なぎさ の商品レビュー
ああ、山本文緒が帰ってきた。 彼女の長編はもう読めないのかな、と思っていただけに感無量。 おかえり!! 20代の頃に読みふけった山本さんの小説。 表面には現れない心の傷、足元のおぼつかなさ、言いたい事を言えないもどかしさ、そして孤独感。 この感じ、他の作家じゃ絶対味わえない。 ...
ああ、山本文緒が帰ってきた。 彼女の長編はもう読めないのかな、と思っていただけに感無量。 おかえり!! 20代の頃に読みふけった山本さんの小説。 表面には現れない心の傷、足元のおぼつかなさ、言いたい事を言えないもどかしさ、そして孤独感。 この感じ、他の作家じゃ絶対味わえない。 この物語は以前の山本作品の繊細さを余すことなく堪能させてくれる一方で、もうちょっと現実寄りになっていると思う。 親の呪縛から逃げるために故郷を捨てた冬乃、そしてその妹の菫がどうやって親と対峙するのか。 家族とは何なのかがこの小説の核になっている。 一方で、いかに働くのか。誰のために働くのか。 ブラック企業で働いている冬乃の夫の佐々井や、後輩の川崎。 カフェを突然始めると言いだす菫と、それに翻弄される冬乃。 働き方を模索する小説でもある。 読んでいる途中は苦しかったり、辛かったり、イライラしたり、悲しかったり。 けっして楽しい小説ではないけれど、それぞれが一歩一歩前に向かっていく姿が良かった。 そうだよ、いつだって山本さんの作品は読後感が良い。 最終的には救ってくれる。 だからまた読みたくなる。 久々の山本作品に興奮しなんだかまとまりがなくなってしまった。 あまり無理せずに執筆活動を続けてほしいと願いつつも、もっともっと読みたい欲求が抑えられない私。 でも仕方がない。 私が利用する図書館の予約ランキング上位と言えば、東野圭吾とか今をときめく池井戸潤。 もしくは文学賞受賞作や村上春樹の新作が並ぶ位で、新作もそう待たずに読むことができる。 ところがどっこい、「なぎさ」は珍しく3ヶ月以上待った。 山本文緒の人気ってやはり絶大。 こんな田舎町でも。 これからも時折で良いから彼女の作品を読んで、歳を重ねていきたい。 そんな気分だ。
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家族、仕事、お金…人生そのものをといかけてくる作品だった。感じたことは沢山あるのに、ぐちゃぐちゃに絡まった毛糸のようになって言葉にならない。自分にも思い当たる節があって、ゾッとする。流れに身を任せ、その中で少し舵をきる….という言葉には心を揺すぶられた。あぁ、本当にそうだよなって...
家族、仕事、お金…人生そのものをといかけてくる作品だった。感じたことは沢山あるのに、ぐちゃぐちゃに絡まった毛糸のようになって言葉にならない。自分にも思い当たる節があって、ゾッとする。流れに身を任せ、その中で少し舵をきる….という言葉には心を揺すぶられた。あぁ、本当にそうだよなって。今を生きる。大切な人と共に生きる。ゆっくり、一歩ずつ。今は、そしてこれからも、それでいい。
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普通の話だと思うけど、何故か引き込まれてしまった。佐々井君と冬乃の関係がとてもいい、ハッピーエンドといって良いのだろう。
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15年ぶりの文緒さんの長編は、女性だけじゃなくて人の生き方を描いたものだった。見知らぬ土地で見知らぬ人と出会い、家族や自分自身を見つめ直すことになる主人公たち。この本にはありふれた人生の一幕が、まるで渚のようにたゆたう。 背景の見えない登場人物もいたけれど、人生にはそんな風に現れ...
15年ぶりの文緒さんの長編は、女性だけじゃなくて人の生き方を描いたものだった。見知らぬ土地で見知らぬ人と出会い、家族や自分自身を見つめ直すことになる主人公たち。この本にはありふれた人生の一幕が、まるで渚のようにたゆたう。 背景の見えない登場人物もいたけれど、人生にはそんな風に現れてさっと消えていく人もいるよなあと。所さんの言うとおり、人はどんな強固な意思があれど、大きな流れに流されている。だから生きることに力まなくて良いんだよね。
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慣れるまでは辛かったけど、中盤からはサラサラと流れるようだった。完全なハッピーエンド、ではないのだけれど、心がなんとなくあったかくなった。
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今までの恋愛小説とは違い、現実的で棘のある作品だったと思う。妹にコンプレックスを持つ姉とその夫の後輩と言うあまり接点のない二人の視点で話が進むので、二つの世界、考え方があったがどちらにも共感する部分があった。ラストが前向きだったのでスッキリした。
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登場人物のうじうじぐだぐだ感にいらっとする。 でも最後はぐいぐいと読めた。 待望の山本文緒の長編。期待が強すぎたのかな〜 昔の作品ってどんなんだったっけと思い、再読してみるかな。
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山本文緒という作家が私は一番好きだ。文章に態とらしさが全くなく、平易で淡々としているのにぐさりぐさりと心を刺し、今ではもう平気なんて思い込んでいた傷口をぐらぐら揺らしてまた血を吹かす言葉選び、人物と作家との距離と読者と人物との距離が同じだと感じるところ、あげれば切りが無いくらいに...
山本文緒という作家が私は一番好きだ。文章に態とらしさが全くなく、平易で淡々としているのにぐさりぐさりと心を刺し、今ではもう平気なんて思い込んでいた傷口をぐらぐら揺らしてまた血を吹かす言葉選び、人物と作家との距離と読者と人物との距離が同じだと感じるところ、あげれば切りが無いくらいに。 だから待っている、読み終われば次の作品を。出来るまできれいなお座りで待っていられる。 『なぎさ』は主人公冬乃の家にアパートでボヤを出してしまい家を失った妹の菫が転がり込んでくるところから始まる。冬乃に妹はカフェをやらないかと持ちかけてくるのだが… 冬乃の夫の佐々井は毎日部下の(今時の男の子の)哲夫を連れて海釣りに出かけていた。佐々井のことを哲夫はいいひとだが何を考えているのか分からないと思う。仕事がしたくて入ったのに毎日こんな有様では意味がないと苛立ちを募らせていたが、ある事件の後ことは一変する。自分がいるのがブラック会社だと知った哲夫は… 物語は二人の視点で主に進む。そこにカフェ経営に出資をしてくれるモリという男や、公園の足湯で出会った所ジョージに似たおじいさんなどが絡んで、久里浜という土地のなかで普通に生きることの難しさとむず痒さが描かれる。 ラストの光を見ようと懸命に前を見始めた人物たちが清々しく、穏やかな海を見ているような気持ちで本を閉じた。
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とりあえず最後まで読んだけど、、、 最後の最後まで、何が主題なのかも、何を表現したいのかも、そもそもタイトルのつけかたも、中身とどう繋がっているのかさえ、、、さっぱりわからない、ただ300数十頁にわたって文字と文章が連ねられた小説。。。
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山本文緒さん待望の長編。この人だけは応援する意味も込めて買ってしまいます。 文章や全体の雰囲気が変わってなくて安心。ラストはもう少し突っ込んで欲しかったけど、終盤の畳み掛けるドロドロ感は良かった。
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