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愚者の毒 の商品レビュー

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75件のお客様レビュー

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    21

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2024/06/13

貧困と犯罪、過去と現在 重いテーマであるため、終始暗澹とした気持ちになりました。 物語の大筋は序盤から何となく察することはできるのですが、ラストは衝撃でした。そしてタイトルの意味の回収。 圧倒的な闇の中にも僅かな明かりが灯る この明かりが、誰かの救いになっていればという希望が僅...

貧困と犯罪、過去と現在 重いテーマであるため、終始暗澹とした気持ちになりました。 物語の大筋は序盤から何となく察することはできるのですが、ラストは衝撃でした。そしてタイトルの意味の回収。 圧倒的な闇の中にも僅かな明かりが灯る この明かりが、誰かの救いになっていればという希望が僅かながらに残る読後が、不快さだけの読後感にならずに済んでいる所以なんだろう

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2024/05/28

こちらでの評価が高いのも納得の作品。現代と過去の苦しい貧しい時代が交互に出ており、過去の壮絶で凄惨な時代を生き抜く2人の若者に苦しくなる。最後まで読めば2人は幸せになれるのかと読み続けるが、最後は人生の帳尻合わせが待っている。 伏線回収もされ、読み応えある作品だった。

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2024/03/28

 タイトルの意味、構成内容がとても深く、心をえぐられる日本推理作家協会賞受賞作品でした。  貧困と犯罪、社会の二極化を扱い、現在パートと過去パートを交互に描く作品は他にもあった気がします。けれども本作は、社会時事を取り込みながら、犯罪ミステリー・社会派寄りのヒューマンドラマとして...

 タイトルの意味、構成内容がとても深く、心をえぐられる日本推理作家協会賞受賞作品でした。  貧困と犯罪、社会の二極化を扱い、現在パートと過去パートを交互に描く作品は他にもあった気がします。けれども本作は、社会時事を取り込みながら、犯罪ミステリー・社会派寄りのヒューマンドラマとして、絶妙のバランス加減だと感じました。  「私」という一人称展開で、「私」が誰なのかミスリードに混乱するなど、多くの伏線の張り巡らせ方と回収法も見事ですし、重いけれども先の見えない展開にも引き込まれました。  3部構成で時代・場所が変遷し、各章題『武蔵野陰影』『筑豊挽歌』『伊豆溟海』も秀逸です。  宇佐美さんは、貧困と飢餓、そしてそれ以上の絶望を読み手に突き付けます。社会への怒りさえ感じます。人の心に潜む暗い情念、負の側面、心の暗部を巧みに浮き彫りにしながら、読み手を激しく動揺させ、物語へ感情移入させてくれました。  タイトルでもあり、終末の「愚者の毒」の解釈は人それぞれでしょうが、著者は哀しく弱い立場の者、他から愚かに見える(そうならざるを得なかった)人たちへ救済の光を当てたのだと思います。「愚者の毒」をもってして、"裁き"ではなく"安寧"を与えたのでしょう。  愚者も毒も二面性があり、賢者と愚者、薬と毒の境界は曖昧です。でも、個人的に愚直な人や行為は好きです。そうなれない自分をさて置き、応援したくなりますもん‥。

Posted byブクログ

2023/11/10

ちょっとした出来事で知り合った二人の女性が友情を育んでいく。 早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくのか気になって一気に読んだ。後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。 これが大変つらい。読んでいて胸が締め付け...

ちょっとした出来事で知り合った二人の女性が友情を育んでいく。 早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくのか気になって一気に読んだ。後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。 これが大変つらい。読んでいて胸が締め付けられる。 少年少女はただ一生懸命生きてきた。暗い過去に追いかけられながら、それでも一生懸命生きてきただけだ。 最後、穏やかだったのだろうか・・・もっと幸せを感じてほしい一生だったと願わずにはいられない。

Posted byブクログ

2023/10/29

この世は良い行いが報われる因果応報であると信じたいです。 「無償の愛とか、母性とか、曖昧でとらえどころのないものは恐怖でしかない」 「他人の見解に便乗して賢者になるくらいなら、むしろ自力だけに頼る愚者であるほうがましだ」

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2023/07/29

幼少期は大分の炭鉱で苦労して〜ってよくある話で引っ張って、ラストもなんか無理くりで、作者が結局、何を書きたかったのかあまりよくわからなかった。どうせなら達也視点も入れ込めばもう一捻りできたのかも。

