すべて真夜中の恋人たち の商品レビュー
いい本だった。 誕生日の日にひとりで真夜中の散歩、わたしもしてみようと思った。 真夜中っていいよね。 最後の最後で聖の本性が現れて、うわ怖ってなった。主人公みたいな繊細な人は聖みたいな自分が強い女にいいように利用されやすいというか、踏み台にされたり、何にも言わないがあまりスト...
いい本だった。 誕生日の日にひとりで真夜中の散歩、わたしもしてみようと思った。 真夜中っていいよね。 最後の最後で聖の本性が現れて、うわ怖ってなった。主人公みたいな繊細な人は聖みたいな自分が強い女にいいように利用されやすいというか、踏み台にされたり、何にも言わないがあまりストレス解消の道具として使われたり、それで持って腹の底では見下しているみたいな、そういう人が多い気がする。だから聖みたいな女には関わらないのが良いと思う。 主人公が自分に似ているところがあったから、共感できるところが多かった。 恋愛面で何もしないのは自分が傷つかないためか。 そうだと思う。まさに。 最後三束さんと結ばれて欲しかったなあ。 主人公みたいに自分で選択してこなかった人ってどれくらいいるんだろう。 それを30代で気づく人ってどれくらいいるんだろう。 そういう人はどういう気持ちになるんだろう。 挑戦しようと思うのか、もう遅いと諦めるのか。 20代で自分は挑戦した人間で、今は笑われることが多いが、今笑ってる人たちがそのうち何年か経って、自分も挑戦していれば良かったと思う日があるのだろうか。
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人づきあいが苦手で、孤独を当たり前のように生きてきた冬子。 誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々の中で三束さんに出会った。 冬子だけでなく、ここに出てくる人みんながとても不器用。 きっと誰にでも見える部分と見えない部分があって、一見輝いて見えても、その裏では誰もが生き...
人づきあいが苦手で、孤独を当たり前のように生きてきた冬子。 誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々の中で三束さんに出会った。 冬子だけでなく、ここに出てくる人みんながとても不器用。 きっと誰にでも見える部分と見えない部分があって、一見輝いて見えても、その裏では誰もが生きづらさを抱えているんだろう。 "何もしてこなかった"冬子が34歳にして初めて抱いた感情。 曖昧な2人の関係だったかも知れないが、恋をすることで冬子は確かに変わったんだと思う。 そして私が1番不器用だと思ってた聖も、自分の弱さを吐き出すことで変われたんだと思う。 光について語られる描写がとてもロマンティック。 光はいつか消えてしまうものだけど、1度見つけた光はいつまでも心の中には残る。 静かで、儚くて、とても美しい恋愛小説だった。
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思ったより文学だったけど、私は好き。 主人公が三束さんのことめちゃくちゃ好きなのが伝わってきてなんか切なくてひたむきで不器用で可愛い〜〜って思った。 結局あの2人がもう会わなくなっちゃうのが切ないけど、それが美しくていい。 この小説を通して感じるのは「なにかを忘れること、出会ったものが全て流れていって留めてはおけないことの哀しさ」だった。典子との再会もそう。光に触れられる触れられないのお話もそう。 とにかく全てが流れていって、それが悲しいけど、その悲しささえ流れていきますよ、という物語なのかと私は解釈した。 少し難しいけど、楽しい読書体験ができた。 夢とか眠りとか光とか夜とか、そういうモチーフを描くのがすごく素敵。美しくて抽象的な文章で集中してないと目が滑ったけど良かった。 ショパンの曲も聴いたよ。情緒があっていいね。 作家さんはああいう音楽をどこで仕入れているのだろう。ナラタージュのときも思ったのだが。 主人公が「全然つまらない人です」みたいな顔してめちゃくちゃ面白い女なのずるいよ。日本酒を魔法瓶に入れるし三束さんとは初対面で嘔吐だし爆睡してカバン盗まれるし雨の中びしょぬれで歩くしそら三束さんも面白いと思いますよ。 三束さんも主人公もちょっと冴えない人たちなのがいいなあと思った。美男美女だったらちょっと予定調和な感じあるけど、そうじゃない2人が惹かれあってるのが「人間」を描いてる感じがしていい。なんか、誰かのための、美しかったり出来が良かったりする整った恋愛じゃないところがいい。 聖のことちょっと苦手だったけど最後の方の場面で彼女にも色々あるんだろうなと思ったし、なんだか可愛いと思った。あの2人はあそこで泣いて、本当の意味で友達になる必要があったんだと思う。 最後のタイトル回収、割とあからさまだったからちょっとびっくりしたけど、なんかいいと思った。 「すべて真夜中の恋人たち」とは、「真夜中はなぜこんなにもきれいなんだろうと思う」という書き出しと合わせて解釈すると、2人の共有した時間はずっときれいなものだったということなのだろうかと思う。 いつか絶対に終わるのも真夜中で、そういうところも2人の時間にかかってくるのかな。
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終わり方はとても切ないような気分になったけれど、冬子の人生にとても沿った流れ方なのかな、と思った。 冬子も三束さんも聖も、どこかの部分ですごく生きづらそうで、切なかった。だからこそ通じ合えた時本当に気持ちがあたたまるのを感じた。良かった。 野暮かもしれないけれど、三束さんとどこかでまた会えていたらいいと思う 好きな文 「違うの、わたし意地悪になって、いつもこうなってしまうの、それでいつもだめにしてしまうの、何もかもがだめになるの、」 「あなたのことをもっと知って、わたしはあなたの友達になりたいと聖は泣き、」
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読了後、ショパンの「子守歌」を聴いたら、作品と同じくらいの繊細さが押し寄せてくる曲で胸がいっぱいになった。 文章が美しい。 相手に触れるまでに300ページかかる。なんて繊細で綺麗な恋なのか…もうこの歳になると忘れてしまっていた感情が押し込めて、そんな自分に虚しくなった。そのくらい...
