愚者の毒 の商品レビュー
初めて読む作家さんですが、かなり面白かったです。 日本の現代ミステリーで面白いのは大抵読んでしまったかと思っていた自分が恥ずかしい。 まだまだですね、これからも貪欲に良作を探していきたいと考え直しました。 1980年代、葉子は深大寺の難波家で住み込みの家政婦として、甥の達也と...
初めて読む作家さんですが、かなり面白かったです。 日本の現代ミステリーで面白いのは大抵読んでしまったかと思っていた自分が恥ずかしい。 まだまだですね、これからも貪欲に良作を探していきたいと考え直しました。 1980年代、葉子は深大寺の難波家で住み込みの家政婦として、甥の達也と共に暮らしていた。 妹夫婦が借金苦の末に心中をはかり、生き残った達也を引き取らざるを得なかったためであった。 両親の心中を機に言葉を発しなくなった5才の甥の他、妹夫婦は多重債務による借金も葉子に残していた。 途方に暮れた葉子は、職安で生年月日が全く同じ希美と出会う。 2人次第に心を通わせるようになり、葉子は希美の紹介で難波家の家政婦という職を得る。 難波家には、かつて教職にあった主とその息子のユキオが暮らしていた。 葉子は深大寺で暮らすうち、ユキオに惹かれていく。 時は過ぎ、60代となった葉子は伊豆にある高級老人ホームに入居していた。 大腿骨に難病を発症し、夫のユキオには迷惑をかけずに暮らすためだ。 ここで静かに暮らしながら、葉子はかつて深大寺で起きた様々な出来事や、自分の生い立ちを思い返すー。 3つの章から成る本作は、葉子または希美の一人称で語られます。 第2章まで読み進めると、読者は1章で既に作者にまんまと騙されていたことに気付きます。 ここからもう一気読み。 驚かされる仕掛けは他にもいくつかありますが、これが本当に痛快。ミステリーを読む楽しさを思い出させてくれました。 さすがに最後に用意されていたサプライズには早い段階で気付きましたが、それでも十分に楽しめました。 とは言え、逃げ場のない苦しさに満ちた作品であるのも事実。 高度経済成長期の日本でこんな暮らしをしていた人達がいたなんて。知らなかった分、余計にずしりと響くものがありました。 また本作内で唯一、その胸中が誰の口からも語られることがなかった達也の気持ちを思うと、フィクションであると分かっていてもやりきれなくなりました。 良い作品に出会えました。 大満足です。 2020年60冊目。
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情けなさ、惨めさという自分を嫌う感情が静かに刺さるのが印象に残った。ミステリーとしては謎解きというよりも上手くできすぎという感じも否めない。
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全てが上手く繋がっているのだが、その事が逆に出来過ぎ感を感じてしまい、ミステリーとしてはちょっと評価が落ちた。 三井三池炭鉱は今は世界遺産との事なので、機会があれば訪れてみよう。
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話も登場人物も暗くて暗くて…陰気で… 最後、全てが繋がるのは気持ち良かったけど 結局、悪人たちは長生きして納得できない。 確かに辛く苦しい生い立ちだったけど やっていいこと悪いことの判断ができずにずっと言い訳や人のせいばかりしていて 私は二人の主人公に感情移入は出来なかった。 だけど、航空機事故はずっとクローズアップされるのに炭鉱事故はみんなが忘れ去っていて それに対する憤りはわかるような気がした。
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2022.03.21 同じ読書の趣味を持つ同僚(ソウルメイト)から借りた小説。 暗い話ぽいなぁ…と思いつつ読むのを止められず3時間半ほどで一気読みしてしまった。さすがソウルメイトのおすすめ。間違いがなかった。 とにかく暗い。主な登場人物の人生全部暗い。 ハコの達也への複雑な思...
