闇に香る嘘 の商品レビュー
目が見えない人の立場からの描写が殆どであったが、目が見えないと言うことが、これほど難儀なことなのか、と思い知らされました。 また、満州からの逃避行、中国残留孤児の話もここまで生々しいものは読んだこと無かったので、読んでいて非常に重く苦しかったです。 ジャンルとしては、サスペンスに...
目が見えない人の立場からの描写が殆どであったが、目が見えないと言うことが、これほど難儀なことなのか、と思い知らされました。 また、満州からの逃避行、中国残留孤児の話もここまで生々しいものは読んだこと無かったので、読んでいて非常に重く苦しかったです。 ジャンルとしては、サスペンスになるんでしょうが、またしても最後の最後まで騙されました。 目が見えないって前提があるので、全ての描写は伏線と思って気をつけていたつもりだったんだけどなぁ…
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ブクログ通信で下村敦史さんを知り、手始めに、江戸川乱歩賞を重賞した本作を読んでみることにした。 かなり重いテーマがてんこ盛りで、作者の意欲は感じつつも、読んでいて辛かった。それでも途中で止められず、最後まで一気に読み切ったしまった。 主人公は目が見えない。確かに、見えないから分か...
ブクログ通信で下村敦史さんを知り、手始めに、江戸川乱歩賞を重賞した本作を読んでみることにした。 かなり重いテーマがてんこ盛りで、作者の意欲は感じつつも、読んでいて辛かった。それでも途中で止められず、最後まで一気に読み切ったしまった。 主人公は目が見えない。確かに、見えないから分からなかったのだが、では、見えていたら気付くことができたのだろうか。 最後まで読むことができて良かった。確かな意欲作だ。
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全盲の村上和也は、実家で母と同居する兄の竜彦に自身の孫娘への腎蔵移植をお願いするが、検査すら拒絶される。その態度に不自然なものを感じた和久は、中国残留孤児として帰国した兄が偽物ではないかと疑念を抱き、自ら調査に乗り出すが… ブクログ通信の「下村敦史さんおすすめ5選」を読んでみよ...
全盲の村上和也は、実家で母と同居する兄の竜彦に自身の孫娘への腎蔵移植をお願いするが、検査すら拒絶される。その態度に不自然なものを感じた和久は、中国残留孤児として帰国した兄が偽物ではないかと疑念を抱き、自ら調査に乗り出すが… ブクログ通信の「下村敦史さんおすすめ5選」を読んでみよう!ということで、まずは世間の評価が高いデビュー作の本書を手に取った。 主人公は全盲、兄は中国残留孤児、孫娘は腎蔵病と、社会派テーマがてんこ盛り。シンプルかつ意表を突いた仕掛けによって、オセロのように世界観を反転させ、アレよアレよと伏線回収するテクニックが上手い。上記のテーマも謎解きと密接に絡み合っている。全盲の方のハンデの大きさと生きづらさを改めて勉強になった。登場人物の描き分けが不十分なのと、プロットが強引な点もあるが、5度の最終選考を経て乱歩賞受賞にこぎつけた作者の実力は本物だろう。トリッキーで意外性のある作品を今後も書き続けていただきたいものだ。 週刊文春ミステリーベスト10 2位 このミステリーがすごい! 3位 本格ミステリ・ベスト10 17位 SRの会ミステリーベスト10 7位 ミステリが読みたい! 11位 江戸川乱歩賞 受賞(2014年)
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視覚障害者の主人公が、ある出来事をきっかけに中国残留孤児であった兄が本当に自分の兄なのか疑問に思う。真相を探るために、中国にいた頃の兄を知る人物達に会いにいくが・・・ といったあらすじ。 主人公が視覚障害者ということで、主人公目線で進むこの物語は、視覚情報を得ることができません...
視覚障害者の主人公が、ある出来事をきっかけに中国残留孤児であった兄が本当に自分の兄なのか疑問に思う。真相を探るために、中国にいた頃の兄を知る人物達に会いにいくが・・・ といったあらすじ。 主人公が視覚障害者ということで、主人公目線で進むこの物語は、視覚情報を得ることができません。例えば、自宅に誰かがいる気配がするけど、本当に誰かがいるのか、それともいないのかがわからない。誰かが助けてくれたけど無言のため誰だかわからない。といった感じ。 視覚情報が乏しいミステリーは新鮮さがありました。 そして、視覚障害者の日常を丁寧に丁寧に描いているため、没入感がありました。視覚障害者の方とほとんど関わったことがない為、どんなことに困っているのか、どのような工夫をして生活しているのか知ることができました。 「知らない方がいい」と言われたり、露骨に隠し事をされると、無性に何を隠しているのか知りたくなってしまいます。知らない方がいい真実もあるのでしょうが、自分も知的好奇心には勝てない人間の一人です。 作中にふんだんに散りばめられた伏線が、終盤に怒涛のように回収されるため、爽快感があり、最後はハートフルな結末を迎え、読後感が良かったです。
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ほぼ全編が全盲の主人公視点で描かれている。 全て起きることは、耳、触覚などの情報から判断しているので、主人公の考えたことが、事実とは限らない。この設定は、謎めいてサスペンスを感じるが、何とも全てに靄がかかったようなベールに包まれているような、もどかしさを感じてしまう。 なので、中...
