なぎさ の商品レビュー
15年ぶりの長編小説。 白いイメージから始まって、だんだんグレーになって、そして黒・・ラストは朝モヤの中の光って感じだった。 「生きていくことは、やり過ごすこと」というセリフが出てくる。肉親に辛い目に遭わされ、それでも許すこと、やり過ごすことは、非常に難しい。でも、内向きなその殻...
15年ぶりの長編小説。 白いイメージから始まって、だんだんグレーになって、そして黒・・ラストは朝モヤの中の光って感じだった。 「生きていくことは、やり過ごすこと」というセリフが出てくる。肉親に辛い目に遭わされ、それでも許すこと、やり過ごすことは、非常に難しい。でも、内向きなその殻を破った時、人は変われるのだろうか。 いろいろ抱えて悩んでも、きっとどこかに抜け出せるはず。そんな印象だった。
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どこがどう心に作用したのか全く分析できないんですが、読みながら、知らない間に自分の過去とか、今の考え方とか根拠のない自分だけの常識とか思い込みとか、自分と家族(あるいは他者)との関わり方についてとかをうにゃうにゃ考えさせられていて、ハッと気づくとうっかり何か思い詰めさせられている...
どこがどう心に作用したのか全く分析できないんですが、読みながら、知らない間に自分の過去とか、今の考え方とか根拠のない自分だけの常識とか思い込みとか、自分と家族(あるいは他者)との関わり方についてとかをうにゃうにゃ考えさせられていて、ハッと気づくとうっかり何か思い詰めさせられている、という感覚が懐かしい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
幾つもの角度から現代的な事象を切り取る手法と 特に中盤からのスピード感。 解決すること。解決しないこと。 落とし前がつくこと。以前とさして変わらないこと。 全体を思い返せば陳腐な言葉になるけれど、 一つ一つの段落はパズルのピースが落ちてくるように 世界が見えてくる。 特にモリという存在が際立って異質。 カードのジョーカーのように天使のように舞い降り 悪魔のように嘲って去る。 (モリは中川淳一郎氏のイメージで読んでいました。 やってることは高城剛氏みたいに思っていました) 菫は姉たちが翻弄され困り切る前にモリとのつながりを細めた。 それにしても最悪な状況を掠めてギリギリのラインで踏みとどまる。 それほど良いことはおきない。 でも悲しくはない。 前向きだし、希望はあり、何より皆タフだ。 予断を許さない厳しさはあった。 お金がない。あまり蓄えがない。 しかしびっくりするような貯金があったとしても それだけで幸せになるわけでもないことはよくわかっている。 幸せってなんだろう。 ひどく面倒くさい道順を経てようやく出会えるかもしれない。 今が幸せなことに気づけてないのかもしれない。 何で売却の時に、驚くのは仕方ないとして 怒ってしまったんだろう。 売却の合理性を理解できるほどの明晰さがなかったから。 正しいのは菫だ。でも冬乃も間違っているということではなかった。 ぶつかる二人のわだかまりをとくのは、知識と理解ではなく 共通する、「壁」。両親とのことでの共闘だった。 全ては時とともに流れ、数珠つなぎのように繋がれ紡ぎ 関わりあい時には共振し、時には解ける。 歩む方向が同じで隣り合うならどうにかやっていける。 レイヤーの違うモリは誰も彼も袖触れ合うだけ。 夫婦はともに歩き、妹も歩き始め、元芸人も歩き始めたばかり。 いいことばかりじゃないけれど、悪いことばかりじゃない。 そう信じて、生きるしか無い。 良くしようと考え動くだけ。 当たり前のことを当たり前に行う健やかさ。
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山本文緒さんの久しぶりの長編小説。なかなかリアルな物語。色々あるけど、最初から最後までほんわか温かかった。 でもモリを全然否定出来ないのはやばいかもね。根なし草バンザイ!
