蜩ノ記 の商品レビュー
日本史に詳しくなく、名前が長い人たちがたくさん出てきて、誰が誰なのか、どうなってそうなったのか…等が分かりづらく、物語の半分過ぎまで斜め読みでした。これはおそらく私の理解力のなさでしかないと思います。。 なので、謎が明らかになっていく様などは、フワッとしか分かっていませんが、それ...
日本史に詳しくなく、名前が長い人たちがたくさん出てきて、誰が誰なのか、どうなってそうなったのか…等が分かりづらく、物語の半分過ぎまで斜め読みでした。これはおそらく私の理解力のなさでしかないと思います。。 なので、謎が明らかになっていく様などは、フワッとしか分かっていませんが、それでも、最後の方は涙無くしては読めませんでした。 武士の生き方、というか、人の生き方が描かれていました。死ぬことを美徳とするのは、あまり好きではないですが、そうではなくて、どう生きるかという作品でした。 理不尽な事が多く、真っ直ぐなんて正直生きていられないのは、今よりもこの時代の方が圧倒的に多かっただろうと思われます。その中で、中心をずらさず、武士の道、人の道を生きようとした人たち。我が強いのとは正反対だけど、信念は揺るぎなく強い。なりたいと思ってなれるものではないけど、やはりこの様な生き方が美徳とされるのは腑に落ちる気がします。
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山本周五郎の「樅の木はのこった」に続いて読んでみたら、同じ匂いの小説だった。しかし個人的に好みなのは「蜩の記」に軍配があがる。 郡吉の今ある境遇での清々しさに感涙した。 とても素晴らしい小説でした。
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徳のある正々堂々とした生き方が近道。 時代物としては久し振りに感銘を受けた。 何より、この文章の美しさにまいった。
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昔の時代ならではの言葉の使い方には冷静さと情熱のような相反するものが同時に表現できる特性があったかのように思う
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初葉室。直木賞受賞作。藤沢周平著『闇の歯車』にて、時代小説の面白さに気付き、本書で二作目。この作品を読み始めたのが私の仕事での失敗により、近いうちにおそらく“解雇”になるであろうタイミングと云うのは、何か運命を感じた。切腹と解雇。秋谷が庄三郎と郁太郎を助けに行くところは思わず涙が流れた——。読む前は逆だと思っていたが、人生とは終わる日がきっちり判っていた方が有意義かも知れない…。秋谷の人間性、凛とした真っ直ぐな生き様。秋谷の家族への想い。その逆もまた然り。庄三郎が秋谷を慕っていく過程。等々…読み処が本当に多い。大変良い作品に出会えた。続編であろう『草笛物語』は是非とも読みたい^^
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国語の先生におすすめされて読みました。 時代小説はあまり読んでいなかったから、途中リタイアになるかなーと思っていたけど面白かった! まっすぐに生きる秋谷さんももちろん魅力的だけど、源吉の最期が悲しすぎて……。お春のために笑顔を作った彼にも感服。そして万治、もう少し頑張ってほしかった。 源吉のことでさらに武士と百姓との溝は深まってしまったのだろうけど、庄三郎と郁太郎が秋谷さんのように向き合ってよい方向へ進むと信じたい。
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何も言わず、自分の死を目の前に見ながらやるべきことだけを果たそうとする。清廉潔白で厳格。これこそが本当の武士なのだろう。 戸田秋谷の生き方、それを監視する檀野庄三郎。 自然描写が美しく効果的でした。
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「――ひとはどうしようもないことで罪に問われることがあるのだ」 豊後羽根藩にて奥祐筆を務めていたものの、些細なことから城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎。彼は家老の温情で切腹を免れるが、ある密命を帯びて城下を放逐される。 密命とは、7年前、藩主の側室との不義密通の罪を犯したとし...
