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かなわない の商品レビュー

3.9

72件のお客様レビュー

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  4. 2つ

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2024/09/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 久しぶりに読み直した。最初に読んだのは2016年、そこから8年経ち、自分が子どもを持った状態でどう見えるのか気になったのであった。近年の日記ブームの火付け役であるのは間違いない。今やSNSであふれる育児における本音を、自分の立場を明示しつつ、ここまでストレートに書いている本は、8年経過した今でもなかなか出会えない。そして人生の主体性が育児によって失われてしまう記録として、これほど濃密なものはない。だからこそ未だにロングセラーなのだろう。  子どもを育てる中で、しんどいことは山のようにあるが、こちらの思い通りにならないときがもっともしんどい。しかも、その意思を尊重しなかった場合、将来どのような子どもになってしまうのか?という見えない未来の十字架まで背負わなければならない。著者がそんな袋小路に追い込まれていく過程がありありと描かれていた。単純に育児、夫の生活が辛いと書いているだけではなく、暮らしのディテールの細かさと、感情の機微がバランスよく配置されているからこそ、読み手の心の深い部分にタッチしてくる。本著を読んで「母親失格だ」なんて言うのは、育児をしたことがない通りすがりの素人によるクソリプである。本著を読んで、同じような境遇の家族がどれだけ救われるか。実際、育児において孤独が眼前に出現すると本著のことを思い出す。2歳後半で絶賛イヤイヤ期なのだが、同じような場面に遭遇している著者の姿に勇気をもらった。彼女が「怒鳴った」と書くことで、同じように怒鳴ってしまった人はそこに共感を見出し反省するだろうし、今後同じ場面に遭遇した人はなるべく怒鳴らないようにできる。そんな一種のケーススタディとしての精度は一級品だ。  「正直に書く」のレベルが、その辺のエッセイとは雲泥の差であり、既婚者による恋愛の話がここまで書かれていることにも改めて驚いた。それを受け止めるECD氏の懐の深さに圧倒されつつ、それぞれの家族の形のあり方があるのだと読み終えると腑に落ちるのも不思議なことだ。一度目に読んだときと、今回読み直した中で大きく異なる点としてECD氏がこの世にいないことだ。彼の寿命に関する話は日記の中で時折登場するが、死の現実味が当然ながら存在しない。それはあくまで年の差のある関係ゆえのコメディリリーフのような意味でしかないのだが、読み手としてはこの数年後に亡くなることを知っているがゆえに胸が痛くなった。無限だと思われている時間が、我々の想像以上に有限であることに気付かされた。ECDの愛の定義は一生心に留めておきたい。

Posted byブクログ

2024/08/20

読後感はどっしりとしていた。 前半はパワーに圧倒されて、読むのに力が必要だった。 正直、ムムッとなることも書かれていたが、生身の人間味を感じられて、生きてる感覚を取り戻せるようだった。

Posted byブクログ

2024/06/18

赤裸々な文章とはこのこと、っていう感じ。 この日記を書かれた時の年齢も自分と近く、広島出身ということで白バラ牛乳や木次乳業もちらっと登場するのが嬉しい(島根出身の自分)。 と、途中までは思っていた。途中までは… 子どもに当たってしまうことや、親との確執など、全部他人事とは思えな...

赤裸々な文章とはこのこと、っていう感じ。 この日記を書かれた時の年齢も自分と近く、広島出身ということで白バラ牛乳や木次乳業もちらっと登場するのが嬉しい(島根出身の自分)。 と、途中までは思っていた。途中までは… 子どもに当たってしまうことや、親との確執など、全部他人事とは思えないエピソードが後半は多い…不倫まで。てんこもり。 ECDがどうなるか、先に知っているが故に、色々思いながら読んでしまう部分もあった。 幼少期の体験から自己肯定感が低いのが全ての原因、と『ちひろさん』の作者にも言われている。 子どもを愛したら、愛されなかった過去の自分が嫉妬する。わかる気がしてしまう。 自分も母や父に抱きしめて欲しい時が多々あったのに一度も抱きしめてもらえなかったと記憶している(本当に一度もなかったかはわからないが、母も3歳くらいから抱きしめた記憶はないと言う) また、好きなものも否定された記憶は濃く残っている。 すごく寂しかったが、私は祖母が代わりに抱きしめてくれたのが救いだった。 そのため、自分の子どもには抱きしめてあげたいし、祖父母(私から見た義父母)ともたくさん関わって、なんなら時々は私の悪口を言ってくれてもいいと思っている。 今自分の子を目一杯愛せて嫉妬することがないのは、やはり祖母に感謝したいところ。 母も仕事で忙しく(高卒で、今は課長になっているくらい)、ストレスもあり、しょうがなかった部分はあると思うが、だからと言って子どもに受け入れろよと言うのも違うと思うし、そう言う考えを肯定してくれるカウンセリング、、 読んでいるだけで心が軽くなった。 そして子どもに対しての態度、気をつけなくてはと身が引き締まった。 自己肯定感…やはり子育ての課題だなと改めて思う。

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2024/03/20

第2子出産の入院中に読破。 味わったことのある、育児中の孤独と自己嫌悪と罪悪感が 他人事とは思えず、むしろ濃縮されたそれらを否応なしに 追体験させられて、読み進めていくのがしんどかった。 どんどん私まで傷付いていった。憎くなるくらいには。 なのに、読み進めるのを止められない。...

