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ある小さなスズメの記録 の商品レビュー

4.2

52件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

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2020/07/05

第二次世界大戦という激動の時代の中の、スズメとの12年と7週と4日に渡る日々を綴った名作。 たくさんの愛情を注がれ、大往生と言えるであろう、まさに生ききったスズメの人生は、暗い時代と比較すると真逆であることがとても印象深い。 そして時折描かれる窓の外の鳥達との対比は、意図的ではな...

第二次世界大戦という激動の時代の中の、スズメとの12年と7週と4日に渡る日々を綴った名作。 たくさんの愛情を注がれ、大往生と言えるであろう、まさに生ききったスズメの人生は、暗い時代と比較すると真逆であることがとても印象深い。 そして時折描かれる窓の外の鳥達との対比は、意図的ではないかもしれないが、当時の時代背景を考えると、とても示唆に富んでいるように感じる。

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2020/09/03

文庫化していたのを見つけて購入。この訳者でなかったら手に取らなかったと思う。ちいさなすずめの生涯が、深い愛情と聡明な観察力で綴られている。若い頃のパフォーマンスや歌の才能より、老いてゆく日々の描写が印象に残る。訳者あとがきと、編集部による著者についての文章も良い。

Posted byブクログ

2020/04/08

軒先で手にした小さな小さな命。 第二次世界大戦中のロンドンでキップス夫人と小さなスズメのクラレンスとの交流を描いたノンフィクション。 鳥と人間にはまず言葉という圧倒的な壁があり、さらに振る舞いや生き方にも大きな違いがあります。 キップス夫人はこの小さなスズメ・クラレンスに対して...

軒先で手にした小さな小さな命。 第二次世界大戦中のロンドンでキップス夫人と小さなスズメのクラレンスとの交流を描いたノンフィクション。 鳥と人間にはまず言葉という圧倒的な壁があり、さらに振る舞いや生き方にも大きな違いがあります。 キップス夫人はこの小さなスズメ・クラレンスに対して一個人として礼を欠かしません。小さな声に日々耳を傾け、ささいな変化に気を配り、声を掛けます。そこに感じるのは命への敬意と尊重。時に寄り添い、時に見守り、日々の積み重ねを通して互いの心に深いつながりが生まれていく様子が伝わってきます。 ……とここまで書いてみて、結局「自分」と「自分以外の他者」の関係も同じだなと。大切にしたいのは「親しき仲にも礼儀あり」の精神。そこに種の差はありませんし、いりません。 また、小さなスズメの健気な振る舞いは不穏な時代に生きた人々の表情を和ませます。ささやかだけれどポッと心が温かくなる場面に当時の人々はどれだけ救われたことか。 思わず現在進行形の先の見えない世の中に重ねてしまいます。いつも傍らにあると思っていた日常が揺らいだときに思う、当たり前への感謝。 まだ出口は見えにくい日々が続きますが、小さな幸せをしっかり噛みしめながら前を向いていこうと改めて思います。 抑揚がある展開はないけれどそれが心地よく丁寧な言葉でつむがれた本作は心を穏やかにしてくれます。 ゆっくりとした読書の時間を送りたいときに。

Posted byブクログ

2020/02/04

英国人女性ピアニストのもとでたまたま12年間育てられたスズメ・クラレンス!こんなにスズメが賢いのだろうかと驚く。トイレの躾、ピアノに合わせた歌の数々…。我が家が飼ってきたインコ、さくら文鳥たちの姿を重ねた。戦争下の英国の方々にとって大きな慰めになったというすごい話であった。「彼」...

英国人女性ピアニストのもとでたまたま12年間育てられたスズメ・クラレンス!こんなにスズメが賢いのだろうかと驚く。トイレの躾、ピアノに合わせた歌の数々…。我が家が飼ってきたインコ、さくら文鳥たちの姿を重ねた。戦争下の英国の方々にとって大きな慰めになったというすごい話であった。「彼」と呼ぶところに、私自身もまるで人間であるかのような錯覚を覚えた。 人間から与えられる愛情や友情の絆の強さによって彼らの知性を伸ばしていける!本当かと思ってしまうが、クラレンスがそれを証明しているともいえるのだ。

Posted byブクログ

2019/09/14

猫や犬なら飼い主と交流があるのは不思議はないけれど、鳥でも子どもの頃最初飼った手乗り文鳥は、私のことを友達と思って一緒に遊んだり、時々私に命令することがある。一方でそれほど感情のやりとりが感じられない個体もいる。著者は障害があって野性に返せないイエスズメのヒナを目が開く前から保護...

猫や犬なら飼い主と交流があるのは不思議はないけれど、鳥でも子どもの頃最初飼った手乗り文鳥は、私のことを友達と思って一緒に遊んだり、時々私に命令することがある。一方でそれほど感情のやりとりが感じられない個体もいる。著者は障害があって野性に返せないイエスズメのヒナを目が開く前から保護することになって、若い頃は友達として一緒に遊んだりピアニストである著者のピアノに啓発されてさえずりを発達させるのを目にしたり、その後は老年まで穏やかな関係をすごしてなんと12年以上を過ごしたという。野生の鳥でもこんなに気持ちが通じる個体もいるのだ。

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2018/07/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

