〆切本 の商品レビュー
人がもっとも雄弁になるとき、それは言い訳をするときである。 -------- 〆切。嫌な言葉であるが、これがある故に人は働く。何かを生み出す。人類が生み出した叡智。必要悪。それが〆切。かな? かくいう僕も〆切のオンパレードに苛まれ、自らに課していたはずのブックレビューの〆切を大...
人がもっとも雄弁になるとき、それは言い訳をするときである。 -------- 〆切。嫌な言葉であるが、これがある故に人は働く。何かを生み出す。人類が生み出した叡智。必要悪。それが〆切。かな? かくいう僕も〆切のオンパレードに苛まれ、自らに課していたはずのブックレビューの〆切を大幅に遅滞した。というかブッチしてしまった。ボチボチまた、毎日〆切にしたいと思うのだが、その初っ端に、こんな本を選んでしまったよ…。 「また、駄目ですか。」 こう妻が言う。 「駄目、駄目。」 「困りますね。」 「今夜、やる。今夜こそやる。……」 田山花袋である。 「だって、出来ないんだから。」 「書けましたか?」 「駄目だ。」 「だって、さっき書いていらしったじゃありませんか。」 「……」 だが花袋は、このあとふと夜中などに興が湧いてきて、筆を走らせる。人は勝手である。 もともと好きな作家であったが、何かこう、親近感が湧いちゃうなあ。 どうも閑がなくて、読書がされなくて困つてゐる。 漱石である。僕と同じじゃないか。また親近感が…。 こうした古典的文豪ばかりではない。 だいたい作家というものは、通常の仕事も耐えられないから作家になったのだ。 高橋源一郎。 いやそんなことないですよ、通常の仕事すげえやってた作家もおりますよ。 だけどわかる気がする。親近感。 この三人を挙げたことに深い意味はない。他にも多くな、魅力的な作家の魅力的な言い訳が登場する。ときに怠惰であり、ときに理論的であるが、まあ大体は怠惰である。 だが怠惰であるから作家であるのだ、という開き直りがある以上、それもまた創作行為の一環であろうか。 2時間まって、と何度も言われるから4時間待って電話をしたら、遅いから破いちゃった、などという逸話も登場する。なんじゃそりゃ、である。怠惰どころか幼稚なだけである。 人は言い訳をするときは雄弁になるという。ましてや言葉を繰るのに長けた作家たちである。この言い訳集を読まずして、何を読もうか。 中にはストレートな言い訳ではなく、〆切ということ真剣に考察しているようなものもある。〆切前に出してしまう、という話もある。 とにもかくにも、人というものがたまらなく愛おしくなってくるのだ。それにしても、よくもまあ、これだけの〆切ネタを集めたものだ。この本の〆切、守れたのだろうか。
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しめきり。 そのことばを人が最初に意識するのは、おそらく小学生の夏休みです――。 本書は、明治から現在にいたる書き手たちの〆切にまつわる エッセイ・手紙・日記・対談などをよりぬき集めた“しめきり症例集”とでも呼べる本です。いま何かに追われている人もそうでない人も、読んでいくう...
しめきり。 そのことばを人が最初に意識するのは、おそらく小学生の夏休みです――。 本書は、明治から現在にいたる書き手たちの〆切にまつわる エッセイ・手紙・日記・対談などをよりぬき集めた“しめきり症例集”とでも呼べる本です。いま何かに追われている人もそうでない人も、読んでいくうちにきっと「〆切、背中を押してくれてありがとう!」と感じるはずです。だから、本書は仕事や人生で〆切とこれから上手に付き合っていくための“しめきり参考書”でもあります。〈本書まえがきより〉 どんな仕事にも〆切はあります。企画書、プレゼン資料、納品物。この本には名だたる文豪、作家たちの〆切とまつわるエピソードが綴られた言わば言葉のプロフェッショナルによる〆切言い訳集。 たとえば、「用もないのに、ふと気が付くと便所の中へ這入っている。」「鉛筆を何本も削ってばかりいる。」「二十分とは根気が続かない」「私は毎日、イヤイヤながら仕事をしているのである。」「今夜、やる。今夜こそやる。」「ところが、忙しい時には、ねむい。」などなど。誰もが経験したことのある〆切に苦しめられた時の気持ちを代弁してくれる言葉の数々。そして本書は、“〆切”の効能•効果についても興味深く掘り下げている。 「いくら時間があっても、それで仕事ができるものではない。」とはエッセイストの外山滋比古氏。昔から、“京の昼寝”と言って農家や田舎の人たちは朝から晩までよく働く勤勉なのに対して 都会の人間はぶらぶらと遊んでいるようでいて実はいろいろな事を考え、そして実績も出していく。もちろん田舎の人たちのライフスタイルが悪いという意味ではなく、問題は時間があり過ぎることがいい仕事につながらない場合もあると指摘。〆切<終わり>が迫っているという危機感が自分の能力を飛躍させ、苦しさの後にはきちんと報いあると説いている。 確かに仕事を先にのばせば、どんどんやりにくくなり、出来栄えもイマイチ。今日やる仕事を明日やろうと思っていても、明日にはまた明日の仕事が待っていて、気がつけばどこから手をつけていいのか分からない状態、まさに巧遅は拙速に如かず。〆切というヤツは自分をみがく砥石にもなり、また自分を苦しめるムチにもなる。何より人生そのものに寿命という〆切がある。この〆切は明日かもしれないし50年後かもしれない。やっぱり今日できる事は今日やるのが一番だと頭ではわかっているけど、やめられないのが人の常。 夏目漱石から村上春樹まで90人の書き手による〆切話は、一流の作家たちも自分と同じ事でつまずき、乗り越えているんだと、読み終わるとなんだか勇気がわいてくる一冊。〆切を明日に控えている人にこそ、パラパラめくってみると気持ちが楽になれますョ。と、書きながらこの原稿も〆切当日にギリギリに書き終わったのでした。
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〆切守るのに苦労していたんだね。守れない言い訳,笑えるものが多いが,本人は真剣だったんだろうね。 〆切は守る,夏休みの宿題は始めに終わらせるという嫌な生徒だった私には理解できない怠け者が多くて笑えた。 既に続編もあるらしい。 新聞の書評で知って図書館に予約。結構待って入手。
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シミズにとっては『納期本』というべきサバイバルガイド。 私個人の力の及ばぬ世界で大いなる力が働き、突発的な発注と納期がイットフォローズ状態で近づいてくる…それが弊社チームの納期。私個人はへろへろになっても納期を守るタイプです。 『締切に遅れる作家を許容しているのは不合理である。だから、僕は編集部にこうアドバイスをしたこともある。「締切に間に合ったら、一割多く原稿料を払う、遅れたら、原稿料を減額する、という契約にしたらどうですか?」と。(中略)僕の提案は、今のところ採用されていない。「金で解決したくない」ということらしい。大変立派な綺麗事である。(中略)何故、合理化できないのか。』 森博嗣先生、大同意です。
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病気になったとか、急用ができたとか 編集者に必死で言い訳する作家先生たちの言い分が面白い。 〆切に追われる生活を憂い、〆切なんてなくなってしまえば良いのにと言う一方で 〆切があるからこそ、傑作が生まれることもちゃんとわかっている。 そもそも文章を書くことを生業としている作家が 文...
