ある小さなスズメの記録 の商品レビュー
キツネは王子様に言いました。 「君にとって僕はただのキツネでしかない。 でもね、 絆を作れば、絆さえ作れば 俺と君はお互いに無くてはならない存在になる。 俺は君無しではいられなくなるし、 君も俺無しではいられなくなるんだ。」 生まれたスズメも最初はただのスズメでした...
キツネは王子様に言いました。 「君にとって僕はただのキツネでしかない。 でもね、 絆を作れば、絆さえ作れば 俺と君はお互いに無くてはならない存在になる。 俺は君無しではいられなくなるし、 君も俺無しではいられなくなるんだ。」 生まれたスズメも最初はただのスズメでした。 でも彼は 育ての親である人間のクレア(著者)が 自分にとってかけがの無い人だ、と気付いた瞬間、 キツネ同様の思いにかられたのでしょうね。 臆病で警戒心の強いスズメが 人とコミュニケーションをとろうと、 絆を結びたいの。と、歩み寄り、著者と共に生きてきた奇跡の様な生涯の記録。 星の王子様のキツネの話も良くわかった。 自分以外の誰かと絆を結ぶ、 かけがいの無い存在になる事以上に素敵な事は この世のどこにもないのだ。 たとえ、それが言葉の通じない小さなスズメであろうともね。
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この本が愛おしいと思うのは、彼らが生きていた時代が戦時下だということもあるのかもしれない。 命は尊い。それがどんないきものであろうとも、尊厳を持ってあたるべきものだと、この小さき生き物が教えてくれる。 その愛おしいという気持ちをいつまでも持つことができれば、この世界は変わっていけ...
この本が愛おしいと思うのは、彼らが生きていた時代が戦時下だということもあるのかもしれない。 命は尊い。それがどんないきものであろうとも、尊厳を持ってあたるべきものだと、この小さき生き物が教えてくれる。 その愛おしいという気持ちをいつまでも持つことができれば、この世界は変わっていけるのかも知れないと思った。
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ペットとしてではない、彼(クラレンス・イエスズメ)との暮らし。 最期まで勇敢で聡明。 いとしいスズメ。 愛鳥家として、この本に出会えてよかった。 泣きました。
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クラレンスの素晴らしさに深く心をうごかされ、さらにそれを冷静に観察し続ける作者の気品ある文章に惹きつけられました。作者の存在があったからこそ、クラレンスがこのように生きていけたのだ、と思います。こうした品格が持てたら、と心から思いました。
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とても知的でチャーミング、そして愛おしいスズメの記録。知られていないだけで、この世界のどんなに小さな生き物にも、こうした魅力ある個性が秘められているのかもしれないなあ、と思ってどきどきしました。梨木さんのあとがきの一文「小さなもの、細やかなもの、ゆるやかに流れる時間、穏やかな日常...
とても知的でチャーミング、そして愛おしいスズメの記録。知られていないだけで、この世界のどんなに小さな生き物にも、こうした魅力ある個性が秘められているのかもしれないなあ、と思ってどきどきしました。梨木さんのあとがきの一文「小さなもの、細やかなもの、ゆるやかに流れる時間、穏やかな日常を愛する心は、猛々しい何かへの、静かな抵抗そのものになる。」に大きくうなずきました。
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この作者さんの優しさと、賢さと。上品さが伝わる文章。 スズメもその生態がとっても愉快。 小さい頃拾った雛鳥のことを思い出しました。
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先の大戦下における、ある寡婦によるイエスズメとの偶然の記録。 それぞれの鳥には個性がある、との考えからの言及。 『まったく同じ生きものなど存在しない、という昔からの決まり文句がある。大量生産が、神の創造のあり方であったことはなかった。それを私たちが社会に取り入れるのならーーそ...
先の大戦下における、ある寡婦によるイエスズメとの偶然の記録。 それぞれの鳥には個性がある、との考えからの言及。 『まったく同じ生きものなど存在しない、という昔からの決まり文句がある。大量生産が、神の創造のあり方であったことはなかった。それを私たちが社会に取り入れるのならーーそれがどれほど、現代文明の発展に不可欠のものに見えたにしてもーー神が導こうとされた方向とは全く違う遠いところへ私たちは旅をすることになり、本来の道から急激に逸(そ)れるため、破滅的な事態は避けられないものになるだろうと私は確信する。しかしまだ、私たちは来た道を戻ることができるし、戻らねばならないのではないか。』(P99〜100) 文庫化による訳者梨木香歩さんのあとがきは、より胸に迫るものがある。 『なにか熱に浮かせられたように強大なものに向かって暴走している今、現代にあって、この小さなスズメが、再び、けなげにも時代の小さな錘(おも)りの役割を果たしてくれることを願い、また信じている。』(訳者文庫版あとがきより) そして小川洋子さんによる解説も。 『ならば、人間が編み出した言葉とは一体何なのだろうと、つい考え込んでしまう。他の動物が誰も選ばなかった、言葉を持つという道を突き進む私たちは、どこへ行こうとしているのか。』 例えば、これらの女性の言葉に耳を傾けるほうが、「女性が輝く社会の実現」よりもよほど生命にとって大切なことだと、悲惨なニュースに接して強く思う。(20150201)
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梨木香歩さん訳、酒井駒子さん絵、解説小川洋子さんというトリプルパンチにやられて買ってしまった。 戦時下のイギリス。ピアニストで夫を亡くした著者が、ある日家の前で、親に見捨てられた障害のあるスズメの雛を見つけて育て・一緒に暮らした12年間の記録。 記録であるけれど、二人がすごく親...
