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よこまち余話 の商品レビュー

4.3

59件のお客様レビュー

  1. 5つ

    28

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

    8

  4. 2つ

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2021/01/24

全体的にほのぼのとした文体で、精神安定剤のように読みました。 駒江さんに憧れます。最後、遠野くんの彼女の顔が見たかった。浩三くんの表情を見たかった。

Posted byブクログ

2020/02/07

その路地には秘密が漂っている―― 魚屋の次男・浩三は、同じ長屋のお針子・齣江を通じ、「いつかの人々」と出会うことに……。 ほぉ〜〜っ……これは、なんとも……いや〜、素晴らしい!! さすがは、我が読み友さん達が年間ベストワンに選んだけあるなぁ〜〜!!!(数年前の、だけど) なん...

その路地には秘密が漂っている―― 魚屋の次男・浩三は、同じ長屋のお針子・齣江を通じ、「いつかの人々」と出会うことに……。 ほぉ〜〜っ……これは、なんとも……いや〜、素晴らしい!! さすがは、我が読み友さん達が年間ベストワンに選んだけあるなぁ〜〜!!!(数年前の、だけど) なんとも不思議なお話ではあるんだけど、そこに醸し出される雰囲気?いや、空気感?とかが、妙にまとわりついてきて、四季の移ろい、匂いや、手触りなんかまでもを長屋の人々と共有している様な気分に浸る。 先をどんどん読み進めたいような、もったいなくてゆっくり味わいつつ読みたいような、またすぐ読み返したくなるような……良い時間を過ごさせていただきました〜〜♪

Posted byブクログ

2020/01/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 木内昇による夢幻能の世界。  時代は明治後期(人絹が開発段階にあることから知れる)。  長屋に住まうお針子の齣江(こまえ)、お向いの老婆トメ、魚屋の息子浩三らを中心に、当時の庶民の日常を丁寧に描く連作掌編。  それぞれの章は独立しているようで、季節のうつろいがきちんと描かれていて、連綿と時の流れは繋がっていることが知れる。折々の行事や、風習、旬のもの、着物などに、今や懐かしい風情が散りばめられており、それらを拾い読むだけでも楽しい。”火の守り神荒神様の祭”、 “渋柿は塩で漬けると渋が抜ける”、“中国の俗説で竹を植えると、よく茂るという竹酔日は陰暦5月13日”、“蜀江文様の狩衣”・・・etc. etc.  うつろう季節の中で、小学生の浩三が成長していく。 時々現れる不思議な物の怪たちの気配。子どもには見えるものが、その成長に応じて見えなくなってくるものがあるのを、我々は知っている。その類の物語なのかなと思っていると作者に一杯喰わされる。  木内昇は、本作で時間を自在に操る。古き良き日本のささやかな日常の描写に紛らせて、幻術よろしく、さまざまな仕掛けを各章の中に少しずつ、ごく自然に置いていくのであった。  以下の文章などは、単に、福岡伸一の動的平衡論っぽいなとメモしておいたが、読み終わった後だと、本作の世界観を見事に表現していることに気づかされる。 「浩三には、この世のありとあらゆるものが速度によって司られているように見えていた。人の生命も風景も、一時たりとも止まってない。天神様のお社も、お山の森も、石造りのビルも、細かい粒子がほんのわずかの時間、形を成しているだけのものに感じられ、ひどく脆く見えるのだ。齣江やトメさんや級友たちまでも時折粒子の塊に思え、不安になることもあった。」  “速度を司る”とあるが、その速度、時の流れを操っているのが作者に他ならないと、驚かされる仕掛けになっている。  過ぎ去った時間、いやそれすらも過去か未来かも不確かだ。それらの時間が、物語が進行する現世に、多重露光のように重なっている。こんな仕掛けは見たことがない。  その仕掛けを、さりげなく示唆するのが能楽の存在だ。能舞台の鑑賞場面もあるし、随所に、世阿弥の『花伝書』の引用が出てくる。そうして、この物語が、超現実的存在 (神・霊・精など)であるシテと、現生を生きる者が触れ合う世界を描いていることを暗示していたのだった。お見事。  だがしかし。そんな夢物語だけで終わらせないところが、この作者の巧みなところ。  お針子の齣江の元に足繁く通う糸屋がしきりに勧める人絹、レーヨンの存在がある。日本で製造が開始されたのが1915年のこと。世は、1914年に第一次世界大戦が始まっており、日本は戦争景気に沸き、戦争の世紀へと雪崩れ込んでいく。  後半の登場人物、浩三の中学での先輩である遠野の存在は、その後の暗澹たる昭和史に巻き込まれていくことが想像されて落涙を禁じ得ない。  虫好きの遠野は、その進路として技術系の道を進むことを教師ら世の大人に勧められる。これは、作者が『光炎の人』で描いた無線通信技師郷司音三郎の姿を、否応なく思い出させるのだった。  どんだけの仕掛けを潜ませてるんだ!と舌を巻く。

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2019/11/15

「戦前」の日本のどこかの町の、どこかの長屋の住人達を舞台にした話。あえて「」を使ったのは、確かにあの戦争の前で、多分大震災も起こる前、場所もおそらく東京なのは確実だけど、それがいつの、どこなのかははっきりと描かれていないから。 時代物ではない。ファンタジーでもない。ただ物語である...

