茨木のり子詩集 の商品レビュー
あまり詩に触れてきたことがなく、ただ今年亡くなった谷川俊太郎選集だったので、読んではみたが、わかるような、わからないような感じでしたが、なんか最後まで一気に読んでしまいました。 いくばくかの無償の愛をしかと受けとめられる人もあり たくさんの人に愛されながらまだ不満顔のやつもあり...
あまり詩に触れてきたことがなく、ただ今年亡くなった谷川俊太郎選集だったので、読んではみたが、わかるような、わからないような感じでしたが、なんか最後まで一気に読んでしまいました。 いくばくかの無償の愛をしかと受けとめられる人もあり たくさんの人に愛されながらまだ不満顔のやつもあり 誰からも愛された記憶皆無で尚昂然と生きる者もある (「居酒屋にて」より抜粋) 確かにその通りだなと、ただ感心するばかりでした。
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時代を映す詩にはあまり惹かれなかったけど好きな詩が十篇くらい入っていて嬉しかった。自分の芯を強く持って生きようとしている詩と、夫を亡くしてから綴っている歳月にも収録されている詩たちが特に良いと感じる。一番好きなのは以前と変わらず「自分の感受性くらい」だった。 自分の感受性くら...
時代を映す詩にはあまり惹かれなかったけど好きな詩が十篇くらい入っていて嬉しかった。自分の芯を強く持って生きようとしている詩と、夫を亡くしてから綴っている歳月にも収録されている詩たちが特に良いと感じる。一番好きなのは以前と変わらず「自分の感受性くらい」だった。 自分の感受性くらい ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難かしくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった 駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
谷川俊太郎追悼ウィークとして、谷川俊太郎選の変わり種として何気なく手に取った。茨木のり子、教科書でも取り上げたと思うのだが記憶にない。初読として読んで、こんなに素敵な女性がいたのかと嬉しくなる。詩集自体を読んでいきたいと思った。 好きだった詩 『対話』内部からくさる桃、⭐︎もっと強く、準備する もっと強く願っていいのだ わたしたちは 明石の鯛が食べたいと もっと強く願っていいのだ わたしたちは 幾種類ものジャムが いつも食卓にあるようにと ・・・ 女が欲しければ奪うのもいいのだ 男が欲しければ奪うのもいいのだ ああ わたしたちが もっともっと貪欲にならないかぎり なにごとも始まりはしないのだ 『見えない配達夫』敵について、わたしが一番きれいだったとき、大学を出た奥さん、怒るときと許すとき 『鎮魂歌』⭐︎花の名、女の子のマーチ、七夕、りゅうりぇんれんの物語、 ・・・ いい男だったわ お父さん 娘が捧げる一輪の花 生きている時言いたくて言えなかった言葉です 棺のまわりに誰もいなくなったとき 私はそっと近づいて父の顔に頬をよせた 氷ともちがう陶器ともちがうふしぎなつめたさ 菜の花畑のまんなかの火葬場から ビスケットを焼くような黒い煙がひとすじ昇る ふるさとの海辺の町はへんに明るく すべてを童話に見せてしまう ・・・ 『茨木のり子詩集』首吊 『人名詩集』くりかえしのうた、兄弟、箸、居酒屋にて 『自分の感受性くらい』詩集と刺繍、自分の感受性くらい、二人の左官屋、波の音、⭐︎木の実 ・・・ 木の実と見えたのは 苔むした一個の髑髏である ・・・ 生前 この頭を かけがえなく いとおしいものとして 掻抱いた女が きっと居たに違いない 小さな顳顬(こめかみ)のひよめきを じっと視ていたのはどんな母 この髪に指からませて やさしく引き寄せたのは どんな女(ひと) もし それが わたしだったら… ・・・ もし それが わたしだったら に続く一行を 遂に立たせられないまま 『寸志』苦い味、⭐︎笑って、賑々しきなかの、寸志 ・・・ ねえ 笑って! あちらで 驪姫という娘のように はればれと 『茨木のり子』(花神ブックスI) 一人は賑やか、みずうみ 『食卓に珈琲の匂い流れ』四行詩 『倚りかからず』時代おくれ、倚りかからず 『茨木のり子集 