なぎさ の商品レビュー

山本文緒【著】

2013/11/07

待ちに待った山本氏の新作。15年ぶりの長編小説だそうで。

この間、うつ病にかかった、と「再婚生活」を読んで知ったが、だからからこそ、この発刊はうれしい。　ゆっくりでいいです、マイペースでいいです。
貴女の文章を待ってます。

中身は、といえば、今の社会を反映してて、「ブラック企業」ありの、「うつ病」ありの、、、。
人との距離感が難しいのは、どの時代も変わりはないんだろうけど、でも、きっと、昔よりは生き難い世界になっているんだと思う。
私はもうすぐ「老年」といわれる世代の仲間へ入るけど、子どもたちや、若い人たちにとっては、大変な社会だ。

それでもね、隣に、自分の大切な人が居るだけで、全然違うだよ、きっと。

いくつか泣いた場面はあったけど、所さんに「あなたを苦しめているものはどんなことなの？」と聞いたシーンは、なんだか、めちぇめちゃ泣けた。

そして、「モリ」みたいなやつはどこにでも居るんだぜ。　

2013/10/30

期待通りの読後感。
山本文緒さんのあまりに久しぶりな長編小説、帯のコピーでかなり期待していて、それでも「良かった」んだからよほど「良かった」ということだと思う。

すごく一般的で特徴の無さそうな主人公だけど、徐々に「少しだけ他人と違う」個性や過去が明らかになってくる。

自分には何も無いから。
静かでおだやかな暮らし。

そんなものを隠れ蓑にしてひっそり生きているつもりでも、誰かのもたらす小さなきっかけで、新しい一歩を踏み出すことがある。

内側を向いて生きていた登場人物たちに、陽がさしてきたことは幸せを予感させて、うれしい小説だった。

2013/10/27

他人との距離をはかるのがヘタな人。肉親、仕事関係、いたるところにラスボス的な自己中な敵がいる。適当に切り捨てればいいのに、それができないってのを、丁寧に、丁寧に描く。イラっとくるキャラなのに、ガンバレガンバレと唱えながら読んだのは、きっと自分と似ている点があったから(認めたくないけたど)。

p.321「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に、じゃなくて一緒に柴刈りに行って、一緒に洗濯に行くってことかな」