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炭素文明論 の商品レビュー

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47件のお客様レビュー

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2018/10/31

化学物質が歴史に果たした役割について、生命、心、エネルギーの分野でまとめている。 炭化水素は油のような性質になるが、酸素や窒素が加わると分子内の電荷の偏りによって水になじみやすくなる。炭素と酸素や窒素との結合は離れやすいため、反応性が高い。 香辛料の多くは、フェニルアラニンが...

化学物質が歴史に果たした役割について、生命、心、エネルギーの分野でまとめている。 炭化水素は油のような性質になるが、酸素や窒素が加わると分子内の電荷の偏りによって水になじみやすくなる。炭素と酸素や窒素との結合は離れやすいため、反応性が高い。 香辛料の多くは、フェニルアラニンが変換されてつくられており、ベンゼン環に3炭素程度の側鎖が付いた構造をしている。 江戸時代の薩摩藩は、奄美や琉球で生産された砂糖を大坂で販売し、その資金で蝦夷地の昆布を買い付けて大陸に売り込むことによって、巨額の利益を稼いだ。 ニコチンは、神経伝達物質のアセチルコリンと同様の作用を演じるため、神経の働きを活性化させるが、ニコチンを摂り続けているとアセチルコリンの生産力が落ちてしまう。 DNAの4つの核酸塩基のうちのアデニンとグアニン、エネルギーを運搬するATPやサイクリックAMPはプリン骨格を持つ。 ラムはサトウキビを搾りとった後の廃液(糖蜜)を発酵・蒸留したもの。カリブ海で奴隷を下した船に糖蜜を積んでニューイングランドへ運び、そこでラム酒を積んでアフリカへ戻るという三角貿易の一角を支えた。麦芽の発酵液を蒸留して樽に貯蔵し、木材の成分が溶けだしたものがウイスキー。トウモロコシを用いたものがバーボン。 宋代に発明された爆薬の原料のひとつである硫黄は、火山国日本からの輸入に頼っていた。もうひとつの原料である硝石は、尿糞が酸化された硝酸イオンから得ていた。イギリスがインドを植民地化したのは、ガンジス川で硝石鉱床が見つかったことが大きな理由だった。 リン鉱石は2060年頃に枯渇するおそれがある。 石油成分のうち、炭素がひとつだけのメタンは都市ガス、炭素数3〜4の成分はLPG、5〜10の成分はガソリン、11〜15の成分は灯油、15〜20の成分は経由、さらに大きなものは重油として利用される。シェールガスの主成分はメタンなので、発熱量当たりのCO2排出量は石油より少ない。 炭素繊維の重さは鉄の4分の1だが、重量当たりの強さは10倍以上。カーボンナノチューブはさらに強く、シリコンよりも低電力で高速な電導体にもなる。

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2014/08/21

傑作である「スパイス、爆薬、医薬品」にひけを取らない良書。海外経験のない日本人研究者がこれほど読みやすい文章を書け、俯瞰的視点が持てるとは驚き。 ・イギリスは阿片の自国流通は厳しく規制 ・狩猟時代の1日の労働時間は3時間程度 ・人体が甘味を感じる仕組みは謎。各種甘味料の構造式に共...

傑作である「スパイス、爆薬、医薬品」にひけを取らない良書。海外経験のない日本人研究者がこれほど読みやすい文章を書け、俯瞰的視点が持てるとは驚き。 ・イギリスは阿片の自国流通は厳しく規制 ・狩猟時代の1日の労働時間は3時間程度 ・人体が甘味を感じる仕組みは謎。各種甘味料の構造式に共通点無し ・将棋の「桂」はシナモン「香」はナツメグ、クローブ ・タバコ擁護論者は他では論理的だが、好きなものに対するバイアスが多大にかかっていて、ニコチンに操られているかのよう ・400リットルのウィスキーには樽由来成分が2kg近い ・チンパンジーに貨幣経済を教えると売春、強盗が発生する ・石油の由来について、無機起源説の説得力が増してきている

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2014/05/31

炭素にまつわる本。タイトルの通り、地表にわずか0.08%しか存在しない元素・炭素が我々人類の歴史をうごかしてきた。決して飽きることなく読み進められる。 全12章からなる構成だが、各章で紹介される炭素化合物(一部無機化合物もあるが)のエピソードが一々面白い。個人的には砂糖(スクロ...

