円卓 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
負の言葉が綴られた沢山の紙のメモを浄化してあげるエピソードは主人公の成長が見られて良かった。面白かったが主人公が見る事が出来ない朋美のパートは少し長すぎたか。これから産まれてくる子どもも加わった家族団欒を楽しみにしている事が感じさせられるラストで上手く締められていた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
期せずしてまた小学校時代の話を読む。 自意識が肥大していくにつれて増す、風船にかかるような浮力と、思慮深くなるにつれて増す重力は自我を持ち始めた小さな身体に同時にかかってくる。 その時の羞恥心や混乱を思い出した。自分が10代の前半の時であればこの本を貪るように読んだだろうな。 好きな場面もいくつかあった。 【仲良し同士で色とりどりの靴下を片方ずつ履く】という中学校の流行に対して、福禄寿に憧れる思慮深い友人が言う。 「「の、ノボセイ行ってな、い、いきって、派手な靴下とか、や、やかましいゴムとか、に、手を出すのんは、や、やめとけよ。お、大人になってな、し、写真み、見たらな、絶対に、ここ、後悔するからの。」 ことこは、それはを大切な格言として、胸にしまっておいた。 「こ、個性いうもんは、も、目的にしたら、あかんのや。」」p,51 後悔するようなことは若いうちにやってしまってもいいと思うが、最後の台詞に刺される。 「家族が増えることは、手放しで喜ぶべきことである、という、決められた反応が気色悪いのだ」(p,103) 気色悪くていい、それを他人に強要せず、喜ぶことを強要されない関係を目指せるようになる、と励ましたくなる。と思っていたら、 「う、嬉しなかったら、よ、喜ばんでも、ええ。」(p,111)とさっきの友人が言ってくれる。 それを聞いた主人公の祖父が頼もしく思っているのもいい。この場面の祖父の距離感が最高に好き。 「ときどき、うちが言うことに、周りがおかしなることがある」(p,112)から9ページにわたる、個性と想像力について、口にしたことに対する責任についてのディスカッションは繰り返し読む。 「こっこには解せない言葉ばかりだ。つかもうとすると、するりと身をかわされる」(p,154) 上記のディスカッションの内容も合わさって、主人公のなかで思索が重量を伴って渦巻いていることがわかる。 昔読んだのだめカンタービレでも、「近づこうとすると離れていく。音楽も、先輩も」とのだめが苦しむ場面が印象的だった。 何も得られなくても、その時期を耐え忍ぶこと自体が自分にとって大きな宝になる。そのことを知っていてもつらいけど。 物語の終盤、主人公は浮力と重力からやや解放される。今度はその感覚に馴染むのに耐えている。いつか、その感覚が自分を鈍くする訳でもなく、ただ楽にしてくれることを大人になった私は知っている。その感覚によって人付き合いも楽しくなる。 一点だけ、ハーフ(ダブル)であるキャラクターを、早熟でクラスメイトにセクシャルハラスメントを繰り返すキャラクターにした理由が分からない。うーーん…星4にしたけど、評価がブレる…うーん…わからん…西加奈子の作品はこういう紙一重な描写があるイメージ…うーん…気になる…
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
夏休み。ふだん四六時中一緒にいるぽっさんが、予定があり珍しくこっこの側にいなかったときに、こっこは変質者にあい、顔を踏めと言われ、感情が爆発する。その激しい感情が、何を表すのかこっこにはわからない。 こっこは無口になってしまう。 かつて死にたいと思っていたこっこは、ぽっさんにその時の出来事を打ち明け、孤独に気づき、死ぬのが怖い、死ぬならぽっさんとがいいと思う。 自分の手やぽっさんの手が、いつのにか大きく大人びたものになっていることに気づく。 かつて命の誕生にこれっぽっちも喜びを感じなかったこっこは、母親の大きなお腹に触れ、羊水を呑み用を足すその命を想像する。 こっことぽっさんが、不登校になった仲間の机に、溢れる言葉を書いた紙を入れたのは、単純にこっことぽっさんの真似たい好奇心だけではなくて、優しさもあったと思った。以前は忖度なしに発言していたこっこが、急に言葉が重たく感じたというのは、こっこの中で何かしらの"配慮"が生まれたからだと思う。その行動も"配慮"からきていると私は感じる。 石太の言葉にも、『尊敬するのならば、それに責任を持ち、伝えなければいけない』とあった。 新学期に登校してその机の中身をみた仲間は微笑む。溢れ出る言葉がしねではなく、この世界の素晴らしいものに変わればいいと、私も思ったし、こっこたちも願ったのではないか。 まだ世界を知らない子供が、新しいもの経験をする中で、無知ゆえにそのときの感情をうまく表せられないもどかしさが描かれている。どんどん生まれる言葉、どこかに記録しないと処理が追いつかない、衝撃、戸惑い、感情の速さ目まぐるしさを書き留めるこっこは、必死に中学生の時に日記をつけていた自分に通じるものがあった。
Posted by
ストーリーはあまり面白くなかった。 自分自身まだ若いからだと思う。 三つ子ほど若い時に読みたかった。 子育てが終わったらまた違う感想になるんだろうなぁ。 こっことぽっさんが愛おしく可愛らしく映る日がくるのかなー オチもよくわからんし、鼠男のくだりとかいらん気がした。が、歳をとった...
