虐殺器官 新版 の商品レビュー
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とてもおもしろかった 途中のミイラ取りがミイラになる部分が映画のセブンに似てた。 結末にはかなりカタルシスを感じた。 自分の考えや行動には短絡的な部分があると痛感させられた。 序中盤は人文的な話題が多く展開されていて、sf的な世界観との対比が良かった。 戦闘シーンがかっこよかった。エイペックスみたいだった。 主要なキャラが全員死ぬのがよかった p.353 良心も、罪も、罰も、その進化の過程の一部であり、完全に独立した「魂」の創造物でないのだと。 p.370 つまり、戦争は愛によって戦われうる
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伊藤計劃さんの本読了2冊目。 ハーモニーに引き続き、作品の世界観にすごいな〜と思わされた作品。よく思いつくなと感心してしまう。作品はSF。アメリカをはじめとする先進諸国で厳格な個人情報管理体制を構築され、あらゆる情報が明かされるようになった世界。アメリカ情報軍に所属する主人公クラ...
伊藤計劃さんの本読了2冊目。 ハーモニーに引き続き、作品の世界観にすごいな〜と思わされた作品。よく思いつくなと感心してしまう。作品はSF。アメリカをはじめとする先進諸国で厳格な個人情報管理体制を構築され、あらゆる情報が明かされるようになった世界。アメリカ情報軍に所属する主人公クラヴィス・シェパード大尉は内戦や暗殺を任務とする軍人。シェパード大尉が何を思い、どう動くのか。考えさせられる面白い本だった。
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【人は見たいものしか見ない】 まるで良質な映画を一本観たかのような読後感。。。 これぞ伊藤計劃作品と言うべきか、政治背景や歴史、科学技術など、ディテールの作り込みがすごい! 全体で見ると突拍子もない話をしてるように感じるのに、一つ一つのディテールを掘り下げていくと、あり得ない...
【人は見たいものしか見ない】 まるで良質な映画を一本観たかのような読後感。。。 これぞ伊藤計劃作品と言うべきか、政治背景や歴史、科学技術など、ディテールの作り込みがすごい! 全体で見ると突拍子もない話をしてるように感じるのに、一つ一つのディテールを掘り下げていくと、あり得ない話じゃなさそうと感じてしまうのが末恐ろしい 全編を通じて示唆に富んだ作品で、これまで読んだどんな小説とも違うぞ…?と、ゾクゾクしながら読みました こういう物語に出逢うために本を読んでるのかもしれない また、あとがきの円城さんとの対談や略歴に衝撃を受けました。この作品わずか10日間で書き上げたの…!?本当に惜しい方を亡くしてしまった…
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【あらすじ】 テロが激化した近未来、主人公クラヴィスは暗殺を行うアメリカの部隊に所属している。 世界中のテロや内戦に影で暗躍している謎の男の行方を探す。自分自身の殺戮に対する罪と罰について苦しむなかで、運命の女性と出会うことになるが……。 【感想】 衒学的で悲観的な文章から紡...
【あらすじ】 テロが激化した近未来、主人公クラヴィスは暗殺を行うアメリカの部隊に所属している。 世界中のテロや内戦に影で暗躍している謎の男の行方を探す。自分自身の殺戮に対する罪と罰について苦しむなかで、運命の女性と出会うことになるが……。 【感想】 衒学的で悲観的な文章から紡がれる作者の思索に乗っかることが出来ると面白く読めると思う。 作者がシネフィルなだけあって、映像的な鮮烈なイメージが浮かぶ描写もとても良い。 遺伝子操作されたクジラの筋肉を使った降下カプセルとか面白いガジェットもありつつ、人文的なアプローチの思弁SFにまとまっているのが素晴らしい!
