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蜩ノ記 の商品レビュー

3.9

226件のお客様レビュー

  1. 5つ

    63

  2. 4つ

    83

  3. 3つ

    54

  4. 2つ

    8

  5. 1つ

    2

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2018/01/28

葉室麟の時代小説で第146回直木賞受賞作。 直木賞受賞にふさわしい優れた小説という印象を持った。 良く練られたストーリー、読者の興味を掻き立てるシチュエーション、魅力的な登場人物、そしておそらく葉室さんの得意とする読者の心に染入る様な美しい風景描写。 物語の初めから終わりまで、...

葉室麟の時代小説で第146回直木賞受賞作。 直木賞受賞にふさわしい優れた小説という印象を持った。 良く練られたストーリー、読者の興味を掻き立てるシチュエーション、魅力的な登場人物、そしておそらく葉室さんの得意とする読者の心に染入る様な美しい風景描写。 物語の初めから終わりまで、本当に良く作り上げられていて、ある種の芸術品の様な美しい作品だと感じた。 職場で友人との喧嘩から刃傷沙汰を起こしてしまった檀野庄三郎は、切腹を赦免される代わりに向山村に幽閉され家譜編纂を命じられている戸田秋谷の監視を命じられる。 戸田秋谷は七年前に前藩主の側室との密通の容疑がかけられており、10年後の切腹が命ぜられていた。 庄三郎は、戸田家の人々と一緒に過ごすことで秋谷の人柄を知り、彼の罪に疑問を持ちはじめ真相を調査する。 「蜩ノ記」とは秋谷が日々の出来事を記録している日記の事である。 この作品は、心に残る台詞が多い。 庄三郎が真相を調査する過程で人の心の闇に嫌気がさし、遠くの田畑を眺めながら 「ひとは、稲のようにまともには生きられぬものなのでしょうか」 と相手に問いかけるシーンは、非常に印象深かった。 戸田秋谷の犯した罪の真相がこの作品のキーポイントであり、その謎に迫ることは危険を伴う為、緊迫したシーンが続きスリリングな楽しさがある。 また、庄三郎が戸田家の人々と交流する事で、人を愛おしむ心が彼の心に生じてくる様の描写も美しい。 それと庄三郎の秋谷の娘 薫に対する恋愛の様子がいかにも不器用で微笑ましかった。 物語のクライマックスからエンディングも感動的で、この美しい物語にふさわしい。 ここでは、庄三郎の人間としての成長が如実に出ていて本当に素晴らしいシーンであった。 非常に完成度の高い良い小説だと思う。 ただ物語が美しければ美しいほどいかにも作り話という感じがしてしまうので、その部分のバランスさえ良ければ満点だ

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2018/01/08

2014.3/29 罪人として死への期日が定まっているなか、抗弁することなく、武士として、人として、信ずる仕事に粛々と向かう戸田秋谷…彼に関わる者は、心がけ良き者はより良き道へ、悪しき者はより悪しき道へと生き方を変えていく…とのたまう悪しき側の家老・中根兵右衛門と、良き者の檀野庄...

2014.3/29 罪人として死への期日が定まっているなか、抗弁することなく、武士として、人として、信ずる仕事に粛々と向かう戸田秋谷…彼に関わる者は、心がけ良き者はより良き道へ、悪しき者はより悪しき道へと生き方を変えていく…とのたまう悪しき側の家老・中根兵右衛門と、良き者の檀野庄三郎が対照的。推理小説、時代小説と括ってしまえない内容の濃い物語。ロバート・キャンベルの解説も良かった。続きが楽しみ。

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2017/12/19

お家騒動のゴタゴタを背景に 武士の道(?)人の道を貫く登場人物を描く小説....。 そんなかんじかな。 ありがちゃ失礼かもしれないが 時代劇小説読むと、よくある感じの話で 特に盛り上がるところもなく、淡々としすぎていて 見どころが感じられなかった。

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2018/02/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2017.12.18 読了  お家騒動の暗部を知りながら、無実の罪と理不尽さを甘んじて受け入れる・・・潔さすぎる。しかし結果として嫡男の郁太郎に旧禄が復され娘婿の庄三郎に新知が与えられたことでお家継続が第一の武家としては本望かも知れぬが。

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2017/12/03

知人に勧められ読んでみましたが、文章も物語の構成も稚拙で 大絶賛されるほどの作品には思えず、感動もありませんでした。 登場人物もなんのために出てきたのかわからない者がちらほらおり、 秋谷と源吉以外はみな薄っぺらく感じました。 これの前に読んだ冲方丁の『光圀伝』が根幹のしっかりし...