Posted byブクログ

2023/07/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

っちゅうわけで、みんみん&おびーの腐女子え女子?コンビおすすめの『愚者の毒』です(また余計なこと言う) 毎回言ってますが、相変わらず驚愕の抽斗の多さですね しかも開け方が的確 今野敏さんなんかもめちゃくちゃ抽斗多いですけど「そこ開けなくていいのに」(また余計なこと言う) よっけいな〜ものなど〜なっいっよね〜♪ (遂に余計こと歌い出す) えー、どうしよ 方言について語るかタイトル『愚者の毒』について語るか うーん、ここは飛鳥に敬意を表して愚者の方で!(はい余計) いろんな説明すっ飛ばして先生が達也に言ったセリフね 「『命を奪う毒と命を救う薬との違いはほんのわずかである』ってね。人が普段気にとめもしない両性類、バクテリア、昆虫、植物、爬虫類なんかが護身用に身に付けた毒素が、人間を救う夢の薬に生まれ変わるんですよ。素晴らしいでしょう?小さいから役に立たないなんて思ってはいけません。この世に存在するすべてのものは意味を持って生まれてきてるんですからね」 「身の内に毒をお持ちなさい。中途半端な賢者にならないで。自分の考えに従って生きる愚者こそ、その毒を有用なものに転じることができるのです。まさに愚者の毒ですよ」 で、ラストです 達也が持っている知識や技術(毒)を、先生の言いつけを守って有用なもの(薬)に転じたわけですよね だから彼は最後に「愚者の毒」と言ったわけです 誰にとって有用だったのか?もちろん薬を飲む人にとってです、普通の人にとっては毒だけどその人にとっては薬(救い)だったのではないでしようか そしてもっと言えばその毒は達也の手から渡されなければ薬になり得なかったのではないか だから最後に彼は現れたのではないか そして物語はこんなことを問うているんではないでしょうか 果たして勇次と希美は中途半端な賢者だったのか、それとも身の内に毒を持った愚者だったのか そしてあなたは?

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2023/06/04

現在と過去のパートが交互にでてきて、徐々に過去に起きた事件の真実がわかってくるパターンの話。 過去パートの話がとても興味深く、自分の父親と主人公の年齢が近かったこともあり,最近までこんなに大変な時代があったのかと。炭鉱の話は本当に驚きの連続でした。 過去の出来事も4転5転もして,...

現在と過去のパートが交互にでてきて、徐々に過去に起きた事件の真実がわかってくるパターンの話。 過去パートの話がとても興味深く、自分の父親と主人公の年齢が近かったこともあり,最近までこんなに大変な時代があったのかと。炭鉱の話は本当に驚きの連続でした。 過去の出来事も4転5転もして,驚きの連続で,ほろっとさせられる部分もあり、最後は綺麗に収まり,いうことなしでした。 このかたは、女性の一代記とミステリーを絡めた作品が本当に素晴らしいです。

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2023/05/11

あっぱれです。 現代と過去ともっと過去を行き来する物語だが、伏線の回収、微妙な差異、流される違和感、それらがうまく繋がっている。 切なくもあり、怖くもある。 どこで誰が道を間違ったのか、これも全部運命なのか。 非常に良くできたストーリーでした。 是非とも実写化してほしい。 ただ、...

あっぱれです。 現代と過去ともっと過去を行き来する物語だが、伏線の回収、微妙な差異、流される違和感、それらがうまく繋がっている。 切なくもあり、怖くもある。 どこで誰が道を間違ったのか、これも全部運命なのか。 非常に良くできたストーリーでした。 是非とも実写化してほしい。 ただ、炭鉱のところの方言が読みにくかったです。 それ以外は読みやすく、登場人物の微妙な感情など、とてもうまく綺麗に表現されていました。 本当にあっぱれ。

Posted byブクログ

2023/04/18

2015年夏、一人の女性が介護付老人ホームを終の住処と選び、そこで過去と向かい合う。彼女が向かい合う過去と現在を交錯させながら、犯してきた罪が語られていく。 一章では、語り部を前触れなく変えてくるので、女性が誰であるのか、混乱して作者の思惑にはまる。 貧困から逃げる為、罪を犯す。...

2015年夏、一人の女性が介護付老人ホームを終の住処と選び、そこで過去と向かい合う。彼女が向かい合う過去と現在を交錯させながら、犯してきた罪が語られていく。 一章では、語り部を前触れなく変えてくるので、女性が誰であるのか、混乱して作者の思惑にはまる。 貧困から逃げる為、罪を犯す。罪を隠すために嘘を重ねる。嘘を貫く為に、再び罪を犯す。彼女はただ一人の友人であるはずの女性さえ、嘘の道具としてしまった。 1960年代の廃坑集落の社会問題を底に扱い社会派小説として、罪を重ねる犯罪小説として、ヒューマンドラマとして楽しめる作品でした。 養子に出した、幼児期精神的ストレスから失語症となっていた少年・達也が、成長して生物研究者となり名前を変えて、女性の前に現れる。彼が、自分の犯した罪を「愚者の毒」と表現する。作者が、タイトルにもしたこの意味合いをかなり考えたのだけど、決定打を思いつかなかった。 「愚者の毒」はヒ素の異名らしい。ヒ素を使うとすぐにバレてしまうから。達也がカラスを可愛がっていた事があるところから、トリックに使って身元をわからせる様にかなあー?単純に、少年期に蓄積された毒の放出の比喩かなー?毒の中でも筑豊の鉱山がらみで、ヒ素の表現と愚者を兼ねて?面白かったからまあいいか。

Posted byブクログ