水声 の商品レビュー
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箱根本箱で、ブックディレクターさんにセレクトしてもらったうちの一冊。曰く、文体が柔らかく素敵で、SFなどではないのに、確かな実感を持って時間が行き来する、どこかありそうな日常。設定もなるほどよく考えられてると思う。関係性が徐々に明らかになり、そういうことかと思わされる。 みずみずしく、淡白でひやりとした湖のような文体で語られる秘めた熱く危うく曖昧な心。ひどくふつうでないのに、この二人が共に暮らすことがあたりまえである感覚があった。家族の謎を少しずつあきらかにしながら、柔らかく肯定される過ぎていく日々。
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終始、穏やかで静かな語りに不穏な空気が混じる。この家族には一体何が隠されているんだろうと、耳を傾けるように読んだ。 今にも電池が切れる時計の針のように、ゆっくりとした危うい時を最後まで刻んでいた。それが思い出語りの、現在と過去を行き来する様子と重なって、パラパラと崩壊していく姿を見ているようだった。時系列もバラバラに語られるのに、身体にすうっと吸収されていくのが心地よかった。
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素敵な装丁に惹かれて。 時間がいったりきたりだけど、視点は主人公のままなのでわかりやすい。 テーマに対して、さらさらと綺麗な表現。 「人間は、人間であるかぎり、それほど違っちゃいないよ」
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『水声』読了。 ママとパパ、わたしと遼の4人が織りなす奇妙な家族の物語。 戦前から現在までの約70年の時系列を行ったり来たりするんだけど。 常に生活の中心にはママがいて。ママの死後もママのことを考える姉弟とパパ。 少しずつ明かされる4人の出自。 だけど全然それが変でもなく普通なところがいい。 4人とも、自分の気持ちを大事にしてる。 それが優しくてね。 読んでいて心地よかった。 平気で道徳に反しているけれども。 誰からも邪魔されてないってのがいい。 まるで世界から見捨てられたような。 だけど、ママは短命で生を終える。 悔しかっただろうな… でも、姉弟のその後を知らなくてよかったのかな。 久しぶりに川上弘美の本を読んだけど。 この季節に似合う本でした。 ビリー・アイリッシュの曲を流しながら最後は一気に読んじゃった。 2019.6.4(1回目)
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時間を見失ってしまったかのような家で、都は時々の記憶を行きつ戻りつする。従姉の奈穂子と弟の陵と三人で一緒に過ごした子供の頃の記憶。母が生きていて、父と母と弟と四人でこの家で暮らしていた頃の記憶。 思い出と夢と現在がモザイクみたいに並べられて結ぶ像は、一つ一つの細部が意味を有しなが...
時間を見失ってしまったかのような家で、都は時々の記憶を行きつ戻りつする。従姉の奈穂子と弟の陵と三人で一緒に過ごした子供の頃の記憶。母が生きていて、父と母と弟と四人でこの家で暮らしていた頃の記憶。 思い出と夢と現在がモザイクみたいに並べられて結ぶ像は、一つ一つの細部が意味を有しながら、全体として漠たる何かを語ろうとしてくる。 現在を押し流してしまいそうに重ねられる思い出と、何でもない小さな一コマとして差し入れられている、実際に起こった幾つかの記憶に残る事件。取り返しがつかないと思えるどんな出来事も、全て行き過ぎてただ現在へと流れ込んでいる、とでも告げるかのように。 静かな語り口の筈なのに、センシティヴな文章に密かな胸苦しささえ覚えながら、この物語は何処へ流れ着くのだろう、そんな焦燥感を抱いて読み進んだ。
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こういう作品は感想が難しいです。 流れるような言葉、文章。繋ぎ目。 淡々とした日常、一生。 主人公の独り言を聞きながら彼女の日々を感じ、自分の過去と死んだ大切な人たちを感じ、読みながら別のことを思い巡らせました。ストーリーは二の次のような印象です。 よくよく考えるとかなりショッキ...
こういう作品は感想が難しいです。 流れるような言葉、文章。繋ぎ目。 淡々とした日常、一生。 主人公の独り言を聞きながら彼女の日々を感じ、自分の過去と死んだ大切な人たちを感じ、読みながら別のことを思い巡らせました。ストーリーは二の次のような印象です。 よくよく考えるとかなりショッキングな内容なのに、そういう感じが全くしないのが川上さんのすごいところなんだと思います。それから、装丁画は駒井哲郎さんの銅版画です。駒井さんを好きな私としては、駒井さんの作品が伝える空気感を期待したのですが、装画から受けるイメージと小説のイメージはかなり違いました。
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50代の姉弟、都と陵。 幼い頃からの二人の道なりを辿っていく物語。 忘れることの出来ない「あの夏の夜」から30年。 家族というよりもっと近い、互いが「もう一人の自分」のような存在の二人。 それは好きとか恋とか簡単に言い表すことの出来ない感情。 胸が締め付けられる想い。 水のように形がはっきり定まらず、ふわりふわり静かに流されていく。 互いに距離を持とうと離れた時期もあったけれど、やはり離れられない二人は家族とか恋人等の枠に囚われない生き方を選ぶ。 例え他人に咎められようとも、隣で生きていきたい、ただその想いのみ。 とても穏やかで、けれどとても情熱的で狂おしい物語だった。
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「ママ」の呪縛? 都は「今」ではなく、子供の頃や ママが生きていた頃や夢に出てくるママなど、過去を回想している場面が多い 本当の兄弟ではないのか…と思わせるような 関係…
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静かに順不同に語られる情景が積み重なって、一つの物語を形成していきます。 姉弟による近親相姦。もちろん主人公達にとってもタブーなのですが、昏くドロドロした情念ではなく、むしろ柔らかく暖かな愛情として描かれます。 本当に描きたかったのは成就し辛い深い愛の姿なのでしょうか。それがたま...
静かに順不同に語られる情景が積み重なって、一つの物語を形成していきます。 姉弟による近親相姦。もちろん主人公達にとってもタブーなのですが、昏くドロドロした情念ではなく、むしろ柔らかく暖かな愛情として描かれます。 本当に描きたかったのは成就し辛い深い愛の姿なのでしょうか。それがたまたま近親相姦(しかも2代にわたる)という形になったのかもしれません。 表紙に描かれた二本の冬枯れの樹木のような、なんとも静寂を感じさせる語り口です。それだけでも読み応えがあります。
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川上さんだからこそこの話を爽やかにまとめられたのだと思う。 自分も弟がいるので若干気持ち悪かった。
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