知人に勧められ読んでみましたが、文章も物語の構成も稚拙で 大絶賛されるほどの作品には思えず、感動もありませんでした。 登場人物もなんのために出てきたのかわからない者がちらほらおり、 秋谷と源吉以外はみな薄っぺらく感じました。 これの前に読んだ冲方丁の『光圀伝』が根幹のしっかりした作品だったため、 余計に本作の粗さが気になったのかもしれません。

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2017/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

切腹が決まっている男と、そこに監視の任で使わされた男の生き方の話。 命よりも優先するものがあるという生き方、自分が受け入れられるかはさておき、この登場人物であればそうするのかな、むしろそうしてほしいと思ってしまうのは作者の上手さなのでしょう。 決して痛快な終わり方ではないですが、これでよかったと感じる。 歴史ものは普段読まないが楽しめた。

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2017/09/30

ずっと読みたい本で文庫化を待望していた。切腹を覚悟した男の「その日」までの生き様がどのような物語になるのかを期待してのことだ。しかし、自分の思い描いていた内容ではなかった。面白くなかった訳ではない。秋谷を監視する目的で遣わされた庄三郎の目線から見る向山村での出来事は、郡方役人や郁...

ずっと読みたい本で文庫化を待望していた。切腹を覚悟した男の「その日」までの生き様がどのような物語になるのかを期待してのことだ。しかし、自分の思い描いていた内容ではなかった。面白くなかった訳ではない。秋谷を監視する目的で遣わされた庄三郎の目線から見る向山村での出来事は、郡方役人や郁太郎の友・源吉の死というサスペンスと、秋谷が謀略・冤罪の果てに切腹を申し渡されたことに対する謎解きの要素が強い印象を受けた。

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2017/08/17

命をかけた真摯さは人の心を大きく動かし、その生き様のバトンはしっかりと繋がっていく。死を前にしても生ききる秋谷や源吉の姿勢が心に残った。

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2017/07/01

会社の社長にすすめられた作品。秋谷のように命のリミットが分かっているからこそより今自分が成すべきことが明確にみえていて日々を大切に出来るのかもしれないけど、普通はそうじゃないからこそ最期に後悔がない生き方をしたいと思った。命と人との繋がりの大切さを考えさせられた作品でした。

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2017/06/17

「蜩ノ記」 映画は見ていないが文庫になっていたので読んでみた。 お家騒動に巻き込まれ10年後の切腹を申しつけられ、その10年間の間に藩の歴史を編纂するように言いつかった戸田秋谷の物語である。 物語はひょんな弾みで親友に怪我を負わせ、切腹処分の代わりに戸田秋谷の監視役として派遣され...

「蜩ノ記」 映画は見ていないが文庫になっていたので読んでみた。 お家騒動に巻き込まれ10年後の切腹を申しつけられ、その10年間の間に藩の歴史を編纂するように言いつかった戸田秋谷の物語である。 物語はひょんな弾みで親友に怪我を負わせ、切腹処分の代わりに戸田秋谷の監視役として派遣された檀野庄三郎の話から始まる。 庄三郎は次第に秋谷の清廉潔白で領民たちを思いやる心に動かされていく。 お家騒動の原因が次第に解き明かされていく謎解きと、迫る秋谷の切腹、そしてその中での秋谷、庄三郎、その他の登場人物の思いがよく描かれており、引き込まれる。 秋谷は自分が切腹することについて、やることはやったので思い残すことはないと言うが、慶仙和尚に残された者の思いを汲んで死ぬことをためらう心があることが本当の悟りだと諭される。 主人公の戸田秋谷が己の意志を貫くあまりにストイックな理想的な武士に描かれすぎているところが少々気になるが、いい作品だと思う。 映画は役所広司、岡田准一が演じているが一度見て見たい。

Posted byブクログ