時は第二次大戦下。灯火管制の敷かれたイギリスで、元ピアニストの著者は瀕死のスズメの雛と出会い、保護する。翼と脚に障碍を持つこのスズメはクラレンスと名付けられた。 本書には、彼が著者と生活を共にし、病を乗り越え、老衰による死を迎えるまでの十二年の歳月が綴られている。 クラレンスはイエスズメという種類のスズメ。日本のスズメと似ているが、容姿や鳴き方は微妙に異なる。 野生にあってはまず生きる見込みのなかったクラレンスだが、筆者の愛を一身に受け、数々の才能を花開かせた。ヘアピンで綱引きしたり、カードをくるくる回したり、人の手の「防空壕」に隠れたりする彼の芸は、空襲下のロンドンで人々の心を慰めた。後年はピアノ演奏に合わせて「歌う」芸も身につけている。これらの芸はクラレンスが自分の楽しみとして開発し、筆者が洗練された形に導いている(そういえば以前ロシアの猫サーカスを観た折、動物の個体の癖や好みを芸に発展させるやり方が効果的だと聞いた)。 クラレンスの多芸ぶりは、そのまま彼の活発な知性と旺盛な好奇心を示している。「十分な勇気と強い個性があれば、畸形もまた一つの特性となりうる」という著者の言葉通り、クラレンスは自らの障碍を工夫と努力でカバーし、しかもその過程を楽しんだ。著者もそんなクラレンスのために工夫と努力を怠らず、常に快適な環境を作り上げてやる。 息詰まる闇の一夜や空爆を共に切り抜けたこのコンビの、互いへの細やかな情愛、「巣籠もり」の幸福感は胸に沁みる。それゆえに、クラレンスの「最後の日々」は涙なくしては読めない。 私の身近にもかつて、賢く優しく、死期を前にして深い精神性すら示した猫がいた。看取った母は「みんな、生きたように死んでいく」と述懐した。クラレンスの最期もその通りで、涙と同時に背筋の伸びるほど畏敬を感じる。 日本ではカラスと並んで身近な鳥と思われているスズメだが、その数はここ二十年で半減したと言われているそうだ。営巣に適した木造建築や餌場が減り、スズメが少子化したことなどが原因らしい。小さな茶色い坊主頭が見当たらない町の情景はさびしいものだ。我らがクラレンスの仲間たちのため、庭に米を少しずつ撒くのが新しい日課になった。

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2023/05/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 クレア・キップス著、梨木香歩訳「ある小さなスズメの記録」、2015.1(文庫)発行です。口絵・イラストは酒井駒子さん、解説小川洋子さんです。感動の書でした。第二次大戦下のイギリス、老ピアニストが出会った生まれたばかりの傷ついた小雀。愛情深く育てられた雀のクレランスとキップス夫人が共に暮らした12年間の記録。1940.7.1~1952.8.23、11歳を過ぎてからは老衰と闘いながら、最期は夫人の手の平の中で穏やかな死を迎えたいとしいスズメの物語です。  人間との意思の疎通、哺乳類は勿論ですが、鳥類もかなりの疎通ができるのですね。昆虫、魚類、両生類、爬虫類は難しそうですが、共に暮らしていると愛情が湧くと思いますw。英国人のクレア・キップス夫人(1890~1976)は、1940.7.1、生まれて間もない雀の雛が巣から落ちているのを助け、右翼と左足異常の雀を育て上げ、12年余、共に暮らしました。この本はキップス夫人とスズメの友情の物語、スズメの生老病死の生き様の記録です。夫人の淡々とした語り口に、相互の信頼と支え合いの様子が伝わってきます。再読です。

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2017/07/09

まず本自体がお洒落。かわいい。 ・兎に角、スズメ(小鳥)を愛でたくなる。 ・そのまま読んでいたら、話盛ってない?と思うような箇所もあったが、前書きでその点に触れているので、結構すんなり入ってきた ・スズメの可愛さもだけど、著者も色々スゴイ まず知識量な。野鳥の生態一つとっても、...

まず本自体がお洒落。かわいい。 ・兎に角、スズメ(小鳥)を愛でたくなる。 ・そのまま読んでいたら、話盛ってない?と思うような箇所もあったが、前書きでその点に触れているので、結構すんなり入ってきた ・スズメの可愛さもだけど、著者も色々スゴイ まず知識量な。野鳥の生態一つとっても、知識が豊富。スズメを養っていく上で、必要に応じて勉強したこともあるだろうけど、なんて言うか、昔の人ならではの知識とか頭の良さのようなモノを感じた クラレンスの歌、聞いてみたいなぁ〜〜

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2020/05/18

多くの人がクラレンスの歌を聴いてみたい、と思たんじゃないだろうか。 知識のない単純なスズメ好きとしては「そういうことありそう」とか「やっぱり!」とか、場面場面に妙に納得。 とはいえ、夢の愛情物語でなく、表情、行動、体の状態など、あくまでもある1羽と添い遂げた(もちろん愛情あふれ...

多くの人がクラレンスの歌を聴いてみたい、と思たんじゃないだろうか。 知識のない単純なスズメ好きとしては「そういうことありそう」とか「やっぱり!」とか、場面場面に妙に納得。 とはいえ、夢の愛情物語でなく、表情、行動、体の状態など、あくまでもある1羽と添い遂げた(もちろん愛情あふれる)観察の「記録」とのこと。 スズメを、もっとじっくりと見てみたくなる。 梨木香歩さんの訳に、解説が小川洋子さん、イラストは酒井駒子さん、とそれだけでもそそられるという方、いそう。(笑)

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2016/08/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

梨木香歩さん訳と表紙で買いました ピアニストのキップス夫人と体に多少不自由なところがある イエスズメのクラレンスの12年間の記録 イエスズメの寿命は野生では2~3年程度 その何倍もの時間を著者と生きたクラレンス 淡々とつづられる戦中戦後の日々 歌う才能、老いとリハビリ 部屋の中で生き生きと日々を過ごすクラレンス ときどき彼が鳥だということを 忘れて人間と錯覚してしまいそうになりました 数回日本語に訳されたことがあるというこの本を 梨木さん訳、小川洋子さん解説で読めたのは幸せです

Posted byブクログ