茨木のり子詩集 の商品レビュー
若い頃の詩は断定的で、力いっぱい肩が張っていて 固くて、ガツンと頭を殴られたような 若かりし日の自分を突きつけられているような 読んでいて苦しくなった。 亡くなった旦那さんの詩は しなやかにしっとりと 月光のように静かにさみしく美しい。 ひとりの女性の生き様が 生々しくそこに...
若い頃の詩は断定的で、力いっぱい肩が張っていて 固くて、ガツンと頭を殴られたような 若かりし日の自分を突きつけられているような 読んでいて苦しくなった。 亡くなった旦那さんの詩は しなやかにしっとりと 月光のように静かにさみしく美しい。 ひとりの女性の生き様が 生々しくそこにあってドキドキした。 精査され、選び抜かれた言葉が並ぶ詩というものは とてつもないエネルギーを内包していて 読むには集中力が必要であり、消耗する。
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わたしたちは準備することをやめないだろう 本当の死と 生と 共感のために。 この人が好きだ! 飾り立てず、大きく見せようとせず、逃げない。 詩集はどれを読んだらいいか、と詳しい人に聞いておススメしてもらった。自分の感受性くらい、しかろくに知らなかった。 女たちは本音を折りたた...
わたしたちは準備することをやめないだろう 本当の死と 生と 共感のために。 この人が好きだ! 飾り立てず、大きく見せようとせず、逃げない。 詩集はどれを読んだらいいか、と詳しい人に聞いておススメしてもらった。自分の感受性くらい、しかろくに知らなかった。 女たちは本音を折りたたむ 扉を閉じるように 行きどころのない言葉は からだのなかで跋扈跳梁 うらはらなことのみ言い残し 祇園の舞妓のように馬鹿づくことだけが愛される 茨木のり子、あなたってひとは、ありがとう。 あなたがあたしと同じ「女」で良かった。
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子どもの頃、茨木のり子さんの詩を教科書で学んで以来、30年あまりずーっと「詩集」を読みたいと思ってたのが今日実現した。 『六月』 どこかに美しい人と人との力はないか 同じ時代をともに生きる したしさとおかしさとそうして怒りが 鋭い力となって たちあらわれる(p52) この凛とした感じが好きだ。
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友人がくれたことばに彼女のことばがあつた。 時に搖さ振り、突き動かすやうな激しさに、はらはらとこぼれおちさうな儚さ。生きることの痛みと哀しみ。そんなものが一辺に押し寄せてくる。 深い深いみずうみのやうに蒼く静かな水を湛へ、そのほんのひと掬ひをそつと抱きしめる。けれど、水はするする...
友人がくれたことばに彼女のことばがあつた。 時に搖さ振り、突き動かすやうな激しさに、はらはらとこぼれおちさうな儚さ。生きることの痛みと哀しみ。そんなものが一辺に押し寄せてくる。 深い深いみずうみのやうに蒼く静かな水を湛へ、そのほんのひと掬ひをそつと抱きしめる。けれど、水はするすると流れ落ちてゆく。 ことばを前にして、沈黙がじつと見つめ返す。彼女の詩には、その行間からむつとするほどの沈黙が漂つてくる。リルケがドゥイノの悲歌でことばの途絶えたやうに。ペンを手にして立ち止まる彼女の姿が浮かんでくる。全てを語れぬ、だからこそ、語れぬものを語る。沈黙の詩人。 初期のものから未発表のものまでその一生を追いかけると、そんな彼女のみずうみが波立つ瞬間に出くわす。大切などこまでも好きだつたひとを亡くしたその心のざわめき。たつたひとりの人間が亡くなるだけで世界は変る。何氣なく流れてゐたはずの時間は、永遠の牢獄のやうに思へて自分といふ存在を否応なくこの場所につなぎとめる。それでも彼女はペンを握り続けた。ことばを求め続けた。 今日もどこかでたくさんのひとが死んでゐる。木と共に苔むして忘れられた死骸もたくさんある。死んでいつたひとの数だけ、物語がある。今もどこかで物語が生まれ、紡がれてゐる。
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家の本棚に積読されていました。 好きなものに感想をひとことずつ。 「見えない配達夫」 なんとまあ、美しい、うたでしょう。 「六月」 これも、美しい。 「抜く」 私はまだ、誰も抜いていないような気がします。 今年の夏、姪に抜かれた気がしましたが。 「兄弟」 私にも、昔はとても仲のよかった弟がひとりいますが。 「知」 今まで、数えきれない本を読んだと思いますが、どれだけわかっているのかは、わかりません。 「みずうみ」 私にも、自分の湖。あるのでしょうか。 「駅」 「夜の庭」 「(存在)」 「歳月」 『歳月』に入っているうたは、泣きたくなるものばかりでした。私にもこんな未来、あるのでしょうか。 「五月の風は」 私も大好きな五月の風。 「通らなければ」 私の希望のようなうた。 巻末に、大岡信さんとの対談。小池昌代さんの解説があります。
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先日読んだ ウドウロク で、「自分の感受性くらい」が紹介されていて、ああまた読みたいと自分の書棚を探したが、手持ちのものが見つからず。 手元に置きたいと探してこの本を見つけた。いままで発表されたなかから、谷川俊太郎氏が選び、発表された書籍の順に紹介されている。 自分に厳しい印象...
