愚者の毒 の商品レビュー
第70回日本推理作家協会賞受賞作とのこと。 この作者の本は初めて読むが、暗い物語だった。 三つの時代にまたがって話が進む。老年となり過去を回顧している2015年、主人公の女性二人が出会った1985年、そして廃坑集落での子供時代の1965年。 後半1/3くらいからは読むスピードが上...
第70回日本推理作家協会賞受賞作とのこと。 この作者の本は初めて読むが、暗い物語だった。 三つの時代にまたがって話が進む。老年となり過去を回顧している2015年、主人公の女性二人が出会った1985年、そして廃坑集落での子供時代の1965年。 後半1/3くらいからは読むスピードが上がったが、それまでは悲惨だった子供時代など暗いトーンで話が進む。それだけ丁寧に書き込んであるということだが、暗く重いので好みは分かれるでしょう。
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『愚者』『毒』そして表紙のカラス。 薄暗さしか感じない‥‥ しかし、思いがけずなんともほんわかとした第一章。 職安でたまたま出会った二人の女性、葉子と希美。二人はお互いに惹かれ合い親友になっていき、発達障害の疑いのある幼い甥の達也を連れた葉子は住み込みの家政婦の仕事に就く。 この...
『愚者』『毒』そして表紙のカラス。 薄暗さしか感じない‥‥ しかし、思いがけずなんともほんわかとした第一章。 職安でたまたま出会った二人の女性、葉子と希美。二人はお互いに惹かれ合い親友になっていき、発達障害の疑いのある幼い甥の達也を連れた葉子は住み込みの家政婦の仕事に就く。 この雇い主の理科の教師をしていたという難波先生と達也のやり取りがとても心温まるもので、訳あってここに辿り着いた葉子と達也を取り巻く人たちとのほっこりなお話なのでは?と勘違いしてしまいました。 第二章からのあまりのトーンの違いに、読むスピードがガクンと落ちてしまった私。しかし、ミスリードに気付かされた途端に「は?どういうこと?」と超特急で読み進めました。 賢者と愚者、薬と毒。 どちらに転ぶかはその人次第。 全てが回収されて無駄のない文章。 読み応えたっぷりでした。
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- ネタバレ
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老人ホームに入った裕福なお婆ちゃんの回顧録 と思って読み進めたら、想像以上の人生だった…。 明らかな悪人はいるのだけど、あの二人はどうなの?悪人…か?でも、遺された側からすると…やはり悪人か。。 些細なボタンの掛け違いで起こってしまった気もする。 けど、当事者によって捉え方は違うから、ラストのああいう行動をしたのも仕方ない気もするし。
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初読みの作者さん。フォローしている方々のレビューに惹かれて買ってみた。 1985年、たまたま上野の職安で出会った葉子と希美。希美の紹介で葉子が深大寺の旧家で住み込みの家政婦として働くことになったのをきっかけに二人が関係を深めていく様が描かれる。 閑静な武蔵野での出来事の間に挟ま...
初読みの作者さん。フォローしている方々のレビューに惹かれて買ってみた。 1985年、たまたま上野の職安で出会った葉子と希美。希美の紹介で葉子が深大寺の旧家で住み込みの家政婦として働くことになったのをきっかけに二人が関係を深めていく様が描かれる。 閑静な武蔵野での出来事の間に挟まれる、2015年、伊豆の高級老人ホームで暮らす女性の述懐の中でさらりと語られる単語に物語の不穏さが増し、何は起きたのかを知りたくて頁を繰る手が進んでいく。 中盤以降で明かされる真相は、最後の最後まで予断を許さない、小道具の使い方まで含めて手が込んだ作りで、とても良く出来ていると思った。 ただ、第二章で、昭和の高度成長時代と対比して描かれる、1965年~66年にかけての筑豊の悲惨な生活の描写の濃さが強烈で、ミステリーとしての面白さが霞んでしまった印象も受けたのでした。
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貧困と犯罪、過去と現在 重いテーマであるため、終始暗澹とした気持ちになりました。 物語の大筋は序盤から何となく察することはできるのですが、ラストは衝撃でした。そしてタイトルの意味の回収。 圧倒的な闇の中にも僅かな明かりが灯る この明かりが、誰かの救いになっていればという希望が僅...