2022.03.21 同じ読書の趣味を持つ同僚(ソウルメイト)から借りた小説。 暗い話ぽいなぁ…と思いつつ読むのを止められず3時間半ほどで一気読みしてしまった。さすがソウルメイトのおすすめ。間違いがなかった。 とにかく暗い。主な登場人物の人生全部暗い。 ハコの達也への複雑な思いが絡み合う第1部は切ない。最後のアコチャン!のところは涙が出そうになるほど。 序盤はハコがこの物語の主人公だと思わされていて、二部からガラッと立場が逆転するのもうまい。二部はもう、本当に救いがない。早く逃げて!殺して!と思いながら読んだ。 そういうことだったのか!と真相が徐々に明らかになっていき、全てが繋がるのが気持ち良い。 最後に難波先生の言っていた言葉、マス婆の言葉とともに伏線が全部うまく回収されたのが本当にうまいなぁと感心した。 難波先生は全てわかっていて、ユキオを哀しい人と言ったのがまた切ない。 ハッキリとは書かれていなかったけど、達也が引き取った商社マンの妻はきっと律子なんだろうと思う。
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宇佐美まこと6冊め。 3章構成で、第1章の武蔵野編がとっても素晴らしい。 先生の雰囲気がすごくいい。ちょっと「博士の愛した数式」っぽい感じ。 1章のラスト、カラスがしゃべるところとか涙出てくる。すごく切ない。 ガラッと変わる第2章の筑豊編。 ここはもう悲惨とした書きようがない。 そこで生活するしかない子どもは、とにかく可哀想。 運命共同体の二人。なんとなく「白夜行」と重なる。 そして、第3章は、答え合わせの章。 ご丁寧に解説付きで解答を教えてくれるような、そんな内容。 宇佐美まことさん、6冊めなんだけれど、 最初や途中の勢いが、最後に強引にまとめちゃうところが、 もったいない気がするなぁ・・・ あとものすごく残念なのが、表紙の絵。 なんだかなぁ。内容知らなかったら、絶対に手に取らないと思う。
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現在の章、昔の章があって、誰がどれだー?と思いながら読んだ。 昔の章は、難しくて途中あきてきてしまったけど、全部繋がった時はおもろしかった。 表紙がなかなか難しそうな絵とタイトルで、実際に購入するまで何度も見送り。 最後、もうこのまま何もなく終わるかなぁって思ってたら、そういえば達也がいたーってなった。
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圧倒されました。すごい小説です。九州の炭鉱。あんな壮絶な世界があるのでしょうか。のほほんと生きてきた身には想像もできない日常です。しかも子供たちが生活する場なのに。平等な世界、公平な社会などこの世にはなく、夢のまた夢なのですね。幼い達也くんと先生や由紀夫さんがふれあう武蔵野の場面...
圧倒されました。すごい小説です。九州の炭鉱。あんな壮絶な世界があるのでしょうか。のほほんと生きてきた身には想像もできない日常です。しかも子供たちが生活する場なのに。平等な世界、公平な社会などこの世にはなく、夢のまた夢なのですね。幼い達也くんと先生や由紀夫さんがふれあう武蔵野の場面だけは天国のようでした。最近暗い本しか読んでいないので気分転換したい感じです。
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身勝手な妹夫婦の負債を背負わされ、孤児となった口のきけない甥の達也と二人途方に暮れていた1985年、上野の職安で出会った希美と葉子。同じ生年月日だった事が縁で友情を深めていく。 希美の紹介で家政婦として住み込み働く葉子。 元教師の難波先生と、息子の由起夫との穏やかな生活の中で、い...
身勝手な妹夫婦の負債を背負わされ、孤児となった口のきけない甥の達也と二人途方に暮れていた1985年、上野の職安で出会った希美と葉子。同じ生年月日だった事が縁で友情を深めていく。 希美の紹介で家政婦として住み込み働く葉子。 元教師の難波先生と、息子の由起夫との穏やかな生活の中で、いつしか由起夫にひかれて行く葉子。 美人で頭が良く都会的な希美だが、人には言えない壮絶な過去があった。 全ての始まりは1965年筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった。 余生を老人ホームで過ごす葉子。その傍らには夫の由紀夫がいた。 難波先生の不審死をきっかけに過去の因縁が襲いかかる。 現在と、それぞれの過去が交互に書かれており、希美の過去では苦しくて読む手を止め、でも続きが気になり読み進め、ラストに近づくにつれて伏線回収が凄すぎて、このまま読み終えるのが勿体なくなり数日空けてはチビチヒ読み進め、読み終えて一週間引きずりようやくレビューにたどり着いた。 早く読みたいのに、読み終えなくない!!そんな一冊にまた出会ってしまった。 途中、「百夜行」や、「Nのために」がよぎった。 共通しているのは、逃げ場のない悪環境の中で生まれた罪。そして罪の共有。 読み終えてから表紙のイラストを改めて見ると二人の表情や輪郭がよりはっきり見え驚いた。
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現在と回想を行き来する構成なので、もっと疾走感が欲しかった。中々難度の高い方言が使われるし、読み進めづらい作品。
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