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近未来のアメリカ軍とテロリストの攻防を扱った作品で、ややグロテスクな表現が出てくるものの、考えさせられる場面や言動が多いです。 ただ、最後のシーンが今もよくわかりません……
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何も考えず書店で気になったので買ってみた本。 結論、本当によかった! 日本人がアメリカ人主人公の小説を書くってとても珍しいパターンだと思っていて、誰かが訳した海外小説的な印象を残しつつもやっぱり日本人だなという表現も多くて痺れた。 ストーリーもとても面白い。だけど難解な部分も...
何も考えず書店で気になったので買ってみた本。 結論、本当によかった! 日本人がアメリカ人主人公の小説を書くってとても珍しいパターンだと思っていて、誰かが訳した海外小説的な印象を残しつつもやっぱり日本人だなという表現も多くて痺れた。 ストーリーもとても面白い。だけど難解な部分もあるのでスローペースでしっかり頭に入れていかないといけない感はあった。 ただの軍事物ではなくとても哲学的な作品なのでそのあたりの知識もしっかりあったほうが面白い印象。 一番好きなのキャラは敵のジョン・ポール。 言ってることには妙に説得感があって、主人公とのやり取りのシーンが本当によかった。 実際、「虐殺器官」とはなんぞやというのはなかなか説明しづらいんだけどなんとなく雰囲気わかるだけでも面白いかなと思う笑 著者が亡くなってしまっていることだけが本当に残念…
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一応ネタバレ仕様で。 今ならエグ目、重めのSFが読めるかも、と読んでみた。凄惨なシーンはあるが、思った以上に深遠である。 タイトル回収は中盤あたりでするが、虐殺「器官」ってそういう…その設定もすごいが、言葉の表層的な部分以外の、深層心理的な部分にそういう作用があるかもしれない、と思わされるのと、ある一定の条件下でそうなる可能性はあり得るかもしれないなとも思えてしまう。 ジョン・ポールが射殺されるシーンでは、主人公の思いの行き場がどこにもなくなってしまうせつなさみたいなものを感じた。 別のSFでも感じた、「どんなに物理的に摘み取ったとしても、脅威の芽は完全に消えないかもしれない」などと思いつつ読み進め、ジョン・ポールの「(自らの周辺を守るため)脅威の芽に潰し合いをさせる」や、ラストの主人公の、罪を背負うために(自国外への贖罪かもしれない)とった手段。極めて冷静に「そうした」のだろう。 今の自分よりずっと若い時分に、病の合間にこれだけの作品を書き上げたのがすさまじい。同世界線のものやスピンオフも読んでみたくなった。
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これがデビュー作であることが信じられない。語り口、世界観、何を見ても伊藤計劃であるということが伝わってくる。ゆる言語学ラジオを聴いていた身としては聴いた話がいくつか出てきて理解の助けになった。
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【全体を通しての感想】 文章は大変読みやすく内容もわかりやすいのでさくさく読み進められる。特に終盤の展開が大変面白く一気に読んだ。オーウェルやベートーベン等、よく知っている名前が出てくることや、軍人にしては凶暴性がなく割と親しみやすい性格の主人公だからか、感情移入がしやすい。ウィリアムズも好き。 【印象に残った場面】 アレックスが地獄は頭の中にある、と語る場面。目の前の惨状さえも地獄ではないと言い切るところから、アレックスは相当な地獄を抱えて生きていたのであろう。のちにアレックスは自殺してしまった。人間以外に自殺をする動物はいないらしいが、なぜだろう。人間特有の複雑な思考が地獄を作り出すのだろうか。 ルツィアが主人公に対して "「それこそ、わたしやあなたとは違う『現実』がある、と言うべきね。現実は思考によって規定される。ことばではなく」" と語る場面。