病気になったとか、急用ができたとか 編集者に必死で言い訳する作家先生たちの言い分が面白い。 〆切に追われる生活を憂い、〆切なんてなくなってしまえば良いのにと言う一方で 〆切があるからこそ、傑作が生まれることもちゃんとわかっている。 そもそも文章を書くことを生業としている作家が 文章を書けないことなどあるはずがなく ならばなぜ書けないのかというと そこに見えてくるのは、やっぱり 文章や物語に対する愛なのだ。 少しでも面白いものを、皆が評価してくれるものを 後世に残せるものを必死で生み出そうとするからこそ守れない〆切、、、 (なんだか書けない作家の言い訳のようだけれど(笑)) それを温かく、時に厳しく、たまには脅したりもしながら なんとか書かせようとする編集者との攻防にも 作家と作品に対する愛を感じるのでした。
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めっちゃくちゃ面白かった(笑)〆切・デッドライン、これは作家だけでなく、誰にでも襲ってくる非常に恐ろしいものである。私もそうだが、〆切を決めてもらわないとなかなか進まない。もちろんそれが重荷になることもあるが。文豪たちが同じように苦しみ生み出した名作たちがここにあることを、私は嬉...
めっちゃくちゃ面白かった(笑)〆切・デッドライン、これは作家だけでなく、誰にでも襲ってくる非常に恐ろしいものである。私もそうだが、〆切を決めてもらわないとなかなか進まない。もちろんそれが重荷になることもあるが。文豪たちが同じように苦しみ生み出した名作たちがここにあることを、私は嬉しく思うのだ。〆切が迫れば迫るほど怖くなる、何度も味わったあの気持ちを忘れずにいたいと思う(返却期限が迫った本をみつめながら)
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「〆切本」 http://sayusha.com/catalog/books/p9784865281538c0095 … 読んだ。面白かったー。大文豪、売れっ子、漫画家、詩人、みんな期限に間に合わない。〆切に遅れるのが大家の証明らしいし、遅れれば遅れるほど、その原稿の価値は上がる...
「〆切本」 http://sayusha.com/catalog/books/p9784865281538c0095 … 読んだ。面白かったー。大文豪、売れっ子、漫画家、詩人、みんな期限に間に合わない。〆切に遅れるのが大家の証明らしいし、遅れれば遅れるほど、その原稿の価値は上がるらしい。かつ、BPOの概念がない。出版界終わってるなー(つづく 遅れる作家と駆け引きしたい編集者。〆切に間に合わせる正当な行為は評価も感謝もされないなら、誰も〆切なんて守らないよなあ。本の作りが全体的にギャグになっていて楽しい。ページの最後の最後まで読んでびっくり笑。センスあるなあ。〆切とヤル気と出来に関する研究論文が一番面白かった(おわり
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これはもう、デザインですよ。表紙・裏表紙等々、そこに並んだ魅惑的な言葉の数々。 数多の文豪・作家たちとの〆切との闘い、編集者のジレンマ。
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締め切りについては誰もがエピソードを持っている。なぜ締め切りがあるのか,それに関連する人物事を想像することが大切なんだなぁ。締め切りを守る事で自分を守る。外山滋比古氏の文章は自分の身につまされる。
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たかが〆切、されど〆切。 それは今も昔も老いも若きも、もれなく苦しめ翻弄する魔法の言葉。 明治から現在に至る「書き手」達の〆切に纏わるエッセイ、手紙の数々。 時に季節のせいにし時に生まれ月のせいにしながら、人や物に当たり散らし不毛な嘘をつかせ、原因不明の頭痛腹痛発熱をもたらす。 あの著名な作家も「堪忍してくれ給へ、どうしても書けないんだ」と編集者にご丁寧な手紙を書く。 そんな時間があれば原稿を書け!と軽くツッコミたいところだ。 著名な文豪達が〆切に追われ七転八倒している様子は読んでいて微笑ましい。 あの名作もこの名作も苦労に苦労を重ねて生まれたものなのだ! 今日は奇しくもうちの娘達の夏休み最終日=夏休みの宿題の〆切日。 今年も何とか乗り切った、と安堵しながら今晩眠りにつきたいものである。
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