円卓 の商品レビュー
ちゃぶ台、的な意味での円卓。ナイツオブラウンド要素は一切ない(それを期待して手に取ったのは秘密である)。孤独に憧れる変わった小学三年生琴子とその家族(しかも大家族)と琴子を見守るクラスメートの話。 悪気は決してないゆえに危なっかしい発言をする琴子。時には相手を傷つけてしまうので...
ちゃぶ台、的な意味での円卓。ナイツオブラウンド要素は一切ない(それを期待して手に取ったのは秘密である)。孤独に憧れる変わった小学三年生琴子とその家族(しかも大家族)と琴子を見守るクラスメートの話。 悪気は決してないゆえに危なっかしい発言をする琴子。時には相手を傷つけてしまうのではないかと思われることも言ってのけてしまう。 しかし、そんな琴子も愚かではない。 石太(琴子のおじいさん)が「発言には責任を持つこと」「いまじん(imagine)が大切」であることを琴子とぽっさん(琴子の親友)に話す。 琴子は変態に出くわしたことで、真の意味での孤独を知る。ぽっさんに打ち明けたときのぽっさんの一言、 「ひとりにしてすまんかった」 は琴子だけじゃなく私も孤独じゃなくなった感じがした。同時に、琴子と一緒に相手を思いやる(いまじん)ということを覚えた気がした。以降、琴子も不用意な発言をしなくなる。 小学生ならではの単純だけど複雑な気持ち。大事なことをあらためて教えてくれたと思う。
Posted by
こっことぽっさん、2人の絆が良かった。 作品全体が発する文章のリズムも秀逸。 西加奈子は直木賞作家だが、芥川賞的でもある。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「孤独」に憧れる小3女子「こっこ」は、同級生の特別な境遇を知るたび、ジャポニカ自由帳に新しく知った単語を書き取っていく。友達の吃音やものもらいで付けた眼帯、不整脈、ベトナム難民、在日3世。本人たちが、必ずしも嬉しくないことを、「こっこ」は羨ましがり、それを口に出してしまい、気まずい雰囲気が漂う。 物語は、小学3年生の微妙な心の揺れと成長を描いた成長譚であるが、笑って読める。登場人物たちと同じ、子どもの目線から、自然に喋っているような関西弁の語り口は、深刻になりそうな場面も和やかにしてくれる。 個人的には、「こっこ」と同級生のとても優しくて賢い、吃音の「ぽっさん」と、三つ子の姉の一人で、手芸部の智美が、気に入っている。智美がジャポニカ自由帳の表紙の蟻を見て、おばあちゃんの誕生日プレゼントの帽子に刺繍したいという変人っぷりなど、好感が持てた。 二人以外にも、全ての登場人物のキャラが立っていて、魅力的である。あるいは、見方次第で、身の回りにいる人たちは、みんな個性的で魅力的なのだろう。
Posted by
スクールカウンセラーからのおすすめで、手に取る。 西加奈子ファンは周囲に多いけど、私自身は今回はじめて読んだ。 とても良かった。 題材と文体がぴたりと噛み合っている。 舞台は90年代の関西かと思いきや、意外と2010年代らしくてビックリ。 西加奈子は、私には、柚木麻子、原田マ...
スクールカウンセラーからのおすすめで、手に取る。 西加奈子ファンは周囲に多いけど、私自身は今回はじめて読んだ。 とても良かった。 題材と文体がぴたりと噛み合っている。 舞台は90年代の関西かと思いきや、意外と2010年代らしくてビックリ。 西加奈子は、私には、柚木麻子、原田マハなど近年の実力あるエンタメ作家たちと同じにおいがした。 びしっと言っている。生きにくいけど私は私が好きと。アホだけどあなたたちは素敵だと。 肯定感に溢れていて、元気になれる本を作ってくれる人なんだろう。 またこの作家を読んでみたいと思った。
Posted by
前半は、懐かしい昭和の関西の団地に住む小学生の風景。 「うるさい、ぼけ」 そんな感じやったなーお金はないけど、それなりの幸せ。 後半はだいぶんとブッ飛んでる、鼠人間やら鹿やら。 ラストの紙吹雪はとてもよかったです。
Posted by
変なやつ、怪我してるやつ、音読できないやつ。何故だかこういう人たちを羨ましく思っていたことがじぶんの子供時代にもあった。羨ましいというよりは主人公のように真似をしたくなるような焦がれるような気持ちだった。 それを思い出した。それだけじゃなくて、子供の特有の世界の感じ方をここまで文...
