蜩ノ記 の商品レビュー
葉室麟さんの羽根藩シリーズ。 映画も見てみたいと思う。 作中の「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りておない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」という一文が何よりも印象に残った。 「三浦家譜」を完...
葉室麟さんの羽根藩シリーズ。 映画も見てみたいと思う。 作中の「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りておない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」という一文が何よりも印象に残った。 「三浦家譜」を完成させ、切腹を待つ秋谷に慶山和尚が問う。 「ならば思い残すことはないか」と。 秋田には首背して答える、 「……もはや、この世に未練はござりませぬ。」と。 重ねて僧侶が言われたのが、未練がないとはこの世に残るものに気遣いがないということだと。 人は生まれた瞬間から、命の砂時計が落ちる。止まることはない。 その中で、最も大きな財産は「愛おしい」そう思えるものにどれだけ出会えたかということに尽きるように私は思う。 自分の人生を愛おしむそんな生き方がしたい。そんな気持ちにさせられる本だった。
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R6.9.26~10.24 ・きっかけ 妻が買ったのを読んだ ・感想 初葉室麟作品。時代小説。 物語は複雑でややミステリ風味あり、よく考えられているのですが、好みでいえば、藤沢周平に軍配があがる。人の性格・感情がいくぶん作り物っぽく感じてしまったが、まさに個人の好みのよ...
R6.9.26~10.24 ・きっかけ 妻が買ったのを読んだ ・感想 初葉室麟作品。時代小説。 物語は複雑でややミステリ風味あり、よく考えられているのですが、好みでいえば、藤沢周平に軍配があがる。人の性格・感情がいくぶん作り物っぽく感じてしまったが、まさに個人の好みのような気もする。もう1作くらいは読んでみたいです。 なお、★3は少し辛めかも。
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時代小説をよく読むので、好きなんだなあと思います。今の時代の常識では考えられないことだけど、その非常識の中で、人間は同じように悩んだり自分らしさを求めたりしたのかなと思いながら読んでます。 全然別の世界の話でファンタジーと近い。そういう世界の話を読むと癒されるっていうのがカタルシ...
時代小説をよく読むので、好きなんだなあと思います。今の時代の常識では考えられないことだけど、その非常識の中で、人間は同じように悩んだり自分らしさを求めたりしたのかなと思いながら読んでます。 全然別の世界の話でファンタジーと近い。そういう世界の話を読むと癒されるっていうのがカタルシスってやつなんでしょうか?
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数年後の切腹が決まっている戸田秋谷はそれまでに三浦家譜(藩史)を完成させることを命じられている/監視人として派遣された檀野庄三郎は知るほどに秋谷の清廉さを感じ彼の起こしたという事件に疑問を感じる/一方で家譜編纂は藩の秘密をほじくり出す作業ゆえ常に口封じの危険がある意外にハードなも...
数年後の切腹が決まっている戸田秋谷はそれまでに三浦家譜(藩史)を完成させることを命じられている/監視人として派遣された檀野庄三郎は知るほどに秋谷の清廉さを感じ彼の起こしたという事件に疑問を感じる/一方で家譜編纂は藩の秘密をほじくり出す作業ゆえ常に口封じの危険がある意外にハードなものでだんだん危ない領域に踏み込んでいく。そこらへんでミステリでもある/秋谷を救うことはできるのか(無理そうやけど)/家老中野兵右衛門の目的は?/武士と農民では農民の方が清々しく生きている。 ■簡単な単語集 【赤座弥五郎】秋谷に斬られた小姓。お由の方の養父となった赤座与兵衛の五男。お由の方とは血はつながっていないが弟にあたる。 【郁太郎】秋谷の息子。真っ直ぐに育っており、農民とも分け隔てなく接することができる。礫投げが得意。 【市松】戸田家の面倒をみている若い男。源兵衛の息子。戸田家に恩義を感じている。薫に想いを寄せていると思われ、庄三郎への敵愾心を隠さない。 【羽根藩/うねはん】舞台となる豊後の藩。 【お春】源吉の妹。 【お美代の方】藩主兼通(順慶院)の側室だった。お由の方のライバルで敵視していたようだ。 【お由の方】当時の藩主、兼通(順慶院)の側室だった。秋谷の実父である勘定奉行柳井与市に仕えた中間の娘。今は松吟尼と呼ばれ尼寺にいる。 【織江】秋谷の妻。ちょっと身体が弱い。 【薫】秋谷の娘。 【家譜】三浦家家譜。いろいろスキャンダルや部外秘もあったりするので口封じの可能性があり思ったよりも命がけの作業。 【鎖分銅】百姓たちの武器。けっこう強力。 【慶仙和尚】藩内でも名僧として知られる。