チェインドッグ の商品レビュー
高校時代の挫折から立ち上がれずに鬱鬱とした日々を送る大学生のもとに手紙が届く。送り主は世間を戦慄させた連続殺人犯。彼は言う、ひとつの事件だけは冤罪だからその真犯人を探してほしい、と。 …という導入部から、真犯人探しと大量殺人者との面会をが描写されていく、というどこか「羊たちの沈黙...
高校時代の挫折から立ち上がれずに鬱鬱とした日々を送る大学生のもとに手紙が届く。送り主は世間を戦慄させた連続殺人犯。彼は言う、ひとつの事件だけは冤罪だからその真犯人を探してほしい、と。 …という導入部から、真犯人探しと大量殺人者との面会をが描写されていく、というどこか「羊たちの沈黙」を思い起こさせる展開は速やかに流れるように進みます。えぐい描写も少なからずありつつも、先へ先へと読まされてしまいます。 物語は、理解できない「殺人者」に親しみを感じそうになるのが背中がざわざわとした感覚になり、とても気持ち悪く感じます。けれど、随所にサプライズも盛り込まれているので、気持ち悪くとも先を知りたくなるという二律相反に取り込まれてしまうのです。 そうして結末は…やっぱり気持ち悪い、のですが。こういった心理的なホラーな側面のある物語では、ある意味定番な展開ともいえましょうか。当然スッキリとはしませんが、「ああ嫌な物語だった…物語で良かった…」というお腹いっぱいな感覚にはなりました。やや胃もたれ気味になるかも。 …と、けなしてるようですが、面白かったのは確かです。ただ人を選ぶのもまた、確かですね。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
榛村の高い知能にしてみたら、人の心を操るなんて、チョロいことなんだろうな。塀の中のいい暇つぶしになっているというか、彼の「お遊び」か「実験」なんだろうか。 榛村はやがて死刑になるだろうけど、彼のような能力(?)を持った人は外部の人と接見させてはいけないと思う。今度は自分の手を汚さずに閉ざされた塀の中にいても人を操れる。世の中を混乱させることができる。ある意味、無敵ではないか! 実は私、最後まで気付けなかった。騙されてしまった。この手のマインドコントロールにも気を付けなくちゃ・・・と自分に対しての注意喚起。(でも何に気を付ければいいの?同情心を煽るような話とかかな?)
Posted by
サイコ、とか、シリアルキラーって、自分が犯す罪自体よりも、そこにいたるまでの相手の心や感情をコントロールすることに快感を感じるモノなのかも。 敵意、恐怖、同情、憧憬、そして、共感、そんないろいろな感情を手の上で転がすことが目的なのかも、と思ったり。 そして、表紙の少女。セーラー服...
サイコ、とか、シリアルキラーって、自分が犯す罪自体よりも、そこにいたるまでの相手の心や感情をコントロールすることに快感を感じるモノなのかも。 敵意、恐怖、同情、憧憬、そして、共感、そんないろいろな感情を手の上で転がすことが目的なのかも、と思ったり。 そして、表紙の少女。セーラー服の血痕と無表情さのギャップに鳥肌。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
一行目:信号が変わり、いっせいに人波が動いた。 著者はホーンテッドキャンパスのイメージがあったので、軽め萌えミステリかなと思っていたが、重厚感もあり結構良かった。 イノセントデイズと同時期に読むとこちらに軍配。早川書房だと思うと少し違和感がある。 人生の挫折を味わい、大学でも浮いている主人公雅也。ある日、自宅に届いた手紙で呼ばれたのは刑務所ー24件の少年少女殺害容疑の死刑囚、榛村ーだった。 幼いころ、彼の営むパン屋で顔見知りだった2人。立証された9件の殺人事件のうち1件は冤罪だ、と訴える。雅也は調査するうち、榛村の色々なカオが見えてくる。さらにはなぜか雅也の母に辿りつくー と思いきや、榛村は雅也だけではなく、多数の人間に声をかけていたことがわかる。 壁の中からも、まだ昔逃した獲物を支配しようとしていたのだ。 思わずマインドコントロールされそうになる、なかなかの作品。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人犯・榛村大和からのものだった。世界のシリアルキラーの名前がひたすら、書き連ねられており、そちらにばかり目がいってしまい、作品になかなか集中が出来ず。シリアルキラーをテーマにした作品なので、仕方ないのかもしれないがもうちょっと抑え気味にしてほしかったかもしれない。他作品が好きなだけに今作品は非常に残念だった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