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故郷から逃れて生活する姉妹が「ながさカフェ」を始める。とらえどころのない姉の夫とその部下、実態のわからないカフェのプロデューサーを軸に話は展開する。虚無感がそこはかとなく漂い、姉妹はなぜ両親を嫌悪するのかが少しずつわかっていく。ほの明るい未来が皆に少しずつ照らされるのにほっとする...
故郷から逃れて生活する姉妹が「ながさカフェ」を始める。とらえどころのない姉の夫とその部下、実態のわからないカフェのプロデューサーを軸に話は展開する。虚無感がそこはかとなく漂い、姉妹はなぜ両親を嫌悪するのかが少しずつわかっていく。ほの明るい未来が皆に少しずつ照らされるのにほっとする読後感だった。
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冬乃と会社員の佐々井夫婦は故郷長野を出、久里浜で生活を送る。元芸人志望の川崎は佐々井の会社の後輩。佐々井家に転がり込んできた元漫画家の妹、菫に誘われ冬乃は「なぎさカフェ」を始めることに。ブラック会社に疲弊し退職した川崎も雇われる事になる一方、佐々井も見るからに調子を崩して行く…1...
冬乃と会社員の佐々井夫婦は故郷長野を出、久里浜で生活を送る。元芸人志望の川崎は佐々井の会社の後輩。佐々井家に転がり込んできた元漫画家の妹、菫に誘われ冬乃は「なぎさカフェ」を始めることに。ブラック会社に疲弊し退職した川崎も雇われる事になる一方、佐々井も見るからに調子を崩して行く…15年ぶりの長編
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待っていました、山本文緒さんの長編。所さんの優しさにほろっときました。みんなそれぞれが違う場所でも幸せに穏やかに暮らしてほしい、そう思いながら読みました。
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- ネタバレ
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久しぶりの山本文緒。以前はもっと毒があったのに、作家自身が鬱になったり離婚したりを乗り越えて、視線が優しくなったような感じ。肉親への情とか憎しみとか将来への不安とか、登場人物達の息苦しさが伝わって来る。
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後味、何とも言えない。 ぼんやりともやもやが残る。 …でも、それが生きていくということなのかも。 垣間見えるかすかな希望。 それよりも「わたしたちの未来はどうなるのだろう」という不安のほうが読後に残る。 それでも、前を向いて生きていく。 そんなふうにはならない。 ただ...
後味、何とも言えない。 ぼんやりともやもやが残る。 …でも、それが生きていくということなのかも。 垣間見えるかすかな希望。 それよりも「わたしたちの未来はどうなるのだろう」という不安のほうが読後に残る。 それでも、前を向いて生きていく。 そんなふうにはならない。 ただ、ただ生きていく。 「生きていくということは、やり過ごすということだよ」 って。所さんがそう言ってる。
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山本文緒さんの小説、あまり手に取ったことはないのですが…こちらは15年ぶりの長編とのことで、蜜のとても濃い一冊。 あっという間に読んでしまった、それほど没頭させるものがつまってる。出だしから、あ、これはなんかあるぞと匂わせるのがとてもうまく、序盤から吸い込まれていった。 ブラック...
山本文緒さんの小説、あまり手に取ったことはないのですが…こちらは15年ぶりの長編とのことで、蜜のとても濃い一冊。 あっという間に読んでしまった、それほど没頭させるものがつまってる。出だしから、あ、これはなんかあるぞと匂わせるのがとてもうまく、序盤から吸い込まれていった。 ブラック企業で務める旦那を持つ無職で友人もない冬乃と、冬乃の旦那の部下の川崎の二人の視点、ときどき謎の男モリ。 実家から逃げるようにして久里浜で暮らす冬乃たち夫婦のもとへ冬乃の妹、菫が突然やってくる。それもひどい火傷を背負って。菫に誘われカフェを開くことになるなかで、生活は二転三転していく。 山本文緒さんの作品に詳しくないからわかりませんが、面白かったです。鬱病を患って病んでいく描写とかさすがです。確か山本さん自身も患ってましたよね。 ふんわりしてるようで力強い、良作でした。
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