ほぼ全編が全盲の主人公視点で描かれている。 全て起きることは、耳、触覚などの情報から判断しているので、主人公の考えたことが、事実とは限らない。この設定は、謎めいてサスペンスを感じるが、何とも全てに靄がかかったようなベールに包まれているような、もどかしさを感じてしまう。 なので、中盤から後半戦ではちょっとイライラしてくる感もあった。 しかし、全盲視点?での描写や、中国残留孤児にまつわる話しなど、とても詳細に描かれていて、飽きることなく読み続けられた。 そして、最終章で衝撃の真実を知ることになる。 様々な伏線も見事に回収され、まさに、江戸川乱歩賞らしい作品になっていると感じた。 単なるトリックだけでなく、全盲者の困難な日常とか、親子の愛といった人間の根源的な部分を描いているので、物語に深みを感じることができたように思った。 下村さんの作品は初めてだったが、最近のものも読んでみたいと思う。
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中国残留孤児の問題、満州に渡った日本人の過酷な生活。盲目の主人公は、残留孤児の兄が実は偽物ではないかと疑問を持ち真実を捜し始める。盲目であるがゆえの歯がゆさなどもどかしくてハラハラした。サスペンス感たっぷりで意外な真実が待ち受けていた。
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私にとって、初の下村敦史さんの作品。 ミステリーであり、家族の話であり、視覚障碍者の話でもあり、中国残留孤児の話でもあり、大変勉強になった気がします。視覚障碍者の方や中国残留孤児の方、また帰国できても満洲へ行ってた方、大変なご苦労をされたんだなーと思いました。語り手の記憶があやふ...
私にとって、初の下村敦史さんの作品。 ミステリーであり、家族の話であり、視覚障碍者の話でもあり、中国残留孤児の話でもあり、大変勉強になった気がします。視覚障碍者の方や中国残留孤児の方、また帰国できても満洲へ行ってた方、大変なご苦労をされたんだなーと思いました。語り手の記憶があやふやなのはミステリーとしては、どうかしら?と思いましたが、私自身はいっくら何でもそんなに記憶が飛んだりしないのでは?と思いながら読みました。最後の方は、寝る時間になっても、ついつい読んでしまいました。良いお話でした。
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横浜港でのコンテナ船から現れた不法移民とみられる人々。彼らは窒息死していた。そこから逃れた人影。 孫の生体腎臓移植に不適合だと言われた69歳にならんとする中途失明者の祖父・村上和久。一縷ののぞみをかけ実家の兄に頼みに行くと検査も拒否。そこから生まれる、兄は本当の兄なのか? 検査...
横浜港でのコンテナ船から現れた不法移民とみられる人々。彼らは窒息死していた。そこから逃れた人影。 孫の生体腎臓移植に不適合だと言われた69歳にならんとする中途失明者の祖父・村上和久。一縷ののぞみをかけ実家の兄に頼みに行くと検査も拒否。そこから生まれる、兄は本当の兄なのか? 検査で事実が顕わになるのを恐れているのでは? むくむく大きくなる疑惑。 和久は満州で生まれ命からがら母子二人で帰ってきた。途中兄とははぐれ、兄は残留孤児としてようやく帰ってきて岩手の実家で母と暮らしていたのだった。兄は財産めあてで日本に来た中国人なのではないか? 疑惑を明かそうといろいろ調べ始める和久の周りで不穏な空気と事件が起きる。 冒頭のコンテナ船といい、和久の周りで起きる不穏な空気といい、読んでいると目の見えないだけに疑惑が膨らんでしまう和久の焦燥感がじりじりと高まってゆくのを感じる。ページをめくる手が止まらない感じだ。人物描写が上滑気味で、ちょっといろいろな事件が都合よく収まる感じはあるが、満州開拓のひずみをからめて、疑心暗鬼の心理がよく描かれていると思う。最後のどんでん返しがう~む。 下村敦史氏は初めて読んだ。 第60回(2014年度)江戸川乱歩省受賞作。 2014.8.5第1刷 図書館
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かつて満州へ渡り、辛い経験を経て帰国した後、残留孤児となった兄と再会を果たした主人公。 残留孤児のための訴訟に取り憑かれていた彼とは距離を取っていたが、孫娘の肝臓移植を頼むために久しぶりに会うことにするが、適合するかの検査すら拒否されてしまう。 それはもしかすると血縁関係も証明さ...
かつて満州へ渡り、辛い経験を経て帰国した後、残留孤児となった兄と再会を果たした主人公。 残留孤児のための訴訟に取り憑かれていた彼とは距離を取っていたが、孫娘の肝臓移植を頼むために久しぶりに会うことにするが、適合するかの検査すら拒否されてしまう。 それはもしかすると血縁関係も証明されることになるからではと疑念を持った主人公は、兄が別人の成りすましなのではないかと調査を開始する。 読者は文字から想像するしかないその読書体験を、主人公が盲目であるということから文字からも想像ができにくいという特殊な状況へおかれる。 対面していてもどんな顔立ちなのかわからない。場面が描かれてもそこに実際には誰がいて、何人いるのかすらわからない。 そこもうまく使ったミステリで面白くて一気読みでした。
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