闇に香る嘘 の商品レビュー
中国残留孤児の兄の正体を追う、全盲の主人公。果たして本物か偽物か。 全盲ゆえの仕掛けが、読んでいるほうとしてはもどかしく、しかし、想像する楽しさとなってどんどんページが進みます。
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実に細かく計算され尽くしたミステリー。謎が全て解けた時の爽快感を久々に味わうことが出来た。全盲者の描写もすごくリアル。やはり乱歩賞受賞作はレベルが高い。
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自分としては久々の新人発掘な一冊。おそらく一番の肝と言うべきオチに予想がついてしまったのは残念。でも全体としてハイクオリティで安心して読める良作。
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目の見えないヒトが巻き込まれるトラブル、と、その謎解き…これはある意味ハードルの高い設定。だって主人公には何も見えないんだから最後の最後に、実は、こうだった…なんて後付け、とかつじつま合わせがいくらでもできちゃう。だから読み終わった後「なぁんだ」と思ってしまいそうで。 でも、そん...
目の見えないヒトが巻き込まれるトラブル、と、その謎解き…これはある意味ハードルの高い設定。だって主人公には何も見えないんだから最後の最後に、実は、こうだった…なんて後付け、とかつじつま合わせがいくらでもできちゃう。だから読み終わった後「なぁんだ」と思ってしまいそうで。 でも、そんな心配、余計なお世話でございました。いやー、そう来たか、そう来たのかっ! これでもか!と盛り込まれるネタと、その状況の描写の豊かさ、そして伏線の鮮やかな回収の流れに溺れつつ読む。 主人公の「見えない不安」はそのまま読み手の「先の見えなさ」へとつながり、手さぐりで進む怖さにどっぷりと浸った。あぁー、ホントにホントに面白かった。
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個人的なことだけど40回〜50回の乱歩賞受賞作はほとんど読んだ。でも51回目以降は1作しか読んでない。今回60回の節目ということで、また読んでみることにした。 主人公は初老の男性。終戦前の満州にいて、命からがら日本に引き揚げてきた過去を持つ。幼いころの栄養失調がたたり40代...
個人的なことだけど40回〜50回の乱歩賞受賞作はほとんど読んだ。でも51回目以降は1作しか読んでない。今回60回の節目ということで、また読んでみることにした。 主人公は初老の男性。終戦前の満州にいて、命からがら日本に引き揚げてきた過去を持つ。幼いころの栄養失調がたたり40代で失明。兄とはソ連の侵攻から逃げている途中ではぐれ、母子二人で日本に帰国したのだが、80年代にいわゆる中国残量孤児問題として肉親捜しが大々的に行われたときに運命的な再会を果たす。 しかしそのときすでに主人公の男性は失明しており、顔を確認することはできなかった。母が息子ですと認めたのだから間違いないはずなのだが… あらすじはこんな感じ。ミステリーだからあまり内容に触れられないので、テーマについて感じたことを書く。 中国残留孤児の問題はいまの40代以降の人じゃないとピンとこないと思う。自分も子どもの頃は毎年、この方たちが来日しているニュース映像は見ていた。その頃も事情をよく飲み込めてなかったかもしれないが、この本を読んで今でも何も知らないままだったとことに気づいた。というか中国残留孤児という言葉を今世紀になってはじめて思い出したかもしれないくらい過去のことだった。 残留孤児の方々の苦労や苦悩は帰国してからのほうが多かったのかもしれない。政府の援助は薄情で、まるで帰国した後は肉親に頼って国に頼るのはやめてよ、といった突き放した対応しかしない。子どもだったから記憶にないだけなのかもしれなが、当時の報道も、肉親と再会できて良かったですね、泣けますね、これからは家族仲良く暮らして幸せになってくださいね、というものじゃなかったか。 主人公の兄は、孤児たちが帰国してからうけた理不尽な仕打ちに対抗して国に対して集団で損害賠償請求を起こしている。この手の裁判で国が責任を認めるわけがない。認めたことがあるのは近年ではハンセン病患者の裁判のときぐらいだ。当然のことながら兄は裁判費用が嵩み金に困っている。そのため弟は兄は金に執着する卑しい性格だと感じはじめ、肉親であることを疑うきっかけにもなる。 なんかそんなどろどろして疑心暗鬼な展開が続く(ミステリーだから当たり前か) でも最後の方で、救われる。言えないけど。 著者はまだ若いから取材や文献からネタを引いてきたのだろう。若干文章が説明文っぽい。 選考委員が絶賛するほど、特別すごいものとは思わないけれど十分合格点だとは思う。 でもトリック重視の読者には物足りないかな…
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