炭素にまつわる本。タイトルの通り、地表にわずか0.08%しか存在しない元素・炭素が我々人類の歴史をうごかしてきた。決して飽きることなく読み進められる。 全12章からなる構成だが、各章で紹介される炭素化合物(一部無機化合物もあるが)のエピソードが一々面白い。個人的には砂糖(スクロース)の話が印象的。砂糖がなければ奴隷制度は存在しなかったのかもしれない。

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2014/05/02

 炭素を巡る過去から未来までの歴史を描いたノンフィクションです。  題名や表紙がとにかく地味でもったいないと思うのですが、内容は壮大で造詣深く、ひとつの”物語”としても楽しめる話でした。    読了後、カフェオレに賞味期限切れのシナモンを振りながら、これがかつての大航海時代を築き...

 炭素を巡る過去から未来までの歴史を描いたノンフィクションです。  題名や表紙がとにかく地味でもったいないと思うのですが、内容は壮大で造詣深く、ひとつの”物語”としても楽しめる話でした。    読了後、カフェオレに賞味期限切れのシナモンを振りながら、これがかつての大航海時代を築き上げる原動力になったのか〜と感慨深くなる。そんな本です。  あとうちはナツメグの賞味期限も切れているので早く使いきりたい。

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2018/10/14

140419 中央図書館 有機化学者が、元素の王様「炭素」に由来する人類にとって象徴的な化合物をキーにして、歴史の中に「化学」を投影してみせたエッセイ集。 でんぷん、砂糖、サッカリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、ニコチン、カフェイン、尿酸、エタノール、ニトロ、アンモニア、石油...

140419 中央図書館 有機化学者が、元素の王様「炭素」に由来する人類にとって象徴的な化合物をキーにして、歴史の中に「化学」を投影してみせたエッセイ集。 でんぷん、砂糖、サッカリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、ニコチン、カフェイン、尿酸、エタノール、ニトロ、アンモニア、石油。 それぞれ、われわれが発見、合成し、文明の中にあまりにも深く入り込んだ有機化合物である。 化学に関する一般書としては、無類に面白い。

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2014/04/13

化学と文明の深いつながりを学ぶ一冊。カーボンに特化し、本来なら香辛料から始まる系統の本だが、日本人に馴染み深いデンプンから始まるのは見事だと思った。

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2014/03/10

化学の知識無しでOKな楽しい読み物。作者の意図の通り化学への関心をそそり、かつ人の業を感じるような内容もちらほら。勉強になるわけではないけど良い読書体験が出来る

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2014/02/28

炭素で見る世界史的な流れで、堅苦しくなく、初めて知ることがたくさんあってかなり面白く読めた本。理系と文系をうまく融合させたなと感心しました。

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2014/02/25

食べ物にしても、着るものにしても、住むところにしても、そして僕らの体も、あらゆるところに炭素化合物がある。炭素なくして文明は発生しなかったし成立もしない。本書は、炭素からなるいくつかの物質が、それぞれどのように人類史に関わってきたかを説く。この手の話は好きなのだ。人類最大の友・エ...

食べ物にしても、着るものにしても、住むところにしても、そして僕らの体も、あらゆるところに炭素化合物がある。炭素なくして文明は発生しなかったし成立もしない。本書は、炭素からなるいくつかの物質が、それぞれどのように人類史に関わってきたかを説く。この手の話は好きなのだ。人類最大の友・エタノールだとか、世界を制した合法ドラッグニコチンとか。僕は喫煙習慣がないが、これを読んだらタバコを吸ったほうがいいかもな、などと思った(本書は断じて喫煙を勧めてはいないが)。しかし、章ごとが物質で区切られていて、文明を築いていく俯瞰という風にはなっていないのが残念。とはいえ、物質毎の人類へのコミットぶりは愉快でもあり悲しくもあり。 終章では炭素のこれからを語っていて、これが恐らく著者の本領なのだろう。ここまで辿り着いたなら、誰だってこれまでもこれからも炭素がいかに重要かはわかる。21世紀は炭素争奪戦にならざるを得ないだろう。これからの道を切り拓くのは炭素をマネジメントする技術に他ならない、と。

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2014/02/23

炭素と世界史の関連の深さに驚いた。化学物質名は覚えられなさそうだけど。 世界の歴史はエネルギーや食料争奪の歩みなんだなって思った。今後エネルギー、食糧問題は避けられない大きな問題になる。 最後の最先端技術は心が躍る。メタンハイドレートが実用化されたら日本もついに資源国の仲間入り。...

炭素と世界史の関連の深さに驚いた。化学物質名は覚えられなさそうだけど。 世界の歴史はエネルギーや食料争奪の歩みなんだなって思った。今後エネルギー、食糧問題は避けられない大きな問題になる。 最後の最先端技術は心が躍る。メタンハイドレートが実用化されたら日本もついに資源国の仲間入り。期待しちゃうね。 第二部の話も身近なトピックだけど壮大なロマンとフロンティア精神によって開拓発展したんだと思うと感慨深い。 切っても切れない人間と炭素の関係。面白く学ばせてもらえた。

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