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闇に香る嘘 の商品レビュー

3.8

165件のお客様レビュー

  1. 5つ

    31

  2. 4つ

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  3. 3つ

    37

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2023/08/16

かつて満州へ渡り、辛い経験を経て帰国した後、残留孤児となった兄と再会を果たした主人公。 残留孤児のための訴訟に取り憑かれていた彼とは距離を取っていたが、孫娘の肝臓移植を頼むために久しぶりに会うことにするが、適合するかの検査すら拒否されてしまう。 それはもしかすると血縁関係も証明さ...

かつて満州へ渡り、辛い経験を経て帰国した後、残留孤児となった兄と再会を果たした主人公。 残留孤児のための訴訟に取り憑かれていた彼とは距離を取っていたが、孫娘の肝臓移植を頼むために久しぶりに会うことにするが、適合するかの検査すら拒否されてしまう。 それはもしかすると血縁関係も証明されることになるからではと疑念を持った主人公は、兄が別人の成りすましなのではないかと調査を開始する。 読者は文字から想像するしかないその読書体験を、主人公が盲目であるということから文字からも想像ができにくいという特殊な状況へおかれる。 対面していてもどんな顔立ちなのかわからない。場面が描かれてもそこに実際には誰がいて、何人いるのかすらわからない。 そこもうまく使ったミステリで面白くて一気読みでした。

Posted byブクログ

2023/06/17

緊迫感溢れる導入部から盲目の主人公にタッチするまでの展開が実にスリリングで身を乗り出して読んだ。 少々話が急展開過ぎるのでは、とも思ったがその心配は筆者の思い過ごしだった。 盲目の人が抱える恐怖や緊張感はひしひしと伝わってくるし、戦争によるフラッシュバックも実に強烈でまるで戦場に...

緊迫感溢れる導入部から盲目の主人公にタッチするまでの展開が実にスリリングで身を乗り出して読んだ。 少々話が急展開過ぎるのでは、とも思ったがその心配は筆者の思い過ごしだった。 盲目の人が抱える恐怖や緊張感はひしひしと伝わってくるし、戦争によるフラッシュバックも実に強烈でまるで戦場に放り込まれたかのような恐怖や緊張がある。 中国残留孤児や兄弟、母親、父と子といった切っても切れない家族の絆を描いた本作は間違いなく傑作と言っていい。第60回乱歩賞受賞も頷ける。

Posted byブクログ

2023/05/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

中国残留孤児を題材にする点は平行して読んでいる山崎豊子の「大地の子」と重なる部分があり、盲目の主人公を採用している点では現在、日曜劇場で放送されている「LASTMAN」とも重なる部分があり興味深く読み進めることができた。孫への腎移植を頑なに拒む兄の素性を怪しく思うことからスタートするが、それぞれの登場人物の深い思いやりを知ることとなる最終章で一気に伏線が回収される。しかしこの本の題名と内容がどうも一致しない感覚が強く、後半を読み進めながら何度も表紙を見返し、題名を確認した。

Posted byブクログ

2023/01/19

下村さんのデビュー作であり、苦節9年目に江戸川乱歩賞を受賞した作品。 気合いの入った作品だった。 満州開拓団、中国残留孤児という問題を脇役に語らせる事で分かりやすく、詳しくないわたしでも理解できた。 70歳にして兄が偽物では?と疑念を抱く主人公。 主人公が盲目という設定...

下村さんのデビュー作であり、苦節9年目に江戸川乱歩賞を受賞した作品。 気合いの入った作品だった。 満州開拓団、中国残留孤児という問題を脇役に語らせる事で分かりやすく、詳しくないわたしでも理解できた。 70歳にして兄が偽物では?と疑念を抱く主人公。 主人公が盲目という設定が、偽物かも?という兄への疑いを無理なく話が進む。 この本の見開きに下村氏の受賞のコメントが。 巻末に選考委員である作家らの選評が載っていた。 選評がとても面白かった_φ(・_・ 受賞作なので内容は絶賛されてますが… 応募時のタイトル「無縁の常闇に嘘は香る」 「とにかくタイトルを何とかしろ」と言う今野敏さんに笑ってしまった。 確かに今野作品のタイトルは短い笑 落選した作品の選評はみなさんボロクソ笑 「何の為に500枚も読まされたのか唖然とした」 これまた今野敏さんの選評笑 こんな選評を9年間もらいながら、クサる事なく挑んだ下村さんは凄い( ̄▽ ̄) 以下巻末に掲載されていた受賞経緯です♪ 第52回(2006年)から毎年江戸川乱歩賞に応募し続け、9度目で受賞に至った。この間、5度最終候補に残り、落選に落ち込む時もあったが、未熟さを見抜いた選考委員からの激励と受け取り、励むことが出来たという。[1]選考委員からは「相対評価ではなく、絶対評価でA」(有栖川有栖)、「自信をもって世に出せるものを送り出せた。ぜひ期待してほしい」(今野敏)と高評価だった[2]。応募時・受賞時のタイトルは「無縁の常闇に嘘は香る」だったが、「タイトルが意味不明」(石田衣良)、「作品のコンセプトを語り過ぎている」(桐野夏生)、「とにかくタイトルを何とかしてほしい」(今野敏)と総じて不評で、改題に至った。 タイトルは大事ですよね( ̄▽ ̄)笑