変なやつ、怪我してるやつ、音読できないやつ。何故だかこういう人たちを羨ましく思っていたことがじぶんの子供時代にもあった。羨ましいというよりは主人公のように真似をしたくなるような焦がれるような気持ちだった。 それを思い出した。それだけじゃなくて、子供の特有の世界の感じ方をここまで文章にしてくれていて嬉しかった。
Posted by
いろんなことが知りたいし気になるし憧れがある1番純粋な年頃。 自分がこの頃のことを考えると全部がきらきら見えた気がする。今同じ景色を見てもきらきらはしないのかなと考えたり、それを失ったと捉えるのか得たと捉えるのは個人の自由。 価値観なんて全員違うし考え方が異なるのは当たり前だから...
いろんなことが知りたいし気になるし憧れがある1番純粋な年頃。 自分がこの頃のことを考えると全部がきらきら見えた気がする。今同じ景色を見てもきらきらはしないのかなと考えたり、それを失ったと捉えるのか得たと捉えるのは個人の自由。 価値観なんて全員違うし考え方が異なるのは当たり前だからこそぽっさんと琴子のシーンは響くものがあった。 登場人物の個性も豊かでおもしろかった。
Posted by
Posted by
こっこはみんなの当たり前が当たり前じゃない。 なんで子供が出来たら喜ばないとダメなのか。 自分がかっこいいと思った、不整脈を真似して怒られないとダメなのか。 差別が少なくともあるこの世の中で、吃音や外国籍、 繊細な子などを全て受容しているこっこ。 読みながらそこはちょっとち...
こっこはみんなの当たり前が当たり前じゃない。 なんで子供が出来たら喜ばないとダメなのか。 自分がかっこいいと思った、不整脈を真似して怒られないとダメなのか。 差別が少なくともあるこの世の中で、吃音や外国籍、 繊細な子などを全て受容しているこっこ。 読みながらそこはちょっとちゃう!とか 鼠人間の顔踏む場面はビビりながらもビビらないこっこはすごい気がした。 子供ながらに大人になろうとするもどかしさ。 死ぬことに対して何も感じていないことにはとても共感できた。 「死ぬことが怖くないのは、生きることを大切にしていないから」 生まれたからには死ぬけど、死ぬために生きようと思った。 読みやいながらも考えさせられた。
Posted by
1日で読めちゃった。西加奈子やっぱり好きだ。クスッと笑ってしまうんだなあ。 小学3年生のこっここと渦原琴子の毎日。吃音、在日韓国人、不登校など、世間ではマイナスとか触れちゃいけないとされてることに、純粋に疑問を持って発言するこっこ。こっこの幼なじみのぽっさんがめっちゃいい。聡明...
1日で読めちゃった。西加奈子やっぱり好きだ。クスッと笑ってしまうんだなあ。 小学3年生のこっここと渦原琴子の毎日。吃音、在日韓国人、不登校など、世間ではマイナスとか触れちゃいけないとされてることに、純粋に疑問を持って発言するこっこ。こっこの幼なじみのぽっさんがめっちゃいい。聡明で大人。こっこが変質者に会った時に一緒にいられなかったことを悔やみ、泣くところ、大きな愛を感じた。2人が「大人になりたい」と思った日に、夕焼けを背に、鹿を見る。サラバ!の最後もクジラが出てくるけど、この鹿は動物園?から逃げ出した本物の鹿なんだね。 大家族に愛されてクラスメイトからも一目置かれている美人のこっこは、「孤独」を願っていて。ちょっと分かるなあ、子供の時こうだったかも、って思いながらこっこを見守った。祖父の石太に「イマジンが必要」と言われて、こっこなりにいろいろ想像するようになる。変質者のところは、こっこの心に、無意識に深い傷を負わせた気がしてつらい。世の中には、自分とは確実に違う種類の人間がいる。怖いものがある。形は違えど、みんなそういうものに出会ったり対峙したりして大人になっていくのかな?
Posted by