言の葉3』行方不明の時間 『歳月』本当素敵だった… その時、夢、⭐︎部分、⭐︎夜の庭、⭐︎恋唄、一人の人、⭐︎急がなくては、なれる、⭐︎(存在) 部分 日に日に重ねてゆけば 薄れてゆくのではないかしら それを恐れた あなたのからだの記憶 好きだった頸すじの匂い やわらかだった髪の毛 皮脂なめらかな頬 水泳で鍛えた厚い胸廓 兀字型のおへそ ひんぴんとこぶらがえりを起したふくらはぎ 爪のびれば肉に喰いこむ癖あった足の親指 ああ それから もっともっとひそやかな細部 どうしたことでしょう それら日に夜に新たに いつでも取りだせるほど鮮やかに 形を成してくる あなたの部分 恋唄 肉体をうしなって あなたは一層 あなたになった 純粋の原酒(モルト)になって 一層わたしを酔わしめる 恋に肉体は不要なのかもしれない けれど今 恋いわたるこのなつかしさは 肉体を通してしか ついに得られなかったもの どれほど多くのひとびとが 潜って行ったことでしょう かかる矛盾の門を 惑乱し 涙し 急がなくては 急がなくてはなりません 静かに 急がなくてはなりません 感情を整えて あなたのもとへ 急がなくてはなりません あなたのかたわらで眠ること ふたたび目覚めない眠りを眠ること それがわたくしたちの成就です 辿る目的地のある ありがたさ ゆっくりと 急いでいます (存在) あなたは もしかしたら 存在しなかったのかもしれない あなたという形をとって 何か 素敵な気がすぅっと流れてただけで わたしも ほんとうは 存在していないのかもしれない 何か在りげに 息などしてはいるけれども ただ透明な気と気が 触れあっただけのような それはそれでよかったような いきものはすべてそうして消え失せてゆくような 巻末収録の対談(茨木のり子、大岡信)、「美しい言葉を求めて」も面白かった。 (大岡)結局女性対男性というのはイデオロギーだけではとても解決できない面が非常にあると思うんです。 (茨木)まったくですね。 (大岡)男も女もたまたま一緒になった相手、あるいは恋愛している相手から影響される。それで形作られてゆく自我は、自分だけの自我ではなく、相手が入り込んできている自我ですから、そういうところでは、男と女を対立関係だけでとらえることはできない。…
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どの詩もわかりやすい。でも叙事詩も出てきて、怒りというよりもその先のなにかがあるような氣がした。出自とか国土とかの枷から強くなる、そんな勇気を与えてくれるような感じ。孤独をめそめそと表現するわけでもなく、夫との別れは苦しさがあふれるようなものでもない気がした。50歳からハングルを...
どの詩もわかりやすい。でも叙事詩も出てきて、怒りというよりもその先のなにかがあるような氣がした。出自とか国土とかの枷から強くなる、そんな勇気を与えてくれるような感じ。孤独をめそめそと表現するわけでもなく、夫との別れは苦しさがあふれるようなものでもない気がした。50歳からハングルを学び、訳詩を上梓されたのはそんな強さからかもしれない。
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女性の生きていく心強さが感じられるものがあって、とても良かったです。 「椅りかからず」や「自分の感受性くらい」代表作をはじめ、 他にも、「行方不明の時間」「木は旅が好き」「首吊」「お休み処」「ピカソのギョロ目」など、心に残る作品がたくさんありました。
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これからの人生で茨木さんの詩をふと思い出す瞬間がたくさんあればいいなと思う。 詩をじっくり味わえる喜びを感じつつ、韓国語を自由に学べる今の環境がどんなにありがたいことか痛感した。
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中学一年生の国語の教科書の一番最初の中原中也の詩が今でも忘れられないので時折詩集を読んでみる。有名な「わたしが一番きれいだったとき」はその時代を次の時代の読み手にも連想できるような見方と説得力をかんじる。他は時代性を伴っていることが多く、戦後であることや女性であることを踏まえなけ...