自分が認識している世界を言葉で表そうとするとどうしても言葉の枠に囚われてしまう。言葉で思考を表現すれば他人と共有しやすいという利点はあるが、言葉にした時点で自分の頭の中にある思考とは違うものになってしまう。歌手が歌詞に込めた想いを、聞き手が100%正確に汲み取れないのと同じだ。正解は歌手の頭の中にしかない。これは物事を正確に伝達するという観点から見ると相当な欠点だ。だからこそ人間関係において誤解やすれ違いが生じてしまう。だが、その「正確に汲み取れない」という特徴を持つからこその利点も存在する。所謂「行間」というやつで、私はこれが大変好みだ。この一種回りくどい方法で思考を伝達する、その非合理的行動の中に「単なる情報伝達としての言葉」を超えた美しさがあるのだ。 死者の国で主人公が自分の母親と会話する場面。"「あなたが自分で決めて、自分で殺したのよ。あなたはそれについて考えることをやめてきただけ。」中略「わたしを殺したのがあなた自身の決断なら、いままで殺してきた人々の命もあなたの決断よ。」"これを読んだとき、以前読んだ神谷美恵子さんの「生きがいについて」に書いてあったことを思い出した。どんな苦境にあっても、一切を放り出したり自殺したりで逃げ出すことはできる。しかし、そういった可能性を吟味したうえで行動しているのだからそれは宿命でも諦めでもなく「選択」なのである。そして、選択したからにはそこに愚痴の余地はない。といった内容だったが、本作の主人公も深層意識では人を殺すことを選択しているのだ。「命令されているから」と責任を他者に押し付けているが、命令に背いて会社を辞めることだってできるのだ。そうして自己欺瞞に浸ってきた主人公だったが、母との会話によって欺瞞の皮が剥がされてゆき、自分が今まで背を向けてきた罪と相対することになった。決して直視することができないほど大きな罪と。わたしの人生もそんなことだらけだと感じる。例えば普段何気なく口にしている食肉。生きていくために必要なんだから、動物の命を奪うのはしょうがない。と見て見ぬふりをしている。スーパーに並ぶのは綺麗にカットされた肉ばかりで、生産される工程は普段目につかないようになっている。屠殺場での光景から目を背けて、生きるためだから、と平然な顔をして豚や鶏や牛の命を奪っている。命を奪っているのは実際に屠殺場で動物を殺す職員ではなく、我々消費者の存在だ。その罪から目を背けてはならない。動物の肉を食べるなと言いたいわけでは決してない。自分が生きるためにしていることから目を背けてはならない、といいたいだけだ。そうして罪を背負い続けて生きていくのだ。 そして終盤にジョン・ポールが主人公と会話する場面。"「わたしがしていることが正義だとは、絶対に言わない。わたしはただ、自分が守りたいものを守るために、やれることをしているだけだ」"ジョン・ポールの覚悟に、わたしの涙腺が刺激された。愛するものが生きる世界を守るために、その他の世界を犠牲にする。例えば無人島にわたしと、パートナーと、もう一人の知らない男性Aがいたとして、わたしと男性Aの二人が銃を所持していたとする。表面上は仲良くやっているが、男性Aもわたしも銃を手放そうとはしない。こうした場面においてはどうするか?答えはさまざまだろうが、ここにわたしの考えを記述することは避けておこうと思う。
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器官というのは生物が環境に適応する上で必要なものである。食料を見つけるためには目や鼻、耳が。食料を食べるためには歯が。消化するためには胃が腸が。そして適応するなかで競争が生じる。競争は終末を迎えるとき、否応なく調和か虐殺を迫られる。迫られた先の未来を描く、本書「虐殺器官」と別冊「...
器官というのは生物が環境に適応する上で必要なものである。食料を見つけるためには目や鼻、耳が。食料を食べるためには歯が。消化するためには胃が腸が。そして適応するなかで競争が生じる。競争は終末を迎えるとき、否応なく調和か虐殺を迫られる。迫られた先の未来を描く、本書「虐殺器官」と別冊「ハーモニー」をご堪能あれ。そして、その葛藤の先を描く「三体」は本物の終末を見ることができる。
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