蜩ノ記 の商品レビュー
真っ直ぐで潔い、まさに武士道といった心を持った一人の男の話。 冤罪なのに弁明せず、切腹が決まってから十年もの間きっちり最後まで家譜作成の役目を果たし、途中何度も訪れる卑怯な取引にも屈せず、周囲の人に対して常に正しいと信じる行いを続け、そして潔く最期を迎えるとは、本当にどこまでも真...
真っ直ぐで潔い、まさに武士道といった心を持った一人の男の話。 冤罪なのに弁明せず、切腹が決まってから十年もの間きっちり最後まで家譜作成の役目を果たし、途中何度も訪れる卑怯な取引にも屈せず、周囲の人に対して常に正しいと信じる行いを続け、そして潔く最期を迎えるとは、本当にどこまでも真っ直ぐで強い人でした。 こういった地方都市の名も無き小藩を舞台にした時代もので、かつ単独作品というのは非常に珍しい気がしますが、それを名作に仕上げるところが葉室氏の魅力だと思います。
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戦国武将以外の時代小説を初めて読んだ今作。 直木賞受賞作で泣けると触れ込みがあり、小説で泣ける?それは経験した事がないので読んで見る事に。 序盤から静かな雰囲気の中で進み、それぞれの生き様や考え方に色々と考えさせられる。 登場人物達の心情も細やかに書かれていて感情移入しやすく、残...
戦国武将以外の時代小説を初めて読んだ今作。 直木賞受賞作で泣けると触れ込みがあり、小説で泣ける?それは経験した事がないので読んで見る事に。 序盤から静かな雰囲気の中で進み、それぞれの生き様や考え方に色々と考えさせられる。 登場人物達の心情も細やかに書かれていて感情移入しやすく、残念ながら泣けはしなかったが直木賞受賞作とはこの様な作品なのかと知る事ができた。 個人的にはラストも素敵で後味が良く、ここで泣けといった感じもない葉室麟さんの作品に感銘を受けました。
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日本経済新聞に本や音楽の名作選のような記事が掲載されるのですが、2021/4/18に本作品が取り上げられていました。時代小説を読まない身としては、葉室さんのことを存じ上げず、その才能を惜しまれつつ、66歳でお亡くなりになったとのことで、初めて作品を拝読しました。 10年後の切腹...
日本経済新聞に本や音楽の名作選のような記事が掲載されるのですが、2021/4/18に本作品が取り上げられていました。時代小説を読まない身としては、葉室さんのことを存じ上げず、その才能を惜しまれつつ、66歳でお亡くなりになったとのことで、初めて作品を拝読しました。 10年後の切腹を命じられている武士と、その武士のところに見張りとして送られた若い侍を軸にした物語。事件の意味が一枚一枚めくられていき、その都度、そうだったのか、という驚きがあります。文壇にデビューされてたのが54歳と遅く、本作品は7年目のくらいのときのもの。構成に無理がなく手練れた感じを受けます。 藩と領民を考え、家族を大事にし、いわば自分をなくして考える武士の最期。全体を俯瞰する目をもち、あるべき姿を追求する彼は、ヒーローに違いありません。けれど、自分をなくしていく姿は、現代の40代(武士の年齢設定)に共感を呼ぶのか。米国や中国の人々の自己主張の強さを思い、彼らと対峙しながら生きる現代において、それは難しいような気もしました。 けれど、自己主張が強いことだけがよいわけでもありません。一方、本作品の武士も自分をなくしているだけではない。ここぞというときに、彼は果敢に動き、かつては同期であった権力者を殴る挙に出ます。そして、それは権力者の心をもとらえます。彼の命は終わってしまうけれど、次の世代へと彼の精神が受け継がれる。こういう強さをもってもよいのだ、と思わせてくれる作品です。
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家譜編纂後の切腹が決まっているなかでも揺るぎない信念を持って日々を過ごす戸田秋谷。その生き方に美を感じました。 秋谷の子、郁太郎の友人、源吉も子供ながらに人情深く、芯の通っている人物で非常に魅力的でした。
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良い。 直木賞にふさわしい。面白い。 ドラマ、映画に合ってそう。 武芸、人格に優れた武士の鏡のような主人公二人。 複雑な藩の過去の陰を暴いて行く。
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羽根藩での藩や家老の保身の為の陰謀を暴く戸田秋谷と壇野庄三郎の物語。 自分の命の期限を知りながら生き、これほど清廉に潔く生きることが出来ようか、深く美しい人生のお話。 「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣ってはおらぬと言っているに等しい。この世をいとおしい、去りたくない、と思って逝かなければ、残されたものが生き暮れよう」 慶仙和尚の言葉。
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時代物を読むたびに日々の生活や言動を恥ずかしく思ってしまう自分に気づく。 やはりこの時代にある心構えと言うか人としての値観が全く違う。 そこに強く惹かれてしまうのは自分自身が持ってない物だからなんだろうと思う。 父親として又一人の人間としてほんの少しでも今の自分を改めるとこが出来...
時代物を読むたびに日々の生活や言動を恥ずかしく思ってしまう自分に気づく。 やはりこの時代にある心構えと言うか人としての値観が全く違う。 そこに強く惹かれてしまうのは自分自身が持ってない物だからなんだろうと思う。 父親として又一人の人間としてほんの少しでも今の自分を改めるとこが出来れば良いが(笑)。 敬愛する藤沢周平作品より良い意味で読み易く素直に感動できる万人に読んでほしい作品。
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まいったな、これは。山、川、里、城下。農民、町民、武士。様々な景色や人々の感情がラストに向かって迫り来る。圧巻。
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f分の1に揺らぐ木漏れ日を、降る蜩の声を撫でる柔らかな風に、立ち昇る土の匂い。 生活のコリを代謝して、仕事のウミを燃焼してくれる森林浴さながらのマイナスイオン発生装置。 これぞ読書の値打ち。
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以前、映画で見た作品。 起伏が少なく淡々と物語は進むが 武士とは何たるか、をよく表した作品。 命を区切って生きることの大切さも教えられる。 冒頭と最後も上手くつながっており 悲しい最期なはずだが読後感はいい清々しさです。 映画で筋を知っていても本も楽しめる作品です。
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