中学一年生の国語の教科書の一番最初の中原中也の詩が今でも忘れられないので時折詩集を読んでみる。有名な「わたしが一番きれいだったとき」はその時代を次の時代の読み手にも連想できるような見方と説得力をかんじる。他は時代性を伴っていることが多く、戦後であることや女性であることを踏まえなければこちらから歩み寄らなければ感情的な共感は難しいのではとも思う。相応にしてリズム感がどの詩にもあるのと、終端がこれで終わりですと区切られているので読む方のストレスはない。音楽をのせた歌詞を読んでいる印象を受けたが、音楽のない歌詞は散漫的にイメージができない印象を同時に受けた。
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読書会課題図書 〈青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の、くやしさと、それゆえの、未来への夢。スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる、主張のある詩、論理の詩。ときには初々しく震え、またときには凛として顔を上げる。素直な表現で、人を励まし奮い立たせてくれる、「現代詩の長女」茨木...
読書会課題図書 〈青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の、くやしさと、それゆえの、未来への夢。スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる、主張のある詩、論理の詩。ときには初々しく震え、またときには凛として顔を上げる。素直な表現で、人を励まし奮い立たせてくれる、「現代詩の長女」茨木のり子のエッセンス〉とある 彼女の詩時々目にし、心に残っていたものが何編かあった 今回この文庫本を改めて読んでみて 「Y」という箱にひっそりと残されていた詩に驚いた こんな詩を書いていた方なんだと 「断定的だ」という先入観が払しょくされたような…… 夫を亡くした喪失とそれゆえの愛が濃密だった 谷川俊太郎さんの選が良かったのかなあ 心に響く言葉にたくさん出会った 読書会では、大絶賛派とイマイチ派に分かれ楽しかった ≪ 目をつぶり 目を見開いて 言葉紡ぐ ≫
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わたしが一番きれいだったとき、や、自分の感受性くらい、は知っていたけど茨木のり子さんの作品をこんなに読んだことがなかったので、そのハードルの低さに驚きました。 詩は読みやすいようで読みにくい、自分の解釈能力に自信がなかったけれど、茨木のり子さんの詩は小説を読んでいるようにさらさら...
わたしが一番きれいだったとき、や、自分の感受性くらい、は知っていたけど茨木のり子さんの作品をこんなに読んだことがなかったので、そのハードルの低さに驚きました。 詩は読みやすいようで読みにくい、自分の解釈能力に自信がなかったけれど、茨木のり子さんの詩は小説を読んでいるようにさらさらと自分の中に流れてきます。 彼女の人柄について理解した上で再読したいと思いました。
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普段あまり詩集は読みませんが、書店で立ち読みした時に気になる詩があり読み始めました。 「わたしが一番きれいだったとき」「自分の感受性くらい」は有名な詩なので知っていましたが、「言いたくない言葉」「足跡」とかが好きでした。 削ぎ落とされた繊細な言葉で保守的な女性像への抵抗や喝を...
普段あまり詩集は読みませんが、書店で立ち読みした時に気になる詩があり読み始めました。 「わたしが一番きれいだったとき」「自分の感受性くらい」は有名な詩なので知っていましたが、「言いたくない言葉」「足跡」とかが好きでした。 削ぎ落とされた繊細な言葉で保守的な女性像への抵抗や喝を入れてくれる詩もあれば、天真爛漫に鋭い指摘をする子供のような詩もある不思議な詩集でした。 気負いなく読んでましたが、たまにドキッとする詩があります。また時間をおいて読み返したいです。
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