先日読んだ ウドウロク で、「自分の感受性くらい」が紹介されていて、ああまた読みたいと自分の書棚を探したが、手持ちのものが見つからず。 手元に置きたいと探してこの本を見つけた。いままで発表されたなかから、谷川俊太郎氏が選び、発表された書籍の順に紹介されている。 自分に厳しい印象が強かったが、その繊細な感受性で紡ぎ出されたことばにしばしばはっとする。 作者が重ねた年月を追いながら、少しずつ読んでいる。
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茨木のり子詩集。谷川俊太郎先生が選んだ茨木のり子先生の詩集。心が打たれる素敵な詩がたくさん詰まった一冊。この本を読めば詩の素晴らしさに気付く方も多いと思います。
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茨木のり子さんの詩を読むとき、私は自分の祖母のことを思い出す。茨木さんと私の祖母は大正15年、同じ年の生まれだ。亡くなったのは茨木さんが平成18年、祖母が平成20年だから、二人とも同じ時代に生きたと言っていい。 日本の戦後詩を牽引した大詩人の茨木さんと、専業主婦だった私の祖母と...
茨木のり子さんの詩を読むとき、私は自分の祖母のことを思い出す。茨木さんと私の祖母は大正15年、同じ年の生まれだ。亡くなったのは茨木さんが平成18年、祖母が平成20年だから、二人とも同じ時代に生きたと言っていい。 日本の戦後詩を牽引した大詩人の茨木さんと、専業主婦だった私の祖母との間に、もちろん個人的な繋がりはない。茨木さんは、帝国女子医学専門学校(現・東邦大学)を卒業後、医師と結婚し、自身も文筆家として優れた業績を残した。いっぽう私の祖母は、尋常小学校を卒業後すぐ奉公に出され、工場労働者と結婚し、4人の子の育児と義理の両親の介護で一生を終えた。二人の人生には、悲しいほど交わるところがない。文芸に親しむどころか、祖母は文盲とは言わないまでも、日常生活をかろうじて送れる程度の識字能力しか持ち合わせていなかった。「新しい女」とは縁遠い人生を送った女性だった。 にもかかわらず、茨木さんの詩の中に、私はしばしば祖母の姿を見いだす。人妻の肩の匂いに憧れた少女の中に(小さな娘が思ったこと)。爆撃によって破壊された町で、ひとり空を見上げた女性の中に(わたしが一番きれいだったころ)。進学をあきらめて家庭に入り、泣きながら男衆の宴会の世話をする主婦の中に(大学を出た奥さん)。夫に先立たれた妻の中に(その時)。生前多くを語らなかった祖母の、心の奥に封印された喜びと悲しみを、私はこれらの詩の中に見る。昔から何度も繰り返され、これからも何度も繰り返されるであろう、女の人生の希望と失望を見る。 「自分の感受性くらい自分で守れ」という激しい詩で知られる茨木さんだが、決してタフなだけの人ではなかったことが、この詩集を読むとわかる。戦争を挟んで急激に変化する社会と、情けないほど変化しない女性の立場とのはざまで、力強い言葉を書き連ねつつも、物言わぬ女性への共感を忘れなかった人だったのだと思う。 祖母は毎朝30分かけて新聞を読むことを自らに課していた。彼女の読解力では書いていることの半分も理解できなかったが、勉強をやり直そうとするかのように、晩年までその習慣を変えることはなかった。祖母を突き動かしていたものは、茨木さんに詩を書き続けさせたものと、たぶん同じだったと思う。その一点において、二人は同じ時代を生きた同志だったのだ。
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茨木のり子さんの詩集は何冊か書棚に並んでいるが、文庫本で手軽に繙けるのが便利そう。これは買って手許に置いておきたい。
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分かりやすい言葉で普遍的な思いが書かれている……のだと思う。「歳月」とそれ以外で全く違っている。父子家庭の娘によくある夫の愛し方をしているんじゃなかろうか。戦争の影響も時折垣間見えるがそれも時代、とさらっと流してしまう<公>の部分で詩が形作られている。父の死も夫の死も戦争に青春時...
分かりやすい言葉で普遍的な思いが書かれている……のだと思う。「歳月」とそれ以外で全く違っている。父子家庭の娘によくある夫の愛し方をしているんじゃなかろうか。戦争の影響も時折垣間見えるがそれも時代、とさらっと流してしまう<公>の部分で詩が形作られている。父の死も夫の死も戦争に青春時代を潰されたのも彼女の<私>の中には多大にあったろうに、それが霞みがかってるのは、それこそ彼女が他者に倚りかからないからなんだろう。
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