「戦前」の日本のどこかの町の、どこかの長屋の住人達を舞台にした話。あえて「」を使ったのは、確かにあの戦争の前で、多分大震災も起こる前、場所もおそらく東京なのは確実だけど、それがいつの、どこなのかははっきりと描かれていないから。 時代物ではない。ファンタジーでもない。ただ物語である、としか言えない。夢と現、こことあちらを人と時間が行き来しつつ、最後に全てが収まる所に収まる最終頁は快感の一言に尽きる。

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2019/08/19

現在と、過去と未来、此岸と彼岸が交わる、切ないお話。もういなくなった人、去っていく人、これからを生きていく人の営みが間近に感じられて、胸がいっぱいになった。

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2019/06/16

その路地は秘密を抱いている。ここは、「この世」の境が溶け出す場所。お針子の齣江、“影”と話す少年、皮肉屋の老婆らが暮らす長屋。あやかしの鈴が響くとき、押し入れに芸者が現れ、天狗がお告げをもたらす。

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2018/10/19

過去と現在。この世とあの世。境がいつしか溶けていく。そんな横丁に住んでいる人たちのお話。浩三は魚屋の次男。成績がいいので中学校に進むように先生から言われているが、学費のことで少し悩んでいる。母親と兄貴に迷惑になりはしないかと。駒江はお針子をしている。腕がいいと評判で色々と注文が入...

過去と現在。この世とあの世。境がいつしか溶けていく。そんな横丁に住んでいる人たちのお話。浩三は魚屋の次男。成績がいいので中学校に進むように先生から言われているが、学費のことで少し悩んでいる。母親と兄貴に迷惑になりはしないかと。駒江はお針子をしている。腕がいいと評判で色々と注文が入ってくるらしい。トメ婆さんはそんな駒江の家に入り浸っている。彼らが交わすこの世とあの世のとの橋渡し。

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2018/04/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東西を、天神様のお社へ続く石段と御屋敷裏の土塀に挟まれた狭い路地。お針子の齣江、皮肉屋の老婆、「影」と話す少年が暮らすそこは「この世」の境が溶け出す場所。 雨降らしの鈴が鳴るとき、押し入れには芸者が現れ、天狗が手招きしてお告げをもたらす。 この幻想的だけど、どこかもの哀しくて切ない物語に心底引き込まれた。魚屋が、和菓子屋が、生地屋が、糸屋が行きかう長屋の風情に、ゆっくり身を委ねながら頁をめくる喜び。 かつて確かにいた人の面影、積み重ねられた記憶、時を超え降り積もる人々の想い、そんな大切なことどもが自分にもあるのだと感じられる幸せ。 確実に訪れる離別の予感さえ、輪廻を感じさせて心地よい。 「覚えていればいいの。みんなが忘れてしまっても、覚えていてくれればいいのよ」齣江の言葉に思わずホロリ。 随所で引用される「花伝書」を読んでみようかな・・・という気になった。

Posted byブクログ

2018/01/08

一昔前の日本のどこか、長屋でひっそりと暮らす人たち。 市井の人情話のような始まりですが、美しい幻想譚へと広がりを見せていきます。 温かく、切ないお話でした。 天神様の裏手にある狭い路地。 そこに面した古い長屋に住むお針子の齣江は、光の入る窓辺で、いつも仕事をしています。 30半...

一昔前の日本のどこか、長屋でひっそりと暮らす人たち。 市井の人情話のような始まりですが、美しい幻想譚へと広がりを見せていきます。 温かく、切ないお話でした。 天神様の裏手にある狭い路地。 そこに面した古い長屋に住むお針子の齣江は、光の入る窓辺で、いつも仕事をしています。 30半ばにはなっているかという年頃の落ち着いた女性。 向かいに住む老いたトメさんは、何かと食べ物を分けてもらいに上がり込む。 魚屋の次男坊の浩三も、よく立ち寄っては昼寝をしたりしていました。 糸屋の若旦那は人造絹糸を売る話をしにきたり。 編笠をかぶった謎の人物が現れたり。 季節を感じながら丁寧に生きる庶民の暮らしぶりに、ほっとするような心地よさがあります。 齣江のしっとりした雰囲気と、浩三の無邪気な視線も相まって、一緒にずっといたいような気分に誘われますね。 「人にうまく伝わらないようなことばかり考えてる」 「そしたら、そこのところが、浩ちゃんなのね」 こんなことを言い合えるなんて。 まだ狐狸妖怪がいてもおかしくなかった時代の摩訶不可思議な要素がしだいに膨らんできて、トメ婆さんの正体?が現れるようなシーンも。 明かされる齣江の一途な想いが、こちらの心にもずっと残ったまま。 作品の魅力を伝える言葉が見つからなくて、もどかしい思いをしていました。 この優しい手触り、織り上げられた世界の柔らかでいて確かな空気感はぜひ、読んでみて、味わってください。

Posted byブクログ

2017/08/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

行く先を変えることは出来ないけれど、来た道を辿ることは出来るのかもしれない…。 表通りから離れた狭い路地にひっそりと佇む古い長屋。 その長屋の周囲で起こるちょっと不思議な出来事。 知っているはずなのに見知らぬ所に迷い込んでしまったような、心細さが随所に漂う。 長屋の住人達や周囲の人達の、家族ぐるみの仲の良さが一層物語の儚さを煽る。 そして最後に迎えた「はじまりの時」…何とも言えない切なさに泣けた。 別れの寂しさとはじまりの予感、相反する気持ちに胸打たれた素敵な物語だった。 読了後、表紙の赤い糸に気付いて、また泣けてきた。

Posted byブクログ