闇に香る嘘 の商品レビュー
なるほどタイトルの通り「暗闇の中で感じる(香る)嘘(壁)」 主人公が盲目と言うこともあり感覚と行動、心理がキメ細やかに描写されており、本の情景を想像するしかない読者の目線と(一人称視点であるという点で)一致しており、多作よりリアルに感じ取れる。 解決編は上手くまとまってあり...
なるほどタイトルの通り「暗闇の中で感じる(香る)嘘(壁)」 主人公が盲目と言うこともあり感覚と行動、心理がキメ細やかに描写されており、本の情景を想像するしかない読者の目線と(一人称視点であるという点で)一致しており、多作よりリアルに感じ取れる。 解決編は上手くまとまってあり、伏線の回収も見事。ページが流れるように進む。 エピローグにて、 ''私の想像次第で花畑も墓地となり、墓地も花畑となる。思えば、世界じゅうの音や匂いが苦しみの象徴に感じたものである。人も同じだ。自分自身で世界を闇に染めていた。人を敵視していた。’’ “今、眼前には色とりどりの花に囲まれた墓石のイメージが見えていた。希望の光にあふれた明るい景色が広がっている” “黒一色の世界に住んでいると、空間は果てしなく広がっているように見える。だが実際に腕を伸ばすと目の前に壁や障害があったりする。だから私は存在しない場所に自分で壁や障害を作り、一方的に家族と距離を感じてきた。それは間違いであった。” この文から、自分しか見えてなく何事にも疑心暗鬼だった主人公が一部始終により見えない壁を壊すことができ成長したところにひどく感動した。 これは単に障碍があるないということを超えて私たち全員の心に呼びかけているのではないか。 闇の中でも光がある。闇と感じるものははたして本当は闇であるのか。 読み手の生き方考え方に対してもメッセージを残しているそんな気がする。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
全盲の主人公和久。孫娘が腎臓を悪くし自分では移植に適合しなかったため、満州の残留孤児で戦後暫くしてから再会した兄を頼るが検査すら断られる。その時の様子等から偽物が成り代わっているのでは..と調べ始める。家の中に誰かいる気配、見えない世界で何を信じればいいのか、その怖さを感じた。この物語に出てくる嘘は、誰かのためを思っての事ばかりで、そうでない嘘もついた相手が心から後悔して和解できていた。残留孤児についてもっと知るべきだと思った。
Posted by
初めて下村さんの本を読みました。面白かったです。 全盲の主人公が生きる闇に包まれた世界がありありと伝わってきました。 見えないということで、何を信じればわからなくなる描写に、最後まではらはらさせられました。 隠されていた真実が終盤に明らかになるのですが、驚きました。タイトルの、嘘...
初めて下村さんの本を読みました。面白かったです。 全盲の主人公が生きる闇に包まれた世界がありありと伝わってきました。 見えないということで、何を信じればわからなくなる描写に、最後まではらはらさせられました。 隠されていた真実が終盤に明らかになるのですが、驚きました。タイトルの、嘘の意味。思い返すと、伏線もたくさん張られていたのだな。 この本も、登場人物たちのその後が幸せだったらいい、と思います。 腎不全で血液透析を受けている身内がいるので、その描写は辛かったです。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
盲目の老人が主人公のミステリー。いろんな盲点をつかれる作品だった。見ることができないゆえの疑念をうまくとりこみ、不思議なできごとが終盤で一気に明かされる。デビュー作とは思えないほどのレベル。巻末で乱歩賞の選考委員が評価している中に、ミスのようなものも指摘してはいるが、気がつかなかった。また読んでみようという気になる。
Posted by
これは参った! なんかサスペンスというよりも中国残留孤児の話だけが したかったんちゃうんって思っていたら 最後のどんでん返しでうやむやが全部つながるという!! これぞ小説!