ストーリーはあまり面白くなかった。 自分自身まだ若いからだと思う。 三つ子ほど若い時に読みたかった。 子育てが終わったらまた違う感想になるんだろうなぁ。 こっことぽっさんが愛おしく可愛らしく映る日がくるのかなー オチもよくわからんし、鼠男のくだりとかいらん気がした。が、歳をとった自分はどう思うのだろうか。そこは楽しみである。
Posted by
小学3年のこっこと家族、友達の物語。 こっこをはじめ、恐ろしい程個性的な面々。読みながら肩を揺らして笑いました。 でも、こっこが悩みながら成長していく後半は少しの切なさもあり。 登場人物が発する大阪弁のように、サクサク読めました。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
三人称神視点に慣れてないのか、偶像劇の小説になれていないのか、最初はかなり読みづらく、かなり苦労した。これ誰の独白なんだろう、え、もしかして西さんの気持ちを書いてないか?みたいなところも多々あった。読み飛ばしても先には進めるけど。 中盤になるとだんだん慣れてきて、物語の面白さに引っ張られるように次々とページをめくり、気がついたら終わっていた。そして、解説にあった通り、もうこの登場人物に会えないと思うと寂しさが込み上げてきた。 読み終えてわかったのは、主人公が『こうなりたい!』と目標にし、それに向けて突き進むようなものがないので、読み進めるのが難しかったのだと思う。あったとしても、眼帯がしたい、とか物語のゴールとはならないものだったし。 少年ジャンプの世界観、努力、友情、勝利、犯人を特定するミステリー、売れるを目標とする芸人やミュージシャン、付き合いたい、別れたくないけど別れてしまう、会いたい、助けたい、看取りたいなどに、どうしても親しみがあるからなのかもしれない。そういう意味でも、西さんの中でも純文学に近いような作品だった。 祖父とこっこと、ぽっさんとのシーンがカタルシスかなと思ったら、そのあと変質者出て、うさぎ乗せて、自由帳投げて、鹿きて、すごかったな。予想だにできないシーンのオンパレードだった。 小説家は自身の経験や思い出をもとに、あるいは想像力や、取材をもとに、自分が出来る範囲ではなく、少し難しいことに毎度挑戦しながら作品を完成させてゆく。 そのベクトルは挑戦という意味で少なからず『→』未来を向いている。一方『円卓』は、同時に、記憶が曖昧で思い出すことが難しい小学生のことを描くという『←』逆向きの矢印が働いている。しかも当時の感性を瑞々しいまま、一冊の本に閉じ込めているのが素晴らしかった。小学生の記憶なんて思い出せるものはわかりやすいものだけなので、懐かしいというより、むしろ知らないジャンルの小説を読んだ気分だった。
Posted by
こっこが感じる妬みの根源は、彼女自身が満たされた存在だからだと知って、妬みとは何だと考えずにはいられなかった。 それにしてもこっこ、友人のぽっさんの聡明さに妬ましさを感じても良いのではないかと思ったけども、それは違うのかしら?
Posted by
こっこは変わった子であると感じたが、自分の考えと似ている部分があると気づいた。 昔から感じていた他者とは違う自分の考え方。この本ではその考え方を否定せず優しく包んでくれる、そんな感じがした。
Posted by
主人公の小学生・こっこが家族やまわりの生徒との関わりを通じて成長していく話。 あまり家族に恵まれなかった自分にとっては昔ながらの仲の良いこっこの家族が眩しすぎて読むのが辛かった。 自分がどれだけ恵まれているかを知るのは大人になってからなんだろうな。
Posted by
西加奈子さん、一旦幼少期に戻る。現代に戻ってくる、決められた時間内しかその幼少期の記憶は持続しません。という状況で、決められた時間内にその生々しい子供時代の感覚や記憶や感性を閉じ込めたような作品だなと感じました。 なぜか消えない子供の時の濃い記憶にをふと思い返した時に、あれは本当...
西加奈子さん、一旦幼少期に戻る。現代に戻ってくる、決められた時間内しかその幼少期の記憶は持続しません。という状況で、決められた時間内にその生々しい子供時代の感覚や記憶や感性を閉じ込めたような作品だなと感じました。 なぜか消えない子供の時の濃い記憶にをふと思い返した時に、あれは本当にあった出来事なんだろうか、、とどこか違う世界の出来事のような感覚になる過去の景色や、過去の自分に対して、なんであんなことした?笑全く理解できない、という謎の行動、、自分なんだけど自分じゃないような。 子供の持つ恐ろしいエネルギーというか感性というか、それが段々と粘土みたいにこねくり回され、今の自分になっていくその過程を、今の記憶を持ったまま疑似体験したような不思議な作品。 ただただケラケラ笑ってた前半、琴子が感じることや体験とそれを通して生じる琴子の変化、前半からの空気の変化を琴子視点と周りの大人視点で絵が描かれている。 西加奈子さんの作品は必ず、このワードが良い!というものがあるのだけど、今回の作品は全体を通した存在自体が独特なエネルギーを持っていて、私の中で異質な、記憶に残る作品でした。 最後のページの描き方が大好き。
Posted by