戸田秋谷と交流がある。七十歳を超えている。 【源吉】郁太郎の友人。《それになあ、おれは世の中には覚えていなくちゃなんねえことは、そんなに多くはねえような気がするんよ》p.258。《友達のことは覚えちょかんといけん。忘れんから、友達ちゃ》p.259 【源兵衛】戸田家の面倒をみている。市松の父。人柄の良さそうな丸顔。 【死】《仰せの通り、未練なくあの世へ参るなどと申しては、生悟りだと謗られてもやむを得ませぬな。やはり逝くのはせつないものでござりまする》p.388 【秋谷】戸田秋谷。かつて郡奉行として農民に慕われていた。筵の生産を農家に奨め財政を潤した。文武に優れ特に宝蔵院流十文字槍術は奥義に達した。江戸で藩主の側室と密通し事の発覚を怖れ小姓を切り捨てた件で切腹が決まっているが家譜づくりが途中だったので完成させるために十年間延長することになった。元勘定奉行柳井与市の四男で戸田家の養子になった。 【順慶院】六代藩主兼通。戸田秋谷の家譜づくりを完成させるために切腹を十年間延長させた。 【庄三郎】檀野庄三郎。奥祐筆を務めていたが、城内での喧嘩の罰のようなものとして、藩主、三浦家の家譜の清書をするという名目で秋谷の監視、およびもし逃げ出そうとしたとき本人と妻子を切り捨てるために派遣された。居合の名手。 【切腹】武士はすぐ切腹して責任を取ろうとするイメージがあるが、いつの世も人材は最重要であり、その育成には手間も時間もかかるものだからそんな簡単に死なれては困るのではなかろうかと常々思ってます。 【檀野庄三郎】→庄三郎 【戸田郁太郎】→郁太郎 【戸田織江】→織江 【戸田薫】→薫 【戸田秋谷/とだ・しゅうこく】→秋谷 【中野兵右衛門】家老。 【原市之進】奥祐筆差配。中野兵右衛門の懐刀とも言われている切れ者で物事の調整に長けている。 【蜩ノ記】戸田秋谷の日記。いかにして家譜編纂をしてきたかが描かれる。 【武士】こすっからいろくでもない武士ばかり登場するが実際はもうちょっとマシなんじゃないかと思う(というか希望する)。 【万治】源吉の父。酒びたり。DVもするらしいが子を思う気持ちはあるようだ。 【三浦壱岐守兼保】羽根藩初代藩主。 【水上真吾】檀野庄三郎の親友だったが友情より武士のプライドを優先した男。中野兵右衛門の甥。揉めたときに足の腱を切られ歩けなくなったので江戸に行きかねて希望の学問の道に進むことになった。後に庄三郎と和解した。 【向山村】元は戸田秋谷の所領だったが事件の後取り上げられ現在は中野兵右衛門の所領となっている。
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武士の覚悟と矜持をもって生きる秋谷。家族を守る覚悟をして死を選ぶ農民の子の源吉。登場する人々の身分に関わらず覚悟をもって生きる、それぞれの姿が清々しい。 “有るか無きかの微笑を浮かべる” 秋谷の表情として、たびたび登場するこの表現が、優しく寂しくて心に残る。
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人間を知る小説であり、若い人を育てる生き方を学ぶ事ができる。 葉室作品の名作であるという事は間違いない。
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知り合いに勧められて読んでみた。 不義密通の罪で3年後に切腹が命じれている武士、秋谷の生き方が一貫して清々しい。 (邪気まみれの自分が情けなくなるくらい、、、)。読み終えても清々しい小説だった。
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真実かどうか曖昧な、何やら公にできない事情がありそうな罪により、10年後の切腹を命じられた武士の生き様を描いた作品。 色々な事件が周囲では起きるが、全体的なトーンとしては大きな抑揚なく進んでいき、武士の一分を貫いていくストーリーは、武士を美化していると言えなくもないが、それでも読...
真実かどうか曖昧な、何やら公にできない事情がありそうな罪により、10年後の切腹を命じられた武士の生き様を描いた作品。 色々な事件が周囲では起きるが、全体的なトーンとしては大きな抑揚なく進んでいき、武士の一分を貫いていくストーリーは、武士を美化していると言えなくもないが、それでも読者の期待を裏切らない生き様は、日本人はやはり好きですね。
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3年後に切腹することが決められた武士。運命に抗わず凛として生きる姿に深く感動する。 季節、気候の描写も絶妙。登場人物は少ないが次第に明らかになる反応負の歴史。 時代小説として屈指の作品、名作中の名作だろう。
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初めての葉室麟氏の作品。心が洗われるような読後感。人としての凛々しく信念のある生き方。素晴らしい作品に出会えたなと思えた作品でした。
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