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あなたを選んでくれるもの の商品レビュー

4.2

60件のお客様レビュー

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2015/12/26

脚本家のミランダジュライが、次作の脚本に行き詰るなか、売り買いの情報誌「ペニーセイバー」で、様々なものをうる人たちへの取材を試みるようになる。彼らの当たり前のようにリアルな生活は、写真も掲載されて興味深い。ウェブに残らない、記録されないライフログを集めていくジュライ。映画「ザ/フ...

脚本家のミランダジュライが、次作の脚本に行き詰るなか、売り買いの情報誌「ペニーセイバー」で、様々なものをうる人たちへの取材を試みるようになる。彼らの当たり前のようにリアルな生活は、写真も掲載されて興味深い。ウェブに残らない、記録されないライフログを集めていくジュライ。映画「ザ/フューチャー」のメイキング的側面もあり、ノンフィクションのリアルアメリカの記録でもあり、面白かった。

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2015/11/17

The Futureを観終わった後、どうしても晴れなかった曇り空のような気分に、ようやく収まりどころが見つかった。もがいてもがいてもがいて、ただ自分の信念だけを信じて次の日には自信を失くして、なんとか手がかりを手繰り寄せてまた信じて、ミランダがようやく手に入れた小さな光は、びっく...

The Futureを観終わった後、どうしても晴れなかった曇り空のような気分に、ようやく収まりどころが見つかった。もがいてもがいてもがいて、ただ自分の信念だけを信じて次の日には自信を失くして、なんとか手がかりを手繰り寄せてまた信じて、ミランダがようやく手に入れた小さな光は、びっくりするほど暖かいものだった。 喪失の先に何があるんだろうといつも思っていた。最愛の人を亡くしたその後の人生を生きていくことができるんだろうかと、いつも恐ろしかった。それでも、誰かを信じて愛したという記憶は、なくなることはないんだと、何よりもリアルなストーリーで教えてくれたミランダとそのインタビュイーに、心から感謝を込めて本を閉じた。

Posted byブクログ

2015/11/04

『世界の端っこをめくって中をのぞきこみ、その下にある何かを現行犯でつかまえようとしつているーーその、"何か"は神ではなく(「神」という言葉は問いであると同時に答えでもあって、だから想像をふくらませる余地がない)、それに似た何かべつのものだ』ー『 アンドルー 』...

『世界の端っこをめくって中をのぞきこみ、その下にある何かを現行犯でつかまえようとしつているーーその、"何か"は神ではなく(「神」という言葉は問いであると同時に答えでもあって、だから想像をふくらませる余地がない)、それに似た何かべつのものだ』ー『 アンドルー 』 岸本佐知子フォロワーでいることとは、一風変わった作家と付き合うということ。ニコルソン・ベイカーしかり、ジュディ・バドニッツしかり。ポール・オースターは柴田元幸翻訳であるべきだと思うけれど、少し薄暗いところのある作家を柴田さんが翻訳するとスマートに柔らかくなり過ぎる。例えばミランダ・ジュライのような。 ミランダ・ジュライは翻訳が待ち切れずに苦労しながら原文で読み始めてしまいたくなる作家。もちろん読解力に問題はあり、ニュアンスを掴み損ねてしまうことは承知の上で。「It choose you」も一応読み通したし、それなりに楽しめた筈と信じたい。けれどやはり掴み損ねているものは大きくて、例えばタイトルのニュアンスだって、原文では少し宗教的なニュアンスを感じていたのだけれど「あなたを選んでくるるもの」と訳出されるとミランダ・ジュライ的存在論の響きがきちんと伝わる。岸本さんの訳はホントにいいね。 『なぜならドミンゴは今まで会った誰よりも貧乏だったから。もっと不幸だったりもっと悲惨だったりする人は他にもいたけれど、いっしょにいて、彼ほどいやらしい優越感をかき立てる人はいなかった。わたしたちはわたしのプリウスに乗って帰った』ー『マチルダとドミンゴ』 ミランダ・ジュライのどこがそんなにいいのか、他人に伝わるように説明するのは難しい。何故ならば、読みながら自分自身が混乱してしまうから。そしてその混乱した感じが楽しいから。でもそれは単なる混沌ではなくて、自分が知らない何かを納得しようとするためのじたばたとした足掻き。自分自身の中にはそれを説明出来る言葉を持たないのに、何とか自分の知っている概念を組み合わせてそいつを一つ処に納めようとする努力。足掻いている内にはっきりと答えが出る訳ではないけれど、何となく今までとは違う理解が急に湧いてくる。そのことにとても共感できるから楽しいのだと思う。もちろん本書はドキュメンタリーなので、映画「君とボクの虹色の世界」のように直接的にミランダ・ジュライの精神性が見え易く、そういうじたばたした有り様は直接的に言葉に置き換えられているけれど、彼女の短篇集「no one belongs here more than you」はフィクションだけれど、やはり同じような感慨は湧いてくる。例えばそれは保坂和志の面白さや、柴崎友香を読む楽しさと通じるところがあると自分は思う。但し、繰り返しになるけれど他の人が同じように面白がるのかどうか、自分には分からない。 その頭がぐるぐるする感じは原文で読んでも同じように感じるのだけれども、その後に付いてくる自分自身の悩みに落ち込むスパイラルは、岸本佐知子の翻訳を読むと一層深くなる。日本語だと読む行為と考える行為がある程度同時平行的に進むので、目線だけか先へ先へと進んでしまって頭が置き去りにされ何度も戻って読み直すということになる。それは自分にとって最も楽しい読書の在り方なのだ。早く「My first bad man」も訳して下さい!

