〆切本 の商品レビュー
子供の頃、漫画雑誌を読んでいると時々「作者急病の為、○○は 休載しました」なんて書いてあるページがあった。好きな漫画家 だと作品の続きが読みたいばかりに、作者の病気快癒を願った。 長じてそれは急病でもなんでもなく、原稿が締め切りに間に合わない 時の決まり文句だと知った。...
子供の頃、漫画雑誌を読んでいると時々「作者急病の為、○○は 休載しました」なんて書いてあるページがあった。好きな漫画家 だと作品の続きが読みたいばかりに、作者の病気快癒を願った。 長じてそれは急病でもなんでもなく、原稿が締め切りに間に合わない 時の決まり文句だと知った。 そして、なんだかんだがあって編集者になった。そうしたら、自分が 締め切りに追われる身になった。 文芸誌や作家担当の編集者ではなかったので、相手の原稿の上がり をじりじりして待つ体験はないのだが、原稿を書いている背後で印刷 所の担当者が待っているとの状況は多々体験した。 本書は締め切りと格闘(?)する、明治から現代までの作者の日記 やエッセイ、手紙などをまとめた作品だ。時代や執筆方法が変わろう とも、締め切りに苦しめられる状況には変化がないんだねぇ。 いや、勿論、きちんと締め切りを守る作者の作品もあるんだ。森博嗣氏 の「締切に間に合ったら、一割多く原稿料を払う、遅れたら、原稿料を 減額する、という契約にしたらどうですか?」との提案は最もなんだ。 森氏も書いているのだが、編集者は楽して取った原稿より、苦労して 得た原稿の方を有難がるんだよね。これ、出版業界の病理だと思うわ。 収録作品のなかにはいくつか「え、締め切りテーマでこの作品?」と感じ たところもあるが、全体としてはそこそこに面白かった。 でもね、途中で紙質が変わっていると読みにくいの。特に同じ作者の 作品のなかで変わってしまうと、文字を追うのに戸惑うの。これは読ん でいる私が老眼のせいもあるんだけどね。 遠くに聞こえていたと思っていた足音が、急に背後で聞こえるようになる。 そして、気がつくと背後にピタッと張り付いている。奴の名は「〆切」。 編集者家業が開店休業なので、今は追いかけられることも、張り付かれ ることもなくなったけど。いなきゃいないで、ちょっと寂しいかも。
Posted by
アメトーークで見て気になってたもの。〆切について様々な視点からのエッセイ・手紙等アンソロジー。元気が出る。 付属のしおりもイカす。
Posted by
小説家も普通の人間なんだな、とつくづく思う。 〆切がなかったら名作はもっと少なかったかも? 「2」も借りてしまった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あの人も、この人も。有名なお名前ズラリ。 ”作家”があぶりだされていく・・・〆切りによって。 そのひとの生活や書く意義や生き方までも。人生も。 千差万別、色とりどりだ。 途中でさしはさまれる色付きページはなんだろう。 味わいかな。 表紙や見開きに配置された文章を読んでいるだけでもおかしみがわいてくる。 第4章だったかの、論文がとっても面白かった。 遠い未来へのモチベーションと楽観的な考え方。 参考文献もぜひ読んでみたい。 また新しい扉が開けそうだ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
作家・漫画家90人による〆切にまつわる話。書けなくて弁解ばかりしてるのかといえばそうでもなくて、各々の〆切考や〆切論など、エッセイや書簡など。第5章の小川洋子氏や米原万里氏のエッセイは大好きだなぁ。通常なら最後にある「発刊のことば」も谷崎のお詫びでシャレが利いてる
Posted by
スイッチがすぐに入る人となかなか入らない人がいる。すぐに入ったからといってそれが素晴らしいものになるかはわからない。子どもの頃の夏休みの宿題をしているように感じる。 編集者の苦労、書くほうの苦労。どちらも大変。
Posted by
古今の作家の〆切にまつわる文章を集めた本。 笑って読むつもりだったのだけど、読んでいるとこちらもなにやら〆切に追われているような気分になってきて、無駄に部屋を片付けたり別の本を読んだりしながら読み終えた。 ちなみに夏休みの宿題は、夏休み前に手を付けるけど「これでもう〇日分余裕出来...