「――ひとはどうしようもないことで罪に問われることがあるのだ」 豊後羽根藩にて奥祐筆を務めていたものの、些細なことから城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎。彼は家老の温情で切腹を免れるが、ある密命を帯びて城下を放逐される。 密命とは、7年前、藩主の側室との不義密通の罪を犯したとして、10年後の切腹と藩主・三浦家の家譜の編纂を命じられ、現在は家老の所領である向山村に幽閉されている戸田秋谷を監視することだった。 秋谷の切腹までの期日は3年。庄三郎は自分の命が助かるのと引き換えに、戸田秋谷が死ぬのを見届けよ、という過酷な使命を課せられたのだ。 向山村で秋谷やその家族と寝食を共にし、家譜の編纂を手伝い、秋谷自身の剛直な背を見るうちに、庄三郎は次第に彼の無実を確信するようになる。 やがて庄三郎は、秋谷が切腹を命じられる原因となった側室襲撃事件の裏に隠された、宇羽根藩家中に渦巻く重大な陰謀に辿り着くが――。 多くを語らない秋谷の背中は、身分を超えて多くの人々の心を揺さぶるというのに、本人である彼自身は、決して命の期限を動かそうとしない。 夫として父として家族を、武士として人として、主家や村人たちを守りぬく。限られた命の残りの日々を、疑うことなく誠意を尽くし、逃げることなく生きる姿は晩夏を鳴きつくす蜩の聲にも似て。 庄三郎が秋谷の元を訪れてからの3年間を、彼の目を通して描かれるが、この物語にはもう一つの視点がある。秋谷の長男・郁太郎である。 郁太郎には身分を超えた友人がいる。村の子供・源吉だ。この子がおどろくほど人間が出来ている。 大人たちは重い年貢の取り立てや農作物の不作に不満を漏らすが、源吉は不満を言っている暇などない、と屈託なく笑う。呑んだくれて役に立たない父親を責めもせず、母を助け、妹を可愛がる。武士が威張り散らすのを目の当たりにしても、この世のことはみんなお天道様が決めなさる。と達観している。 源吉の聡明さは郁太郎を何度も助け、その精神を成長させるが、彼には突然の理不尽な死が待っている。この源吉の非業の死が、物語の終わりに秋谷の避けられない死の意味を違うものに昇華させる。秋谷は無実の罪を負って死ぬのでなはなく、藩と領民のために死ぬのだ。 忠義と覚悟。生きることの意味と死ぬことの意義を、凄烈に問う歴史小説である。
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葉室麟の時代小説で第146回直木賞受賞作。 直木賞受賞にふさわしい優れた小説という印象を持った。 良く練られたストーリー、読者の興味を掻き立てるシチュエーション、魅力的な登場人物、そしておそらく葉室さんの得意とする読者の心に染入る様な美しい風景描写。 物語の初めから終わりまで、...
葉室麟の時代小説で第146回直木賞受賞作。 直木賞受賞にふさわしい優れた小説という印象を持った。 良く練られたストーリー、読者の興味を掻き立てるシチュエーション、魅力的な登場人物、そしておそらく葉室さんの得意とする読者の心に染入る様な美しい風景描写。 物語の初めから終わりまで、本当に良く作り上げられていて、ある種の芸術品の様な美しい作品だと感じた。 職場で友人との喧嘩から刃傷沙汰を起こしてしまった檀野庄三郎は、切腹を赦免される代わりに向山村に幽閉され家譜編纂を命じられている戸田秋谷の監視を命じられる。 戸田秋谷は七年前に前藩主の側室との密通の容疑がかけられており、10年後の切腹が命ぜられていた。 庄三郎は、戸田家の人々と一緒に過ごすことで秋谷の人柄を知り、彼の罪に疑問を持ちはじめ真相を調査する。 「蜩ノ記」とは秋谷が日々の出来事を記録している日記の事である。 この作品は、心に残る台詞が多い。 庄三郎が真相を調査する過程で人の心の闇に嫌気がさし、遠くの田畑を眺めながら 「ひとは、稲のようにまともには生きられぬものなのでしょうか」 と相手に問いかけるシーンは、非常に印象深かった。 戸田秋谷の犯した罪の真相がこの作品のキーポイントであり、その謎に迫ることは危険を伴う為、緊迫したシーンが続きスリリングな楽しさがある。 また、庄三郎が戸田家の人々と交流する事で、人を愛おしむ心が彼の心に生じてくる様の描写も美しい。 それと庄三郎の秋谷の娘 薫に対する恋愛の様子がいかにも不器用で微笑ましかった。 物語のクライマックスからエンディングも感動的で、この美しい物語にふさわしい。 ここでは、庄三郎の人間としての成長が如実に出ていて本当に素晴らしいシーンであった。 非常に完成度の高い良い小説だと思う。 ただ物語が美しければ美しいほどいかにも作り話という感じがしてしまうので、その部分のバランスさえ良ければ満点だ
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2014.3/29 罪人として死への期日が定まっているなか、抗弁することなく、武士として、人として、信ずる仕事に粛々と向かう戸田秋谷…彼に関わる者は、心がけ良き者はより良き道へ、悪しき者はより悪しき道へと生き方を変えていく…とのたまう悪しき側の家老・中根兵右衛門と、良き者の檀野庄...
2014.3/29 罪人として死への期日が定まっているなか、抗弁することなく、武士として、人として、信ずる仕事に粛々と向かう戸田秋谷…彼に関わる者は、心がけ良き者はより良き道へ、悪しき者はより悪しき道へと生き方を変えていく…とのたまう悪しき側の家老・中根兵右衛門と、良き者の檀野庄三郎が対照的。推理小説、時代小説と括ってしまえない内容の濃い物語。ロバート・キャンベルの解説も良かった。続きが楽しみ。
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