Posted by
この作品は主人公が盲目であるため、終始ドキドキハラハラしながら読めることが最大の魅力です! 他のミステリー小説では味わえないなんとも言えぬ怖さがありますね。もちろん伏線の回収もすごいとしか言えません! 「闇に香る嘘」一体何の嘘でしょう? 最後には感動して、泣ける物語でもあります。...
この作品は主人公が盲目であるため、終始ドキドキハラハラしながら読めることが最大の魅力です! 他のミステリー小説では味わえないなんとも言えぬ怖さがありますね。もちろん伏線の回収もすごいとしか言えません! 「闇に香る嘘」一体何の嘘でしょう? 最後には感動して、泣ける物語でもあります。 さらに、あの有栖川有栖先生が「絶対評価A」とまで評価して下さっているので、見られずにはいられますか? まだ未読の方は是非ご覧になって下さい!
Posted by
全盲の主人公がある事がきっかけで、中国残留孤児だった兄が、日本に戻って来る際偽物にすり替わったのでは、と真実を探り出す話です。なので、中国残留孤児の事や、満州での出来事など、ミステリーを読んでたのに戦争の本を読んでる錯覚になる部分があります。中国残留孤児がキーになってるので仕方な...
全盲の主人公がある事がきっかけで、中国残留孤児だった兄が、日本に戻って来る際偽物にすり替わったのでは、と真実を探り出す話です。なので、中国残留孤児の事や、満州での出来事など、ミステリーを読んでたのに戦争の本を読んでる錯覚になる部分があります。中国残留孤児がキーになってるので仕方ないですが、孫にせがまれたとは言えこのまま話したの?と懐疑的になる部分も。ミステリーの部分は主人公が全盲ゆえのスリルがあり楽しかったです。ミステリー半分、戦争物半分の1冊でした。
Posted by
2017.10.4読了。 見えない恐怖は自分には分からないけれど、描写がとても怖くて。ミステリーのハラハラと重なる事で余計怖くて。 ひとつひとつ「そういうことか」と紐解かれるうちにホッとして、ラストは少しだけ泣いた。 教科書でしか戦争を知らない自分は、それを題材にした作品にか...
2017.10.4読了。 見えない恐怖は自分には分からないけれど、描写がとても怖くて。ミステリーのハラハラと重なる事で余計怖くて。 ひとつひとつ「そういうことか」と紐解かれるうちにホッとして、ラストは少しだけ泣いた。 教科書でしか戦争を知らない自分は、それを題材にした作品にかなり苦手意識があるけれど、物語でも、当時の事を知る事はできるし、必要な事だと感じた。
Posted by
40代で視力を失った村上。彼は満州からの引き揚げ組であり、ロシア軍から逃げる最中に兄とはぐれていた。しかし、残留孤児として中国人に育てられた兄は、村上が失明した後に帰国し、母と同居する。村上は孫娘のための腎臓移植を兄に頼みに行くが断られ、「兄は本物の兄なのか」という疑問を持ち始め...
40代で視力を失った村上。彼は満州からの引き揚げ組であり、ロシア軍から逃げる最中に兄とはぐれていた。しかし、残留孤児として中国人に育てられた兄は、村上が失明した後に帰国し、母と同居する。村上は孫娘のための腎臓移植を兄に頼みに行くが断られ、「兄は本物の兄なのか」という疑問を持ち始めるー。 最初から最後までとてもスリルがあり、一気に読んでしまった。結末も予想できず、好きな感じのどんでん返し。残留孤児や満州引き揚げについてこれまで知らなかったが、予想以上の過酷さだった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最終的に悪い人が誰も出てこない話。 主人公は盲目なので、 相手の表情が見えず、結果的に勘違い、 思い込みをしてしまうことが多々あった。 ただこういうことは健常者にもよくあると思う。 又聞き、噂話、ネットの書き込みレベルで その人のことを判断して好きになったり嫌いになったりする。 本当によくあることだと思う。 そしてほとんどの場合、誤解は解けないままだ。 主人公は最後には正しいものが見えるようになって、 自分の大切なものを守ることが出来た。 それだけでも、十分救いになると思う。
Posted by