炭素文明論 の商品レビュー
人類の歴史を作ってきた炭素化合物のはなし。炭素原子は電荷に偏りがなく4つの腕を結合を使って強固で長い結合を作れる。地球上に質量比0.08%しかないのに多彩な化合物を作り出した。 デンプン、砂糖、香辛料、グルタミン酸、ニコチン、カフェイン、尿酸、エタノール、ニトロ、石油... 人類...
人類の歴史を作ってきた炭素化合物のはなし。炭素原子は電荷に偏りがなく4つの腕を結合を使って強固で長い結合を作れる。地球上に質量比0.08%しかないのに多彩な化合物を作り出した。 デンプン、砂糖、香辛料、グルタミン酸、ニコチン、カフェイン、尿酸、エタノール、ニトロ、石油... 人類の歴史は炭素の歴史だと感じる。 ■人工甘味料 アセスルファム、アスパルテーム、スクラロース...甘味受容体と結合して脳に甘みを感じさせるゼロ低カロリー甘味料 ■香辛料 カプサイシン(唐辛子)、ピペリン(胡椒)、ミリスチシン(ナツメグ) ■アルカロイド 植物が作る毒素。肉体は拒否するのに精神は欲してしまう。
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炭素の歴史といえば、「火の発見/活用」による(食材の軟化で)脳の発達にはじまって 穀物栽培≒炭水化物食により定住、人口増加…。 大航海時代になると新世界植物、食物だけでなくタバコや酩酊草、ゴム…火薬の威力により植民地支配…/近代化学の定量分析で分子構成の一部解明…/ 18...
炭素の歴史といえば、「火の発見/活用」による(食材の軟化で)脳の発達にはじまって 穀物栽培≒炭水化物食により定住、人口増加…。 大航海時代になると新世界植物、食物だけでなくタバコや酩酊草、ゴム…火薬の威力により植民地支配…/近代化学の定量分析で分子構成の一部解明…/ 1856年、リン酸肥料確保の必要からアメリカは「グアノ島法」を成立させ、グアノ=海鳥糞のある島に領有をアメリカ人誰でも宣言可とした→ウェーク島やミドウェー島領有。 1898年、英国科学アカデミー会長就任のクルックスは「文明は窒素肥料枯渇で衰退」と宣言→空中窒素固定法開発を促した。それは成功したが、高性能火薬や毒ガスも開発され第一次世界大戦の悲惨さをもたらした。 砂糖(分子構造を少し変えるとカロリーがなく甘みを感じる物質=人工甘味料ができるが、なぜ甘みを感じるかはわかっていない) 香辛料、うま味成分であるグルタミン酸といった食品、 そしてニコチン、カフェイン、尿酸、アルコール(エタノール)といった嗜好品にまつわるもの、そして エネルギー源としての、ニトロ、アンモニア、石油…最近実用化されたシェールガス 「第4形態」サッカーボール状粒子=フラーレンの発見は1985年、星間物質の研究から偶然に得られた。早くも1990年にアーク放電を用いた大量合成方法が発見され、すでに活用して多くの工業製品がある。
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炭素が主役なので、元素や化学がメインの話かと思いきや、どちらかと言うと、文化史。勿論、炭素を切り口として、人類がどのように社会を発展させてきたのかという内容で分かりやすく面白い。 スタートから説明が易しい。素人向きだ。 元素と元素が互いに結びつき、化合物と言うものを作る。紙な...
炭素が主役なので、元素や化学がメインの話かと思いきや、どちらかと言うと、文化史。勿論、炭素を切り口として、人類がどのように社会を発展させてきたのかという内容で分かりやすく面白い。 スタートから説明が易しい。素人向きだ。 元素と元素が互いに結びつき、化合物と言うものを作る。紙ならばセルロース、食肉ならばアクチンとミオシン、衣服ならばナイロンやポリエステルといったように、身の回りのものは全てこの化合物の集まり。 中でも木材や皮膚、絹糸などの物質は有機化合物と呼ばれる。有機とは生命力が生み出したと言う意味。現在では有機化合物と言う言葉は、炭素を基本とした化合物と言う意味合いで用いられている。そう、ここから炭素だ。 砂糖の構造を一部変換することによってノンカロリーの甘味料にすることができる。また砂糖を酢酸と化合させれば苦い味、硫酸と化合させれば胃粘膜を守る医薬、硝酸と化合させれば爆薬に。 ブドウ糖=グルコースの分子が長くつながったのがデンプン。ホモエレクトスが初めて火を使い、加熱することで芋をふかし、米を炊いた。デンプンの鎖が緩んでいるので消化分解を受けやすく、摂取カロリーも増えた。同じ時期に人間の脳の容積が急拡大。そのかわり人間は粘化されていないデンプンを消化する能力を失った。多くの猿はどんぐりを生で食べられるが、人間だと腹を壊してしまう。デンプンの加熱調理を覚えたことが、人間にとって非常に大きなターニングポイントだった。 天然から発見されたもの、人工的に造り出されたものを合わせて化合物は7千万以上あるが、この内炭素を含むものは8割を占める。 ややそれるが、スケール大きく、興味深い話。 狩猟時代には1日3時間働けば必要な食料が確保できていたが、農耕開始後、労働時間はさらに長くなり、現在では8時間、10時間と延びている。 事情に迫られてやむなく農耕を開始したと考えるのが自然であり、おそらく急激な気温の低下により、多くの動物が絶滅したためというのが理由として想像される。 手軽にカロリー摂取できていた状態が、エゴにより、自らの食料を確保するための競争をせざるを得なくなり、労働時間や難易度が際限なく増していく。自然すらも所有して権利主張されれば、最早社会に組み込まれないものは、ただ一人では生きてさえいけない。飼い慣らされたのは、植物や動物ではなく、人間なのかも知れない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
面白かった。高校の時に習ったハーバー・ボッシュ法にそんな背景があっただなんて知らなかった。さらにこのハーバーがナチスの毒ガス開発に一役買っていたなんてことも知らなかった。 知らなかったことを学ぶことができるのはとてもいいことだ。楽しいな。
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地表における元素存在比0.08%の炭素が成り立たせる生命の世界。 我々の生活を支え、文明・文化のあり方に深く影響を与える物質を化学的視点から考察。 ◯炭素が本領を発揮するのは、「化合物を作る」段階だ。今までに天然から発見された、あるいは化学者たちが人工的に作り出した化合物は7千...