義務教育は優秀だったものの、高校時代に落ちこぼれ、今ではFラン大に通い周りを軽蔑しながらも自嘲する学生、筧井雅也のもとに一通の手紙が届いた。 差出人は榛村大和、5年前に9人の殺人により逮捕された連続殺人犯だ。そんな男からの手紙に乗り雅也は拘置所のアクリル板越しに榛村に会う。 連続殺人犯が口にしたのは、8人の殺人は認める。好みだった男女の高校生を拷問の末に惨殺して庭に埋め、その上に植えた木を眺めるのが癒しだったという。 しかし、9件目の成人女性に対する殺人は自分ではないと主張した。曰く、好みではない。自分が殺してもいない9件目まで自分のせいにされるのには納得がいかないと、榛村は主張した。 雅也はそれまでのやる気の無さから一変し、熱に浮かされたように調査を始めた。 知能犯はある種の美学を持つ。一定の決められたルールに従い罪を重ねる。 何故このような人物が生まれたのか。育ったのか。虐待されて育った過去だけが原因ではない。 気味が悪い。不気味。 櫛木理宇はそんな犯人を描くのが上手い。 関係者に話を聞いてまわり、真実に近づくにつれて雅也もまた、危険に近付いていく。
Posted by
チェインはわかるけど、ドッグ?というのが読み終わったときのいちばんの感想。いい感じの気持ちの悪さだが、暴行・拷問描写がみっちりしっかりしているので好みは分かれそう。結構きつかった。 ラストがいまいちしっくりこなくて、確かにそうなんだけどじゃああの人物を出してる意味はなんなんだろう...
チェインはわかるけど、ドッグ?というのが読み終わったときのいちばんの感想。いい感じの気持ちの悪さだが、暴行・拷問描写がみっちりしっかりしているので好みは分かれそう。結構きつかった。 ラストがいまいちしっくりこなくて、確かにそうなんだけどじゃああの人物を出してる意味はなんなんだろう変わった感じを覚えなかったけど、となってしまった。読み落としたところがあっても二度は読まなくていいやという程度。 犯罪者の言うことは信じちゃだめだ。
Posted by
連続殺人犯なのに、なぜか魅力的で、彼だけが自分に優しくしてくれた、と錯覚させられる。 途中、意外と引き込まれてる自分にゾッとした。 縛られて、繋がれている。 あのオチはストーリー的にはありだけど、かなりつらいな。
Posted by
シリアルキラーである榛村から、主人公に1通の手紙が届く。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」というもの。 主人公はかつて神童と呼ばれていたが、今は三流大学に属している。コミュ障で友人もおらず、他の学生を見下している。なんというか、本当にダメで、...
シリアルキラーである榛村から、主人公に1通の手紙が届く。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」というもの。 主人公はかつて神童と呼ばれていたが、今は三流大学に属している。コミュ障で友人もおらず、他の学生を見下している。なんというか、本当にダメで、弱くて誰の敵にもなれない存在である。それと対比するように榛村は綺麗な顔をした穏やかな話し方をするイケメンで、徐々に人を破滅に追い込む毒を持つシリアルキラーだ。その悪魔的なカリスマにうっとりとなる。 主人公は榛村の事件を調べていく。そして榛村の過去、榛村に関わることで人生を変えられた人を見ていく。そしてだんだんと事件の真相、彼の行動の真意が見えてくる。実に怖くてぞくぞくする。 この本は最初の1ページから「嫌な予感のする」物語だ。そしてそれは最後の1ページまで油断が出来ない。 あまりにも不穏で、面白いと言っていいのか分からないけれども、面白い。
Posted by
「落ちぶれた優等生」であるひねくれた主人公が、なぜか連続殺人犯に自分の汚名を晴らすことを依頼される、というミステリ。この連続殺人犯が奇妙に魅力的なキャラクターで、彼の周りの人々の反応も実に奇妙。そして事件の解明に関わることで主人公が立派に成長していく物語……かと思いきや。 ……う...
「落ちぶれた優等生」であるひねくれた主人公が、なぜか連続殺人犯に自分の汚名を晴らすことを依頼される、というミステリ。この連続殺人犯が奇妙に魅力的なキャラクターで、彼の周りの人々の反応も実に奇妙。そして事件の解明に関わることで主人公が立派に成長していく物語……かと思いきや。 ……うわ。そういう流れに行きますか。たしかに某作品にも代表されるように、魅力的な犯罪者は他者に強く影響し取り込んでしまうものですが。いったいどうなっちゃうの、とはらはらどきどき。 一見爽やかな青春ミステリのようで、芯はサイコサスペンスのようでもある。恐ろしくも魅力的な一作でした。
Posted by