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2015/10/31

ただのインタビュー集なんかじゃ、全然なかった。日々のこと、悩むこと、生きること。あなたはわたしではないけれど、わたしでもある。

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2015/10/19

物を書くことや誰かを愛することと、少し似ているかもしれない。何の見返りも得られないかもしれないけれど、それでもあきらめずに続けていると、知らず知らず何か意義が生まれていたりする。

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2015/10/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

紙媒体のフリーペーパーに「売ります」広告を出している個人に会いに行くフォトドキュメンタリー。 映画の脚本がかけずに苦しんでいた著者の思い付きからはじまったドキュメンタリー。 知らない人々の、生々しい人生が垣間見れた。

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2015/09/27

映画「THE FUTURE」の脚本を書きあぐねていたミランダ・ジュライが、ネット検索に逃避するよりまし、と敢行した「ペニーセイバー」という無料オークション紙の出品者たちへのインタビュー集。他者とはこんなにも強烈なものだったのだろうか。

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2015/09/23

脚本のヒントになれば、と思いついて始めたインタビュー。ペニー・セイバーに私物を出品した人達。今の時代にPCを使わず、昔ながらのやり方で紙の媒体に広告を出す。共通点はそれだけなのに、ひとりひとりなんと訳ありで興味深いことか。写真から伝わるその場の雰囲気。相手の声まで聞こえてきそう。...

脚本のヒントになれば、と思いついて始めたインタビュー。ペニー・セイバーに私物を出品した人達。今の時代にPCを使わず、昔ながらのやり方で紙の媒体に広告を出す。共通点はそれだけなのに、ひとりひとりなんと訳ありで興味深いことか。写真から伝わるその場の雰囲気。相手の声まで聞こえてきそう。翻訳は名エッセイ「ねにもつタイプ」の岸本佐知子さん。

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2015/09/09

35歳のミランダ・ジュライに「失敗したり、訳もわからず何かをしたりする時間は、今のわたしにはもうないのだ」とか、彼女の脚本の中の人物に「50を過ぎたら、あとはもう小銭だ」「本当に欲しいものを手に入れるには足りないってことだよ」などと言われると、まさにその小銭の年代の私はドキッとす...

35歳のミランダ・ジュライに「失敗したり、訳もわからず何かをしたりする時間は、今のわたしにはもうないのだ」とか、彼女の脚本の中の人物に「50を過ぎたら、あとはもう小銭だ」「本当に欲しいものを手に入れるには足りないってことだよ」などと言われると、まさにその小銭の年代の私はドキッとする。グサリと刺されて、何を言う〜というイヤな汁が出る。 しかしその彼女の映画のキーマン…救い主と言ってもいいかもね…になったのが81歳のおじいさん、というところが、なんというか、先の読めない人生という脚本にぴったりの、面白い皮肉だ。

Posted byブクログ

2015/08/26

ミランダ・ジュライの最新作はインタビュー集。 『ペニーセイバー』という小冊子に広告を出している人々にインタビューしたものなので、相手は何らかのものを『売りたい』と考えている。それは革のジャケットであったり、オタマジャクシであったり、カラーペンのセットであったりと様々だ。そして商品...

ミランダ・ジュライの最新作はインタビュー集。 『ペニーセイバー』という小冊子に広告を出している人々にインタビューしたものなので、相手は何らかのものを『売りたい』と考えている。それは革のジャケットであったり、オタマジャクシであったり、カラーペンのセットであったりと様々だ。そして商品同様、売り手の人物もそれぞれ全く異なっている。インタビュー集として1冊の著作になっているせいか、それが2作目の映画にも使われたせいでもあるのか、売られているものも、作中に登場する人物も、いっぷう変わったものに見える。変わっていると言えば、『売りたい』という広告ばかりが掲載されいる『ペニーセイバー』というフリーペーパーの存在も、今の時代、けっこう変わっている。ちょっとクラフト・エヴィング商會を思い出すエピソードもあるが、こちらは基本的に実話というのが面白い。インタビューに行ってみたら、ちょっとヤバそうな感じの人だった……というのも実話ならではだろう。 さて、この本が書かれたのは、著者が脚本に行き詰まっていたのがきっかけだが、その映画も無事に完成し、日本でも公開された。本国では長編小説も上梓されたようだ。この長編の邦訳が出るのはいつになるのだろう……。

Posted byブクログ