地表における元素存在比0.08%の炭素が成り立たせる生命の世界。 我々の生活を支え、文明・文化のあり方に深く影響を与える物質を化学的視点から考察。 ◯炭素が本領を発揮するのは、「化合物を作る」段階だ。今までに天然から発見された、あるいは化学者たちが人工的に作り出した化合物は7千万以上にも及ぶが、これのうち炭素を含むものはそのほぼ8割を占める。 ・エネルギー源のグルコース、貯蔵形態としてのデンプン ・様々な化学構造で甘味を感じる不思議 ・肉食、保存用途があった頃の香辛料の重要性。農業発達・冷凍技術で嗜好品化。唐辛子のカプサイシンは16世紀にアジアにもたらされて食文化を形成。発酵文化、新鮮な魚、穀物がある日本にはあまり浸透せず。 ◯ニコチン、カフェイン、尿酸(プリン体)、エタノールの精神への影響、産業としての側面、文化の構成 ◯エネルギー ・ニトロ:硝酸、衝撃に反応、珪藻土に吸収させてダイナマイトを発明 ・アンモニア:本書で取り上げる唯一の無機化合物 生物の生育に必須元素、窒素固定は自然界では稲妻とマメ科根粒細菌のニトロゲナーゼのみ、採掘の限界、ハーバー・ボッシュ法による人工窒素固定、エネルギー大量消費の課題、毒ガスへの応用 ・リン鉱石の採掘限界、2060年頃 ・石油:現代のエネルギーの根幹。無機起源説等、未だわからない物質 ・カーボンナノチューブ、人工光合成、オーランチオキトリウム等の新技術による新たな炭素循環
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炭素という元素を、人類史に関係する化合物を出して性質を説明。 炭素化合物についてとても勉強になった。知らないことが多く、興味深い話ばかり。二酸化炭素削減など言う前にこのくらいの知識は必要だと痛感した。
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とても大層な本題だが、中身はとても読みやすい。 砂糖やカフェインなど身近な炭素化合物から、現代文明のエネルギーたる石油まで、性質や歴史を理解しやすく解説している。
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教科書には載っていない逸話が多くとても楽しめた。また、作者の秀逸な表現がところどころに見られ、読んでいて終始飽きない良書だった。
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文明の発展や人口の増加が炭素化合物の獲得の歴史とどう符合するのかを分かりやすく論じている。文系の人でもわかる内容。生活とはこれ程までも炭素が欠かせなかったのか、と、改めて考えさせられる。食べ物に始まり、薬品、アルコール、カフェイン、石油、照明装置、テレビに至るまで炭素が発展を支え...
文明の発展や人口の増加が炭素化合物の獲得の歴史とどう符合するのかを分かりやすく論じている。文系の人でもわかる内容。生活とはこれ程までも炭素が欠かせなかったのか、と、改めて考えさせられる。食べ物に始まり、薬品、アルコール、カフェイン、石油、照明装置、テレビに至るまで炭素が発展を支えてきた。なぜカフェインを摂取したくなるのか?世界地中で飲み続けられるものには共通してカフェインが入っているのか?(お茶、コーヒー、コーラ)、ランナーズハイ、麻薬などとの共通点は?エネルギーは使い続けるだけでいいのか? 世界を大枠で捉える上で重要な一冊。
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炭素というたった一つの切り口から歴史・経済・ヒト・生命・テクノロジーと様々な方面に話を広げていく。単純に話が面白く文章が上手いうえに、説得力もある。こういう教養人に私はなりたい。
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