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2022/05/05

歴史的なことが濃く書かれているので、苦手な人には難しいが、深く分かろうとせずに読むとおもしろいと思って最後まで読めます

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2022/04/12

江戸川乱歩賞受賞作…もうほんと良かった。 中国残留孤児のことや満州からの引き上げのこと、臨場感があって読んでいて思わず息を呑んだ場面も多々あった。 40余歳で全盲になったことで自分自身と家族が戸惑い、その上数々の違和感を感じたら疑心暗鬼になるのも当然だと思う。 ところが結果、...

江戸川乱歩賞受賞作…もうほんと良かった。 中国残留孤児のことや満州からの引き上げのこと、臨場感があって読んでいて思わず息を呑んだ場面も多々あった。 40余歳で全盲になったことで自分自身と家族が戸惑い、その上数々の違和感を感じたら疑心暗鬼になるのも当然だと思う。 ところが結果、善意に溢れた登場人物たちに、意味で予想を裏切られた。良かった。

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2022/01/09

69才全盲の悲観的な老人が主人公で、中国残留孤児問題も絡んで、難しいので、何度も挫折しながら読んだ。 読み終えると、いろんな謎も解決し、いい話だと思えるけど、ちょっと重たい。勉強になった。

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2021/12/21

+++ 村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なの...

+++ 村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。有栖川有栖氏が「絶対評価でA」と絶賛した第60回江戸川乱歩賞受賞作! +++ 全盲の主人公、中国残留孤児、小児の腎臓移植と、深刻な要素が多く盛り込まれているが、そのすべてが、この物語にとってはなくてはならないものだったように思う。戦争による悲惨で過酷な体験、引き上げ後の境遇、闇に閉ざされた絶望と焦燥、そして疑心暗鬼。心の在りようによって、物事の捉え方がこれほど変わるものかということも思い知らされる。種明かしされるまでは、真相にまったく思い至らなかった。それほどに自然なストーリー展開であったということである。読み応えのある一冊だった。

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2021/08/07

血と歴史に翻弄される盲目の老人 黒一色の世界でもがき、真実を追い求める 中国残留孤児の実態を知る 帰るべき場所を、時間を失うというのは辛い 目が見えない事で生まれる謎や緊張感はあるが 逆に言えばその設定でいくらでも主人公及び読者を騙せるので、ミステリーの観点から見ると諸刃の設定に...

血と歴史に翻弄される盲目の老人 黒一色の世界でもがき、真実を追い求める 中国残留孤児の実態を知る 帰るべき場所を、時間を失うというのは辛い 目が見えない事で生まれる謎や緊張感はあるが 逆に言えばその設定でいくらでも主人公及び読者を騙せるので、ミステリーの観点から見ると諸刃の設定に感じた 斜め上の真相に驚きつつも綺麗に纏まったオチ

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2020/10/17

闇の中を手探りで生きている気持ちが、少しわかるような気がしました。 見えないということは、人間にとってとてつもなく大きな困難で、心までも闇に取り込まれてしまうようです。 人生の大事な部分や幼い記憶が、何十年信じてきた真実ではなく、実は嘘かもしれないと疑うとき、足場が崩れるような感...

闇の中を手探りで生きている気持ちが、少しわかるような気がしました。 見えないということは、人間にとってとてつもなく大きな困難で、心までも闇に取り込まれてしまうようです。 人生の大事な部分や幼い記憶が、何十年信じてきた真実ではなく、実は嘘かもしれないと疑うとき、足場が崩れるような感覚なのだと思います。 疑い深く独りよがりな主人公ですが、兄弟とは、血とは、ミステリーを絡めつつ考えさせられる物語でした。 謎の回収が後半でどんどんされていくので、どんよりした闇の空気感とは違って、スッキリとした読後感でした。

Posted byブクログ