決して明るいだけの内容ではないが、たい焼き屋さんの情景が目に浮かぶし、たい焼きが食べたくなった。こよみさんのたい焼き食べたいな

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2023/04/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

記憶を維持できない病気を患うこよみさんの話。だけど病気可哀想みたいなお涙頂戴話じゃなくて、すべての人にかかわる、記憶についての話だと受け取れた。 病気の有無にかかわらず人間の記憶はどんどん薄れていくし、大切な思い出も忘れてしまうかもしれない。でもそれで全部無くなっちゃうわけじゃないよって語りかけてくれているようで、あたたかかった。 母が私の幼少期の思い出話をしてくれた時、私ははっきり覚えていなくて、母は寂しそうにしていた。でも、覚えていなくてもちゃんと残っているから悲しまないでほしいと思っている。大切に育ててもらった感覚は消えず、今の自分にまでちゃんと繋がっているはずだ。世のお母さんお父さんたちも「大人になったら忘れちゃうのかな」と悲しむ必要はないと思う。不意に断片的に思い出したりすることもあるし。 プレゼントをもらった時のことに対しても、新しい視点が生まれた。くれた人は「このプレゼントはこういうところが良いんだよ、それがあなたに合っていると思ったから選んだよ」と選考理由を教えてくれたが、数年後、選んだ本人は全く忘れていて悲しく思ったことがある。でも、そのたくさんの優しさ、頑張って調べて考えてくれたあたたかさはそのとき受け取ったまま ちゃんと自分が覚えているから、なくなったと思わなくてもいいのかなとちょっと思えた。 こよみさんはいつも記憶関連で日常に起こるひっかかりをスッと受け流している(ように見せている)けど、雨のシーンでは、現実が辛いということと正面から向き合っていた。そして苦しんでいる姿を初めて人に見せたのだと思った。 すごく悲しかったけどすごく美しかった。透明感があって、とてもやるせなく、でもどこか勇ましかった。世の中立ち向かいたくないことばかりだけど、立ち向かう人の姿はやっぱりかっこいいし美しい。凛々しい。 自分の生き方も、人にかける言葉も、物事の捉え方も、自分で選ぶことができる。選ぶ作業はすごく大変で、正しくあろうとするのはめちゃめちゃ辛かったりもするけど、選ぶことはできるんだと再確認した。

Posted byブクログ

2023/04/22

こよみと行助は、出逢うべくして出逢った! 記憶は脳でしか保てない物だろうか。 目や鼻や舌や、雰囲気や・・・ この二人なら、どんな困難も乗り越えられそう! 読後感がしっとりと、温かい静かな雨に包まれたような穏やかな気持ちになれる。

Posted byブクログ