古今の作家の〆切にまつわる文章を集めた本。 笑って読むつもりだったのだけど、読んでいるとこちらもなにやら〆切に追われているような気分になってきて、無駄に部屋を片付けたり別の本を読んだりしながら読み終えた。 ちなみに夏休みの宿題は、夏休み前に手を付けるけど「これでもう〇日分余裕出来た!」と思って遊びはじめ、気付くと8月が終わる、というパターンでした。 いやしかし〆切がないとなんにもできない、というのは全くその通りだなあ、と思ったり。
Posted by
”バカ本”と言っていいのか悪いのか非常に悩むところ…(苦笑 明治大正期の“文豪”はもちろん、現代にいたるまでの作家や評論家などが締め切りに追われる焦燥だとか諦観、怒り、悲しみ、困惑、言い訳、開き直りなどをその手で原稿用紙に落とした文章を集めたもの。 好きな作家であれば面白く同情...
”バカ本”と言っていいのか悪いのか非常に悩むところ…(苦笑 明治大正期の“文豪”はもちろん、現代にいたるまでの作家や評論家などが締め切りに追われる焦燥だとか諦観、怒り、悲しみ、困惑、言い訳、開き直りなどをその手で原稿用紙に落とした文章を集めたもの。 好きな作家であれば面白く同情心を抱きつつ読めるし、嫌いな作家であっても笑いながら読めること請け合いと思う。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
後世に名を残す作家先生方も、人間だったんだなあ。 あらゆる作家の「締切」に関するエッセイをまとめた一冊です。書けない苦悩。編集者との決死の攻防。子供みたいな言い訳。あんな名作の裏には、こんなことがあったのか!と頬が緩みます。 もしもわたしが作家ならと夢想する。仕事の依頼を受けてから、「まだ大丈夫」と思う。そして、近づく締切に恐れ、「もうこれ以上伸ばしたらまずい」というところまで来て初めて取り掛かる。締切日を原動力にする。こうしてなんとか書き上げるも、出来に納得できず、編集者に「一寸待ってくれまいか」と相談するんだろうねえ。締切の伸縮性に味をしめたら、きっと締切を伸ばすことが常態化するんだろうねえ。挙句、「小説や随筆の執筆依頼を引受けた時、私はこれまで締切り日を守らなかったことは一度もない。」と断言している吉村昭氏なんかを人非人扱いするんだろうなあ。そういうことをする作家がいるから締切が…云々かんぬん。ああ最低。今までの生き方から容易に想像できる。でも大丈夫。私は作家ではない。 夏休みの宿題を最初の5日で仕上げてしまう吉村昭、原稿が遅れる作家に憤り、ペナルティを課すべきだと主張する森博嗣(そんなんゆうてもたら金輪際遅れられへんで?)のような人種に憧れる。なりたいと願ってなれるなら、いくらでも願う。小指くらいなら差し出してもいい。
Posted by
夏目漱石や横光利一、坂口安吾、谷崎潤一郎、志賀直哉などの戦前・戦後作家から内田康夫、吉本ばなな、村上春樹という現代で活躍する作家まで、〆切破りそうだごめんねなどの〆切にまつわる随想を収録していて、好きな作家のパートは面白く読んだ。 現代作家で、まったく名前も聞いたことのない作...
夏目漱石や横光利一、坂口安吾、谷崎潤一郎、志賀直哉などの戦前・戦後作家から内田康夫、吉本ばなな、村上春樹という現代で活躍する作家まで、〆切破りそうだごめんねなどの〆切にまつわる随想を収録していて、好きな作家のパートは面白く読んだ。 現代作家で、まったく名前も聞いたことのない作家で、内容が単純に〆切前の生活記録みたいになっているやつは退屈に感じた。しかし、名前も知らない作家でもばりばり前向きに〆切に格闘していたり、あるいは現実逃避を決め込んでいたりでそれぞれに面白いものもあるので、人による。 最後はやっぱり、作家の〆切に間に合わないどうしようという赤裸々な叫びが心に刺さった。
Posted by