第2子出産の入院中に読破。 味わったことのある、育児中の孤独と自己嫌悪と罪悪感が 他人事とは思えず、むしろ濃縮されたそれらを否応なしに 追体験させられて、読み進めていくのがしんどかった。 どんどん私まで傷付いていった。憎くなるくらいには。 なのに、読み進めるのを止められない。 読み手にどう思われるかを、全く気にしてない姿に 嫌悪感さえ覚えてしまったのだけど、それはいかに自分が 他者の視線を気にしているかの裏返しであると気付かされたり。 やーーーー、すごい。 他の植本一子の本、買ってしまったもんね。 気になって気になって。

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2024/03/05

日記とエッセイ。 日々の生活、子育ての大変さ、不倫に加えて2011年以降なので原発事故を経た放射線被害への不安についても取り上げている。 切れ味の鋭い筆致で、インモラルな気持ちや行動も隠さず大げさにも控えめにもせず書き切っている。

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2024/01/18

実在する人間のリアルな物語、想いに触れることができる稀有な本。 この圧倒的に率直な文章に対して、簡単に非難を浴びせられる人たちのことがわからないしこわい。これが人間じゃないか、と思う。あなただって案外近くにいるかもしれないのに。 これを読んで、もっといろんな人の、本当に考えている...

実在する人間のリアルな物語、想いに触れることができる稀有な本。 この圧倒的に率直な文章に対して、簡単に非難を浴びせられる人たちのことがわからないしこわい。これが人間じゃないか、と思う。あなただって案外近くにいるかもしれないのに。 これを読んで、もっといろんな人の、本当に考えていることを知りたいと思った。けれど、これ以上のものに出会うことができるのだろうか。

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2023/12/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いやー、すごい本だった。 帯に「叙事詩」って言葉が使われてたんだけどいや本当にこれは一大叙事詩。限界育児のこともさることながら夫の石田さんへの愛憎入り混じった思いとか、あと途中から一子さんの好きな人まで出てきて、あっ不倫……不倫だ……と読んでるこっちが後ろめたい。そして書き下ろしの「誰そ彼」本当にすごかった。これを書ける、書こうと思ったその覚悟がすごい。 この本が出ることによって一子さんはものすごく失うものが大きいんじゃないだろうかと思ったけれど、失うものが大きいんじゃないかと思うものって大抵得るものも同じくらい大きいんですよね。これを一冊の本にした、できたのはまじで一子さんの人生の財産だと私は思う。誰だよお前って感じですけど。この本も実は金原ひとみが紹介していて、それで興味を持って購入したものだったのだけど、金原ひとみがシンパシーを感じるなら私にとってはハズレがないよな。 本当に読んで良かった本でした。世の中の日記かくあるべしとまでは思わないけど、でも全てを曝け出そうともがく文章が私は好きです。

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2023/12/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

すごいものを読んだという気持ち。こんなに正直に自分のことを書ける人ってどれくらいいるのだろう。私も母とは確執があり、育てられ方も似ているので実家のお母さんへの言動、感情はなんとなくわかる。心療内科の先生の言葉もグサッとくる部分があった。一子さんって恋愛体質というか常に好きな人が必要な人で、そこも人に依存してしまう自分と似ている。でも決定的に違うのは、私はこんなに赤裸々に自分のことを書けないよ。本当にすごい。育児に惓んでとんでもなく疲れているのに(いるからか?)、毎日精力的に動く。ライブに行きまくり、仕事で出張もたくさんこなす。エネルギーが凄い。 前半は辛い育児日記、後半は好きな人が出来て苦しむ日記という感じ。 お弁当箱に玄米を詰めて仕事に向かうECDさん、淡々と育児をこなすECDさんの冷静さ、器の大きさを実感した。占いで「ECDさんは長生きする」と言われていたが…。 次はECDさんの本を読みます。

Posted byブクログ

2023/11/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

とても良かった。 本の内容はエッセイで、とても良かった事が書いてあるのではなく、むしろ逆の事。 マイナスな気持ちや状況を理解しようと色々考えてるが、それがまたらマイナスに繋がってしまう事。 毎日それが続く辛さ、過去の蓄積されたマイナスにも向き合っている。 「今、何をしても、誰といても、楽しくないのだ。自分の機嫌の原因が分からない。漠然と自分に対して不安がある。」 「そしてこんな自分にもいい加減疲れていた。」 私にもある黒い?グレー?の気持ちもまさにそれだ!と思った。 他の本も読んでみたい。

Posted byブクログ

2023/11/02

誰かの本当の生活を読むことを欲していた。特に、生きづらさや、ままならない恋や育児について書いたものを読みたかった。この精度の具体性を持った日記文学を読むことでしか助からない気持ちがある。ありがたい。

Posted byブクログ