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よこまち余話 の商品レビュー

4.3

59件のお客様レビュー

  1. 5つ

    28

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

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2017/07/17

長屋の人々の生活を描いた小説かなくらいに思って読み進めていたけれど、自分でも気付かないうちに不思議で面妖な世界がじわじわと入り込んでくる。 とにかくよく分からないことが、当たり前のように出てきて展開が進んでいくけど、それらに対する説明やら詳細は描かれていない。最後まで明らかにはな...

長屋の人々の生活を描いた小説かなくらいに思って読み進めていたけれど、自分でも気付かないうちに不思議で面妖な世界がじわじわと入り込んでくる。 とにかくよく分からないことが、当たり前のように出てきて展開が進んでいくけど、それらに対する説明やら詳細は描かれていない。最後まで明らかにはならない。けど、そこで描かれている感情や想いは確かに心に届いてくる。 なんだかよく分からない戸惑いや切なさはよりリアルで、私達も浩三と一緒の気持ちで最後を迎えている。 なんとも不思議で妖しくて、温かくて切ない話だった。 またいつか、かみしめかみしめ、読み直したい。

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2017/07/16

次元が行き交う不思議なよこまち。主要人物も脇役も、登場人物皆が魅力的です。私は質屋さんの自分の仕事に対する想いに心を打たれました。

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2017/06/28

読み始めは明治期の長屋を舞台にした、ごく普通の人情もののようでした。しかし、読み進めるに従い、思わぬ方向に話が進みます。 直前に読んだ梨木香歩さんの「冬虫夏草」と同系統の不思議な物語。日常の中にごく普通に”不可思議”が紛れ込んで物語が進んでいきます。ただ、最初から全体の構成がきち...

読み始めは明治期の長屋を舞台にした、ごく普通の人情もののようでした。しかし、読み進めるに従い、思わぬ方向に話が進みます。 直前に読んだ梨木香歩さんの「冬虫夏草」と同系統の不思議な物語。日常の中にごく普通に”不可思議”が紛れ込んで物語が進んでいきます。ただ、最初から全体の構成がきちんと作られていたのでしょうね。最初はポツンと現れた”不可思議”がどんどん広がって行くようになっています。 木内さん、良いですね。時代小説がメインですが多作に流されることなく(時代小説作家は人気が出ると多作になることが多いような気がします)、一作一作本当に手塩に掛けるという感じで丁寧に書かれています。文章も見事です。 ただ欲を言えば、齣江さん、トメさんがこの長屋に現れたその裏をもう少し描いて欲しかったかな。あからさまで無く、ほんの少しで良いのですが。

Posted byブクログ

2017/05/24

今年1番の本に出会えた気がする。この本がどのように素晴らしく、どんなに感動したか、それを伝えたいのに口に出そう、文字に起こそうとなると言葉がはらはらと砂のようにこぼれ落ちていってしまう。未熟な私にはそれをカタチにできる力が備わっていない。だからといって恥ずかしい気持ちは微塵もなく...

今年1番の本に出会えた気がする。この本がどのように素晴らしく、どんなに感動したか、それを伝えたいのに口に出そう、文字に起こそうとなると言葉がはらはらと砂のようにこぼれ落ちていってしまう。未熟な私にはそれをカタチにできる力が備わっていない。だからといって恥ずかしい気持ちは微塵もなく、それ以上にこの本に出会えた喜びで満たされている。今いえることは、心の髄で感動し受け止められたということ。言葉として紡ぐにはまだ時間がかかる。生涯、わたしは何度も読み返すだろう。いつか自分の言葉で語れる日が来ることを信じながら。

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2017/11/09

冒頭の書き出し部分がとてもいい。 「路地は幅一間ほどで、東西に細く伸びている。東の端には一対の銀杏(いちょう)に両脇を護(まも)られた石段があり、その先は天神様のお社へと続いていた」 いきなり作者の描く 古き良き時代の小さな街へ導かれる。 その路地の長屋に住む人々は お針子の齣...

冒頭の書き出し部分がとてもいい。 「路地は幅一間ほどで、東西に細く伸びている。東の端には一対の銀杏(いちょう)に両脇を護(まも)られた石段があり、その先は天神様のお社へと続いていた」 いきなり作者の描く 古き良き時代の小さな街へ導かれる。 その路地の長屋に住む人々は お針子の齣江、皮肉屋の老婆のトメ、 魚屋のおかみさんと子供たち、 そして齣江の元へ訪れる糸屋の青年など。 この青年がかぶる鳥打帽や 日常的に出てくる着物の話などで、 背景は大正時代かなと思われる。 魚屋の息子、浩三少年はお針子の齣江が台のお気に入り。 家に入り浸っているうちに 齣江の周辺にときどき不思議な現象が起こることに気が付いた。 「雨降らし」と呼ばれる店賃の集金人が 齣江のまわりに、托鉢の坊さんのような鈴をならして現れると いつも不思議なことが起こるのだ。 そして浩三が中学生になったころ、 一人、また一人と 浩三の周りの人がこの世界から消えていった・・・。 昔の日本の庶民的な つつましい生活が匂いたつような短編集だった。 決して押しつけがましくなく、それでいて、 自然描写や文章そのものから、強烈な和の美しさが感じられた。 ストーリー自体は、『茗荷谷の猫』を思わせる不思議物語だが、 詩情的なしっとりとした文章が印象深い作品だった。

