愚者の毒 の商品レビュー
ふとしたきっかけから出会った二人の女性。 外観も内面も全く違う二人だが、いつしか親友同士へと。 望美から紹介され、ある一家の家政婦として住み込みで働きはじめる葉子。 『入らずの森』から読み始め、これで3冊目となる宇佐美作品。 本書が一番好みだな。 炭鉱町での貧困生活、そこからの...
ふとしたきっかけから出会った二人の女性。 外観も内面も全く違う二人だが、いつしか親友同士へと。 望美から紹介され、ある一家の家政婦として住み込みで働きはじめる葉子。 『入らずの森』から読み始め、これで3冊目となる宇佐美作品。 本書が一番好みだな。 炭鉱町での貧困生活、そこからの犯罪、と重々しい雰囲気なのですが、登場人物たちがどこでどう繋がるのかが気になり一気読み。 ラストはやはり切なかったけれど、どこか吹っ切れた気持ちにもなり、爽やかな感じも。
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読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。 職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。 不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降はキツイ、本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅ...
読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。 職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。 不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降はキツイ、本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅう、山崎ハコの『織江の唄』が頭の中を流れ、読後に同じ筑豊炭鉱が舞台の『青春の門』の主題歌だったと気づく。内容はまるで違うのに、どん底感が一緒。 たいがいヘヴィー(で好き)だった『雪の鉄樹』を上回るヘヴィーさ。誰が誰なのかは予想がついたからその点に驚きはないけれど、綿々と続く過去の描写がつらすぎて、なのに読まずにいられません。 生きることは苦しい。それでも生きてゆく。
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たぶん、電車内の広告で見かけて。 振り返ってみれば、 ヘンデルが落とした白い石が夜の森に光っているように 手がかりは点々と残されていたが、 話の面白さにやみくもに突き進んでいって、 作者の思い通りに道に迷ってしまっていた。 もちろん、甘いお菓子の家ではないゴールにはたどりついたが。 行ったことのある場所が出てきたという個人的な理由もあるとは思うが、 人物描写といい、筑豊の時代描写といい、 とにかく面白かった。 ラストを救いとみるか、報いとみるかは人それぞれだろうが、 果たして人生の帳尻は合ったのだろうか。 自分は、達也が成長した姿がみれて、良かった。
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戦後日本の貧困を背景としたクライムミステリー。 ミステリーとしては真相が読めてしまったので、社会問題小説として感動しました。 タイトルの意味は作品中で説明があるのですが、「ある人には毒となる行動や存在がある人には薬(救い)となる」と解釈しました。 作品構成としては、2015年現代と1985年が交互に語られる第一章、2016年と1965年の話が交互にかたられる第二章、そして全ての謎が明らかになる第三章で、現代パートで先に何が起こるかを匂わせているので、どのようにしてそこに至るのかがミステリー的であり興味をそそり一気に読まされました。 ラストはそれまでの伏線から読めなくもないですが、それなりに衝撃でしたし、救いがあったのかどうかも解釈次第だと思います。 自分は、生き残った二人は救われていないのではないかと思いました。
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図書館で借りた本。過去と現在が交互に表現されてる構成なので、途中でネタバレのような核心は分かる。だが、そこに至るまでの過去が壮絶でやりきれない思いが募るばかり。筑豊炭鉱の末期の劣悪な環境で中学生時代を育った男女。当時の計画的な殺人隠匿は2人が生きていく為にどうしようもなかったと思...
図書館で借りた本。過去と現在が交互に表現されてる構成なので、途中でネタバレのような核心は分かる。だが、そこに至るまでの過去が壮絶でやりきれない思いが募るばかり。筑豊炭鉱の末期の劣悪な環境で中学生時代を育った男女。当時の計画的な殺人隠匿は2人が生きていく為にどうしようもなかったと思えるが、それは因果応報に繋がる。悲しいミステリー。
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最初の思わせぶりさにはちょっとゲンナリする部分もありましたが、3部構成で徐々に明らかになっていく様は見事でした。
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これをミステリと言って良いのかどうか...(^ ^; 「探偵役」が謎を解いていく、と言うよりは 読者にとって秘密にされていた事柄が 徐々に解きほぐされていく、という謎解き(^ ^; 一言で言うと「運命のイタズラ」って奴ですか(^ ^; え、まさか、そう来るの、の連続(^ ^;...
これをミステリと言って良いのかどうか...(^ ^; 「探偵役」が謎を解いていく、と言うよりは 読者にとって秘密にされていた事柄が 徐々に解きほぐされていく、という謎解き(^ ^; 一言で言うと「運命のイタズラ」って奴ですか(^ ^; え、まさか、そう来るの、の連続(^ ^; でも、なるほどそういうことだったかと理解した後に、 前半に戻ってみると腑に落ちたり。 (割と)穏やかな現在の描写と、 これでもかという不幸に見舞われる過去の描写が、 パラレルに進んでいく構成。 が、穏やかに見える現在にも、通奏低音のように 過去の「影」が常につきまとっている。 それだけに、日常の「何気ない幸せ」のシーンが 妙に泣ける(^ ^; 人間の強欲さ、罪深さ、狡さ、そして弱さ脆さ。 それら全てが針を振り切らんばかりに襲いかかる 「過去」の描写は、見ていて心が痛い。 歪んだ部落暮らしの民と、「向こう側」の大学生の 対比が秀逸。ひねくれた心象描写もリアル。 最後の最後、そこまでするか、という感じの 怒濤の暴露まで、もうお腹いっぱい(^ ^; 人間って、コワイ(^ ^; 例によって「ミステリなので」、具体的なことは 何一つ書けませんので、あしからず(^ ^;
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読んでいる途中に重すぎて、何回か読むの辞めようかと思ったし読了後も、ずっしりと重い内容が心に残った。 大きく分けて3つの構成から成っていて、その章の中でも過去と現在が行き来する。でも、ごちゃつく事なく読める。 この世の底辺で生きてきた、希美とユウ。本当に救われない事ばかりで読...
読んでいる途中に重すぎて、何回か読むの辞めようかと思ったし読了後も、ずっしりと重い内容が心に残った。 大きく分けて3つの構成から成っていて、その章の中でも過去と現在が行き来する。でも、ごちゃつく事なく読める。 この世の底辺で生きてきた、希美とユウ。本当に救われない事ばかりで読んでいるこちらまで、辛くて絶望的な気持ちになった。やっと救われたと思ったのもつかの間、どうやったって過去の暗い影が2人を追い詰め、苦しめ、それを忘れる為にまた嘘と罪を重ねて、塗り固める。。。 そんな中で出会った葉子と難波先生の存在。 2人にとっては、どんより厚い雲間からさす陽光のようだったんだろうな。 葉子も葉子で暗い過去を引きずりながら生きてきて、そんな時に出会った希美と難波先生は冷えた身体をそっと暖める、柔らかい毛布みたいな存在だった。 後半のパートに行くに従って真相が明らかになり、伏線の回収もちゃんと書かれているので、ミステリーとしては良い作品。 ただ、疲れていたり心がちょっと弱っている時に読むのはあまり、おすすめしないかも(笑)
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被害者である先生があまりにもいい人すぎる。ミステリでなく、達也との関わりで別ジャンルの話になっても十分読み応えがありそうな存在感だった。先生と達也と葉子の関係は、小川洋子の『博士の愛した数式』を思わせる静謐さがあってよかっただけに、ミステリになるとつらい。
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評価は5. 内容(BOOKデーターベース) 一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!
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