貧困と犯罪、過去と現在 重いテーマであるため、終始暗澹とした気持ちになりました。 物語の大筋は序盤から何となく察することはできるのですが、ラストは衝撃でした。そしてタイトルの意味の回収。 圧倒的な闇の中にも僅かな明かりが灯る この明かりが、誰かの救いになっていればという希望が僅かながらに残る読後が、不快さだけの読後感にならずに済んでいる所以なんだろう
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こちらでの評価が高いのも納得の作品。現代と過去の苦しい貧しい時代が交互に出ており、過去の壮絶で凄惨な時代を生き抜く2人の若者に苦しくなる。最後まで読めば2人は幸せになれるのかと読み続けるが、最後は人生の帳尻合わせが待っている。 伏線回収もされ、読み応えある作品だった。
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タイトルの意味、構成内容がとても深く、心をえぐられる日本推理作家協会賞受賞作品でした。 貧困と犯罪、社会の二極化を扱い、現在パートと過去パートを交互に描く作品は他にもあった気がします。けれども本作は、社会時事を取り込みながら、犯罪ミステリー・社会派寄りのヒューマンドラマとして...
タイトルの意味、構成内容がとても深く、心をえぐられる日本推理作家協会賞受賞作品でした。 貧困と犯罪、社会の二極化を扱い、現在パートと過去パートを交互に描く作品は他にもあった気がします。けれども本作は、社会時事を取り込みながら、犯罪ミステリー・社会派寄りのヒューマンドラマとして、絶妙のバランス加減だと感じました。 「私」という一人称展開で、「私」が誰なのかミスリードに混乱するなど、多くの伏線の張り巡らせ方と回収法も見事ですし、重いけれども先の見えない展開にも引き込まれました。 3部構成で時代・場所が変遷し、各章題『武蔵野陰影』『筑豊挽歌』『伊豆溟海』も秀逸です。 宇佐美さんは、貧困と飢餓、そしてそれ以上の絶望を読み手に突き付けます。社会への怒りさえ感じます。人の心に潜む暗い情念、負の側面、心の暗部を巧みに浮き彫りにしながら、読み手を激しく動揺させ、物語へ感情移入させてくれました。 タイトルでもあり、終末の「愚者の毒」の解釈は人それぞれでしょうが、著者は哀しく弱い立場の者、他から愚かに見える(そうならざるを得なかった)人たちへ救済の光を当てたのだと思います。「愚者の毒」をもってして、"裁き"ではなく"安寧"を与えたのでしょう。 愚者も毒も二面性があり、賢者と愚者、薬と毒の境界は曖昧です。でも、個人的に愚直な人や行為は好きです。そうなれない自分をさて置き、応援したくなりますもん‥。
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ちょっとした出来事で知り合った二人の女性が友情を育んでいく。 早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくのか気になって一気に読んだ。後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。 これが大変つらい。読んでいて胸が締め付け...
ちょっとした出来事で知り合った二人の女性が友情を育んでいく。 早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくのか気になって一気に読んだ。後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。 これが大変つらい。読んでいて胸が締め付けられる。 少年少女はただ一生懸命生きてきた。暗い過去に追いかけられながら、それでも一生懸命生きてきただけだ。 最後、穏やかだったのだろうか・・・もっと幸せを感じてほしい一生だったと願わずにはいられない。
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この世は良い行いが報われる因果応報であると信じたいです。 「無償の愛とか、母性とか、曖昧でとらえどころのないものは恐怖でしかない」 「他人の見解に便乗して賢者になるくらいなら、むしろ自力だけに頼る愚者であるほうがましだ」
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幼少期は大分の炭鉱で苦労して〜ってよくある話で引っ張って、ラストもなんか無理くりで、作者が結局、何を書きたかったのかあまりよくわからなかった。どうせなら達也視点も入れ込めばもう一捻りできたのかも。
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