梨木香歩さん訳、酒井駒子さん絵、解説小川洋子さんというトリプルパンチにやられて買ってしまった。 戦時下のイギリス。ピアニストで夫を亡くした著者が、ある日家の前で、親に見捨てられた障害のあるスズメの雛を見つけて育て・一緒に暮らした12年間の記録。 記録であるけれど、二人がすごく親密で特別な関係であったことが伝わる。 「無名の語り」(宮本ふみ著)、「家庭の医学」(レベッカ・ブラウン著)を読んだ時にもかんじたけれど、心に刻みつけられたような誰かについての記憶(その人との別れ)を語るとき、まるで観察記を書くように抑えた文体で書くスタイルがわたしはすごく好きだ。 おそらく書くことをためらうくらい、もの凄い喪失を著者は感じているけれど、それでも書こうとする。と、そういう書き方でしかできないのかも知れない。 失った大切なものについて書くのはきっとものすごくつらい、でも、幸せな日々や愛したものを思い出したくて、忘れたくなくて、自分以外の人にも覚えていて欲しくて、書いてしまうのではないかな。 仕事していても思うけど、観察を続けるうちに愛情がうまれてくるし(実験系の人とかもそうだと聞く)、愛をもって世話したい相手には、やっぱり観察せざるを得ない。どうしたら幸せに出来るかと、観察する。 最近なに読んでてもけっきょく仕事のこと考えてるな…
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本来、いのちとはこのように磨き、輝かせ、 最後の最後まであきらめず、たたかい、 味わい尽くすものなのだろう。 スズメとか人間とかもはや種などは問題にならない。 いのちの輝きや今日を生きる歓びが圧倒される量で 本の中から溢れて出てきた。 第二次世界大戦中のイギリスで、 キップス...
本来、いのちとはこのように磨き、輝かせ、 最後の最後まであきらめず、たたかい、 味わい尽くすものなのだろう。 スズメとか人間とかもはや種などは問題にならない。 いのちの輝きや今日を生きる歓びが圧倒される量で 本の中から溢れて出てきた。 第二次世界大戦中のイギリスで、 キップス夫人の家の玄関先で助けられた スズメのクラレンスの生涯の記録。 キップス夫人がクラレンスに対する距離感。 とても丁寧に、クラレンスを尊重する生活。 こんな風に相手に働きかけることが、個性と豊かな表情を育むんですね。 この本のクラレンスの晩年の写真を見ればわかります。 生まれつき障碍がある上に、生死を彷徨う大病をし、 自慢の美しかった体の模様も 高齢でボソボソになっているのに あの生き生きと目が輝いていることったら! 毎朝起きた時、今日は何をしようと ワクワクソワソワしていたんだろうなって。 自分の人生なんだから、自分主体で生きなさい。 やれないことを悲しむのではなく、 やれることを存分に発揮して工夫して楽しもうと クラレンスから次から次へとアドバイスしてもらえた一冊です。 実は私も知ってます。 生後半年しか一緒にいられず、 事故でお星さまになった猫「ぬり」ちゃん。 生まれつき目がほとんど見えず、 でも毎日こちらまで楽しくなるぐらい 生命力にあふれ、何をしようかじっとしていなかった猫。 「階段のぼれたよ」 「階段をひとりで降りられるようになったよ」 「見てみて!木に登れるようになったんだよ」 毎日が冒険で、毎日が新しい挑戦で、 毎日が失敗で、そして成功したときの 爆発するような歓喜。 そして遠く離れた今でも 生きることってそれだけで楽しいんだよと 小さい体で教え続けているわたしの大切な猫の先生。 だからクラレンスの話も大げさな表現ではなく こういうスズメだった…というか こういう「いのち」だったんだろうなと。 クラレンスもキップス夫人も 「いのち」を輝かせる良き手本の先生として 手元に大切に置いて定期的に再読したいと思います。 挑戦しつづけること。肝に銘じます。
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何気に評価が高いので、思わず購入。 小さな生き物の命の尊さに感銘を受ける。 と同時に、作者の人間性にも。 人間の都合で自己満足の溺愛をするのではなく、 きちんと生き物に向き合っている。 だから、スズメも生涯を全うできたのであろう。 淡々と読んでいくと、しんしんと胸に染みてくる一冊...
何気に評価が高いので、思わず購入。 小さな生き物の命の尊さに感銘を受ける。 と同時に、作者の人間性にも。 人間の都合で自己満足の溺愛をするのではなく、 きちんと生き物に向き合っている。 だから、スズメも生涯を全うできたのであろう。 淡々と読んでいくと、しんしんと胸に染みてくる一冊。
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