蛇行する月 の商品レビュー
教師に告白して振られた少女は、そののち働き先の菓子職人と駆け落ちをして東京へ流れ着いた。やがて時を経て子を得た彼女は今はしあわせだと言う。まったく違う人生を歩んでいる彼女の同級生たちは、彼女の生き方に強く動揺を受けるが…。 という物語は、立ち代わり同級生の女性たちが語り手を勤める...
教師に告白して振られた少女は、そののち働き先の菓子職人と駆け落ちをして東京へ流れ着いた。やがて時を経て子を得た彼女は今はしあわせだと言う。まったく違う人生を歩んでいる彼女の同級生たちは、彼女の生き方に強く動揺を受けるが…。 という物語は、立ち代わり同級生の女性たちが語り手を勤める連作短編集で、それぞれの生きざまが湿度と欲と本音を伴って描かれています。男のエゴに翻弄されたり、あえて翻弄されるふりをしたり。同性だからより共感できるのか、愚かながらも自分なりに懸命に生きていく姿がとても胸に迫りました。 この物語の中心にあるのは、みずからは語り手にならない「順子」という存在。彼女は教師に告白して玉砕、勤め先で妻のある男と駆け落ち、とスキャンダラスな行動をするのだけれど、「今」はまるで純粋な少女がそのまま大人になったようなすれていない生きざまを見せつけています。大人になり社会に出た人間がぽろぽろと落としていくそのあまりにもきらきらした要素は、彼女に再会した人間を揺さぶるほど「ありえない」ものでもあった。だから動揺を受けるのだけれど、彼女はただ満足して、しあわせだという。およそ今の東京という都会にいるとは思えない生活をしているというのに。 そのしあわせだといい続ける彼女を痛ましく思うのは、間違っているのかもしれない。けれど終盤彼女が語る言葉は心の底から出ているものであることに間違いはなくて、彼女はほんとうにしあわせなんだと思わされもする。そのどこまでもまっすぐな生き方は、ひたすら美しい反面、とてもおそろしくも思えたのでした。
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北海道の厳しい冬から始まり、東京の喧騒と塵にまみれた空気があり、沖縄の温かな夏へと続いて行く。 順子という女性は何も語らず、彼女の事を思う女性たちの心象風景が、えぐるようなタッチで語りつづられている。 誰にとっても「他人」は、背景や下敷きでしかない。ただ、順子だけは?いや、順子ですらそうなのだろう。でも、そこには触れない。あえて順子を純化することで、相対的に短編の主人公たちのリアリティを際立たせている。最後に順子の短編があったら、台無しだろう。 自分を生きるかしかない(他人をうらやんでもしかたない)し、今を生きるしかない(過去を悔いてもしかたない)。そういう平凡なことしか思い浮かばないのは、やっぱり自分が平凡だからか。 それでも、やってみようとは思いました。 好きか嫌いかで言えば、好きです。
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清美・桃子・弥生・美菜恵・静江・直子の六人の女たちの物語が、章に分けて書かれている。 帯には 高校を卒業した年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちするという。故郷を捨て、極貧の生活を「幸せ」と言う順子に、北の大地でもがきながら生きる元部員...
清美・桃子・弥生・美菜恵・静江・直子の六人の女たちの物語が、章に分けて書かれている。 帯には 高校を卒業した年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちするという。故郷を捨て、極貧の生活を「幸せ」と言う順子に、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは引き寄せられていく。 人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の幸せだった。 彼女たちの幸せはどこにあるのか。 とあったので、六人の女性はみな図書部の仲間かと思ったがそうではなかった。順子の母だったり、夫を寝取られた妻だったり。 ひとりの女が変えたのは、男の妻だった弥生だけではないのか。そして女性たちは誰も、順子の生活に幸せをみる事は出来なかったのではないか。
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人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。―道立湿原高校を卒業したその年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大...
人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。―道立湿原高校を卒業したその年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、引き寄せられていく―。彼女たちの“幸せ”はどこにあるのか?
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不倫した相手と駆け落ち でも、実家に住んでいた頃の友人とは繋がっている とは言っても、折々の挨拶状だけど
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勤め先の20歳も年上の男性と駆け落ちした順子。彼女と過去に関わった6人の女性が、それぞれの悩みや孤独を抱えながら、現在の順子の生き様を知ることで自分の幸せについて考える短編小説。 短編がひとつすすむごとに時代が数年後にうつり、6人の女性の目線を通じて順子の物語がどう進んでいるの...
勤め先の20歳も年上の男性と駆け落ちした順子。彼女と過去に関わった6人の女性が、それぞれの悩みや孤独を抱えながら、現在の順子の生き様を知ることで自分の幸せについて考える短編小説。 短編がひとつすすむごとに時代が数年後にうつり、6人の女性の目線を通じて順子の物語がどう進んでいるのかがわかる。 順子が主人公になった、順子目線の短編がないところがおもしろいなと思いました。 駆け落ち後の順子はお世辞にも順風満帆な人生とはいえない。6人の女性たちはそれぞれの立場から、順子の暮らしぶりを評価する。 自分より下、自業自得、みすぼらしい、みじめな生活ー そうした最初の思いは、順子の話を聞くうちに、自分の人生と照らし合わされ、なぜか羨望だったり優しいまなざしに変わってゆく。 それは順子がまっすぐで、自分を幸せだと強く感じ続けているからなのか。 しかし最後の章、順子の運命はあんまりで泣けました。 『ホテルローヤル』は正直おもしろいと思えなかったのですが、これはよかったです。 読んでてつらくもどかしいところもありましたが、前を向こうという気持ちにさせてくれました。
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お金があるとか身なりがいいとかそんな表面的なものと幸せとはイコールではない。 自分自身が幸せだと思えるかどうかが重要。 自分だけの幸せを見つけられればいいんだわ〜。 毎日楽しい、笑って暮らせている、そんなあたしは幸せだ。
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不思議な感覚。終盤までは、何だか文章のリズムがどうも合わなくて、誰にも共感できなくて、でも劣等感とか焦りだけはわかってしまって、すごく嫌な感じだった。 最後の直子の章で、なぜかいつのまにか泣いていた。 順子の真っ直ぐさが、鬱陶しいのに愛おしい。ずっと「幸せ」だと笑っていてくれる彼...
不思議な感覚。終盤までは、何だか文章のリズムがどうも合わなくて、誰にも共感できなくて、でも劣等感とか焦りだけはわかってしまって、すごく嫌な感じだった。 最後の直子の章で、なぜかいつのまにか泣いていた。 順子の真っ直ぐさが、鬱陶しいのに愛おしい。ずっと「幸せ」だと笑っていてくれる彼女に、周りがどれだけ救われているだろう。
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うまいなあ 読ませるなあ 背景の釧路とかの描写にも惹かれる 高校の同窓生の女性のそれぞれの人生 短編風だが一つのエピソードが必ず絡まれる 年を経ていく構成もうまいなあ しあわせって何かなあ? 《 よみがえる 乾いた今も 湿原が 》
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