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2016/12/22

とある長屋の日常かと思えば、読み進めるうちに、不思議な世界がじわじわと広がっていく・・・。こういうお話、好きです。

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2016/12/20

長屋を舞台にした時代小説なのかと思って読み進めると、なんとなく違和感が。人々の日常の中にひっそり不思議なものが紛れ込んでいました。いつの間にか彼岸と繋がったり、過去と未来が交わったり。といってもあまりにひっそりとしているので普通に生活していたら見逃してしまうような不思議です。読み...

長屋を舞台にした時代小説なのかと思って読み進めると、なんとなく違和感が。人々の日常の中にひっそり不思議なものが紛れ込んでいました。いつの間にか彼岸と繋がったり、過去と未来が交わったり。といってもあまりにひっそりとしているので普通に生活していたら見逃してしまうような不思議です。読み終わるのがもったいなくて最後の方は一日に一話ずつ読みました。梨木香歩さんの家守綺譚を思い出します。木内さんってこんな本も書くんだな。オススメです。

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2016/12/15

ほとんどが、狭い路地の中、そこに並ぶ長屋を舞台に語られる。 よくよく思い出せば、学校や、ミカンが採れる暖かい土地なども出て来るのだが、それでも、読者である自分は不思議な閉じた世界に閉じ込められていて、どうやってもそこから抜け出せないという感じがする。 多分、登場人物も、そんな空間...

ほとんどが、狭い路地の中、そこに並ぶ長屋を舞台に語られる。 よくよく思い出せば、学校や、ミカンが採れる暖かい土地なども出て来るのだが、それでも、読者である自分は不思議な閉じた世界に閉じ込められていて、どうやってもそこから抜け出せないという感じがする。 多分、登場人物も、そんな空間に囚われているようだが、ただ一人、糸屋だけが何も考えない無頓着さで、壁をぶち破って自由にかなたとこなたを往き来しているのである。 彼だけが、現実的で即物的で、悪気はないのだろうが俗物的だ。 路地には常に、黄昏の黄ばんだ光が満ちている気がする。 夏を語られていても、陽の光は低く差し込む。 時の流れがどうなっているのか考えると眩暈がしてくるが、後から思い出すと、なんとなく「そうなのかな〜?」と思いあたるふしがあったり。 例えば、齣江が、静岡らしきところに6日ほど滞在したのは、ちょうどお盆の時期だったのかな、とか。 もう一度読み返したい。 あちこちに不思議の種が転がっていそうだ。 鍵は『花伝書』なのだろうか。 夢と現(うつつ)に境目はないのだろうか。

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2016/12/11

敢えて分類するとしたら、ファンタジー?、小説?、なのか... 時代背景は昭和初期、辺りなのだろうか。 自然のままか、それに近い緑と影・自然が織りなす臭いや湿り気・土や草の匂い、空気がきれいだった分だけ冬でも日差しは強く、その分影も濃かった...。 ”不思議さ”のタネ自体は珍しいも...

敢えて分類するとしたら、ファンタジー?、小説?、なのか... 時代背景は昭和初期、辺りなのだろうか。 自然のままか、それに近い緑と影・自然が織りなす臭いや湿り気・土や草の匂い、空気がきれいだった分だけ冬でも日差しは強く、その分影も濃かった...。 ”不思議さ”のタネ自体は珍しいものではないと思うが、設定や表現・各人物の交錯などで、静かに面白く読めました。 ”まえがき”も”あとがき”も無いのですが、妥当です。 有ったら無粋だし邪魔なだけで、当然のことながら心得て構成されているようです。

Posted byブクログ

2016/12/01

彼岸とこの世の混じり合う間,古いものが息づいている長屋,不思議な空間時間を生き直している人たち.作者の優しい目は,疑う事を知らない浩三の目を通して暖かく注がれる.そして何より主人公達はもとより,糸屋のすっとぼけた若だんな,和菓子屋の親爺,質屋の親爺など魅力的な脇役が揃っている.

Posted byブクログ