読了後、ショパンの「子守歌」を聴いたら、作品と同じくらいの繊細さが押し寄せてくる曲で胸がいっぱいになった。 文章が美しい。 相手に触れるまでに300ページかかる。なんて繊細で綺麗な恋なのか…もうこの歳になると忘れてしまっていた感情が押し込めて、そんな自分に虚しくなった。そのくらいこの作品は美しい。 完全に私情だけど、結婚とか将来とか家庭とか、そういうのを抜きに相手と心を通わせることの尊さを実感した。早くそういったしがらみが無くなる中年になりたい
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正直な気持ちを綴ると私は主人公に対し嫌悪感を抱いた。 自分の意見をはっきり持たず伝えずそのせいで関係を信じていた人たちには馬鹿にされていた感じがするし、いざ自発的な行動をとったと思えば酒の力を借りる。後半も傷つけられそうになるとぶつからずに逃げる。立ち向かっていったと思ったら服も店も自身で決めず他人と一緒のものを選択している。試行錯誤というより中途半端な覚悟に感じる。 文は綺麗だし最後の終わり方も綺麗だけど人間としての成長面についてはなにも変化がないと感じた。
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とてもリアルで実際にありそうな恋愛ストーリーだと思った。高校生の時の甘酸っぱい思い出と30代の恋愛を通して女という生き物が求める物語と、頭のなかで描いた通りにならない現実を描く。それを鋭く指摘してくる友人にも屈せずに好きな人を好きと思うことの幸せは間違いなく誰にも邪魔されない。冷...
とてもリアルで実際にありそうな恋愛ストーリーだと思った。高校生の時の甘酸っぱい思い出と30代の恋愛を通して女という生き物が求める物語と、頭のなかで描いた通りにならない現実を描く。それを鋭く指摘してくる友人にも屈せずに好きな人を好きと思うことの幸せは間違いなく誰にも邪魔されない。冷めきった夫婦生活を営む専業主婦の友人との対比もあり、思い出の中の好きな人をずっと想い続ける人生も素敵なのだと思う。
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友達(?)の聖の話がウザくて読み始めは、脱落しそうだった。 こういう自己陶酔系な人とは関わらない方がいいと思っていたところ 作者もそれを意図してやっていることが途中で分かり、安心したが、 で 最後、 なんの話なん???っていう結末でした。 アル中は治ったんだろうか...? 途中...
友達(?)の聖の話がウザくて読み始めは、脱落しそうだった。 こういう自己陶酔系な人とは関わらない方がいいと思っていたところ 作者もそれを意図してやっていることが途中で分かり、安心したが、 で 最後、 なんの話なん???っていう結末でした。 アル中は治ったんだろうか...? 途中旧友の典子からなぜ「入江くん」と君付けで呼ばれていたのか?? 何か読み飛ばしてるのかな、、? あと気になったのは、「肯いた」を多用されてたがなにか意味があるんだろうか...? 誰か教えてくださいm(__)m
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冬子は不器用でパッとしなくて、おそらくこんな人が身近に居たらイライラしてしまうだろうと思わせるのに、その不器用さのかけらを自分も持っているような、あらゆるひとの不器用のかけらを集めて冬子をつくったような、不思議なキャラクターだった。彼女にとって恐らく初恋である三束さんとのやりとり...
冬子は不器用でパッとしなくて、おそらくこんな人が身近に居たらイライラしてしまうだろうと思わせるのに、その不器用さのかけらを自分も持っているような、あらゆるひとの不器用のかけらを集めて冬子をつくったような、不思議なキャラクターだった。彼女にとって恐らく初恋である三束さんとのやりとりは微笑ましく、そしてスリリングでもあり、ページをめくる手が止まらなかった。全体的に一つひとつの文が美しくて、うっとりしながら読み進めた。
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読んだ後、清々しいような、心が透き通ったような感覚になりました。最後に冬子が綴ったすべて真夜中の恋人たち、という言葉。何度も読み返しては色んな描写を思い返せる、大切な言葉になりました。
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